住宅ローンの借り換えとは
住宅ローンの借り換えとは、契約中の住宅ローンよりも金利が安い住宅ローンに変更し、返済総額を軽減する方法のことです。
住宅ローンで住宅購入資金を借りた場合、借入額に利息を加算した金額を返済しなくてはなりません。そして、利息の金額は、借入額に対する利息の割合を示した『金利』によって決まります。
金利が高いほど借入額に対する利息の割合が大きいということなので、より高額な利息を支払うことになります。
よって、今よりも金利が安い住宅ローンに変更すれば、利息の金額が下がり、返済総額自体も軽減されるという仕組みです。
一般的な借り換えの目安
住宅ローンの借り換えは返済総額の軽減に有効な方法ですが、誰でも借り換えすれば返済の負担が軽減できるわけではありません。一般的に、以下の目安を満たす人が借り換えが有効とされています。
- 借り換え前後の金利に1%以上の差がある
- ローンが1000万円以上残っている
- 返済期間が10年以上残っている
借り換えの目的は、金利を下げることで利息を減らし、返済総額を減額することです。借り換え前後の金利の差が少ないと、利息の金額が変わらないのでわざわざ借り換える意味がありません。
また、ローン残高や返済期間が残り少ないと、利息の支払いも残り少ないため、やはり住宅ローンを借り換えるメリットがあまりないでしょう。
借り換えまでの経過年数
住宅金融支援機構の『2017年・民間住宅ローン借換の実態調査』によると、住宅ローン借り入れから借り換えまでの経過年数は、『5年以下』という人が最も多いという結果が出ています。
どの金利タイプでも同じ結果で、借り換えした人の半数以上が、初回の借り入れから5年以内に住宅ローンを借り換えています。
経過年数 | 変動型(%) | 固定期間選択型(%) | 全期間固定型(%) |
5年以下 | 63.2 | 53.0 | 55.3 |
10年以下 | 19.3 | 26.0 | 25.5 |
15年以下 | 10.5 | 8.9 | 12.2 |
15年超 | 7.0 | 12.0 | 6.9 |
民間住宅ローンの実態調査:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
借り換えによる金利タイプの変化
住宅ローンの金利には、主に以下の3種類があります。
- 変動型:経済情勢などによって金利が変動するタイプ
- 固定期間選択型:一定期間のみ金利が固定され、以降は変動金利になるタイプ
- 全期間固定型:始めに設定した金利が完済まで続くタイプ
変動型タイプの金利が引き上げられたときなど、金利タイプを変更したいときにも借り換えは役立ちます。『17年・民間住宅ローン借換の実態調査』から、借り換え後の金利タイプの変化を見てみましょう。
区分 | 変動型(%) | 固定期間選択型(%) | 全期間固定型(%) |
借り換え前 | 36.2 | 43.9 | 19.9 |
借り換え後 | 42.0 | 46.3 | 11.6 |
借り換え後は変動型か固定期間選択型を選んだ人が多く、全期間固定型は減っています。
民間住宅ローンの実態調査:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
借り換えにかかる主な諸費用
住宅ローンの借り換えの際には、さまざまな諸費用がかかります。どんな費用がいくらくらいかかるのかを把握しておかないと、借り換えによって利息が減った分よりも諸費用の方が高くなり、かえって損をすることがあるので注意が必要です。
ここでは、住宅ローンの借り換えの際にかかる主な費用の種類と、金額の目安について解説します。ただし、諸費用の金額は、借り換え額や金融機関によって異なるため、具体的な金額は借り換え予定の金融機関に確認しましょう。
事務手数料と印紙税
住宅ローンの借り換えにかかる費用として、『事務手数料』と『印紙税』があります。概要や金額の目安を見てみましょう。
種類 | 概要 | 金額の目安 |
事務手数料 | 住宅ローンの申し込み手続きに対する金融機関への報酬 | ・都市銀行、地方銀行など:3万円程度 ・ネット銀行、都市銀行のWEB商品など:借入額の2.0%程度 |
印紙税 | 不動産の売買など、経済取引の際作成される文書に課される税金 | 借入額 ・500万円超 1000万円以下:1万円 ・1000万円超 5000万円以下:2万円 ・5000万円超 1億円以下:6万円 |
抵当権設定費用や司法書士費用
住宅ローンの借り換えのときには、それまでの金融機関で設定されていた抵当権(※)の抹消、及び借り換え後の金融機関での抵当権の設定が必要です。
また、これらの手続きは司法書士に委託するのが基本なので、司法書士報酬も発生します。抵当権抹消時と設定時の費用の目安は以下の通りです。
種類 | 概要 | 金額の目安 |
抵当権抹消費用 | 設定されている抵当権を抹消する手続きにかかる費用 | ・登録免許税:土地・建物1件につき1000円 ・司法書士報酬:2万円程度 |
抵当権設定費用 | 抵当権を設定する手続きにかかる費用 | ・登録免許税:借入額の0.4% ・司法書士報酬:6~10万円程度 |
(※抵当権とは、返済ができなくなったときに担保となっているものを売却し、その利益を借入金の弁済に充てる権利のことです)
保証料や繰り上げ返済手数料
住宅ローン借り換えの際には、保証料や繰り上げ返済手数料などが発生する場合もあります。
種類 | 概要 | 金額の目安 |
保証料 | 住宅ローンの返済が滞ったときの保証のために、保障会社に支払う費用 | ・都市銀行、地方銀行など:金利に0.2%程度上乗せ ・ネット銀行、都市銀行のWEB商品など:無料 |
繰り上げ返済手数料 | 借り換え前の住宅ローンを全額返済する際にかかる手数料 | 無料~数万円 |
これらの費用は無料の場合もあれば、非常に高額になる場合もあり、金融機関によって大きく異なります。すべての諸費用を合計すると、数十~数百万円かかることもあるので、手数料も含めた上で借り換えるメリットがあるのかをシミュレーションすることが重要です。
諸費用は現金払い?
