そもそもNISAって何?
『NISA』は、投資信託や株を運用して得た分配金および配当金・譲渡益が、一定期間非課税となる制度です。まずは、NISAの基本事項を解説します。
少額投資が非課税になる制度
投資信託や株を運用した場合、分配金や配当金・譲渡益には、通常20.315%(※)の税金が課されます。この税金が非課税となる制度が、NISAです。
NISAを利用するには、NISA口座を開設しなければなりません。NISA口座には、以下の3種類があります。
- 一般NISA
- つみたてNISA
- ジュニアNISA
投資信託や株の売買をしたい人は『一般NISA』を選んでください。投資信託の積み立てをしたい人には『つみたてNISA』がおすすめです。未成年者が口座を開設する場合は『ジュニアNISA』を利用しましょう。
(※分配金および譲渡益にかかる税率は通常20%ですが、2037年までは復興特別所得税がかかるため20.315%です)
いくらまで非課税にできるの?
NISAでは、非課税となる金額に上限があります。口座ごとの非課税投資枠は、下表のとおりです。
項目 | 一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA |
年間非課税投資枠(万円) | 120 | 40 | 80 |
非課税投資枠の総額(万円) | 600 | 800 | 400 |
非課税となるのは、新規投資額に限ります。NISA口座で保有している運用資産を売却しても、非課税投資枠は復活しません。
また、年間の非課税投資枠が残ったとしても、翌年以降への持ち越しができない点には、注意しましょう。
非課税期間は何年?
NISAは、口座により非課税となる期間が決まっています。
- 一般NISA:最長5年
- つみたてNISA:最長20年
- ジュニアNISA:最長5年
ロールオーバーが可能
一般NISAおよびジュニアNISAでの非課税期間の終了後は、ロールオーバーすることで翌年の非課税投資枠に移すことができます。
仮に、非課税期間終了時の資産の時価が、年間非課税投資枠を超えていたとしても、全額ロールオーバーが可能です。その場合、非課税投資枠を使い切ってしまうため、翌年の新規投資はできません。
なお、ロールオーバーをするには、事前の手続きが必要です。手続きを行わなかった場合、課税口座(特定口座もしくは一般口座)に自動的に移されるため注意しましょう。
NISAのおすすめの使い方
NISAを利用するメリットは、コストとなる税金を抑え効率がよい運用を目指せる点です。ここでは、NISAを活用する方法を見ていきましょう。
長期投資におすすめ
NISAでの運用は、長期投資に適しているとされます。長期投資におすすめな理由は以下の点です。
- ロールオーバーすれば、最長10年間非課税となる
- 非課税投資枠に上限がある
先述のとおり、非課税投資枠は売却により復活しません。短期で売買を繰り返す人は、すぐに非課税投資枠を使いきってしまうでしょう。
よって、売買の回数を減らし長期投資を行うことで、非課税投資枠をしっかり活用できると考えられます。
投資初心者には投資信託がおすすめ
NISAの投資対象は、株と投資信託です。株および投資信託は、以下の特徴があります。
- 株:企業が資金を調達するために発行する証書
- 投資信託:多くの投資家から資金を集めて運用会社が運用し、利益を投資家に還元する金融商品
株と投資信託の違いは、下表のとおりです。
株 | 投資信託 | |
最低購入金額 | 10万円程度 | 100円から |
運用する人 | 投資家 | 運用会社 |
値動き | 大きい | 比較的小さい |
投資信託は、運用会社が複数の銘柄に分散投資してくれるため、初心者でも始めやすい金融商品です。少額ずつ投資をしながら、投資の勉強をしてもよいでしょう。
株は値動きが大きいため、値上がりを狙いながら配当金や株主優待を楽しみたい人には、株がおすすめです。
NISA口座の特徴
NISA口座の開設には、いくつかの決まりがあります。
口座数は1人1つだけ
決まりの1つめは、保有できる口座数が1人1口座のみということです。いくつもの金融機関で、複数のNISA口座を保有することはできません。
また、一般NISAおよびつみたてNISA、ジュニアNISAの併用も不可です。投資の目的や運用方針をよく考え、自分にあった口座を開設しましょう。
他の証券会社への口座変更は年に1度
複数の金融機関で同時に口座は保有できませんが、1年に1回に限り金融機関の変更は可能です。変更を希望する人は、変更したい年の前年の10月1日から変更する年の9月30日までに、変更手続きをしましょう。
まず、変更前の金融機関に『金融商品取引業者等変更届出書』を提出し、『非課税管理勘定廃止通知書』の交付を受けてください。次に、変更先に『非課税口座開設届出書』と先に交付してもらった『非課税管理勘定廃止通知書』を提出します。
なお、口座変更したい年の1月1日以降に変更前のNISA口座で金融商品の売買が行われた場合、その年の金融機関の変更はできません。
NISA口座にデメリットはないの?
