住宅ローンの見直し方法
住宅ローンは、数十年かけて返済していく長期ローンです。それだけ長期間かけていれば、その間にさまざまな変化が起こるため、適時見直しをすることが大切です。
住宅ローンの主な見直し方法として、『借り換え』『繰り上げ返済』『金利タイプの変更』があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
借り換えて見直し
『借り換え』とは、現在借り入れている住宅ローンから、より金利が低い他社の住宅ローンに乗り換えることです。
住宅ローンを借り入れると、元金(※)に『利息』を加算して返済をしなければなりません。利息とは、お金を貸してもらったことに対する手数料のようなもので、『金利』によって金額が決まります。
- 利息額=元金×金利×借入期間
金利とは、元金に対する利息の割合のことです。金利が高いほど利息の支払額も高くなります。
そのため、今よりも金利が低い住宅ローンに借り換えれば、それだけ利息の支払額が減り、総返済額も減るという仕組みです。
さらに返済条件を変更できるのも、借り換えの大きなメリットです。
返済期間を変えずに借り換えれば、月々の返済額を減らす効果があります。また返済期間を短縮したり、ボーナス月の返済額を増減させたりすることも可能です。
(※元金とは、元々借り入れている金額のことです)
繰り上げ返済で見直し
『繰り上げ返済』とは、通常の返済を続けつつ、資金に余裕ができたときに追加で返済をすることです。
なお繰上返済で支払った金額は、全て元金の返済に充当されます。予定よりも早く元金が減り返済期間が短縮されるので、利息の負担を抑え総返済額を減らすことが可能です。
住宅ローンの返済では、『ボーナス併用払い』を組み合わせるケースがあります。ボーナス併用払いとは、毎月の返済額に加えてボーナス月(年2回)にまとまった金額を返済する方法です。繰り上げ返済とは異なるので、間違えないように注意しましょう。
金利タイプの変更で見直し
住宅ローンの金利タイプには、大きく分けて『全期間固定金利型』『固定金利期間選択型』『変動金利型』の3種類があります。
- 全期間固定金利型:返済期間中ずっと同じ金利が続くタイプ
- 固定金利期間選択型:一定期間のみ固定金利が適応され、期間経過後に固定金利か変動金利か再選択するタイプ
- 変動金利型:経済情勢などによって金利が上下するタイプ
住宅ローンの多くは、金利のタイプによって利率が異なります。そのため、より利率が低いタイプに変更することで、利息の支払額を減らすことが可能です。
見直し検討は金利から
前述の通り、住宅ローンの見直しには、3つの方法があります。とは言え、借り換えや繰上返済には手間とお金がかかるので、まずは最も手軽な金利タイプの変更から検討しましょう。
ここでは、どうやって金利タイプを変更すればよいのか、具体的な方法を紹介します。
利用中の金融機関へ相談する
金利タイプを変更したい場合は、まず住宅ローンを借り入れている金融機関に相談しましょう。変動金利から固定金利への変更であれば、対応してもらえる可能性があります。
しかし、固定金利から利率の低い変動金利への変更は対応してもらえないことがあります。利息は金融機関の収入源であるため、金利を下げることは収入を減らすことと同じだからです。
金利タイプの変更に対応してもらえない場合は、他社の住宅ローンに借り換え、その際に金利タイプも変更するといった対応をとる必要があります。
返済期間の延長
毎月の返済が負担になっており、手数料のことを考えると借り換えもむずかしい、金利の変更にも対応してもらえないとなった場合には、返済期間の延長を検討してみましょう。
不況や災害などで収入が減少したなど、金融機関に事情が認められれば、返済期間の延長に対応してもらえることがあります。
返済期間を延長すれば、当然1カ月あたりの返済額が下がるので、当面の返済が楽になるでしょう。ただし、返済額が下がって元金の減りが遅くなり、返済期間が長くなることから利息の負担が増えてしまいます。
収入が安定して余裕が出てきたら、返済額を増やしたり、繰り上げ返済したりすることも検討しましょう。
月々の返済でお困りになったとき:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
金利交渉をする
金融機関の方針によって、利用中の住宅ローン商品の金利が引き下げられたり、新たに金利が低い住宅ローンが販売されていたりすることがあります。
このような場合、金融機関に交渉することで金利の引き下げに応じてもらえる可能性があります。他社に乗り換えられるよりは、多少金利を引き下げてでも利用を継続してもらった方が損失は少ないからです。
