仮想通貨とマイニング
仮想通貨における『マイニング』とは、仮想通貨の正常な取引を進行させるために必要な手続きです。マイニングは世界中で行われており、その手続きを成功させた人に、報酬を付与することで仮想通貨の価値が保たれています。
非中央集権化の実現
通貨とは価値のある金銭のことを指し、基本的には国が法律などによって価値を保証しています。
たとえば日本では、日本唯一の中央銀行である日本銀行が日本円の価値を保証し、またコントロールすることで、円滑で安全な資産決済の仕組みを保っています。
中央集権の組織には、大きな資金や人材を動かす力があるため、何か大きな改変を起こそうとするときに、力を発揮する仕組みです。
ただし、その方向性が間違っていても誰も是正することはできず、私たち個人は中央組織の方針に身をゆだねるしかありません。
仮想通貨はこれまでの通貨と異なり、非中央集権による通貨管理を実現しています。これは非常に画期的なことで、今までの技術では不可能とされていました。
中央集権から離れた分散型通貨
仮想通貨は、中央集権から離れた分散型通貨といえるでしょう。権力が分散していることで、どこかの組織にコントロールされることもなく、非常に強い繋がりで通貨を守ることができます。
大きな改変が難しいというデメリットはありますが、全体が徐々に変化していくことで、外的な環境変化に対応することができます。
ネットワーク上で台帳を分散管理
そもそも仮想通貨とは、実際には存在しない通貨です。インターネット上に通貨自体のデータが存在するということもありません。
つまり、通貨がそこに『ある』と仮定して取引を行い、その取引履歴を管理することで通貨としての価値を保証しています。通貨自体のデータはありませんが、通貨を取引したというデータがあることで、実際に通貨があるという証拠になっています。
その取引データは、ネットワーク上に分散した台帳に存在し、世界中の人が同じ台帳を共有して管理しています。しかし、それだけでは取引データを自由に改ざんすることができてしまいます。
このデータの改ざんを防ぐために行われるのが、『マイニング』と呼ばれるシステムです。マイニングによって取引に不正がないと証明されれば、その取引は世界中の台帳に記載され取引成立となります。
このマイニングは複雑な計算を必要とするため、世界中のパソコンで分散して行われています。
台帳は世界中で共有されているため、1台のパソコンが故障したとしてもまったく影響はありません。それぞれが支え合い、監視し合いながら管理しています。
マイニングによる仮想通貨の取得
マイニングは、ボランティアでするものではありません。パソコンを稼働させ、容量と電気代を負担して行っています。この負担に対して見合う価値があるからこそ、世界中でマイニングが行われているのです。
贈与ではなく報酬
マイニングで取引が正しいと証明されると、証明したマイナー(マイニングをした人)に対して、一定の『報酬』が与えられます。報酬はマイニングで証明した仮想通貨(ビットコインなど)で支払われます。
税金を計算するうえで、贈与や譲渡ではなく『報酬』であることが重要なポイントです。たとえば、株式による投資で利益が出た場合は『譲渡益』の課税所得となり、分離課税として計上されることになります。
仮想通貨は譲渡ではないため、譲渡益にはならず、譲渡益課税の対象にはなりません。また贈与でもないため、贈与税がかかることもありません。
取得した仮想通貨に税金はかかる?
マイニングで仮想通貨を取得した場合、取得した通貨に対して税金を支払う義務が発生します。ただし、通貨を利用して利益が発生した場合に税金がかかるので、通貨を保有しているだけで税金がかかることはありません。
通貨を利用して利益が発生した場合とは、仮想通貨取引や商品購入にその通貨を利用した時点で、通貨取得時価との差益が出ていれば『利益が発生した』と判断されます。
原則雑所得の対象
マイニングで得た仮想通貨は、原則雑所得の対象となります。ただし、取得した通貨を事業決済で使用したり、給与の支払いに利用したりした場合など、事業性が認められたときに限り『事業所得』として計上できます。
確定申告の対象になる収益はいくらから?
雑所得を得た場合、所得税の支払い義務が発生します。所得税が発生するということは、確定申告をしなければならないということです。
ただし、仮想通貨によって得た利益が少ない場合は、確定申告をする必要がありません。
本業は38万円超、副業は20万円超
仮想通貨取引やマイニングを専業で行っている場合、課税所得が1円でもあれば原則確定申告をしなければいけません。ただし、所得税には『基礎控除』と呼ばれる38万円の控除があるので、38万円以下の利益は全額控除されることになります。
基礎控除により課税所得が0円になった場合、所得がないということなので確定申告の必要はありません。
仮想通貨による利益が38万円を超える場合は基礎控除38万円を差し引いても1円以上の課税所得が発生していることになるので、確定申告をしなければいけません。
また、サラリーマンの副業として仮想通貨取引を行っている場合、20万円までの利益であれば確定申告の必要はありません。ただし、主となる給与があり、年末調整が終わっていることが条件です。
No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|所得税|国税庁
所得税の算出方法
ここからは具体的に、仮想通貨で利益を得た場合の所得税の算出方法を紹介します。
収入金額は仮想通貨取得時点の時価
仮想通貨の収入金額(利益)は、仮想通貨を取得した時点の時価で計算します。ただし、マイニングの場合は、設備代や電気代を差し引きして計算できます。
たとえば、100万円で1ビットコインを購入した場合、通貨取得時価は100万円です。取得時価100万円のビットコインで110万円の商品を購入した場合、
商品代金110万円 - 取得時価100万円 = 10万円の課税所得となります。
マイニングの場合、取得時価は0円です。同じように110万円の商品を購入した場合、
商品代金110万円 - 取得時価0万円 = 110万円
ここから電気代や設備代を差し引きした金額が課税所得です。
雑所得として所得に計上
課税所得を計算したら、それを雑所得として所得に計上します。雑所得は総合課税なので、事業所得や不動産所得などと合計した額が課税所得となります。
総合課税として計上する所得は以下のとおりです。
- 給与所得
- 雑所得の一部(公的年金、個人年金、原稿料、講演料など)
- 一時所得の一部(生命保険の一時金、懸賞の当選金など)
- 譲渡所得の一部(ゴルフ会員権や金地金などの売却益)
- 事業所得(商・工・農・漁業や自由業などの自営業による所得)
- 不動産所得(土地・建物などの貸付けから得られる所得)
- 配当所得の一部
- 利子所得の一部
No.2220 総合課税制度|所得税|国税庁 - 国税庁ホームページ
現行の所得税率をそのまま適用
総合課税は累進課税方式を採用しているので、所得が高くなるほど税率も高くなります。2018年3月現在の所得税率と控除額の一覧は以下のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
※2013年から2037年までは、所得税に復興特別所得税2.1%が上乗せされます。
- 課税所得に対応する税率を掛け、控除額を差し引き所得税額を算出
- 所得税額に復興特別所得税率2.1%を掛け、復興特別所得税額を算出(100未満切り捨て)
そして、所得税額と復興特別所得税額を合算した額が、納付すべき所得税額となります。
No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁 - 国税庁ホームページ
まとめ
マイニングは設備投資さえしっかり行えば、あとはパソコンが自動で仮想通貨を稼いでくれます。放置しておくだけで利益が出てくるので、稼いでいるという実感がなく、税金のことなどを気にせずに使ってしまうかもしれません。
しかし、仮想通貨を得て使用した分に関しては、利益が出ていればすべて税金が発生します。無計画に通貨を使って税金で苦しむことのないよう、あらかじめきちんと計算しておくことが大切です。