ここでは、NISA口座で運用する際の注意点を解説します。
特定口座との損益通算ができない
NISA口座での運用は、税金がかかりません。よって、『損益通算』の対象外です。損益通算とは、一定期間の運用益と損失を相殺し、課税対象額を減らすことを言います。
例えば、特定口座Aで100万円の利益、特定口座Bで30万円の損失があったとします。この場合、損益通算をすると課税対象額は70万円(100-30万円)です。
一方、NISA口座は損益通算の対象となりません。仮に、特定口座で100万円の利益がありNISA口座で30万円の損失が出ていた場合でも、課税対象額は100万円のままです。
このように、NISA口座以外の課税口座で運用商品を保有している人は、運用状況によって税額が増えてしまう可能性があることを知っておきましょう。
損失は繰り越しできない
NISA口座では、譲渡損の繰り越しができません。一方、課税口座では、損益通算しきれなかった譲渡損を3年間繰り越せます。損失の繰り越しの例を、下表で見てみましょう。
項目(円) | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
繰越譲渡損失 | 0 | 50万 | 40万 (50万-10万) |
年間譲渡益 | 0 | 10万 | 60万 |
年間譲渡損 | 50万 | 0 | 0 |
課税対象額 | 0 | 0 | 20万 (60万-40万) |
例えば、50万円の譲渡損を繰り越した場合、2年目の10万円の譲渡益と損益通算できます。損益通算を行い残った40万円の損失は、3年目に繰り越すことで、3年目の譲渡益60万円との損益通算が可能です。
NISA口座では、このような損失の繰り越しができません。課税口座で投資をしている人は、運用状況をよく確認し、NISA口座の利用を検討しましょう。
NISA口座の作り方
NISAを利用するには、NISA口座を開設しなければなりません。ここからは、NISA口座の開設手順を詳しく解説します。
どこで口座が作れるの?
NISA口座は、以下の金融機関などで開設します。
- 銀行
- 証券会社
- 郵便局
- ネット銀行およびネット証券(※)
(※ネット銀行やネット証券は、店舗や窓口を持たずインターネットを通じた取引を行う金融機関です)
口座開設の手順と必要書類
NISA口座の開設には、以下の手順が必要です。
- 取引する金融機関の総合取引口座の開設
- NISA口座の開設
- 税務署への申請および確認
口座開設には、下表のマイナンバー書類および本人確認書類を用意しましょう。
マイナンバー書類の種類 | 本人確認書類 | |
ケース1 | マイナンバーカード | 不要 |
ケース2 | マイナンバー通知カード | 顔写真付きの書類1点もしくは顔写真なしの書類2点(※) |
ケース3 | マイナンバーが記載されている住民票の写しなど | 運転免許証やパスポート・健康保険証・印鑑登録証明書など1点 |
必要書類の組み合わせは金融機関により異なるため、あらかじめ確認しておいてください。
(※顔写真付きの書類は、運転免許証やパスポートなどです。顔写真なしの書類には、各種健康保険証や年金手帳・住民票の写しなどがあります)
個人番号を提出いただく場合の確認書類について|各種お手続き(お客さまサポート)|お客さまサポート |株のことならネット証券会社【カブドットコム】
口座開設には時間がかかる
NISAは非課税制度のため、開設にあたり税務署の確認を受けなければなりません。よって、開設には2~3週間かかります。なお、税務署への申請は金融機関が行うため、投資家が手続きをする必要はありません。
絶対に複数の申し込みをしない
先述のとおり、NISA口座は1人1口座しか開設できません。複数の金融機関でNISA口座開設の申し込みをした場合には、以下のことが起こります。
- どの金融機関で開設されるか分からなくなる
- 第1希望でない金融機関で開設される可能性がある
- 口座の開設が大幅に遅れる
複数の金融機関に開設の申し込みをしてしまったときには、もっとも取引を希望する金融機関を残し、速やかに口座開設申し込みを取り消すことが重要です。
NISA口座の選び方
NISA口座を開設する金融機関を選ぶには、どのようなポイントを比較すればよいのでしょうか。
売買手数料で選ぶ
投資信託や株を売買するには、売買手数料が必要です。金融機関によっては、NISA口座での売買手数料がお得になるサービスを行っています。サービスの1例は以下のとおりです。
金融機関名 | 詳細 |
フィデリティ証券 | 投資信託の購入手数料が無料(一括、積み立て問わず) |
松井証券 | ・投資信託の購入手数料を、全額ポイント還元 ・株の売買手数料が無料 |
イオン銀行 | 投資信託の購入手数料を、全額WAON(ワオン※)ポイントで還元 |
