固定資産税とは
最初に『固定資産税』とは、どのような税金か確認しておきましょう。
所有者にかかる税金
固定資産税は、固定資産(土地・建物・償却資産)の所有者に対して課せられる税金です。所有者とは、以下の人を指します。
固定資産 | 所有者 |
土地 | 土地登記簿または土地補充課税台帳(※1)上の所有者 |
家屋 | 建物登記簿または家屋補充課税台帳(※2)上の所有者 |
償却資産 | 償却資産課税台帳上の所有者 |
また、土地・家屋を複数の所有者で共有している場合は、共有者全員が納税義務者(連帯納税義務)です。連帯納税義務は持分に応じて納税義務を負うわけではなく、所有者全員で全額の納税義務を負うことを言います。
納税通知書は、持分の割合や登記簿に記載されている順序などから判断して決める代表者の元に届きます。
(※1:土地補充課税台帳とは、登記簿に登記してない土地の中で、固定資産税を課税できるもの(埋立地など)について、名称・所在などを登録した帳簿です)
(※2:家屋補充課税台帳とは、登記簿に登記してない家屋の中で、固定資産税を課税できるものについて、名称・所在などを登録した帳簿です)
忙しくて読めないという方で、「確定申告の書き方がわからない、経費計算したい、早く確定申告を終わらせたい、自動で計算して税理士の高い金額を支払いたくないという方」には、 「自動会計ソフトのfreee(フリー)」がオススメです! クラウド会計ソフトfreee(フリー)の詳細へ
1月1日が基準
固定資産税は1月1日を基準に、納税義務者や何に課税するかなどの課税要件が確定します。よって、納税義務者である所有者は、その年の1月1日時点の所有者です。
また、土地の評価上の地目も登記簿に登録している地目に関係なく、その年の1月1日現在の現況による地目で判断します。
地目とは、宅地・農地(田および畑)・山林など、土地の用途による区分です。土地は『固定資産税評価基準』が定める評価方法で、地目別に評価額を算出します。
計算期間
固定資産税は毎年4月1日から1年度分の税金を、土地・家屋が所在する市町村が計算し、課税します。何月から何月までという、月単位での課税はありません。
例えば、土地を買い2月1日に登記手続きが完了し所有者となっても、翌年3月末日までの納税義務は旧所有者にあり、新所有者にはないのです。納税通知書は旧所有者の元に届きます。
しかし、実際の取引では旧所有者と新たな所有者が協議して月割り・日割りなどの方法で、それぞれが税金を負担するケースが一般的です。
固定資産税の計算
次に、固定資産税の計算方法を解説していきます。
計算式や切り捨ての方法
固定資産税は、以下の計算式で算出しましょう。
- 固定資産税=課税標準×1.4%(標準税率)
納税通知書の記載例から、税額を計算してみましょう。
出典:名古屋市:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)の計算例(暮らしの情報)
- 土地・家屋の課税標準額を合算する(記載例の(1)+(3))
230万4527円+478万5134円=708万9661円 - 上記の課税標準額の合計を端数処理(1000円未満切捨て)し、税率1.4%を乗じる
708万9000円×1.4%=9万9246円 - 9万9246円に対し端数処理(100円未満切捨て)を施し、税額9万9200円(記載例の(5))を算出する
課税標準とは
課税標準とは、税金を計算する際の算定基準となる金額を意味し、多くの税金は課税標準に所定の税率をかけて算出します。
固定資産税の課税標準は、固定資産課税台帳に登録のある土地・家屋の評価額です。通常、家屋の課税標準額は評価額と同額になります。
一方、土地は評価額に特例や負担調整措置(※)を適用して課税標準額を求めるため、評価額と課税標準額は一致しません。
(※負担調整措置は土地の評価額が大きく上昇した場合に、納税者の負担の急激な増大を防ぐための措置で、課税標準額を引き下げる、または据え置きます)
評価替え
土地の評価額は各自治体が公示地価(※)の7割を目途に、固定資産評価基準に基づく方法で判定して決めます。公示地価とは、毎年7月に国土交通省が公表する標準地の価格で、一般の土地取引や公共事業用地の買取りなどで、目安とされる価格です。
