不動産の基本をおさえよう
まずは、不動産についてです。相続が行われる際、譲り受ける財産が金融財産だけでなく、不動産である場合も珍しくありません。
国税庁の調べによると、平成27年に相続財産として申告された財産のうち、不動産が土地が38%、家屋が5.3%で、合わせると全体の43.3%を占めていました。
平成27年分の相続税の申告状況について|報道発表資料(プレスリリース)目次|国税庁
不動産とは
不動産とは、土地とその定着物のことと定義されています。(民法第86条第1項より)土地の定着物は、建物はもちろん、立木も土地に付着しているものとみなされるため、不動産に含まれます。
また、土地と定着物は別個に考えられていますので、取引をする際も別々に行われます。
土地の4つの価格
土地の価格には、売主と買主の合意で決まる実勢価格(時価)のほか、公示価格、基準値標準価格、固定資産税評価額、路線価という4通りの価格の付け方があります。
下記は、4つの価格の内容になります。 基準日とは、土地の価格を決める日のことで、その価格を発表する日が公表日です。評価割合とは、公示価格を100%として、それに比較したものを表しています。
公示価格 | 基準地標準価格 | 固定資産税評価額 | 路線価 | |
内容 | 一般の土地取引の基準となる価格 | 公示価格とほぼ同様 | 固定資産税、不動産取得税などの基準となる価格 | 相続税や贈与税の基準となる価格 |
基準日 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 | 3年に1度、1月1日 | 毎年1月1日 |
公表日 | 3月下旬 | 9月下旬 | 3月または4月 | 7月1日 |
決定機関 | 国土交通省 | 都道府県 | 市町村 | 国税庁 |
評価割合 | 100% | 100% | 70% | 80% |
不動産の鑑定評価方法
不動産の鑑定評価方法についてです。評価の方法は、取引事例比較法、原価法、収益還元法という3つになります。
取引事例比較法とは、実際に取引があった事例を参考にして、それに修正、補正を加えて価格を求める方法です。
原価法は、今買ったらいくらで買えるかという再調達原価を求めて、それに原価修正をして(建築後の年数分、価値の低下があるため)価格を求める方法です。
収益還元法は、将来生み出すであろう純収益と最終的な売却価格から現在の価格を求める方法です。この方法は、賃貸用不動産などの価格を求める際に有効です。
路線価の基本について
4つの土地の価格のなかでもここでは、路線価に焦点をあてて解説していきます。
路線価とは
路線価とは、道路ごとに国税庁が決めた土地の価格のことです。また、前述の表の通り、相続税や贈与税の計算の基礎となる価格のことなので、別名相続税評価額ともいわれています。
路線価の内容
路線価は、道路に面する宅地の1㎡メートル当たりの価額で、千円単位で表しています。路線価が定められていない地域は、評価倍率表というものを参考にします。評価倍率表の詳しい説明については、下記の国税庁のホームページをご参照ください。
また、路線価の指す道路とは、不特定多数の人が通行する公道のみで、個人の敷地内にあるような私道は含んでいません。この路線価に接している土地の面積を掛けて、土地の相続時の評価額を算出しています。
相続税路線価には計算方法が2つある。路線価図と共に解説します
土地の評価とは
次は、土地の評価についてみていきます。
土地の評価に関すること
土地の評価は、自分が居住するためのものか、他人に貸しているものかで評価額が変わってきます。貸宅地は借地権が設定され自由に売買できないため、自用地よりも2割から3割の評価減となります。なお、借地権の解説は、以下となります。
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます(借地借家法2一) 。
もっとわかりやすく説明すると、地主に地代を払いながら、その土地を借りることができる権利のことです。この借地権も相続税や贈与税の課税対象となります。
宅地の評価方法
建物の敷地として、用いられる土地のことを宅地といいます。宅地は、1画地ごとに評価します。1画地とは、利用者ごとの宅地の単位のことです。
宅地の評価の方法には、路線価方式と倍率方式があります。路線価方式とは、市街地にある宅地の評価方法で、宅地が面する道路ごとに㎡あたりの価格(路線価)に基づいて、宅地の評価額を計算します。
倍率方式は、市街地以外の、路線価が表示されていない郊外地や農村部などにある宅地の評価方式です。こちらは、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて、評価額を計算します。なお、掛ける倍率は国税庁で定められています。