投資において手数料は、コストとされます。コストを抑えて効率のよい運用を目指せるよう、自分にあった手数料サービスがある金融機関を選びましょう。
(※WAONとは、イオンが提供する電子マネーです。貯まったポイントは1ポイント1円として、加盟店で利用できます)
取扱商品で選ぶ
金融機関によって、取り扱う商品の種類が異なります。金融機関ごとに取引できる商品の種類は、下表のとおりです。
銀行 | 証券会社 | ゆうちょ銀行 | |
取扱商品 | 投資信託 | ・投資信託 ・株 |
投資信託 |
また、取り扱う商品の数にも差があります。1例を下表にまとめました。
三井住友銀行 | 大和証券 | カブドットコム証券 | |
投資信託取扱本数 (19年1月14日現在) |
197 | 543 | 1085 |
NISA口座は1人1口座しか保有できません。また、金融機関の変更には、保有資産の移管ができないなどの制限があります。
NISA口座でどのような商品に投資したいのかをよく検討したうえで、希望する商品の取り扱いがある金融機関を選びましょう。
ファンド一覧(基準価額・分配金実績) | 投資信託 | 大和証券
ネット対応の有無で選ぶ
金融機関によっては、NISA口座の取引をネットで行えます。ネットで手続きを行うメリット・デメリットは、下表のとおりです。
メリット | デメリット |
・時間や場所を選ばず、取引ができる ・手数料が安くなる |
・手続きや運用の相談がしづらい |
ネットでの手続きは、パソコンやスマートフォン、タブレットと、インターネット環境があればいつでもできます。窓口の営業時間中に店舗を訪れるのが難しい人や引越しが多い人などは、ネットでの取引が充実している金融機関がおすすめです。
NISA口座におすすめの証券会社
最後に、NISA口座におすすめの証券会社を3つ紹介します。なお、ここで紹介する取扱本数は、すべて19年1月14日現在です。
海外取引も手数料無料のマネックス証券
マネックス証券の基本事項は、下表のとおりです。
項目 | 詳細 |
手数料 | ・国内株:売買手数料無料 ・中国株および米国株:買付手数料全額キャッシュバック ・投信つみたて:購入手数料全額キャッシュバック |
投資信託取扱本数 | 1175 |
マネックス証券では、海外株式の買付国内取引手数料が全額キャッシュバックされます。海外資産への投資を検討している人は、選択肢に加えるとよいでしょう。
マネックス証券では、パソコンやスマートフォン・タブレット向けのアプリが充実しており、ネットでの市場のチェックや取引も簡単にできます。
サポートダイヤルでの電話相談も受け付けているため、ネットでの手続きに不安がある人でも、安心して取引ができる点も魅力の1つです。
楽天ポイントが貯まる楽天証券
楽天証券の基本事項は、下表のとおりです。
項目 | 詳細 |
手数料 | ・国内株:売買手数料無料 ・海外ETF(イーティーエフ※):買付手数料全額キャッシュバック |
投資信託取扱本数 | 2587 |
ネット証券である楽天証券は、取引がネット上で完結でき、手数料が安い点が特徴と言えます。100円から投資できる投資信託も多く扱っているため、少額ずつ色々なファンドに投資することも可能です。
また、楽天証券では、取引に応じて楽天ポイントが貯まるサービスを行っています。貯まった楽天ポイントは、投資信託の購入だけでなく、楽天グループの他のサービスでも利用可能です。
(※ETFとは、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託のことになります)
楽天証券 | ネット証券(株・FX・投資信託・確定拠出年金・NISA)
口座開設数No1のSBI証券
SBI(エスビーアイ)証券の基本事項は、下表のとおりです。
項目 | 詳細 |
手数料 | ・国内株:売買手数料無料 ・海外ETF:買付手数料無料 ・つみたてNISA:売買手数料無料 |
投資信託取扱本数 | 2579 |
SBI証券もネット証券のため、ネット上で手続きが完結します。手数料が安く、100円から投資できるため、初心者でも始めやすい証券会社だと言えるでしょう。
SBI証券は、夜間取引ができるのもポイントです。通常売買が行われるのは9~15時ですが、SBI証券では、8時20分~16時(デイタイムセッション)および17~23時59分(ナイトタイムセッション)も売買できます。
日中に売買の時間が取れない人や、外国市場の動向を見て売買をしたい人は、SBI証券の夜間取引も選択肢の1つです。
まとめ
NISA口座を利用すれば、投資信託や株の運用で得た分配金および配当金・譲渡益にかかる税金を抑えた運用ができます。ただし、他の口座でも金融商品を保有している人は、損益通算ができなくなるため注意しましょう。
NISA口座は、1人1口座しか保有できません。サービスや取扱商品をきちんと比較検討し、自分にあった金融機関で口座を開設することが重要です。