退職後の健康保険はどうなるのか
日本では『国民皆保険制度』(※)を導入しており、総医療費の一部のみの支払いで、病気やケガに対する医療を受けられます。主な健康保険は以下のとおりです。
- 国民健康保険:自営業や農業・漁業従事者・無職の人などが加入
- 協会けんぽ:中小企業で働く人が加入
- 健康保険組合:大企業で働く人が加入
- 共済組合:公務員が加入
退職時には、健康保険を任意継続するか国民健康保険へ切り替える、もしくは家族の保険に被扶養者として入る手続きを行う必要があります。
(※国民皆保険制度とは、全ての国民をいずれかの健康保険に加入させる制度のことです)
退職後の健康保険について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
国民健康保険に加入する
国民健康保険は以下のような特徴があります。
- 前年度の所得などによって保険料が決まる
- 同一世帯の全員の所得をもとに、保険料が算出される
- 保険料の減免制度がある
退職後、会社の健康保険を脱退したら、国民健康保険に加入するのも選択肢のひとつです。保険の切替手続きは、居住する市区町村の窓口で行います。
在職中は給与から天引きで支払われる健康保険料ですが、国民健康保険の場合は、自分で保険料の支払いを行わなければなりません。未加入や未払い状態にならないよう、速やかに手続きを行いましょう。
退職前の保険を任意継続する
退職後は、退職前の健康保険を任意継続することも可能です。任意継続の詳細については、次項で解説します。
保険の任意継続について知る
ここからは、任意継続について詳しくみていきます。
任意継続とは
任意継続とは、退職前に加入していた健康保険に、本人が希望することで、原則として2年間継続して加入し続けることができる制度です。
任意継続の特徴は以下のとおりです。
- 退職時の標準報酬月額(※)により、保険料が決まり、2年間は原則として保険料が一定
- 扶養家族の保険料はかからない
在職中の保険料は、所属する健康保険組合や健康保険事業所、共済組合と本人とで折半ですが、退職後は本人が全額自己負担することとなります。
(※標準月額報酬とは、健康保険料を計算するときに用いられる金額で、原則として4月~6月の3カ月分の給与の平均を、標準報酬月額表に照らし合わせて決定されます)
任意継続のメリット
任意継続のメリットは、扶養家族であれば加入できることです。一定の要件を満たし扶養家族と認められた場合、その家族は保険料を支払わず、健康保険に加入することが可能です。
よって、1人分の保険料の支払いだけで済むので、家族がいる人にとっては、保険料を抑えられます。
任意継続のデメリット
任意継続のデメリットは、在職時に比べ支払う保険料が高くなることです。前述のとおり、在職中は折半していた保険料を、任意継続では全額自己負担しなければなりません。そのため、およそ2倍の保険料を支払わなければならなくなります。
ただし、任意継続の保険料には、上限が設けられています。上限額はそれぞれの健康保険によって異なるため、加入していた健康保険を確認してみるとよいでしょう。
国民健康保険と比べてどちらがお得?
項目 | 国民健康保険 | 任意継続 |
加入期間 | 制限なし | 2年間 |
保険料 | ・前年度の収入により決まる ・詳細は市区町村により異なる |
・退職時の標準報酬月額に保険料率を掛けて計算される ・保険料率は都道府県により異なる |
家族の保険料 | 世帯の人数分かかる | 扶養家族はかからない |
国民健康保険と任意継続とでどちらを選択をするか、その判断材料となるのは保険料でしょう。
しかし、国民健康保険、任意継続とも収入や家族構成、居住する地域により保険料が異なるため、どちらのほうが得をするかは一概にはいえません。
退職が決まっている人は、あらかじめ市区町村や加入していた健康保険組合の窓口に相談して、保険料を確認することをおすすめします。
任意継続保険の手続き
任意継続を選択した場合、具体的にどのような手続きが必要になるのでしょうか。
任意継続のための条件
任意継続をするには、一定の条件をクリアしていなければなりません。条件は、それぞれの健康保険により異なります。
健康保険 | 条件 |
協会けんぽ | ・継続して2カ月以上健康保険に加入していたこと ・資格喪失日から20日以内に申請書の提出をすること |
健康保険組合 | ・条件は健康保険組合(各企業)ごとに異なる ・詳細は各保険組合に問い合わせが必要 |
共済組合 | ・退職の日の前日までに、1年以上組合員であったこと ・退職の日から20日以内に継続の申出があること |
必要な書類
協会けんぽでは、任意継続をする際に『健康保険任意継続被保険者資格取得申出書』が必要です。
また、扶養家族がいる場合には『被扶養者届』のほか、同一世帯であることを証明する住民票などが必要となることもあります。詳しくは管轄する協会けんぽ都道府県支部に問い合わせましょう。
まとめ
勤務していた会社を退職するときには、健康保険の手続きも行わなければなりません。失念すると医療費を全額自己負担で支払わなければならなくなるため、注意が必要です。
健康保険を脱退したときの選択肢は、国民健康保険への加入か、在職中に加入していた健康保険の任意継続です。
どちらのほうがメリットがあるのかは、収入や家族構成などにより異なるため、保険料などをあらかじめ確認しておくことが大切です。
任意継続の場合は、脱退してから20日以内に手続きを完了しなければならないため、退職が決まったときには速やかに手続きを進めるようにしましょう。