法人税とは
日本国内で収益活動を行う法人には、いろいろな税金が課せられます。どのような税金がかかるのか、法人にかかる税金の種類を見てみましょう。
法人にかかる税金の種類
法人にかかる税金として代表的なものは、『法人税』『法人事業税』『法人住民税』です。この3種類を合わせて、『法人税等』と表記されることもあります。
種類 | 概要 |
法人税 | 法人の課税所得額(※)に対してかかる税金 国の運営費や社会保障費のために徴収される |
法人事業税 | 法人の課税所得額に対してかかる税金 地方自治体の公共サービスの費用や公共設備の費用のために徴収される |
法人住民税 | 法人税額と法人の規模などに応じてかかる税金 地方自治体の公共サービスの費用や公共設備の費用のために徴収される |
上記のうち、法人住民税は『都道府県民税』と『市区町村民税』で構成されています。また、上記以外に消費税・印紙税・固定資産税などもかかります。
(※法人の課税所得額とは、益金から損金を差し引いた後の課税対象額を指します)
6 「法人税」を知ろう---もっと知りたい税のこと 平成30年6月 : 財務省
法人税のかかる法人とは
法人税・法人事業税・法人住民税の納税義務者を見てみましょう。
種類 | 納税義務者 |
法人税 | 普通法人(株式会社・有限会社・企業組合など) 協同組合(労働者協同組合・農業協同組合など) 収益事業を営む公益法人、人格のない社団など |
法人事業税 | 都道府県内、及び市区町村内に事務所・事業所などが所在する法人や収益事業を行う社団 |
法人住民税 | 都道府県・市区町村内に事務所や事業所、保養施設などが所在する法人や収益事業を行う社団 |
法人税とは、原則として公益法人や人格のない社団(PTAなど)には課税されません。ただし、収益事業を営んでいる場合は、法人税の課税対象になります。
税率は規模などにより異なる
法人税・法人事業税・法人住民税は、以下の式で計算します。
種類 | 税額の計算式 |
法人税 | 課税所得額×法人税率 |
法人事業税 | 課税標準額×法人事業税率 |
法人住民税 | (都道府県民税の法人税割+均等割)+(市区町村民税の法人税割+均等割) |
それぞれの税率は、法人の規模や従業員数、資本金額などによって異なるので、計算の際に税率を調べる必要があります。
なお、課税所得額によって税額が決まる法人税と法人事業税は、所得がないとき、つまり赤字のときにはかかりません。
法人税額から税額が決まる法人住民税の法人税割も、赤字で法人税が0円になった場合は課税対象外です。ただし、法人の規模などから税額が決定される法人住民税の均等割は、赤字のときでも納める必要があります。
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法人税の計算式
ここでは、法人税の具体的な計算方法を見ていきましょう。法人税を計算する際に重要な、『税務会計』『企業会計』『税効果会計』についても、併せて解説します。
法人所得に税率をかける
法人税額を計算するときには、まず法人の課税所得額を算出する必要があります。課税所得額の計算式は、以下の通りです。
- 法人の課税所得額:益金-損金
益金は法人税法上の収益、損金は法人税法上の経費を指します。課税所得額が算出できたら、そこに法人税率をかけて、法人税額を計算しましょう。
- 法人税額:課税所得額×法人税率
法人税率は、以下のように定められています(※)。
法人の種類 | 年間所得800万円以下の部分 | 年間所得800万円超の部分 |
資本金1億円以下の普通法人 | 15% | 23.2% |
中小法人以外の普通法人 | 23.2% | |
公益社団法人、公益財団法人 | 15.0% | 23.2% |
協同組合等 | 15.0% | 19.0% |
特定の医療法人 | 15.0% | 19.0% |
(※法人の種類や適用除外事業者に該当する場合などは、法人税率が異なることがあります)
税務会計と企業会計
法人税額を計算するには、『企業会計』と『税務会計』の2種類の会計が必要です。企業会計とは、毎日の取引を記録し、決算によって一事業年度の損益と税引前当期純利益を算出する際に用いる会計をいいます。
ここで計算した純利益を課税所得額として法人税額を計算したいところなのですが、それはできないのです。
企業会計の損益に含めた項目のうち、税金の申告の際には除外しなければならない項目、あるいは税金の申告の際のみ加算しなければならない項目があるからです。
そのため、税務会計を用いて必要な項目を除外・加算し、税金申告用にあらためて損益を計算する必要があります。
純利益から法人税額を計算してしまうと、本来の税額から大きくかけ離れることがあるので注意しましょう。
税効果会計とは
企業会計と税務会計のズレを調整するための方法として、『税効果会計』という会計があります。繰越欠損金や減価償却費などの一時差異を調整するための会計です。
