法人税とは
法人税とは、会社などの法人が、その事業を通して得た所得の中から支払う税金であ り、広い意味での所得税の一種です。
上記の示す通り、法人税とは『会社の利益に課せられる税金』です。国に納める国税に当たる法人税のほかに、都道府県に納める『法人事業税』と市町村区と都道府県に納める『法人住民税』が企業には課されます。
税率の計算
- 利益−損金=所得金額
- 所得金額×法人税率=法人税額
上記の計算式が法人税額を算出するものです。1の式の『損金』とは、業務で必要な支出である経費が該当します。
2の式の法人税率は、資本金や所得の額によって変動します。以下の表を参考にしてください。
資本金 | 所得 | 税率 |
1億円以上 | 一律 | 23.4% |
資本金1億円未満の場合は以下となります。
所得 | 税率 |
800万円以下の部分 | 15% |
800万円超の部分 | 23.4% |
資本金1億円未満で所得が800万円を超えている企業は、『超過分のみが23.4%』となります。具体的には以下の計算例を参考にしてください。
- 資本金4,000万円で所得が2,000万円、平成28年4月1日以後の開始事業年度の場合
1,200万円(超過分)×23.4%(税率)=280万8,000円(税額)
800万円(残った所得)×15%(税率)=120万円(税額)
280万8,000円+120万円=400万8,000円(税額)
法人事業税
前述の通り法人事業税は、会社の拠点を置く都道府県に課せられる税金のことです。代表例として、東京都の課税システムを紹介します。
課税の基本は法人税と同じで『所得×税率』です。所得は法人税と同じく『利益−損金』ですが、税率は少し独特なので以下の表を参考にしてください。
所得 | 標準税率 | 超過税率 |
年400万円以下の所得 | 3.4% | 3.65% |
年400万円を超え800万円以下の所得 | 5.1% | 5.465% |
年800万円を超える所得 | 6.7% | 7,18% |
東京都は『超過税率』と『標準税率』の2種類の課税方式があり、資本金1億円超、あるいは所得の金額が2,500万円超の企業が超過税率で課されます。
東京都主税局<都税Q&A><法人事業税・法人都民税 Q&A>
法人住民税
法人住民税も地域によって異なりますが、今回も東京都を例とします。
法人住民税は、法人税の税額に『道府県民税』と『市町村民税』のそれぞれの税率をかけて算出する『法人税割』と、基本料金のようなものである『均等割』を合算したものになります。
会社が本社のみなのか、支店があるのかで計算方法も変わります。
以下の、東京都の道府県民税(3.2%)と市町村民税(9.7%)、均等割額(70,000円)での例題を参考にしてください。
- 本社(新宿区)のみで本社従業員数10人、法人税額100万円の場合
道府県民税=100万円(法人税額)×3.2%(税率)=32,000円
市町村民税=100万円(法人税額)×9.7%(税率)=97,000円
32,000円+97,000円=12万9,000円(法人税割)
12万9,000円(法人税割)+70,000円(均等割額)=19万9,000円(法人住民税額)
- 本社(新宿区)と支社(渋谷区)があり、本社従業員数6人(60%)、支社従業員数4人(40%)、法人税額100万円の場合
道府県民税=本社:100万円×60%×3.2%=19,200円
支社:100万円×40%×3.2%=12,800円
市町村民税=本社:100万円×60%×9.7%=58,200円
支社:100万円×40%×9.7%=38,800円
19,200円+12,800円+58,200円+38,800円=12万9,000円(法人税割)
12万9,000円(法人税割)+70,000円(本社の均等割額)+50,000円(支社の均等割額)
=24万9,000円(法人住民税額)
均等割は今回、全ての会社が23区内で資本金1,000万円以下を前提とした額にしました。資本金の額や拠点を置く市町村区によって均等割額は異なります。
東京都主税局<都税Q&A><法人事業税・法人都民税 Q&A>
役員報酬による節税
ここからは、具体的な節税方法をご紹介します。社長の報酬を『役員報酬』として、『損金』に計上するやり方です。
単純に役員報酬として計上した分だけ所得から引かれ、課税所得が少なくなるということです。
報酬額の決定の仕方
報酬額は自由に決められますが、株式会社の場合は株主総会(※)で承認を得る必要があります。そしてその議事録は、税務調査の際に必要となるので、必ず保管して置きましょう。
また、報酬も月々に決まった額を受け取る『定期同額給与』でなければならないことと、『開始事業年度から3カ月以内』に変更しなければ、損金に計上できないのでご注意ください。
(※株主総会とは、会社の株を保有する株主と経営陣が集い、経営方針など様々なことを話し合う会議体のことです)
所得税とのバランスに注意
役員報酬を増やせば、確実に法人税は減りますが、その代わり社長個人の『所得税』は増えます。
例えば、会社の利益が1,000万円で役員報酬として月々30万円受け取り、年間360万円を損金として計上したとします。
(1,000万円−360万円)×23.4(法人税率)=149万7,600円(税額)
上記のような計算となり、役員報酬なしの税額と比べると、およそ84万2,400円の節税となります。
しかし、その分社長の所得は84万2,400円分増えるので注意が必要です。
所得税は『累進課税』なので、所得が増えれば税額が大きくなります。以下の表を参考にしてください。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