金利の交渉が難航したら、他社の住宅ローンとの比較表などを用意し、借り換えを検討していることも伝えてみましょう。
ただし、前述のとおり、金利の引き下げは金融機関にとっては収入が減るだけであり、メリットがありません。必ずしも対応してもらえるとは限らないことを理解したうえで、交渉してみましょう。
住宅ローンを借り換える
ここでは、住宅ローンの借り換えの手順やメリット、デメリットを紹介します。
借り換え手続きの手順
住宅ローンの借り換え手続きは、以下のような流れで進めます。
- 借り換えを希望する金融機関の住宅ローンに申し込む
- 仮審査を受ける
- 仮審査に通過したら本審査を受ける
- 本審査に通過したら、元々の金融機関に一括返済を申し込む
- 借り換え先の金融機関と正式に融資契約を締結する
- 借り換え先の金融機関から融資が実行される
- 口座に振り込まれた借入金を、元々の金融機関に送金して一括返済する
- 元々の金融機関で設定されている抵当権(※)を抹消し、借り換え先の金融機関で抵当権を設定し直す
(※抵当権とは、契約者が住宅ローンを返済しきれなくなった場合に、金融機関が担保とされている住宅を売り、その利益でローンを弁済する権利のことです)
借り換えのメリットとデメリット
住宅ローン借り換えの大きなメリットは、今より金利が下がることで利息が減り、総返済額を抑えられることです。また金利タイプや返済期間など、返済条件を変更できる点もメリットといえます。
ただし、借り換えのためには、改めて金融機関の審査を受ける必要があり、あらためて書類を準備するなど手間がかかります。
住宅ローンの借り換えには諸費用が必要
住宅ローンの借り換えの際には、初回借入時と同様に諸費用がかかります。また、抵当権抹消費用など、初回借入時にはかからなかった費用も発生します。
諸費用には、どの金融機関でも金額が共通しているものと金額が異なるものがあり、合計で数万~数百万円かかることがあるので注意が必要です。
あまりに諸費用が高いと、利息が減額できても諸費用で相殺されてしまったり、かえって総返済額が高くなったりするケースがあります。
あらかじめ、諸費用を含めても借り換えた方が安くなるかどうかをシミュレーションすることが重要です。
発生する諸費用
借り換えをする際に発生する諸費用には、以下のようなものがあります。
種類 | 概要 |
事務手数料 | 申し込み手続きの報酬として金融機関に支払うもの |
印紙税 | 経済取引のために作成された文書に課される税金 |
保証料 | 保証会社の保証を受けるために支払うもの |
繰上返済手数料 | 現行の住宅ローンを一括返済するときにかかる手数料 |
抵当権抹消費用 | 現行の金融機関で設定されている抵当権を抹消する手続きにかかる費用 |
抵当権設定費用 | 借り換え後の金融機関で抵当権を設定する手続きにかかる費用 |
上記のうち、印紙税はどの金融機関でも同一です。
- 借入額500万円超 1000万円以下:1万円
- 借入額1000万円超 5000万円以下:2万円
- 借入額5000万円超 1億円以下:6万円
金融機関によって変わる諸費用
印紙税以外の諸費用は、金融機関によって金額が異なります。いくらくらいかかるのか、相場を見てみましょう。
種類 | 金額の相場 |
事務手数料 | ・都市銀行、地方銀行など:3万円程度 ・ネット銀行、都市銀行のWEB商品など:借入額の2.0%程度 |
保証料 | ・都市銀行、地方銀行など:金利に0.2%程度上乗せ ・ネット銀行、都市銀行のWEB商品など:無料 |
繰り上げ返済手数料 | 無料~数万円 |
抵当権抹消費用 | ・登録免許税:土地・建物1件につき1000円 ・司法書士報酬:2万円程度 |
抵当権設定費用 | ・登録免許税:借入額の0.4% ・司法書士報酬:6~10万円程度 |
手数料と保証料は大きな違いが出る
諸費用のうち、事務手数料と保証料は、とくに金融機関ごとに大きな違いが出ます。例えば、事務手数料は、都市銀行などであれば3万円程度で済みますが、ネット銀行などでは借入額の2.0%程度かかるのが一般的です。
借入額の2.0%となると、仮に1500万円借り入れた場合、事務手数料だけで30万円かかります。
保証料もネット銀行などは無料で済みますが、多くの都市銀行などでは金利に0.2%程度上乗せされるため、最終的にそれなりの金額になるでしょう。
そのため、借り換え先を選定する際には、単純に金利だけを比較するのではなく、諸費用も含めて比較することが大切です。
住宅ローンの借り換えで注意したいこと
住宅ローンを借り換えるときには、諸費用以外にも注意したい点があります。
借り換えに適した条件か?