例えば、購入した土地の価格が下がった場合に、企業会計ではその差額を経費計上できますが、税務会計では購入額のまま計上する必要があります。そうすると、決算書にある純利益に対して、法人税が高すぎて混乱が生じるのです。
そこで、『法人税等調整額』という勘定科目を用いて税効果会計を行い、高すぎる税額は企業会計と税務会計のズレによるものということを表します。
なお、一時差異ではないズレ(永久差異)に関しては、税効果会計では調整できません。
(※一時差異とは、将来解消する見込みがある一時的な差のことです)
第2回:税効果会計の意義と計算構造|税効果会計(平成27年度更新)|EY新日本有限責任監査法人
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実効税率とは
法人税率には、『表面税率』と『法人実効税率』という二つの考え方があります。それぞれの違いを把握しておきましょう。
表面税率
『表面税率』とは、法人税・法人住民税・法人事業税を、法律で規定されている税率の通りに単純計算したもので、決算の際に使用する税率です。表面税率は、以下の式で計算します。
- 表面税率:法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率
法人実効税率
法人税・法人住民税・法人事業税のうち、法人事業税の納付額のみ損金に算入することが可能です。
『法人実効税率』は、法人事業税を損益算入した場合の税額を計算するときに用います。計算式は以下の通りです。
- 法人実効税率:(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率)/(1+事業税率)
法人実効税率で税額を計算することによって、実際の税負担や法人事業税が損益に加算されることで、どれくらい節税できたのかが分かります。
実効税率の推移
法人税率はずっと同じではなく、国の情勢や政策などによって変更されます。ここでは、法人税率の推移を見てみましょう。
2016年度には20%台まで引き下げ
1984年頃には日本の法人税率は43.3%でしたが、段階的に引き下げられています。
そして、2016年には法人の税負担を軽減し、積極的な設備投資や賃上げを促すことを目的に、25.5%と初の20%台まで引き下げられています。
ただし、単純に税率を引き下げたわけではありません。税率を引き下げただけで終わると、税収が大きく下がってしまうため、課税ベースの拡大のために、各種控除や税制優遇措置の見直しも行われています。
2017年度から2018年度にも引き下げ
25.5%に下がった法人税率ですが、その後2017~18年度にかけて、23.4%、23.2%とさらに引き下げが行われています。
ただし、あらためて各種控除や税制優遇措置の見直しが行われているため、結果的に法人税額が上がることがあります。見直し後の控除や優遇措置の内容を、よく確認しておきましょう。
世界的に引き下げの流れ
法人税率は、世界的に引き下げの傾向にあります。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、OECDのデータベースに登録されている94カ国のうち、2000年よりも18年の方が法人税率が低い国が76カ国もあるのです。
対して、18年の方が法人税率が高くなった国は6カ国しかありません。法人税率に変化がない国は12カ国です。およそ8割の国が、法人税率を引き下げています。
法人税は、世界的に税率が下落傾向にあるが、依然として主要な歳入源である – OECD
日本も国際競争力向上を図る
法人税率の引き下げは、外国企業が日本に進出しやすくすることで、国際競争力を向上させることを目的に行われています。国際競争力が高まれば、国内の経済も上向くとの期待があるためです。
税制改正について知っておこう
法人税率引き下げの際には、法人税法の改正が行われています。具体的な内容を知っておきましょう。
平成30年度改正のポイント
2018年の法人税法改正のポイントは、『法人の設備などへの投資の促進・生産性向上・賃上げなどによる働き方改革』です。具体的には、以下のような改正が行われています。
- 一定の金額以上の設備投資・賃上げを行った法人は、給与支給増加額の15%(要件を満たすと25%)を税額控除できる
- 教育訓練費が一定額以上増加した場合は、その費用の20%を税額控除できる
- 中小企業が一定の要件を満たす設備投資をした場合に、固定資産税が0~1/2に軽減できる
- 企業内外のデータ連携・活用のために設備投資をした場合、一定額を税額控除、または特別償却できる
- 所得が増加している大企業で、ほとんど設備投資・賃上げをしていない場合は租税特別措置が利用できない
平成29年度改正のポイント
2017年度にも、法人税法が改正されています。このときは、資本金額を抑えることで中小企業の法人税軽減措置を利用していた実質的な大企業が、軽減措置対象外となる改革が行われました。
また、国際的な競争力を強化する目的で、損金に算入できる試験研究費がある場合に、一定額を税額控除できる『研究開発税制』の対象を広げる改革なども行われています。