一方、家屋の評価額は、再び同じ家屋を建てる場合にかかる費用を建築資材・設備などから算出して決定します。
土地は地価の上昇や下落、家屋は経年による劣化などから、その価値は変動するものです。そこで、固定資産税を公平・公正に課税するために、原則、3年ごとに評価額の見直し(評価替え)が行われます。
固定資産の評価替えとは何ですか? - 東大和市公式ホームページ
固定資産税評価額とは
『固定資産税評価額』とは、総務大臣が定める固定資産評価基準に従い、各市町村が土地・建物を評価して決める固定資産の価格です。評価替えによって3年ごとに見直され、税額の計算では基礎となる価格と言えます。
固定資産評価基準には、評価の基準・実施方法・手続きなどが定められており、土地と家屋は異なる方法で評価額を計算する決まりです。
家屋は再建築価格方式で計算
家屋の評価額は『再建築価格方式』で算定します。再建築価格方式は、評価時点で同じ家屋をその場所に再建築すると仮定して、必要な建築費を求め評価額を算出する方法です。
自治体の担当職員が新築家屋を訪れ『家屋調査』を行い、屋根・外壁・内壁などの部分別に、構造や建築資材の材質・施工量などを確認します。
固定資産評価基準が定める再建築費評点基準表を使い、調査結果から家屋の部分別の評点を算出し、合計して求めるのが再建築費評点数です。
再建築費評点数に経年減点補正率(建築後の年数の経過に応じて減価する割合)をかけ、評点1点あたりの価額を乗じて評価額を求めます。
新築以外の家屋は、通常、前年度の評点数に物価の上昇・下落を考慮した補正率をかけて、評価額とします。
土地は路線価方式で計算
『路線価』とは、路線(道路)に面する標準的な宅地1平方mあたり価額のことです。路線価が付設された地域は、この路線価を用いた『路線価方式』によって土地の評価額を算定します。
一般的に路線価方式は、以下の流れで土地(宅地の場合)を評価し、評価額を計算する方式です。
- 商業地・住宅地など利用状況に応じて地域を分ける
- 街路・家屋の粗密度などから更に細かく区分
- 区分内の主要街路(※1)を選定
- 主要街路に面する宅地から標準宅地(※2)を選定し、公示地価の7割を目途に1平方mあたりの価格を算定
- 標準宅地の価格をもとに、主要街路に路線価を付設
- その他の街路にも路線価を付設
- 形状などを加味して街路に面する宅地1平方mあたりの価格を算定し、地積をかけて評価額を求める
(※1:主要街路は地域ごとに価格・街路の状況などが標準的であり、宅地評価の指標となる街路です)
(※2:標準宅地とは、各地域の主要街路に接する宅地のうち、間口・奥行き・形状などが標準的な宅地です)
マンションの場合
マンションの場合も、土地と建物に分けて評価額を求めます。新築分譲マンションは、建築施工会社や販売業者が提出する建築書類をもとに評価額を計算するため、通常、個別の家屋調査はありません。
マンションには所有者のみが使用する『専有部分』と、他の住人も使用する『共用部分』があります。専有部分の建物は、再建築価格方式で家屋として評価額を求めます。
土地は専有部分の床面積に、持分割合に応じた共用部分の床面積を加えて評価額を計算することを知っておきましょう。ちなみに持分割合とは、マンション全体の床面積に対する専有面積の割合のことです。
固定資産税の軽減措置
固定資産税には『軽減措置』があり、税負担が軽くなる場合があります。
住宅用地の特例とは
戸建て住宅やマンションなど、人が居住するための家屋の敷地(住宅用地)には、以下の『住宅用地の特例』が適用されます。
住宅用地の区分 | 課税標準額 | |
小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200平方mまでの部分 | 評価額×1/6 |
一般住宅用地 | 住宅1戸につき200平方mを超える部分 | 評価額×1/3 |
例えば、評価額1000万円(面積200平方m以下)の住宅用地の固定資産税は、以下のように計算できます。
1000万円×1/6×1.4%=2万3300円(100円未満切捨て)
新築住宅の特例とは
