住民税は年収いくらから払うのか
住民税は、日本で収入を得ている人が、居住する地域に対して納める税金です。ただし、年収が一定以下であれば、住民税が非課税になることがあります。
非課税の壁は年収100万円
住民税が非課税になる条件は、各自治体によって異なります。なぜなら、地方自治法に基づき、条例などを定めているからです。
多くの自治体では、非課税の壁として年収100万円という金額を設定しています。つまり、年収が100万円以下であれば住民税は非課税になり、納めなくてもよいということです。
たとえば、大阪市を例に挙げると、控除対象配偶者および扶養親族がいない場合、前年の合計所得額が35万円以下(給与所得者の場合、年収100万円以下である人が該当)であれば非課税としています。
この35万円という金額が、自治体によって多少異なることがあります。この金額が33万円であれば、住民税の壁は98万円ということです。
『給与所得者の場合、年収が100万円以下』というのは、給与所得控除として最低65万円が定められているからです。年収が100万円だった場合、100万円 - 65万円 = 35万円となり、この金額より少ない場合に非課税になるということです。
課税の根拠 - 東京税務協会
大阪市:個人市・府民税が課税されない方
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所得税との違い
所得税は住民税と違い、地方自治法や国税通則法などの法律を根拠に課税額が決められています(住民税は条例)。つまり、居住している地域に関係なく、全国一律の税率であるということです。
ただし、一律といっても所得額によって税率は異なり、7段階に分けられています。また、所得税と住民税とでは、給与所得控除額は最低65万円で同じ金額ですが、所得控除は控除額が異なるものがあります。
たとえば、住民税における基礎控除額は一律33万円ですが、所得税の場合の基礎控除額は一律38万円です。
よって、所得税の場合は、年収が 103万円以下(65万円+38万円)の場合に、課税所得(税率が課せられる最終的な所得)が0円となるので、非課税ということになります。
所得控除のあらまし|国税庁
パート収入はいくらまで税金がかからないか|国税庁
住民税の仕組み
住民税は、国(都道府県)が徴収する道府県民税と、地方自治体(市区町村)が徴収する市町村民税を合わせたものです。
道府県民税・市町村民税に、都や区の文字は含まれていません。しかし、地方税法第1条第2項により、準用規定(道府県税についての規定を都に、市町村税の規定を特別区に準用)が定められているので、都や区も含まれるということです。
道府県民税と市町村民税には、それぞれ均等割・所得割という税率があり、それらを合算したものが最終的な住民税額となります。
特別区民税・都民税(個人住民税)の概要・税額の計算方法|品川区
均等割とは
均等割とは、所得額に関係なく一律に課せられる割合のことです。2018年現在の標準税率(基本となる税率)は、道府県民税1,500円、市町村民税3,500円です。
この標準税率は、2013年度までは道府県民税が1,000円、市町村民税が3,000円でした。しかし、復興財源確保のために、2014年度から2023年度分までのあいだは、市町村民税・道府県民税ともに500円ずつ引き上げられています。
所得割とは
所得割は、納税者の所得額によって変わる割合のことです。納税する年の、前年1月1日から12月31日までの合計所得に対して道府県民税4%、市町村民税6%、合計10%の税率がかけられます。
この割合は、自治体によって超過課税が規定されていることがあります。兵庫県豊岡市では、都市計画税の廃止に伴い、2009年度から超過課税(市民税6.1%)を適用しています。
住民税の計算の流れ
住民税は、所得割と均等割をそれぞれ計算し、最後に合算して算出します。
- 住民税の納税額 = 所得割 + 均等割(5,000円前後)
均等割の標準税率は5,000円(道府県民税1,500円、市町村民税3,500円)ですが、各自治体によって異なることがあるので、公式ホームページを確認しておきましょう。
住民税は、その年の1月1日に在籍していた地域に対して納めます。たとえば、1月1日の時点で大阪に住んでおり、4月に東京に引っ越しした場合でも、その年は大阪に対して住民税を納めます。
現時点で住んでいる場所の標準税率とは異なる可能性があるので、間違えないように注意しましょう。
所得割の計算方法は少し複雑なので、以下で詳しく解説します。
会社員なら前年の年収が基準
所得割の計算は、課税所得がいくらになるかということがポイントです。課税所得とは、経費や控除を差し引いた最終的な所得額です。
課税所得は、会社員であれば前年の収入を基準として、計算していくことになります。たとえば、2018年の所得は、前年2017年1月1日から12月31日までの収入を基準とします。
所得控除で課税所得を求める
課税所得とは、給与所得や事業所得などから、各種の所得控除を差し引いて計算します。なお、給与所得は、給与収入から給与所得控除(最低65万円)を差し引きすることで算出できます。
わかりやすくまとめると、以下のようになります。
- 事業所得=事業収入-経費
- 給与所得=給与収入-給与所得控除