建物の評価について
建物の評価についても確認しておきましょう。
建物の評価方法
建物は、固定資産税評価額に基づいて算出します。(固定資産税評価額の詳細については、上記の表をご参照ください。)役所や税務署にて、固定資産課税台帳を見ると、固定資産税評価額を確認することができます。
また、土地と同じく、建物を他人に貸していると、自用の建物よりも2割から3割の評価減となります。
財産評価基準について
財産評価基準とは、相続税や贈与税を計算する際に基準となるものです。そして、その基準をもとに決定した路線価や地区区分などが記載されたものを財産評価基準書といいます。
毎年、国税局が公開しており、税務署または、国税庁のホームページで調べることができます。次に、財産評価基準書の中身についてみていきます。
路線価図とは
まずは、路線価図についてです。路線価図とは、路線価が定められている土地などを評価する際に使用する図のことです。
借地権割合の見方
借地権割合とは、土地の価格のなかで借地権が占める割合のことです。国税局のホームページの財産評価基準の中で確認できます。
記号 | 借地権割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
上記の通り、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%と、割合をアルファベットで表します。前述の300Cであれば、路線価は300千円(30万円)、借地権割合はCの70%となります。
路線価方式の計算方法
路線価方式の計算方法について、3つの宅地の例をもとに解説していきます。
一方のみ道路に面している
下記は、一方のみ道路に面している宅地の路線価図です。路線価の記載されている部分Cというアルファベットは、次に説明する借地権割合を表しています。
この路線図から、路線価が300,000円(千円単位のため)、奥行距離が35m、地積700㎡ということがわかります。奥行距離35mに応ずる奥行価格補正率は、0.98とします。(下記奥行価格補正率表より)
一方のみ道路に面している宅地の評価額の計算方法は、路線価×奥行価格補正率×地積=評価額となります。
上記の宅地を計算式に当てはめると、300,000円×0.98×700㎡=205,800,000円(評価額)となります。
正面と側面が道路に面している
正面と側面が道路に面している宅地の評価額の計算方法は、(正面路線価×奥行価格補正率)+(側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)に地積を掛けます。側方路線影響加算率とは、正面道路に横の路線価の一部を加算するためのものです。
なお、35mの奥行価格補正率は0.98、20mの奥行価格補正率は1.00、側方路線影響加算率は0.08とします。
上記の宅地を計算式に当てはめると、(300,000円×0.98)+(200,000円×1.00×0.08)=310,000円(1㎡当たりの価額)、310,000円×700㎡=217,000,000円(評価額)となります。
正面と裏面が道路に面している
出典:宅地の評価(二方路線影響加算) |SBC相続サポートセンター
正面と裏面が道路に面している宅地の評価額の計算方法は、(正面路線価×奥行価格補正率)+(裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)に地積を掛けます。
二方路線影響加算とは、宅地が正面と裏面が道路に隣接している場合に、評価額に加算されるものです。二方路線影響加算率は、0.05とします。
上記を計算式に当てはめると、(300,000円 ×0.98)+(200,000円 ×0.98×0.05 )=303,800円(1㎡当たりの価額)、303,800円×700㎡ = 212,660,000円(評価額)となります。
宅地の分類と評価
次は、土地のなかでも宅地についての解説です。宅地は、自用地、借地権、貸宅地、貸家建付地の4つに分類して評価します。
宅地の4つの分類と計算方法
宅地は、自用地、借地権、貸宅地、貸家建付地の4つに分けて評価されます。借地権、貸宅地、貸家建付地の評価額は、自用地の評価額をもとに計算します。
自用地の計算方法
自用地とは、土地の所有者が使用するための宅地のことです。評価には2通りの方法があり、路線価図にて確認することができます。
評価額は、市街地では路線価方式(1㎡あたりの路線価×敷地面積)、それ以外では倍率方式(固定資産税評価額×評価倍率)で算出します。
借地権の計算方法
借地権が設定されている宅地の評価額の計算式は、自用地評価額×借地権割合=評価額となります。借地権の例を挙げると、Aさんの土地を、Bさんが借りている場合のBさんの権利のことです。