新築住宅(2020年3月31日までに新築)は、課税床面積120平方mまでの部分の固定資産税が、1/2に減額されます。特例を受けるには、次の要件を満たさなければなりません。
- 専用住宅または併用住宅(居住部分の床面積の割合が1/2以上)である
- 居住部分の課税床面積が1戸につき50平方m以上280平方m以下である(賃家住宅は1戸につき40平方m以上280平方m以下)
特例が適用される期間は、以下の通りです。
新築住宅 | 特例期間 |
一般の住宅 | 新築後3年間 |
3階以上の耐火・準耐火構造の住宅 | 新築後5年間 |
固定資産税・都市計画税|平成31年(2019年)度税金の手引き|三井不動産リアルティ株式会社
長期優良住宅とは
『長期優良住宅』とは、長期にわたり住宅を良好な状態で使用するために、定められた措置が講じられた住宅を言います。
以下の措置を全て施し都道府県や市または区に、認定申請の手続きを行い認められると、長期優良住宅として認定される仕組みです。
- 長期に使用するための構造および設備を有する
- 居住環境などへの配慮を行っている
- 住戸面積が一定以上である
- 維持保全の期間・方法を定めている
なお、長期優良住宅に対する新築住宅の特例は、下表の通り特例期間が延長されます。
認定長期優良住宅 | 特例期間 |
一般の住宅 | 新築後5年間 |
3階以上の耐火・準耐火構造の住宅 | 新築後7年間 |
長期優良住宅とは | 長期優良住宅について | 長期優良住宅[評価協会]
住宅:長期優良住宅のページ - 国土交通省
簡単に調べる方法
固定資産税を簡単に調べる方法はあるのでしょうか。税額の目安を知る方法を見ていきましょう。
計算機サイトを使う
購入する土地・建物の固定資産税の概算額を、シミュレーションサイトを利用して調べられます。
例えば、『Resort Innovation』のサイトでは、土地・建物の評価額・税率などの必要事項を入力すると、固定資産税の試算が可能です。
アプリを使う
税額の試算が可能なアプリを使って、調べることも可能です。
例えば、『税理Pro Lite版』というiOSデバイス向けのアプリがあります。有料版アプリの税理Proの機能を一部制限し、Lite版として無料提供しているアプリです。
固定資産税については、建物・土地価格500万円以下という制限付きですが、シミュレーションや簡易計算が可能です。
エクセルを使う
固定資産税を簡単に試算できるエクセルを、無料で利用できるサイトがあります。このようなサイトで、税額の目安を調べるとよいかもしれません。
法人の場合の固定資産税
法人の場合は、土地・家屋・償却資産が固定資産税の課税対象です。償却資産とは、土地・家屋を除く原則、取得価額10万円以上の機械・工具・備品などの、事業のために使用する事業用資産を言います。
償却資産には登記の制度がないため、1月1日現在の所有状況をその年の1月末日までに申告しなければなりません。
市町村は申告内容をもとに個々の償却資産の評価額を求めて合算し、必要に応じて特例を適用して、課税標準額を求める仕組みです。税額は課税標準額に税率(標準税率1.4%)をかけて、算出します。
償却資産とその扱いに注意
償却資産は時間の経過とともに、その価値が下がっていく減価償却資産です。評価額は『減価率』を用いた以下の計算式で算出します。
- 前年中に取得した償却資産
評価額:取得価額×(1-減価率÷2) - 前年前に取得した償却資産
評価額:前年度の評価額×(1-減価率)
減価率は法令により定められた、耐用年数(※)ごとの1年間に資産の価値が減少する割合です。減価残存率表で確認しましょう。
なお、法人税の場合は、評価額の最低限度額が備忘価額1円までとなっていますが、固定資産税では取得価額の5%までです。法人税(国税)と固定資産税(地方税)では、減価償却の方法に異なる点が多いため注意が必要でしょう。
(※耐用年数とは、法令により資産の種類ごとに定められた減価償却を行う期間で、耐用年数表で確認できます)
固定資産税(償却資産) | 税金の種類 | 東京都主税局
東京都主税局<税金の種類><固定資産税(償却資産)><償却資産の評価に用いる耐用年数>