- 課税所得=各所得(給与所得や事業所得)-所得控除
副業をしていない会社員であれば、基本的には給与所得だけが前年の総所得となります。つまり、給与所得から所得控除を差し引いた課税所得が、所得割の基準となります。
誰でも受けられる基礎控除
所得控除には医療費控除や配偶者控除など、14種類の控除が定められています。その中でも基礎控除は控除適用条件がなく、33万円の控除が誰でも受けられます。
扶養者がいる場合
16歳以上の生計を一にする親族のうち、合計所得が38万円以下の場合、扶養控除を受けられます。控除額は、扶養者の年齢によって異なります。
扶養控除の対象者 | 控除額 |
一般の控除対象扶養親族(16歳以上19歳未満・23歳以上70歳未満) | 33万円 |
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 45万円 |
老人扶養親族(70歳以上) | 38万円 |
老人扶養親族のうち、同居老親等 | 45万円 |
保険料も控除の対象
社会保険料や生命保険料、個人年金保険料などを支払っている場合、社会保険料控除や生命保険料控除が受けられます。それぞれの控除は、控除額や計算方法が異なります。社会保険料控除は、支払った保険料の全額が控除対象となります。
生命保険料控除の場合は、2011年12月31日より前に加入した保険契約(旧制度)か、2012年1月1日以降に加入した保険契約(新制度)かによって、控除額や限度額が異なります。
所得割を求めて均等割を足す
所得額から所得控除を差し引き、課税所得を算出できたら、所得割の計算をしましょう。所得割の計算方法は以下のとおりです。
- 所得割 = 課税所得 × 税率(10%)
たとえば、課税所得が100万円だった場合、100万円 × 10% = 10万円が所得割の金額です。
そして最後に、均等割の金額と合算すれば、住民税の税額が計算できます。所得割が10万円、均等割が5,000円だった場合、合計10万5,000円が納めるべき住民税となります。
所得割は調整控除が必要
2007年の三位一体改革により、所得税を減額し住民税を増額するという『税源移譲』が行われました。
基本的には、同じ割合だけ増減しているので差はないはずですが、住民税のほうが控除額が少ないことから、納税者の負担が増えてしまうという指摘がありました。
特に、基礎控除や配偶者控除などの人的控除に関して、所得税よりも住民税のほうが割合が低くなっています。
これを調整するために、2007年より定められたのが『調整控除』です。調整控除は、課税所得額が200万円以下か、200万円を超えるかで計算方法が変わります。
課税所得額が200円万以下の場合
- 所得税との人的控除の差の合計額
- 課税所得額
調整控除額=1または2のいずれか低いほうの金額×5%
課税所得額が200万円を超える場合
- 所得税との人的控除の差の合計額
- 課税所得額 - 200万円
調整控除額=(1 - 2)×5% (算出した金額が2,500円未満のときは2,500円)
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年収ごとに住民税の目安を計算してみると
それでは実際に、年収ごとに住民税の目安を計算してみましょう。以下の条件で統一して、一例を紹介します。
- 所得割の税率は10%
- 均等割は標準税率 = 5,000円
- 一般の控除対象扶養親族(18歳)は1人 = 33万円
- 所得は給与所得のみ
- 給与所得控除は平成29年分で計算
- 所得税との人的控除額の差は10万円(扶養控除5万円 + 基礎控除5万円)
平成29年分の給与所得控除は、以下のとおりです。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額 × 40% (65万円に満たない場合は65万円) |
180万円超 360万円以下 | 収入金額 × 30% + 18万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額 × 20% + 54万円 |
660万円超 1,000万円以下 | 収入金額 × 10% + 120万円 |
1,000万円超 | 220万円(上限) |
年収200万円の場合
年収200万円の場合の、住民税の計算は以下のとおりです。
給与所得 = 200万円 - 78万円(給与所得控除) = 122万円
課税所得 = 122万円 - 33万円(基礎控除) - 33万円(扶養控除) = 56万円
所得割 = 56万円 × 10% - 5,000円(調整控除) = 5万1,000円
住民税額 = 5万1,000円 + 5,000円(均等割) = 5万6,000円
年収300万円の場合
年収300万円の場合の、住民税の計算は以下のとおりです。
給与所得 = 300万円 - 108万円(給与所得控除) = 192万円
課税所得 = 192万円 - 33万円 - 33万円 = 126万円
所得割 = 126万円 × 10% - 5,000円(調整控除) = 12万1,000円
住民税額 = 12万1,000円 + 5,000円 = 12万6,000円
年収400万円の場合
年収400万円の場合の、住民税の計算は以下のとおりです。
