制度を活用すれば結婚後の税金が安くなる?
結婚をすると税金が安くなるということは、結婚を考えた際に多くの方が耳にする情報です。けれども実際には、結婚をすれば必ず安くなるというわけではありません。
税金が安くなるには条件があります。この条件を把握せずにいると、本来減税できる部分で損をしてしまいます。損をしないためにも、結婚に関わる税金制度を理解し活用していくことが大切です。
知っておきたい税金制度
それでは、結婚と関わる税金制度を確認していきます。
配偶者控除
一定の条件に当てはまる妻(配偶者)がいる場合に、夫(世帯主)が所得控除を受けられる制度を配偶者控除と言います。
簡単にいうと妻が一定の条件に当てはまれば、夫の税金が安くなる制度です。その条件は以下の通りです。
(※所得控除とは、所得税から特定の金額をさし引くこと)
一定の条件とは
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ここで特に重要になるのは、給与収入が103万円以下という点です。妻が年間で103万円以上を稼ぐと、夫は配偶者控除を受けることができなくなるのです。
このような仕組みは「103万の壁」という言葉でよく表されています。しかしこの壁は、近々なくなる方向にあります。
103万の壁がなくなる?
2016年12月に発表された税制改正により、2018年1月から配偶者控除の条件である年間収入の上限が103万円から150万円に引き上げられることが明らかになりました。
そのため、「103万の壁」がなくなることが伺えます。では新たに「150万の壁」ができるのかといえば、現状そうはならない可能性が高い状況です。
つまり、150万円が壁だと思い働いていると思わぬ落とし穴にはまることになる可能性があります。その注意点については130万の壁のを説明する際に紹介いたします。
配偶者特別控除
妻の年間収入が103万円を超えて配偶者控除を受けられない場合、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除を受けることができます。この制度が配偶者特別控除です。
つまり、妻の年間の収入が103万円を超えたとしても、ある程度夫の税金が安くなる可能性があるということです。しかし、こちらの制度にも一定の条件があります。
制度を受けるための条件
(1) 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であること。
(2) 配偶者が、次の五つの要件全てに当てはまること。
イ 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。
ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ニ 他の人の扶養親族となっていないこと。
ホ 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。
ここで注目したい点は、夫の合計所得が1000万円(給与収入1220万円)以下、妻の合計所得が38万円〜76万円未満(給与収入103万円〜141万円)という2点です。
配偶者控除では、夫の所得に関係なく控除を受けることができましたが、配偶者特別控除では夫の年間の収入が1220万円を超えると控除の対象から外れます。
従って、夫の年間の収入が1220万円を超えた場合に妻が「103万の壁」を超えてしまうと、配偶者控除と配偶者特別控除のどちらも受けることができなくなります。
ここは気をつけておきたい点です。また、控除額は妻の年間収入によって以下のように変わっていきます。
控除額
配偶者の合計所得金額 | 配偶者特別控除の控除額 |
---|---|
38万円を超え40万円未満 | 38万円 |
40万円以上45万円未満 | 36万円 |
45万円以上50万円未満 | 31万円 |
50万円以上55万円未満 | 26万円 |
55万円以上60万円未満 | 21万円 |
60万円以上65万円未満 | 16万円 |
65万円以上70万円未満 | 11万円 |
70万円以上75万円未満 | 6万円 |
75万円以上76万円未満 | 3万円 |
76万円以上 | 0円 |
税制改正後は?
前述で、2018年1月からは配偶者控除の条件である年間収入の上限が引き上げられるとお伝えしましたが、それに伴い配偶者特別控除の条件も変わります。
具体的な額としては、年間収入201万円までが配偶者特別控除の対象となります。しっかりと把握し、来年以降活かしていきたいところです。
メリットの裏に潜む2つの壁と対策
このような制度を把握し活用すれば、結婚後長期にわたり税金を安く納めることができます。しかし、上手く制度を活用するためにはさらに2点知っておかなければならない問題があります。
106万の壁
2016年10月より、「106万の壁」というものができました。これは一定の条件に当てはまる場合、勤め先で健康保険と厚生年金に加入しなければならないというものです。その条件は以下の通りです。
1. 労働時間が週20時間以上2. 1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
3. 勤務期間が1年以上見込み
4. 勤務先が従業員501人以上の企業
5. 学生は対象外
これらの条件全てに当てはまる場合は、勤め先で被保険者となるため、夫の扶養に入れず配偶者控除や配偶者特別控除の対象外となります。
106万の壁を回避する方法は?
万が一全ての条件を満たしていた場合でも、対応によってはこの問題を解決できる可能性があります。例えば現在、1つの会社で120万円稼いでいるとします。「106万の壁」の条件も全て満たしています。
その場合、勤め先を2カ所にし、それぞれで100万円・20万円と分けて稼ぐようにすればこの問題を回避することができます。
130万の壁
夫が会社員で社会保険に加入している場合には「130万の壁」も気にする必要があります。妻の年間収入が130万円以下の場合は社会保険上の扶養になり、健康保険と厚生年金は免除されます。
けれど、年間収入が130万円を超えると扶養から外れ、保険料を自分で払う必要があります。その負担額はおよそ20万円〜30万円と考えられています。
そのため、年間収入130万円を超える場合には160万円以上稼がなければ損をしてしまう可能性があるのです。
従って、2018年以降配偶者控除が150万円まで引き上げられたからと油断していると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。ぜひ気をつけてほしい問題です。
まとめ
結婚と関わる税金制度は仕組みが複雑になっており、実際どれだけ稼ぐことが一番良いのかは個人個人の置かれた状況により違うため判断が難しいものです。
しかし、各制度の知識を持てば自分に最適な働き方が見えてきます。税制改正により制限や上限が移り変わっていく傾向にある今だからこそ、各制度をしっかりと見極めていきたいところです。
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