ZCASHとは?
ZCASHは、ブロックチェーン(分散型台帳)によって管理される暗号通貨のことで、通貨単位は『ZEC』です。2016年10月にリリースされ、匿名性が高い通貨として高い人気を得ています。
暗号通貨は、P2P(ピア・ツー・ピア)システムで運営されており、特定の管理者をおかないのが特徴です。P2Pは、利用者がお互いにデータをやりとりするシステムで、多くの仮想通貨がこの方式を採用しています。
中央管理者(サーバーなど)を通さないため、サーバーダウンの心配がなく、データのやりとりに即時性が生まれます。
ZCASHは、日本国内ではあまり取扱がないのが現状ですが、海外ではたくさんの利用者がいます。時価総額は全通貨中26位(2018年4月現在)で、約900億円となっています。
ZCASHの始まり
ZCASHはもともと、2013年にZerocoinプロジェクトとして開発が始動しました。これは、ビットコインの弱点を補うことを目的として生まれたプロジェクトです。
ビットコインはこれまで、スケーラビリティ(拡張性)問題やプライバシー問題が指摘されてきました。実際に送金詰まりなどの実害が発生しており、対策をしなければならないということは頻繁に言及されてきました。
その問題を解決すべく、Zerocoinプロジェクトでは、2014年に新しい仮想通貨である『Zerocash』を開発しました。その後、Zcashチームが結成され、2016年にZCASH(ZEC)がリリースされています。
ZCASHの特徴
ZCASHは、ビットコインのデータソースをもとに開発されたため、その特徴はビットコインと酷似しています。
発行枚数の上限はビットコインと同じ2100万枚、さらにコンセンサスアルゴリズム(承認システム)に、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)を採用しているというのは、ビットコインとまったく同じです。
ただし、承認にかかる時間がビットコインよりも圧倒的に短く、ビットコインの場合は約10分かかりますが、ZCASHは約2.5分という短さになっています。
承認時間が短いということは、取引にかかる時間が短くなるため、即時決済サービスなどに利用されやすいということです。
匿名性が断トツに高い
ZCASHの最大の特徴として、匿名性が高いことが挙げられます。仮想通貨における匿名性は、プライバシー問題の解決につながります。
たとえば、ビットコインの場合、取引における履歴がすべて公開されている(オープンソース)ので、誰が誰にいくら送金したのかすべて知ることができます。
ZCASHでは、送金元・送金先・送金した量などの履歴がまったく残りません。この匿名性により、送金相手に対して通貨の使用履歴や、自分の資産を知られる心配がなくなるということです。
DashやMoneroとの違いは?
匿名性の高い通貨として、Dash(ダッシュ)やMonero(モネロ)が挙げられます。
DashはCoinjoin(コインジョイン)と呼ばれるシステムで、特定のノード(コンピュータ / マスターノード)に送金したコインを集め、シャッフルしてから送金するという方法を採用しています。
Moneroの特徴は、『ワンタイムリング署名』を採用していることです。複数人の署名によって通貨が送金されるため、誰が署名したのかわからないようになっています。さらに、署名に使われるパスワードは、1度きりの使い捨てなため追跡ができません。
DashやMoneroでは、送金履歴は匿名にできますが、送金アドレスや送金する量に関しては、ブロックチェーンに残ってしまいます。ZCASHは送金アドレスや送金量も匿名にできるため、より匿名性の高い通貨だといえます。
DASH公式サイト | DASH 暗号通貨 Dash
Home | Monero - secure, private, untraceable
2つの送金方法を使い分け
ZCASHは匿名性の高い通貨ですが、送金方法を変えることで情報を公開することも可能です。ZCASHを送金する際、tで始まるtransparentアドレスと、zで始まるshieldedアドレスの2種類を使い分けることができます。
transparentアドレスで送金すれば、取引情報を公開できます。shieldedアドレスで送金した場合は、取引情報はブロックチェーンに残らず、匿名性を維持したまま送金できます。
ZCASHの仕組み
ZCASHは、ビットコインのソースをもとに生成された仮想通貨ですが、その仕組みはビットコインと少し異なります。
まず取引の手法としては、数学で用いられる『ゼロ知識証明』を活用した『zk-SNARK(Zero Knowledge – Succinct Non-interactive ARgument of Knowledge)』が採用されています。
