仮想通貨の利益は雑所得として課税される
仮想通貨の取引で得た利益は、所得税法上の『雑所得』とみなされます。これは国税局のタックスアンサーで正式に発表された事項です。ただし、事業性が認められた場合に限り『事業所得』として計上できます。
そもそも雑所得とは
所得とは、収入から必要経費などを差し引いたものです。所得の性質によって、事業所得や不動産所得など10種類の所得に区分することができます。
その中で、他の9種類にあてはまらない所得を『雑所得』としています。仮想通貨で得た利益の他に、年金や原稿料、印税や講演料などが該当します。
確定申告を行う必要がある
雑所得に該当する所得を得た場合、確定申告書の提出が必要になります。確定申告書とは、税金を正しく支払うために、1年間でどれだけの所得を得たか自己申告する書類のことです。
所得税や住民税は、年間の所得によって納める額が異なります。たとえば、累進課税制度を導入している所得税は、所得が高額であればあるほど納税額も高額になります。
申告義務の線引きは20万円超の利益
国税局や税務署の業務負担を減らすため、少額の所得であれば確定申告は不要とする規定が定められています。たとえば、サラリーマンが副業で仮想通貨取引をしている場合、20万円以下の利益であれば確定申告する必要はありません。
また、所得には38万円の基礎控除が定められているので、専業で仮想通貨事業をしていたとしても、38万円以下の利益であれば確定申告の必要はなくなります。
ただし、サラリーマンでも給与を2カ所から受けている場合や、年間2,000万円を超える収入がある場合は、仮想通貨の利益に関係なく確定申告が必要です。
No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|所得税|国税庁
確定申告するべき?確定申告が必要なケースと不要なケースとは | クラウド会計ソフト freee
確定申告が必要になった場合、確定申告専用のソフトを使うのがおすすめです。ややこしい控除や経費の自動計算など、簡単な入力で自動計算してくれます。
freeeの使い方とは?確定申告や会社設立で役立つ機能を紹介
学生が注意すべきこと
一般にサラリーマンであれば、利益が20万円を超えた場合に確定申告をすると覚えておくだけでよいでしょう。しかし、学生の場合は少し注意が必要です。
親の扶養から外れてしまう場合がある
親や親族の扶養に入っている場合、本人が所有する仮想通貨で利益が出ていると、扶養から外れてしまう可能性があります。扶養とは、自分で生計を立てて生活できない人に対し、その人を保護するために何らかの給付を行うことをいいます。
学生が親の扶養対象となっていれば、その学生は自分で所得税や住民税を支払う必要がなくなります。さらに親の所得税も控除されるため、家族全体で見ると大きなメリットがあります。
所得税法上、扶養と認められるための条件は以下の通りです。
- 扶養対象者であること(配偶者以外の親族や養育・養護を託された児童・老人など)
- 生計を一にしていること
- 年間の課税所得金額が合計38万円以下であること
この条件から外れてしまうと、学生であっても扶養の対象外となってしまいます。
扶養から外れた場合のデメリット
学生が扶養の対象になっている場合、親の所得控除額が増えます。つまり、親が納める所得税の負担が減るということです。
しかし条件を少しでも外れてしまうと扶養の対象外となるため、親の所得は控除されず、額面通りの所得税を納める必要が出てきます。さらに学生自身にも納税の義務が発生してしまうのは大きなデメリットです。
扶養控除について、給与所得との違い
仮想通貨取引で得た利益は、雑所得とみなされます。アルバイトなどで得た収入は給与所得とみなされ、雑所得とは少し扱いが異なります。
給与収入なら控除額は合計103万円
給与所得は、給与収入から『給与所得控除』を差し引いた額で計算されます。給与所得控除は、年間の給与収入が180万円以下の場合、『収入金額×40%』で算出されますが、『65万円に満たない場合は65万円』と定められています。
扶養の対象となるためには、『年間の所得金額の合計が38万円以下』という条件があります。給与収入から65万円を差し引いた額が、38万円以下であれば扶養の対象、38万円を超える場合は扶養の対象外ということです。
したがって、65万円と38万円を合わせた『年間103万円』が扶養の基準となります。その年の給与収入が103万円以下であれば、親は扶養控除が受けられます。
また、学生は条件付きで27万円の『勤労学生控除』を受けられます。103万円+27万円で、最大130万円までの収入であれば確定申告は不要です。ただしこの場合、親の扶養控除の対象からは外れるため、多く稼いでいる人は注意が必要です。
雑所得は基礎控除の38万円しかない
給与所得には65万円の給与所得控除がありましたが、雑所得にはそのような控除はありません。あるのは38万円の基礎控除のみです。
つまり、仮想通貨によって得た利益は38万円だけが控除され、それを超える額に関しては税金が発生します。そのうえ扶養からも外れてしまうことになります。
まとめ
仮想通貨によって今後安定して収入を得られるのであれば、38万円の壁を気にせず取引をしてもよいでしょう。仮想通貨への投資はリスクもありますので、安定する見込みがないのであれば、利益を38万円以下に抑えるようにしましょう。
サラリーマンであれば、20万円を超えた分に関しては確定申告をして所得税を支払うだけで済みます。しかし親の扶養に入っている学生であれば、『扶養の対象から外れる』という大きな問題が発生するので十分気をつけて取引をしましょう。