特に『695万円超900万円以下』と『900万円超1,800万円以下』との間では、課税率が10%の開きとなります。役員報酬の増額で900万円超えの年収となる場合、個人の財政を圧迫する可能性があります。
減価償却による節税
建物や機械、パソコンなどのオフィス用品といった『年数によって資産価値や利用価値が減少するもの』を、価値の下がった分だけ損金に計上することが『減価償却』です。
計算方法
減価償却する物の種類によって『耐用年数』が法律で定められています。減価償却費は、その耐用年数を基に算出された『減価償却率』によって決まります。
計算方法は『定額法』と『定率法』の2種類があるので、順番に紹介します。
定額法
定額法は、毎年一定の金額を減価償却していく方法です。計算がシンプルで、計上しやすいのが特徴です。以下の計算例を参考にしてください
100万円で購入した車を減価償却する場合
100万円(取引価格)×0.100(減価償却率)=10万円
毎年10万円が償却できます。
定率法
定率法は、毎年一定の率で減価償却していく方法です。残金から毎年償却率をかける初年度に大きく償却できるのが強みです。ただし、定率法の場合は税務署に届け出る必要があります。
前章と同じ例だと以下のような計算になります。
(100万円-0円)×0.200(減価償却率)=20万円(初年度の減価償却費)
次年度は以下のような計算になります。
(100万円-20万円)×0.200(減価償却率)=16万円
減価償却率は『定額法』と『定率法』でそれぞれ違いますので注意が必要です。
小規模企業共済による節税
小規模企業共済とは、『自分で退職金を積み立てるような制度』です。最も節税において優れた点は、掛け金の全額が課税所得金額から控除されるという点です。
経営者自らの退職金を積み立てれば、所得が減り節税となります。また、運営も国が行なっているので信頼度も高いです。
利回りが良い
銀行の定期預金の金利は高くても0.2%程度です。一方、小規模企業共済の金利は1.0%と銀行に比べて高くなっています。例えば、月々10万円を20年間積み立てた場合、銀行と小規模企業共済の金額を比較した計算式は以下の通りです。
銀行の定期預金
10万円×12カ月×20年=2,400万円
2,400万円×0.2%(金利)=48,000円
小規模企業共済
2,400万円×1.0%(金利)=24万円
以上のように、大きく利息金が変わります。
加入の流れ
小規模企業共済の加入資格は、以下の条件を満たす方です。
1.建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員
2.商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
3.事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員や常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
4.常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
5.常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
6.上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
加入の際は以下のような必要書類を用意します。
- 中小機構の書類(契約申込書、預金口座振替申出書)
- 提示書類(確定申告書の控え、商業登記簿謄本)
- 現金(掛け金の先払い分)
1の書類は公式HPからダウンロードできます。上記の書類を用意したら、委託機関の窓口に直接持っていき、手続きを行います。
生命保険
法人向けの生命保険も節税として有効です。支払った保険料は一部が損金として計上できます。全額損金計上できるかどうかは保険商品によって異なるので、加入の際はよく確認しておきましょう。
そして、生命保険料は『期末直前でも導入可能』というのも強みです。期末になって予想以上に所得が多い場合は、生命保険加入をおすすめします。
課税繰り越し
生命保険は厳密に言えば、税金の支払いを繰越すものです。例えば、全額損金計上できる保険に年間500万円支払ったら、500万円は毎年損金となります。しかし、10年積み立てていざ解約した場合、戻ってきた5,000万円はそのまま所得として計上されます。
役員報酬や減価償却と違い、課税を先送りにするだけの生命保険による節税方法ですが、だからこそのメリットもありますので、以下の章で説明します。
柔軟性が高い
保険会社や保険商品にもよりますが、『掛けられる金額の自由度が高い』のが生命保険の強みです。前述の通り、期末直前でも間に合うため、『経営状況に合わせて柔軟に対応する』のに優れた手法です。
緊急時の予備資金
経営していく中で、緊急で現金が必要になるケースもあります。その場合、生命保険を解約すればすぐにまとまった金額が手元に戻ってきます。
つまり、『税金対策』と『緊急時の予備資金』両方の意味を持つのが生命保険であり、これは他の節税方法には無い独自のメリットです。
まとめ
税金対策は、外部機関を活用したり、社内の制度を変えたりと様々な方法があります。個人事業主や小規模なベンチャー企業なら『小規模企業共済』が、製造業など機材を多く購入する会社なら『減価償却』が有効です。
企業の形態によって、有効な税金対策は異なりますので、会社の税金対策にどの方法がふさわしいのか、吟味して選択しましょう。
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