相続税の控除について
相続税の控除は、遺産総額から差し引く控除と、相続税額から差し引く税額控除の2つに分けられます。また、税額控除には7種類の控除があります。
相続税の計算の流れ
①総遺産額→②課税価格合計額→③課税遺産総額→④相続税の総額→⑤各人の算出税額→⑥各人の納付税額という順番で計算します。
配偶者控除はこの流れの最後の⑤→⑥のところに関するものになっています。
配偶者控除の分類
相続税の配偶者控除は、税額控除の1種になります。そのため相続税の計算では、各相続人それぞれの税額を求めた後に、配偶者の税額から差し引かれます。
配偶者控除の基礎知識
ここでは、相続税の配偶者控除の基本と、控除を受けるために必要な書類をご紹介します。
配偶者控除の趣旨
配偶者控除の趣旨は以下の考え方に基づきます。
- 一方の財産であっても、それは夫婦で協力して築き上げた財産であり、それを相続するのに多額の税金をかけるのはおかしいため
- 相続する財産は、残された配偶者が今後の生活をする資産となるため
このような趣旨があるために、配偶者控除の金額は大きく設けられています。
また、配偶者とは、婚姻期間に関係なく、亡くなった時点で法律上の婚姻関係にある人になります。そのため内縁関係や事実婚は、控除を受けることができません。
控除額について
控除額は以下の金額の内、どちらか大きい金額までになります。
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額
つまり、最低でも1億6,000万円の控除が受けられます。さらに、その金額を超えても法定相続分までなら控除によって、配偶者の相続税額は0円になります。
また、相続人が配偶者のみの場合は、法定相続分が100%になるので、金額に関わらず税額は0円です。
控除の手続きに必要な書類
配偶者控除を受ける際に必要な添付書類は以下の通りです。また、被相続人とは遺産を残して亡くなった人のことを指します。
① 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
② 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
③ 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
④ 申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限内に分割ができない場合に提出してください。)
出典:相続税の申告のしかた(平成29年分用)|(参考)相続税の申告の際に提出していただく主な書類|国税庁
これらを添付した上で、配偶者の税額軽減額の計算書を記入した相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。また、申告書の様式は以下のサイトで確認できます。
この申告は、被相続人が亡くなったことを知った翌日から10カ月以内に行わなければいけません。
法定相続人と法定相続分について
ここでは先ほど出てきた法定相続分と、それを理解するのに欠かせない法定相続人についてご紹介します。
配偶者ありの場合
まず、法定相続人とは、民法で定められた相続財産を受けとれる権利を持つ人のことです。そして、配偶者は常に法定相続人になります。
それ以外の人は、以下の順位で法定相続人になることができます。
第1順位 死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。第2順位 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。第3順位 死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。
このように、上の順位がいない場合に限り、下の順位が相続できるようになります。つまり、違う順位の人は、同時に法定相続人にはなれません。
次に、配偶者と各順位の法定相続人ごとに、民法で定められた遺産を分ける割合である法定相続分が、以下のように定められています。
イ 配偶者と子供が相続人である場合
配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2ロ 配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3ハ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4
配偶者以外の法定相続人が複数の場合は、その人達で割り当てられた法定相続分を均等に分けることになります。
配偶者なしの場合
配偶者がいない場合は、前述した第1順位の人が全て相続します。その人もいなければ第2順位と下の順位に相続権が移っていきます。
つまり、違う順位の人が同時に法定相続人になることはありません。例えば、第1順位の人がいるときは、その人のみが法定相続人になり、第2順位の人は法定相続人になれません。
また、同じ順位に複数人いる場合は、その人達で均等に分けます。
配偶者控除を利用する際の注意点
ここでは、配偶者控除について注意しないと、控除を受けられなかったり、相続税が余計にかかったりすることをご紹介します。
申告期限までに遺産分割しておく
配偶者控除は、配偶者が実際に相続した金額をもとに計算されます。そのため、相続税の申告期限までに、遺産分割がされず金額が定まっていない場合は、控除を受けられません。
しかし、遺産分割がどうしても間に合わない場合には、相続税の申告書、または更正の請求書に、申告期限後3年以内の分割見込書を添付して提出し、仮に法定相続分で分割したとして申告します。
そして、申告期限から3年以内に遺産分割を済ませ、分割の決まった翌日から4カ月以内に更正の請求をすれば、申告期限後に決められた遺産分割に基づく控除の適用を受けられます。
また、3年以内に分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合は、その事情が解消した翌日から4カ月以内に分割を済ませれば、同様に控除の適用を受けられます。
更正の請求とは、申告した税額が多すぎた場合に、その分を取り戻す請求になります。
税額が0円になったときの申告
配偶者控除を受けると相続税の金額が0円になることが多くあります。しかし、そのような場合でも相続税の申告が必要な場合があります。
むしろ、申告が不要となる場合は、基礎控除のみで課税される遺産総額が0円になった場合のみです。また、基礎控除額の計算は以下のようになっています。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
そのため、配偶者控除などの控除や特例を利用する場合は、申告をする必要があります。
二次相続のことも考える
配偶者控除は、1億6,000万円までの控除が受けられます。そのため、相続税額を大きく減らすか、0円にできます。しかし、二次相続を含めると相続税額の合計が、より多くなる場合があります。
二次相続とは、例えば夫が亡くなり、その遺産を妻や子供が相続する、これが一次相続で、その後、妻が亡くなり子供がその遺産を相続する、これが二次相続に当たります。
そして、二次相続で相続額が多くなる理由は以下の3つが挙げられます。
- 法定相続人が1人減り、基礎控除の600万円が控除されなくなるため
- 相続税は超過累進課税方式のため
- 配偶者だと受けられる控除や特例が使えなくなる可能性があるため
超過累進課税方式とは、ある一定の金額を超えた分に対してのみ、より高い税率がかけられる方式になります。
そのため、同じ額を相続する場合でも、2回に分けたときと、1回で相続したときでは、1回で相続したときのほうが税額が高くなる可能性があるのです。
このように、二次相続のことを考えて遺産分割をする必要があるのです。
相続税の改正について
平成27年に相続税が改正されました。ここでは、そのことについてご紹介します。
配偶者控除の改正はなし
相続税の配偶者控除には、改正がありませんでした。しかし、所得税の配偶者控除が廃止あるいは改正されるかもしれないというニュースが流れて、誤解が生じています。
これら2つは、同じ配偶者控除という名前ですが、全く別物であり関係ありませんので注意しましょう。
改正された5つの点
平成27年相続税で改正されたのは、以下の5つの点です。
- 相続税率の一部引き上げ
- 基礎控除額の引き下げ
- 未成年者控除額の引き上げ
- 障害者控除額の引き上げ
- 小規模宅地等の特例の限度面積と適用面積の拡大
特に、基礎控除額の引き下げによって、相続税が発生する可能性が高くなりました。したがって、相続税の申告が必要になる可能性も高くなっています。
相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)|国税庁
まとめ
ここまで相続税の配偶者控除についてご紹介してきました。この控除額は大きいので、上手く活用すれば相続税額を大きく減らせるほか、0円にすることもできます。
しかし、今回紹介した申告に関する注意点や、二次相続について気をつけておかないと、その恩恵を活かしきれません。
したがって、配偶者控除で相続税がなくなると単純に考えるのではなく、いかにして活用するかを考えましょう。
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