仮想通貨の取引所とは
仮想通貨を扱う業者には、取引所と販売所の2種類が存在し、その両方を運営している場合と、どちらかひとつだけを開設している場合があります。
どちらも仮想通貨を売ったり買ったりするということで、混同してしまいがちですが、以下のような明確な違いがあります。
- 販売所:業者が保有する仮想通貨や法定通貨を、利用者の通貨と換金する場所。売買価格は業者が決定するかわりに、比較的早く確実に換金できる
- 取引所:利用者の間で、仮想通貨や法定通貨をやりとりする場所。取引は双方の提示した価格条件が合った場合に成立する
販売所よりも手数料が安い
一般に、販売所は取引所より高めの手数料(スプレッド:後述)を設定しています。この手数料は、取引所で売買を行うときは1.0%未満が主流ですが、売買所では数%以上になることもあります。
したがって、仮想通貨を投資対象として考え、頻繁に売り買いを行うのであれば、販売所ではなく取引所を利用するほうが得策だといえます。
販売所はそれ自体を決済に利用する目的で、仮想通貨を確実に入手したいときなどに向いています。
重要性の低い手数料
仮想通貨取引所ごとに、その手数料体系は異なるので、業者を選択する際にはひと通りの条件を比較検討をしたいところです。しかし、初期の段階では、あまり重要視する必要のない手数料もあります。
口座開設はどこでも無料
まず、どの取引所を選んだとしても、口座開設に手数料はかかりません。加えて、口座の維持にも費用はかからないと考えて問題ありません。
入出金手数料
入出金とは利用者の銀行口座と取引所業者の間で、日本円を移動することをいいます。取引所の口座に置いた資金は、基本的には仮想通貨取引を完全に決済するまで出金することはないので、入出金にかかる手数料も重要度が低いといえます。
入出金手数料としては、取引所口座への振込時に銀行の設定している振込手数料がかかり、利用者の銀行口座への払出時には、取引所が設定している費用がかかります。
一般的に、数百円から千円未満の金額ですが、無料としている取引所もあるので、業者を決定する際には検討すべきポイントだといえます。
コインの預入と払戻手数料
仮想通貨の取引を開始する場合、法定通貨の振込だけでなく、仮想通貨そのものを取引所の口座に移すこともあり得ます。
また、ビットコインなどの仮想通貨は『お金』の役割も持っています。したがって、それ自体を自分の手元(ウォレット)に貯めておいたり、物品購入の支払いなどに利用したりする目的で、取引所から引き出すことも想定されます。
さまざまな移動が考えられる仮想通貨ですが、利用者が取引所内の口座へ移動するだけでは、一般的に特別な費用はかかりません。
取引所から仮想通貨のまま利用者のウォレットへ移動する、つまり払戻の場合は、0.1%以下の手数料が発生することが多いですが、これも少額であると同時に頻度も少ないと考えられ、重要度は低いでしょう。
また、コインの預入と払戻の両方に無料の手数料を設定している業者もあります。
重要性の高い手数料
仮想通貨取引所を選択する場合に重要な検討事項となるのは、通貨の取引にからんで頻繁に支払う可能性のある以下の2つの手数料です。
コインの売買手数料
仮想通貨のレートは比較的大きく変動するので、円との差益を狙った運用を考えるときは取引頻度も高くなりがちです。
通貨の取引回数が増えてくると、その都度支払う手数料も累積され、結果的に利益を圧迫することになります。
現状では、売買手数料は無料としている取引所が多くなっています。しかし、その代わりにスプレッド(後述)を設定しているのが一般的で、これが実質的な手数料となっており、その金額をしっかり確認することが大切です。
レバレッジ取引手数料
現在では、仮想通貨を対象にした『FX取引」など、証拠金(預け入れる資金)を担保に行う積極的な投資スタイルも増えてきています。
仮想通貨のFXは、証拠金の数倍以上の金額を動かせる『レバレッジ取引』がメリットですが、その仕組みを利用するためには、一定の取引手数料(建玉の保管費用やスワップポイントなど)がかかります。
レバレッジ取引にかかる手数料は、日や週をまたいで清算されることが多いので、やや長めに仮想通貨を保持する場合はその点に注意が必要です。
見えない手数料スプレッドに注意
仮想通貨取引所では、いくつもの手数料を無料と設定している会社が多くなっていますが、その代わりにスプレッドにより収益を得ています。
スプレッドとは
仮想通貨取引所(あるいは一般の金融機関)は、日本円と他の通貨の取引を行う際には、売値(ASK※1)を高く、買値(BID※2)を安く設定します。