この画期的な手法により、匿名性が担保された取引の実現が可能となっています。この手法で行われた取引の承認作業には、『Equihash』と呼ばれるPoW(プルーフ・オブ・ワーク)のアルゴリズムが使われています。
匿名送金を可能にするゼロ知識証明とは
ゼロ知識証明とは、数学で用いられる証明の1種です。持っている知識が正しいことを証明するために、その知識を相手に伝えることなく、別の方法で証明することを目的とする証明方法です。
たとえば、AがパスワードXを知っているということを証明するために、本来ならXを相手に提示すれば証明は完了します。しかし、Xを提示せずに、Xに関連する情報をいくつか提示することで、相手にXを知っていると信頼させることもできます。
仮想通貨におけるゼロ知識証明では、一方方向で暗号化することができる『ハッシュ関数』を用いて生まれた暗号Xを相手に伝えることで、Xを知っている証明が完了します。
マイニングアルゴリズムはEquihash
zk-SNARKのシステムで行われた取引は、誰かに承認してもらう必要があります。その承認アルゴリズムに使われているのが、PoWの1種である『Equihash(イクイハッシュ)』です。
Equihashでは、保有するRAM(記憶装置)の量で、マイニング(承認作業)できる量が決まるシステムになっています。つまり、これまでマイニング装置として世界的に使われてきた『ASIC』が使えなくなるということを意味しています。
そのため、一般家庭のコンピュータでもある程度マイニングすることが可能となり、マイニングの一極化による中央集権を防ぐ効果があるとされています。
ZCASHのチャート相場・価格推移
ZCASHを購入するのであれば、現在のチャート相場を押さえてく必要があります。今後、価格はどのように推移していくのか、過去の価格推移から予測してみましょう。
2016年10月 リリース時に価格急上昇
ZCASHは2016年10月にリリースされましたが、リリース直後に価格の急上昇を見せ、638,414円の最高値を記録しています。
ビットコインと同じシステムを採用し、さらにビットコインで言及されていたプライバシー問題やスケーラビリティ問題をクリアしていたことから、リリース前から投資家の間で人気が出ていました。
大手投資家や企業が多額の投資をしたことで、リリースされた当初に高騰を見せましたが、その後すぐに価格は急落しています。実際公開されてみれば利用者は少なく、異常な熱が急激に冷めてしまったようです。
2017年6月 JPモルガンとの提携
ZCASHの価格は3,000~5,000円を横ばいで推移していましたが、2017年5月にアメリカに本社を置く大手銀行『JPモルガン』と提携を発表し、50,000円近くまで価格が高騰しています。
そのあと下降トレンドが続いていましたが、2018年1月に90,266円の高値を記録しています。そのあとは2018年4月現在まで、再び下降トレンドが続いています。
ZCASHが購入できる取引所
ZCASHは個人間で取引ができる仮想通貨ですが、取引所を介して購入するのが一般的です。ただし、国内ではほとんど取扱がなく、海外の取引所を登録しておく必要があります。
国内はコインチェックのみ
国内の取引所で唯一ZCASHを取り扱っているのが、コインチェックです。国内最多の通貨取扱があり、人気の高い取引所です。
しかし、2018年1月に起きたNEM流出事件を受け、現在は取引の一部を制限しており、新規登録は完全に停止しています。
コインチェックは2018年4月、マネックス証券を運営するマネックスグループに買収され、2018年6月をめどに再開が予定されています。
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おすすめは海外の取引所
海外では、多くの取引所でZCASHを取り扱っています。ただし、日本円には対応していないので、国内でBTC(ビットコイン)などを購入する必要があります。
取引量の多いBinance
Binanceは、世界でも取引高トップ3に入る香港の取引所です。取引される量が多いということは、それだけ多くの人に信頼されているということです。手数料は、全通貨ペア0.1%と比較的安く設定されています。
取扱通貨が豊富なBittrex
Bittrexは、取扱通貨が200種類以上ある海外取引所です。中には、ほとんど価値のない、いわゆる『草コイン』と呼ばれる通貨もたくさんあります。
少しギャンブル性が高くなってしまいますが、まだ価格の低いうちに草コインに投資しておき、価格の高騰を狙うという投資法に最適です。
手数料が安いPoloniex
Poloniexは、変動制の手数料を採用しているアメリカの取引所です。取引量が多ければ、手数料無料で取引ができます。取引量が少なくても手数料は最大0.15%なので、毎月安定した取引ができなくても、それ以上高くなることはありません。