給与所得 = 400万円 - 134万円(給与所得控除) = 266万円
課税所得 = 266万円 - 33万円 - 33万円 = 200万円
所得割 = 200万円 × 10% - 5,000円(調整控除) = 19万5,000円
住民税額 = 19万5,000円 + 5,000円 = 20万円
高収入になると住民税はどうなるのか
高収入になった場合、納付する住民税は高額になります。調整控除の計算も少し変わってくるので、一例を確認してみましょう。
年収500万円の場合
年収500万円の場合の、住民税の計算は以下のとおりです。
給与所得 = 500万円 - 154万円(給与所得控除) = 346万円
課税所得 = 346万円 - 33万円 - 33万円 = 280万円
調整控除は、『課税所得額が200万円を超える場合』にあたります。
調整控除額 =(10万円 - 80万円)× 5%= - 3万5000円
算出した調整控除額は2,500円未満なので、2,500円とします。
所得割 = 280万円 × 10% - 2,500円(調整控除) = 27万7,500円
住民税額 = 27万7,500円 + 5,000円 = 28万2,500円
年収600万円の場合
年収600万円の場合の、住民税の計算は以下のとおりです。
給与所得 = 600万円 - 174万円(給与所得控除) = 426万円
課税所得 = 426万円 - 33万円 - 33万円 = 360万円
調整控除は、『課税所得額が200万円を超える場合』にあたります。
調整控除額 =(10万円 - 160万円)× 5%= - 7万5000円
算出した調整控除額は2,500円未満なので、2,500円とします。
所得割 = 360万円 × 10% - 2,500円(調整控除) = 35万7,500円
住民税額 = 35万7,500円 + 5,000円 = 36万2,500円
よって、所得税額は430万1,000円となります。
住んでいる地域によって住民税は違うの?
標準税率は全国一律で定められていますが、各自治体特有の問題を解決するために、超過課税を行う市区町村も存在します。
都道府県ごと市町村ごとに異なる
超過課税を行っているかどうかは、都道府県、また市区町村ごとに異なります。たとえば岩手県では、『いわての森林づくり県民税』として 1,000円を、超過課税として定めています。
つまり、岩手県の県民税は1,500円(標準税率)+1,000円(いわての森林づくり県民税)=2,500円となります。
岩手県 - 個人住民税均等割額の引上げについて(平成26年度から)
横浜市はなぜ高いのか
神奈川県横浜市は、住民税が高いことで有名です。神奈川県は『水源環境保全税』として、均等割300円、所得割0.025%を超過課税として定めています。
また、横浜市も『横浜みどり税』として、900円の超過課税を定めています。つまり、横浜市の均等割は1800円 + 4400円 = 6,200円、所得割は2.025%+ 8% = 10.025%となっています。
住民税が安いのは名古屋市
名古屋市は住民税が安くなっています。市民税減税条例として、均等割り -200円、所得割が -0.3%で調整されます。
ただし、愛知県では『あいち森と緑づくり税』として、500円の超過課税を行っています。
名古屋市:個人の市民税・県民税、所得税(暮らしの情報)
「あいち森と緑づくり税」はこちらへ - 愛知県
住民税を払わない年収を逆算してみよう
年収が低い場合、条件によっては住民税が非課税になることもあります。自治体によって多少金額は異なりますが、以下の条件で非課税になります。
- 均等割:所得額 ≦ 35万円 × 世帯人数 + 21万円(※)
- 所得割:所得額 ≦ 35万円 × 世帯人数 + 32万円(※)
(※21万円、32万円の金額においては控除対象配偶者、または扶養親族がいる場合にのみ加算します)
会社員で扶養家族がいる場合
たとえば、家族構成が会社員(自分)、専業主婦、子ども1人(扶養家族)の3人世帯の場合、前年の年収が205万円以下であれば、住民税が非課税となります。なお、計算式は以下のとおりです。
35万円 × 3人(世帯人数) + 21万円 = 126万円
つまり、126万円以下の所得額であれば非課税になります。
非課税限度額は級地区分で異なる
非課税限度額は、級地区分によって異なります。級地区分とは、生活保護による扶助を行なう際に反映される地域区分のことで、基本的には地域格差を小さくする目的で制定されています。
均等割の非課税限度額は、級地区分によって以下のように条例で定められています。
- 1級地:35万円
- 2級地:35万円 × 0.9 = 32万円
- 3級地:35万円 × 0.8 = 28万円
第26回社会保障審議会生活保護基準部会資料 資料2 pdf | 厚生労働省
まとめ
住民税の均等割は基本的に一律なので、超過課税があっても大きな金額差にはなりません。しかし、所得割は年収や家族構成、控除内容によって大きな差が発生します。
まずは自分の住民税がいくらになるのか、前年の年収をもとに計算してみてはいかがでしょうか。
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