この価格差が『スプレッド』と呼ばれるもので、利用者はひとつの取引を決済するごとに、この価格差をコスト(手数料)として支払う仕組みとなっています。
※1 ASK:トレーダー側にとっては買値となります
※2 BID:トレーダー側にとっては売値となります
手数料無料に騙されない
スプレッドは通貨売買の際に発生する純粋な価格差であり、基本的にすべての取引所が設定しています。
各取引所は、さまざまな取引についての手数料を無料としてアピールしていますが、現実的な利益の大きな部分は、このスプレッドから得ています。
スプレッドは利用者の損益に関係なく必ずかかり、大口の取引を行う場合は通貨数に比例して金額が大きくなります。
効率よく仮想通貨投資を行うためにも、各社の手数料体系を比べる際には、手数料無料という文言だけでなく、スプレッド幅の確認が必要です。
日本と海外の手数料の比較
仮想通貨は国境を越えて移動することが容易であるという点は、大きなメリットのひとつです。したがって取引所に関しても、海外の会社を利用することが充分考えられます。国内と海外の取引所では、手数料にどのような違いがあるでしょうか。
海外のほうが安い
国内の仮想通貨取引所は、依然としてビットコインを取引の中心にした事業が主流だといえます。他の通貨を売買するときは、高めの手数料を設定しているケースも少なくありません。
海外取引所の場合は、(仮想通貨同士の取引であるなら)100を超える通貨の売買が可能な業者もあり、手数料に関しては扱う通貨ペアに関係なく、一律0.1~0.3%程度に設定されているのが主流です。
したがって、あまりメジャーでない仮想通貨を取引する場合は、海外の取引所のほうが手数料の面では有利といえます。
日本の場合アルトコインは販売所で売買
多くの国内取引所は、アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)は、販売所でのみ取り扱っています。
つまり、メジャーでない仮想通貨を国内で取引する場合は、比較的広めに設定された(販売所向けの)スプレッドを支払うこととなり、特に頻繁に売買を行う場合は、ロスが大きくなる可能性があります。
日本のおすすめ取引所
ここでは、手数料の面を考慮し、おすすめの国内取引所を2社を紹介します。
Zaif
テックビューロ株式会社が運営する『Zaif』は、いくつかのユニークなサービスを提供している仮想通貨取引所です。
売買手数料が驚きのマイナス
Zaifでは、取引が成立するたびに手数料を取られるのではなく受け取ることができ、そこからある程度の収益が得られます。
現在(2018年2月)は、取引所の板(※)にトレーダーが所望の価格をオファーしての取引(maker)では、その手数料は−0.05%に設定されています。また、すでに提示されている価格に応じる取引(taker)では−0.01%です。
※板:取引所において、売り手と買い手が提示した価格と数量を一覧のように表示することで、トレーダーが相場の状況を把握できるようにしたものです。
Zaifにしかない銘柄がある
他の取引所ではあまり扱っていないトークン(※)が取引できるということも、Zaifの魅力のひとつです。そのような銘柄の代表格が、Zaifが発行するトークンである『ZAIF』です。
また、他のユニークな銘柄としては、ゲーム内で使用される通貨の『BitCrystals』や、株式会社フィスコ発行のトークン『FSCC』、さらには『Counterparty』のトークンなども扱っています。
また、Zaifは仮想通貨『NEM』に力を入れている取引所であり、makerでの取引手数料は0%に設定されています。
※トークン:仮想通貨の分野では、ブロックチェーン技術を使用して発行する証券のようなものを意味し、スタートアップ企業などが資金集めのため利用します。
仮想通貨の積み立てができる
一般的な資産運用において、金などの商品や投資信託を毎月の積立で継続的に購入するように、仮想通貨に対して毎月定額の積立が行えることも、Zaifにおける大きな特徴のひとつです。
仮想通貨は値動きがあり、大きな利益を期待できると同時に、損失を被る可能性も大きくなります。無理のない一定額を月に一度だけ積み立てることで、ドルコスト平均法(※)により、資産をより安定的に運用することが可能です。
※ドルコスト平均法:一定期間に一度固定した金額を投資することで、相場価格が高いときには数量を少なく、逆に安いときに多く購入することにより、結果として資産の単価を平均化し安定的な運用を実現する投資手法です。