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ZCASHの始め方・買い方
ZCASHは2018年4月現在、国内での取扱がない状態なので、海外の取引所で購入する必要があります。今回は、手数料の低いBinanceでの購入方法を紹介します。
Binanceでの購入方法
BinanceでZCASHを購入するには、以下のステップをクリアする必要があります。
- BTC(ビットコイン)を入手
- Binanceのアカウント登録
- 本人確認
- BTCの入金
- ZCASHの購入
まずは国内取引所で、日本円をBTCに換金しておきましょう。そして、Binanceのログインページで、メールアドレスを入力してアカウントを作成します。
本人確認はパスポートや運転免許証を用意しましょう。本人確認後、BTCを送金しZCASHを購入します。
BNBトークンで買うと手数料がお得
手数料は基本的にBTCでの支払いとなりますが、BNB(バイナンスコイン)で支払うことも可能です。手数料の支払いをBNBに設定しておくと、手数料が全通貨ペア50%割引(1年目)になります。
ZCASHのメリット・デメリット
ZCASHを利用する最大のメリットは、匿名性が高いことです。プライバシーを気にする人は、どのような経緯でその通貨を手に入れたのか知られたくないものです。
たとえば、自分が取引相手にZCASHを支払ったとき、相手はそのZCASHがどこから来たものなのか知ることができません。また、第三者がその取引を見たときに、送信者や受信者の資産はもちろん、IPアドレスなどと結びつけることも不可能なのです。
しかし、その匿名性が原因で、いくつかのデメリットも生じます。
犯罪に利用される危険性
匿名性が高いということは、犯罪に利用される危険性があるということです。インターネット上の闇市(ダーク・マーケット)では、これまでビットコインが主流でしたが、匿名性が高いZCASHやMoneroの利用が増えてきています。
また、犯罪に使われた資金をZCASHに換金してしまえば、簡単にマネーロンダリング(資金洗浄)ができてしまいます。
規制を受ける可能性も
ZCASHは犯罪に利用される可能性があることから、今後政府によって規制される可能性があります。実際に、2018年から金融庁の調査が厳しくなり、仮想通貨登録業者として登録された業者のみが、取引所として運営できるようになりました。
『マネーロンダリング対策』が不十分として、登録を却下された取引所もあります。その原因ははっきり発表されてはいませんが、ZCASHやMoneroの取扱があることが可能性として考えられます。
匿名系の仮想通貨はライバルが多い
匿名性が高いのはZCASHのメリットですが、ほかにもMoneroやDashなど、匿名性を売りにしている通貨があります。
また、匿名性の高い通貨は、商品としてのアピールポイントがわかりやすいため、人気通貨になりやすいです。そのため、今後も匿名性を売りにした通貨が発行される可能性も、十分あり得ます。
ZCASHの今後の将来性
ZCASHは今後どのような開発が進められていくのでしょうか。今後予定されているアップグレードについて確認していきましょう。
2018年2つのアップグレードを予定
ZCASHは2018年に、2つのアップグレードがあると発表しています。2018年4月現在、ZCASHはプログラム中にいくつか修正が必要な箇所を把握しており、テストバージョンとして運営している状態です。
OVERWINTER
2018年6月にアップグレードが予定されている『OVERWINTER(オーバーウィンター)』は、同年9月のアップデート『Sapling(サップリング)』のために必要なプロトコルアップグレードだと発表しています。
プロトコルは、仮想通貨における基本ルールのことです。つまり、このアップグレードで、ZASHの基盤が改良されるということです。
Sapling
数回のアップグレードを経て、2018年9月にはSaplingアップグレードが予定されています。詳細は開発者の発表を待つしかありませんが、Saplingでは主にセキュリティの向上や、アルゴリズムの最適化(速度向上の可能性も)が行われるようです。
広い汎用性に期待
ZCASHは今後、匿名性を重視した決済機能だけではなく、ほかにもさまざまな機能が追加される予定です。
また、ZCASHがベースにしているzk-SNARKのシステムは、イーサリアムの開発にも取り入れられており、非常に広い汎用性があると期待されています。
まとめ
ZCASHは第2のビットコインと呼ばれることもあるほど優秀な通貨で、一時ビットコインを上回る価格になったこともあるほとです。しかし、匿名性の高い通貨は日本ではまだ受け入れられていません。
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