平成28年度改正のポイント
2016年には、法人税率が初の20%台になったことを踏まえ、課税ベースを拡大するための改正が行われています。
例えば、通常赤字の法人は法人事業税がかかりません。しかし、特定の法人には外形標準課税によって赤字のときでも法人事業税が課せられます。
この外形標準課税の一部税率を引き上げ、法人事業税の税収を増やす改革が行われているのです。また、赤字による欠損金を翌年以降の損金に繰り入れられる、『欠損金の繰越控除』という制度があります。
この制度でも、資本金1億円以上の法人の控除限度額を引き下げるなどの見直しが行われており、大企業の税負担が増えているのです。
税率引き下げの背景と抱えている問題
法人税率が引き下げられた背景には、国際競争力の向上以外に日本が抱える問題があります。
中小企業の半数以上が法人税未納
日本が抱える問題とは、半数以上の法人が法人税未納であることです。国税庁による『会社標本調査』から、欠損法人(赤字の法人)の割合を見てみましょう。
- 2015年:64.3%
- 2016年:63.5%
- 2017年:62.6%
毎年、6割以上の法人が欠損法人であるとの結果が出ています。つまり、6割以上の法人が、原則赤字のときには課税されない法人税・法人事業税を納めていないということです。
赤字法人が6割を占める現状
赤字法人が6割を占めるということは、それだけ法人税の税収が少ないということです。
税収が少ないと、その分を他から補てんすることになるため、法人税率を引き下げたり、課税ベースを拡大したりすることで、法人税の税収を増やす必要が出てくるのです。
法人税の確定申告
法人は、原則として1年に1度、法人税について確定申告をして、納税するよう義務付けられています。
『青色申告』と『白色申告』のどちらで申告しても大丈夫ですが、青色申告であればさまざまな控除や特例が受けられるので、青色申告を選んだ方がよいでしょう。
- 青色申告:複式簿記で帳簿を作成し、青色申告決算書を提出する必要があるので手間がかかる
- 白色申告:簡易的な帳簿でよく、青色決算書の提出も不要
国税庁HPで書類を揃える
法人税について青色申告をする場合には、『法人税申告書』を作成する必要があります。法人税申告書は、国税庁のホームページでダウンロード可能です。
複数の別表があるので、漏れがないように注意しましょう。また、法人税申告書には、以下の書類を添付する必要があります。
- 貸借対照表:資本・負債・税引前当期純利益などを記載した書類
- 損益計算書:収益・費用・利益を記載した書類
- 株主資本等変動計算書:貸借対照表の純資産の変動について記載した書類
- 科目明細書:貸借対照表と損益計算書にある、各勘定科目の内訳を記載した書類
- 事業概況書:事業内容などを記載した書類
法人税確定申告書(別表)とは何ですか?|決算・申告、業務の流れ(法人)サポート情報
[手続名]法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)|国税庁
提出部数と申告期限
法人税は申告・納税ともに、事業年度末日(決算日)の翌日から2カ月が期限です。期限を超えると延滞税や加算税などが発生するので、期限内に申告・納税を済ませましょう。
また、電子申告ではなく紙の書類で提出する場合は、法人税額などに応じて提出部数が定められています。
- 国税局管轄の資本金1億円以上の法人:3部+OCR用紙(※1)
- 税務署管轄で会計検査院該当(※2)の資本金9000万円超、あるい法人税額5500万円超の法人:2部+OCR用紙
- 税務署管轄の上記以外の会社:1部+OCR用紙
(※1.OCR用紙とは、光学文字認識システム専用用紙のことです)
(※2.会計検査院該当とは、税務署とは別に会計検査院でも申告書がチェックされる、規模が大きい法人のことです)
申告期限の延長の特例
法人税の申告期限は事業年度末日の翌日から2カ月ですが、期限までに申告できない事情が認められた場合には、申告期限延長の特例が受けられます。
- 事業年度末あたりに監査や株主総会があるなどの理由で、期限までに決算が確定できないとき
- 災害に遭ったなどで期限内に申告できないとき
期限までに申告・納税ができないときには、放置せずにひとまず税務署に相談に行きましょう。
まとめ
法人は企業会計をもとに決算を行いますが、企業会計の損益には、税金申告の際に除外しなくてはならない項目が含まれています。
また、税金申告のときだけ加算する項目もあるため、法人税を計算するときには、税務会計による損益の再計算が必要です。
そして、税務会計で計算した損益に乗じて、税額を計算する際に用いる税率を表面税率といいます。
実効税率は、法人事業税を損金に算入した場合の、実質的な税負担額を計算する際の税率です。法人税について考える際に重要な税率なので、内容を理解しておきましょう。
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