GMOコイン
IT企業であるGMOインターネット株式会社のグループ会社である、GMOコイン株式会社が運営するのが、『GMOコイン』です。厳密にいえば、取引所ではなく販売所の形態を取っています。
そのため、板を通した売買取引において、大口の注文が部分約定する場合などに、時間差によりレートが不利になる(※)ということは発生しません。GMOコインが提示した価格で、確実に売買を行えることがメリットです。
※部分約定の場合、取引がすべて成立するまで時間がかかるため、完了時点ではレートが不利な方向にずれてしまうことがあります。
ほぼ全ての手数料が無料
『GMOコイン』は複数の銀行からの日本円による即時入金、および日本円の出金に関する手数料が無料に設定されています。また、ビットコインの預入には、マイナー(※)への手数料のみが必要となるものの、送付に関する手数料は無料としています。
※マイナー:仮想通貨の採掘者のことです。採掘した通貨の移動などから得る手数料を収益にしています。
レバレッジをかけたい人向け
レバレッジ取引は、FXや先物取引などで多く使われる投資手法ですが、『GMOコイン』では、仮想通貨の販売所における取引にも、最大5倍のレバレッジを利用できます。これにより、一般の現物売買より積極的な仮想通貨投資を行うことが可能です。
日本語対応の海外のおすすめ取引所
海外の仮想通貨取引所には、国内のものと異なる特色を持つ会社があります。そして最近では、日本語に対応している取引所も登場しています。ここでは、その中からおすすめの取引所を紹介します。
Kraken
『Kraken』は日本の市場に本格参入している海外取引所で、日本円での売買にも対応しています。加えて、証拠金を担保に5倍までのレバレッジ取引を行えるサービスも提供しています。
現在のところ取扱銘柄は17種類ですが、その運営方針は一定の評価を受けている企業のひとつとなっています。なお、ホームページは日本語が表示できるため、英語が苦手な人でも安心して使用できます。
Kraken | ビットコイン取引所 - プロフェッショナルな投資家のためのビットコイン取引所
取引量に応じて手数料変動
Krakenでの取引手数料は、直近30日間の取引量により割引される方式を取っています。現状では、手数料の下限はmaker取引で0.0%(取引量が10,000,000超の場合)であり、最大の額でも0.36%の範囲に設定されています。
利用者は自身が払う手数料と、次の割引率に移行した際の手数料をアカウント画面で随時確認が可能です。
セキュリティ対策がしっかり
Krakenのもうひとつの特徴として、『認証レベル』と名付けられた独自のセキュリティ対策があります。これは、ユーザーの個人情報登録状況により、全5段階に分けられた権限を与えるというものです。
権限が最も低くサイト閲覧のみが許される認証レベル0から、登録情報の充実度によって、仮想通貨のみの取引や法定通貨を含めた取引が可能なレベルへと、段階的に利用範囲が広げられる方式となっています。
そういった情報を含む社内のデータは、可能な限り暗号化され必ずバックアップが取られています。各データは、目的ごとに別々のネットワークに接続されるよう設計されており、社員であっても別部署のデータにアクセスすることは不可能な仕組みです。
また、ログインには2段階認証が行われると共に、krakenから送られるメールも暗号化することで、安全かつ確実なコミュニケーションが取れるよう対策が取られています。
Kraken | ビットコイン取引所 - セキュリティポリシー
まとめ
仮想通貨取引所の取引手数料には、業者によりさまざまな設定があります。また一般的には、通貨の販売所に比べて取引所のほうが低い手数料となっています。
取引手数料が無料とうたっている場合でも、通貨の売買価格にはスプレッドと呼ばれる差が設定されており、実質的に手数料がかかっていることには注意が必要です。
高い頻度で繰り返し売買を行う投資スタイルを取る場合は、スプレッドの影響が大きくなるので事前に確認することが大切です。さらに、レバレッジ取引にも手数料が発生することも認識しておきましょう。
仮想通貨間での取引を想定した場合、傾向としては海外の取引所が国内より低めの手数料を設けているといえます。また、知名度の低いアルトコインであれば国内取引所では売買できず、販売所のみの取り扱いになることが多いです。
海外で開業した取引所も徐々に日本市場へ参入する動きもあるので、取引所選びの際には選択肢のひとつになり得るでしょう。