住宅ローンの借り換えを決める前に、そもそも自分が借り換えに適しているのかをよく考える必要があります。一般的に、以下に該当する人が借り換えに適しているとされているので、自分が当てはまるかをチェックしてみましょう。
- 借り換えの前と後で金利に1%以上の差がある
- ローン残高が1000万円以上
- 返済期間が10年以上
住宅ローンの借り換えの大きな目的は、今よりも金利を下げて利息を減らすことです。
現行の住宅ローンとあまり金利差がない、またはローン残高や返済期間が残り少ないと、借り換えによって減額できる利息額が少なくなります。
条件によっては諸費用で減額分が相殺されたり、反対に総返済額が増えたりする可能性があるので注意が必要です。
借り換えの審査は厳しい
借り換え時の審査は、初回の審査よりも厳しくなることがあります。住宅ローンの借入額は、抵当権を設定する住宅の評価額を目安に決定されるのが基本です。
しかし、住宅の評価額は年々下がっていくため、借り換えの際には初回借入時よりも大きく値下がりしています。
その値下がりした評価額で借入額を設定されると、借り換えしようにも金額が足りず、借り換えできない人が続出するため、評価額以上の借入額が設定されることがあります。(オーバーローン)
そうなると、もし返済が滞った場合に住宅を売却しても貸付金が回収できなくなるため、申込者の返済能力がより厳しく調査されるのです。
審査をクリアするポイント
借り換え審査をクリアするには、十分な返済能力があると証明する必要があります。そのためには、以下のようなポイントを押さえておくことが重要です。
- 現行の住宅ローンやその他ローン、クレジットカード、携帯電話の還付料金などの支払いを延滞しない
- 自動車ローンなど、他の借り入れを完済しておく
- 税金の未納をおこさない
特に、延滞の履歴があると「延滞を繰り返すおそれがある」判断され、審査に落ちる確率を大幅に上げてしまうので注意しましょう。
なお、延滞の記録や他社での借り入れの有無、税金の未納などは、信用情報や提出書類から調査できるため、うそをついても意味がありません。
繰り上げ返済を行う
ここでは、住宅ローンを繰り上げ返済をする場合に知っておきたい、繰り上げ返済の種類や注意点を紹介します。
繰り上げ返済の種類
繰り上げ返済には、ローン残高の一部のみ追加返済する『一部繰上返済』と、ローン残高をまとめて返済する『全額繰上返済』の2種類があります。
退職金での一括返済を考えている人もいますが、年金制度に不安が出てきている今、住宅ローンの返済に退職金をつぎ込むのは避けた方がよいでしょう。定期的に一部繰上返済をして、定年前に完済できるような計画を立てるのがおすすめです。
また、一部繰上返済、一括繰上返済ともに、繰上返済手数料がかかる場合があります。手数料の金額は金融機関によって異なるので、前もって調べておきましょう。
なお、一部繰上返済の場合、『期間短縮型』と『返済額軽減型』のどちらにするのかを選択する必要があります。
期間短縮型
期間短縮型とは、繰り上げて返済した金額分、返済期間を短くする方法です。繰り上げ返済をすればするほど返済期間が短くなるので、なるべく早く住宅ローンを完済したいと考えている人は、こちらを選択しましょう。
返済額軽減型
返済額軽減型とは、繰り上げ返済をした金額分、毎月の返済額を下げる方法です。こちらは、返済期間が短くなるわけではないので、定年前に完済したい人には向いていません。
まとめ
住宅ローンの見直しすることで、総返済額を減らせる可能性があります。見直しのタイミングに決まりはありませんが、年収が下がったり健康状態に問題が出たりする前に、早めに見直しておきましょう。