貸宅地の計算方法
貸宅地とは、他人に貸し付けていて、借地権が設定されている宅地のことです。例を挙げると、Aさんの土地をBさんが借りている場合のAさんの土地のことを貸宅地といいます。評価額の計算式は、自用地評価額×(1-借地権割合)=評価額となります。
貸家建付地の計算方法
貸家建付地とは、自分の土地にアパートなどを建てて、他人に貸し付けている宅地のことです。評価額の計算式は、自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=評価額となります。
借家権割合は、借地権割合と同様で、国税局のホームページの財産評価基準の中で確認できます。賃貸割合は、貸家の各独立部分(アパートやマンションなど)に基づいて、下記の算式にて出します。
私道の評価について
道路は、主に公道と私道に分けられます。公道とは、国、地方公共団体等に管理されている道路のことです。それ以外の道は、全て私道ということになります。では、具体的に私道というのは、どのように定義されているのでしょうか。
私道は、個人が所有し、維持管理されている道路のことと定義されています。一括りに私道といっても、いくつか種類があり、それは私道の利用者によって異なります。
私道の評価方法
私道の利用者が、宅地の所有者のみの場合の価額は、自用地としての評価額となります。利用が特定の人に限っている場合は、私道でないものとして路線価方式、又は倍率方式によって評価した価額に30%を掛けたものとなります。
不特定多数の人が利用する私道であれば、私道として評価しないため、評価額は0円となります。
疑問を解決しよう
これまでの解説のなかで、出てくるであろう様々な疑問について、解決していきます。
疑問と解説
- 疑問)財産はどのような形で所有しておくことが相続税対策に効果的か
相続税対策の効果的な方法は、生前贈与などを行なって、所有する財産を減らすことです。相続に関する固定資産税評価額や路線価が、公示価格の70%から80%であることで、現金より不動産で所有するほうが、相続税の額を低くすることができます。
- 疑問)土地を無償で他人に貸した場合は、どういう評価額になるのか。
無償で他人に何かを貸すことを使用貸借といいます。土地を使用貸借したときの相続税評価額は、自用地のとしての価額となります。
具体的な例を挙げると、親の土地を無償で子が借り、その上に子が家屋を建てた場合、親の評価額は自用地としての価格、子の使用権の評価額は0円となります。
土地の評価額を調べてみよう
これまでに得た知識をもとに、土地の評価額を調べてみましょう。
評価額を調べる手順
- まずは、路線価を調べます。路線価が記載されている路線価図は、国税庁のホームページより閲覧できます。
- 路線価が分かれば、あとは宅地の形状をもとに、適切な計算式にあてはめていけば、評価額が算出できます。
出典:路線価から土地の評価額を計算しよう | 練馬相続相談センター
上記の土地であれば、路線価が360Cであることがわかるので、1㎡の価格で360千円(360,000円)となります。
一方のみ道路に面している土地なので、計算式は360,000円(路線価)×100㎡(地積)=36,000,000円(評価額)となります。
自宅の評価額の調べ方
自宅の評価額を知るためには、基本的に家屋と土地に分けて評価します。家屋の評価額は、「建物の評価方法」にて述べたように、固定資産税評価額となっています。
固定資産税評価額は、毎年5月、又は6月に届く固定資産税納税通知書で知ることができます。固定資産税納税通知書内の、評価額と記載されている部分が、固定資産税評価額となります。
また、各市役所(東京都の場合、都税事務所)の窓口で固定資産税評価証明書を取得することができます(手数料がかかります)。委任を受けた人であれば、本人以外でも取得できます。
土地の評価については、土地の種類によって異なります。種類別の計算方法は、「宅地の4つの分類と計算方法」の項目にてご確認をお願いします。
相続税は路線価と時価どちらで評価される?評価額の計算方法も解説
まとめ
ここまで、主に土地の評価について解説していきました。
路線価や借地権など、あまり馴染みのない単語が多く出てきたので、少々難しく感じるかもしれません。何度か目を通していただければ、土地の仕組の全体像が明確になっていきます。
相続や贈与に関わる不動産は、現金などの金融財産に比べると、その価値や評価額などは、知識がないとなかなかわかりにくいものです。
相続や贈与を検討する際は、是非とも今回得た知識をもとに、金融財産を不動産に変えるなど効果的な対策をしていただけたら幸いです。
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