住宅ローンを借り換えるときには、数万~数百万円程度の諸費用が発生します。諸費用は現金で支払わなくてはならないのでしょうか。
一般的には現金
住宅ローンを借り換えるときにかかる諸費用は、一般的には現金で支払わなくてはなりません。ただし、金融機関によっては、住宅ローンの借入額に組み入れられることもあります。
また、保証料などは、金利の上乗せで対応されることもあるので、現金での支払いがむずかしい場合は、金融機関で相談してみましょう。
節約できる諸費用の項目
諸費用のうち、いくつかの項目は節約できる可能性があります。例えば、抵当権設定の手続きは、基本的に金融機関が指定した司法書士に委託しなくてはなりません。金額が大きなローンに関する手続きなので、間違いがあると困るためです。
しかし、抵当権抹消の手続きは、自分で済ませることが認められる金融機関もあります。自分で手続きを済ませれば、数万円かかる司法書士報酬を節約することが可能です。
また、事務手数料や保証料、繰り上げ返済手数料などは金融機関によって金額に幅があります。手数料を抑えたいのであれば、できるだけ手数料が安い金融機関を探しましょう。
保証料や繰り上げ返済手数料なしの会社
金融機関によっては、保証料や繰り上げ返済手数料が無料の場合があります。これらの費用は非常に高額になるケースがあるので、できれば無料の金融機関を選ぶのがおすすめです。
オーバーローンの現状
住宅ローンは、利用者が返済不能になった場合に、担保となっている住宅の売却益で借入金を相殺できるよう、住宅の評価額程度の借入可能額が設定されるのが基本です。
しかし、住宅ローンの借り入れ時にかかる諸費用が高額になるケースがあることから、諸費用分も借り入れできるよう、評価額以上の貸し付けに対応する金融機関が増えています。
この、担保となる住宅の評価額以上にお金を貸し付けることを、『オーバーローン』といいます。ここでは、オーバーローンの現状について見ていきましょう。
大手銀行は諸費用の幅が狭い
オーバーローンに対応している金融機関でも、借り入れできる諸費用の項目が指定されていることがあります。ネット銀行では、事務手数料や印紙代、抵当権の抹消・設定費用など、ほとんどの項目に対応している金融機関が多く見られます。
一方、大手銀行は対応している諸費用の項目の幅が狭かったり、諸費用の借り入れは認められていなかったりするケースが多いでしょう。
諸費用の借り入れも検討している人は、諸費用の借り入れの可否や対応項目について確認しておきましょう。
なお、オーバーローンの状態になっていると、何らかの理由で住宅を売却することになった場合に、売却後もローンの返済が残る可能性があります。なるべくオーバーローンにならないよう、考慮することが大切です。
頭金について
過去の住宅ローンは、頭金を支払わなくてはならないのが一般的でした。そもそも借入可能額が担保となる住宅の8割程度に設定されることが多かったため、頭金なしでは住宅を購入がむずかしかったのです。
しかし、最近は頭金なしでも借り入れ可能で、オーバーローンも認められる住宅ローンが増えたため、頭金を準備しなくても住宅購入ができるようになっています。
ただし、頭金を支払うと金利の優遇が受けられたり、借入額が減ることで利息の金額が減って返済総額が軽減できたりと、メリットが多いものです。できれば、頭金を借入額の1~2割程度用意した方がよいでしょう。
上乗せか諸費用ローンか
諸費用を現金払いしなかった場合は、借入額や金利に上乗せされるのが基本ですが、『諸費用ローン』が利用できる場合もあります。
諸費用ローンとは
諸費用ローンとは、名称通り住宅ローンの借り入れ、借り換え時にかかる諸費用を借り入れるためのローンです。不動産業者への仲介手数料の借り入れもできる場合があります。
上乗せと諸費用ローンの比較
諸費用を借入額や金利に上乗せするのと、諸費用ローンを借り入れるのは、どちらがよいのでしょうか。
諸費用の上乗せの場合、金利は比較的安く済みます。ただし、住宅ローンの返済期間中ずっと上乗せされ続けるため、最終的に諸費用が高額になる可能性があります。
対して、諸費用ローンは上乗せよりも金利が高くなるというデメリットがありますが、諸費用分のみ借り入れであるため返済期間が短く、上乗せより諸費用が安くなる可能性があります。
しかし、住宅ローンを早期完済すれば、上乗せでも費用を抑えられるでしょう。また、諸費用ローンを借り入れると、住宅ローンとは別の返済が発生するため、毎月の返済の負担が増えたり、審査が厳しくなったりする可能性があります。
同じ銀行で借り換えはできる?