東京都主税局<都税Q&A><減価残存率表>
固定資産税の仕訳
法人の固定資産税は賦課決定日(納付書の交付日)が属する事業年度の、損金として計上します。
4月に固定資産税12万円の納付書が交付され、3万円ずつ年4回に分けて納めるケースの仕訳を見てみましょう。
賦課決定日の仕訳は以下の通りです。固定資産税をまだ納めていないので、勘定科目に『未払金』を使い仕訳ます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
租税公課 | 12万円 | 未払金 | 12万円 |
納付日(年4回)には、以下の仕訳が必要です。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
未払金 | 3万円 | 普通預金 | 3万円 |
この他に、納付日に経費として計上する方法があります。賦課決定日の仕訳は必要ありません。納付日に以下の仕訳をしましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
租税公課 | 3万円 | 普通預金 | 3万円 |
覚えておきたいポイント
最後に固定資産税に関して、覚えておきたいポイントを紹介します。
土地のみの購入はタイミングに注意
住宅を建てるために土地を購入ても、1月1日時点で住宅の建築中あるは建設予定の場合は、住宅用地と認められず特例が適用されません。
例えば、昨年の10月に土地を購入し、今年の3月に建物が完成するとします。今年度は土地のみが課税対象で、建物は翌年度からの課税です。つまり、今年度の土地の固定資産税は、住宅用地の特例が受けられません。
過払いは起こり得る
過去には自治体の計算ミスや評価ミスなどによる、過払いが発生しています。
総務省の調査では、平成21~23年度の期間に固定資産税・都市計画税の誤りなどによる、税額修正があった市町村は調査対象の97.0%という結果でした。
固定資産税の過払いは起こり得ると考え、納税通知書が届いたら評価額や軽減措置などが、適正であるか確認しておく方がよいでしょう。
総務省|固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果
審査申出と審査請求
固定資産税に関して不服がある場合は、『審査申出』もしくは『審査請求』を利用して、不服の申立てが可能です。
項目 | 審査申出 | 審査請求 |
対象 | 固定資産課税台帳に登録された価格に対する不服 | 税額など課税内容に対する不服 |
期間 | 課税台帳に価格等を登録した旨の公示日から、納税通知書の交付を受けた日後3カ月まで | 原則、処分を知った日の翌日から起算して3カ月以内 |
手続き | 審査申出を提出もしくは郵送 | 審査請求を提出 |
疑問や不服があれば、まず、納税先である自治体に問い合わせてみましょう。それでも不服が解消されない時は、審査申出や審査請求を選択することも可能です。
まとめ
固定資産税は基本的には、土地・家屋の評価額から課税標準額を算出し、税率を乗じて計算します。軽減措置の対象となる場合は、適用して計算しましょう。疑問に思うことがあれば、役所や専門家に問い合わせるとよいでしょう。
忙しくて読めないという方で、「確定申告の書き方がわからない、経費計算したい、早く確定申告を終わらせたい、自動で計算して税理士の高い金額を支払いたくないという方」には、 「自動会計ソフトのfreee(フリー)」がオススメです! クラウド会計ソフトfreee(フリー)の詳細へ
【2020年最新】 ▼ 当サイトの登録の多い、所得税などの節税対策のためサイト
- 確定申告の書類作成がわからない方は、 「自動会計ソフトのfreee(フリー)」
- 確定申告の帳簿管理が面倒だという方は、 「自動会計ソフトのfreee(フリー)」
- 確定申告がギリギリになってしまった方は、 「自動会計ソフトのfreee(フリー)」 「税理士に相談できる 「税理士ドットコム」
- 帳簿を作成したがあっているが、不安な方 「税理士に相談できる 税理士ドットコム」
- 請求書管理が面倒だという方 「請求書管理サービス Misoca(みそか)
」