そもそも決算公告とは
新聞などでたまに目にする決算公告という言葉ですが、具体的に内容を理解している人は少ないかもしれません。決算公告とはどういうものなのでしょうか。
決算を公にすること
まず、公告とは公に対して会社が情報開示をすることを指しますが、株式会社の形態を取っている会社は一定の公告の義務があります。
これは、株式会社が株主や取引先など多数の関係者によって成り立っていることから、会社の決算を公開させることで、企業の透明性を確保するためです。
しかし、日本の現状ではしっかりした決算公告を行っているのは、すべての株式会社の中で数%しかありません。
会社法で株式会社に義務化
この決算公告の義務は会社法第440条、第939条等に記されています。さらに、罰則規定もあり、公告を行わなかった場合及び、不正の公告を行った際は、100万円以下の過料に処されます。(会社法976条第1項)
もっとも、この決算公告が義務であり罰則規定が設けられていることは、一般的に知られていません。特に、中小企業の経営者の中では『決算公告は一部の大企業がするもの』という認識が広がっています。
公告しなければいけない内容
会社法を根拠法とした法定公告は以下の内容になります。
・合併に関する公告
・会社分割に関する公告
・組織変更に関する公告
・資本金及び準備金減少に関する公告
・解散公告
・基準日に関する公告
・定款変更等通知公告
・組織再編当通知公告
・株券等提出公告
・計算書類の公告(決算公告)
・会社法のその他の公告
出典:決算公告・官報公告・法定公告掲載 | 主な法定公告 - 政府刊行物サービスステーション 株式会社かんぽう
決算公告の方法
決算公告には主に3つの公告方法があります。この3つのうちどれかを定款に規定していない場合、自動的に官報による公告となってしまうため注意が必要です。
官報公告
官報とは国が毎日発行している国の機関紙で、政府や省庁が決定した法律や政令、条約、会社法による決定事項が記載されています。この官報の中に決算公告を掲載する方法を官報公告といいます。
決算公告をする必要がない合同会社は、この官報公告による方法が一般的です。官報公告をする際の費用は、サイズによって異なります。
新聞公告
新聞広告とは、日本経済新聞などの日刊新聞に決算を公告する方法です。上場企業や一部の大企業が多くの関係者に決算を公開する場合などに利用します。より多くの人に決算を見てもらえる代わりに、公告代金は非常に高額になります。
日刊新聞紙に公告する場合、サイズと紙面にもよりますが、およそ50万円の公告費がかかります。
電子公告
一般的な株式会社が一番多く取る公告方法がこの電子公告です。これは、自社のホームページや、インターネット上の公告サービスを利用して決算を公開する方法です。
ホームページを持っている会社であれば比較的簡単に、かつ費用も抑えて公告できるので、多くの株式会社の形態をとる企業がこの電子公告を利用しています。
この電子公告による場合、以下の3点が必要となります。
- ネット上で5年以上の掲載
- 決算書類の全文を掲載(貸借対照表や損益計算書の細かな科目も含む)
- 法務局へ公告するURLの登記
また、インターネット上の公告は、改ざんが容易にできてしまうことから、信頼性を保つために調査会社の利用が必要になります。この場合、およそ10万円前後の費用がかかります。
決算公告のメリット
決算公告をするには費用がかかりますが、会社にとってのメリットもあります。
自発的公告で取引先の信頼獲得
会社法による罰則規定があるから公告する、という消極的な態度ではなく、自発的に会社の決算を公告する企業姿勢が望ましいことは、言うまでもありません。
決算の開示は、取引先や関係者に対して会社の透明性を明らかにするだけでなく、会社の信用を公的に表明できる場でもあります。
健全な経営を行っていることを対外的に表明し、取引先や関係者に対して信頼を勝ち取るためにも決算公告は必要な手段となります。
罰則について
決算公告は会社法によって定められ、守らない場合は罰則規定があります。
公告しないのは法令違反
会社法第440条第1項、第2項、第3項において株式会社は『定時株主総会の承認後、遅滞なく貸借対照表、又はその要旨を公告しなければならない』と規定されています。
さらに、罰則規定として会社法第976条第2号は、『公告、もしくは通知することを怠ったとき、又は不正の公告、もしくは通知をしたときは100万円以下の過料に処する』と定めています。
つまり、決算公告を決められた時期に適切な方法で行わないのは法律違反であり、場合によっては、罰則規定の適用もあるということになります。
まとめ
株式会社を設立するのであれば、決算公告は会社法の義務であり必須の事項です。必要な内容を理解し、確実に公告を行って法律を守ることで、取引先の信頼を得るように心掛けましょう。