今借りている住宅ローンの金利が下がっていたり、新たな商品が発売されて、その商品の金利が低かったりした場合、同じ銀行で借り換えすることはできるのでしょうか。
原則は借り換え不可
今借りている住宅ローンを借り直したり、同じ銀行の別商品に借り換えたりすることは、原則としてできません。
金利が下がったからといって、借り直しや別商品の借り換えを認めていては、金融機関は金利が下がった分収入が減少するだけで、何のメリットもないからです。
別の商品であれば可能な場合もある
金融機関によっては、別商品への借り換えであれば認められることもあります。他社の金利が安い住宅ローンに変更されて収入が0円になるよりは、多少損が出ても借り入れを継続してもらった方よいという理由からです。
ただし、どの金融機関でも別商品への借り換えに対応しているわけではないので注意しましょう。
交渉で契約商品の金利を下げることは可能?
前述と同様の理由から、交渉によって今借りている住宅ローンの金利を引き下げてもらえることがあります。今の商品で金利が引き下げてもらえれば、諸費用の支払いも必要なく、返済の負担だけが軽減できます。
しかし、金利の引き下げは、同じ住宅ローンを借り直すことと意味合いは同じです。金融機関にとっては、収入が下がるだけでメリットがありません。
また、1人金利の引き下げを認めてしまうと、次々と他の利用者が金利の引き下げ交渉を始めるというリスクもあるため、断られる前提で確認するだけしてみましょう。
実質金利が安い変動金利商品のおすすめ
ここでは、実質金利が安い変動型金利の住宅ローンのおすすめを紹介します。実質金利とは、ホームページなどに表示されている金利ではなく、諸費用なども考慮した金利のことです。
どれだけ金利が低くても、諸費用などが高いと返済総額が高くなり、高金利の商品と変わらない返済総額になる可能性があります。返済総額を抑えるには、実質金利が低い商品を選ぶようにしましょう。
住信SBIネット銀行 通期引下げプラン
住信SBIネット銀行の『ネット専用住宅ローン(通期引下げプラン)』は、金利が年0.418%と非常に低いのが魅力です。通気引下げプランを利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 18年10月1日以降に仮審査に申し込むこと
- 三井住友信託銀行の口座開設申込書を住信SBIネット銀行に提出すること
また、団体信用生命保険料の上乗せなどがなく、保証料もかからないため、実質金利が低く抑えられます。
SBIマネープラザ MR.住宅ローンREAL
SBIマネープラザの『MR.住宅ローンREAL(リアル)』は、変動金利・通年引下げプランの利用で、金利が年0.428%まで下がります。
保証料や一部繰り上げ返済手数料、団体信用生命保険料なども無料で、実質金利を低く抑えられます。また、他社からの借り換えと同時に申し込めば、リフォーム代金の借り入れも可能です。
実質金利が安い10年固定金利のおすすめ
次に、実質金利が安い10年固定型金利(※)のおすすめを紹介します。
(※10年固定型とは、契約から10年間は契約当初の金利に固定され、10年経過後は金利が変更されるという商品です)
りそな銀行 WEB限定借りかえローン
りそな銀行の『WEB限定借りかえローン』は、その名の通り借り換え専用の住宅ローンです。契約から10年間は金利が年0.65%と低い状態が継続します。
団体信用生命保険に加入すれば、さらに金利が0.05%引き下げられるほか、固定金利特約期間設定手数料が無料なので、諸費用の負担が少なく済みます。
みずほ銀行 最後まで変わらずおトク!
みずほ銀行の『ネット住宅ローン』は、全期間固定金利でも年1.195%と低めの金利で借り入れできます。
申し込み手続きは専用サイトで進められ、契約も電子契約なので印紙税がかかりません。印紙税は1~6万円程度かかるため、諸費用を抑えたい人にはメリットが大きいでしょう。
まとめ
住宅ローンを借り換えると、総返済額が軽減できる可能性があります。ただし、借り換え時にはさまざまな費用がかかり、その金額は数十万~数百万円にもなるケースがあります。
わざわざ住宅ローンを借り換えたのに、諸費用が高額で意味がなかったということにならないように、各金融機関の諸費用をしっかり比較しておきましょう。