マンション購入に関係する税金
マンションを購入すると、いくつかの税金がかかります。マンションを購入するには、購入代金だけでなく、税金のお金も準備しなければなりません。
ここではまず、マンションの購入時に納める税金について、タイミング別に見てみましょう。
購入時のみかかる税金
マンションの購入時にかかる税金は、以下のとおりです。
- 不動産取得税
- 印紙税
- 登録免許税
不動産取得税とは、土地や家屋を購入・建築するなどして不動産を取得したときに、課税される税金をいいます。不動産取得税の計算式は、『固定資産税評価額×標準税率(※)』です。
印紙税とは、ローンの契約書に貼付する印紙代です。税金額は、契約金額により決まっています。登録免許税は、登記に納める税金です。税金額は、登記の種類などにより異なります。
(※標準税率とは、地方自治体が課税する場合に、用いられるべきとされる税率です。不動産取得税では4%に設定されていますが、2021年3月31日までは土地および住宅にかかる税率は、3%となっています)
不動産取得税|平成31年(2019年)度税金の手引き|三井不動産リアルティ株式会社
保有中は継続してかかる税金
マンション保有時に継続してかかる税金には、以下があります。
- 固定資産税
- 都市計画税
都市計画税とは、都市計画事業などの費用に充てるため、市街化区域内に所在する土地および家屋に対して課せられる税金です。都市計画税は『課税標準額×税率(最高0.3%)』で計算されます。
売却時にかかる税金
マンションの売却時にかかる税金は、以下のとおりです。
- 所得税
- 住民税
所得税および住民税は、購入時よりも高い価格でマンションを売却し、譲渡益を得た場合に課せられます。所得税および住民税の税額は『課税譲渡所得金額(※)×税率』で求めます。
所得税および住民税の税率は、下表のとおりです。なお、所有期間は、売却した年の1月1日時点で計算します。
所得税(%) | 住民税(%) | 復興特別所得税(%) (2013~37年まで) |
|
短期譲渡所得 (マンションの所有期間が5年以下) |
30 | 9 | 0.63 |
長期譲渡所得 (マンションの所有期間が5年超) |
15 | 5 | 0.315 |
(※課税譲渡所得金額=譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)です)
固定資産税とは
固定資産税は、不動産を保有している人が毎年納める、市区町村の税金です。固定資産税の基本事項は地方税法に定められていますが、税率などの詳細は納税する市区町村により異なります。
まず、固定資産税の基本事項を確認しましょう。
不動産を所有している人にかかる税金
固定資産税は、不動産を所有する人に課せられる税金です。不動産には、下表のものがあります。
項目 | 具体例 |
土地 | 田・畑・宅地・池沼・山林・牧場・原野 |
家屋 | 住家・店舗・工場(発電所および変電所を含む)・倉庫 |
償却資産(※) | 構築物・機械・工具・器具・備品等 |
(※償却資産とは、土地や建物以外で事業に供することのできる資産を指します)
1月1日時点の所有不動産へ課税
固定資産税の納税者となる人は、毎年1月1日に不動産を所有している人です。所有者は、以下の方法で確認できます。
- 土地および家屋:不動産登記簿または固定資産補充課税台帳に、所有者として登記・登録されているか
- 償却資産:償却資産課税台帳に、所有者として登録されているか
納税者は、一括もしくは分割で税金を納めなければなりません。分割による納期限は、以下のとおりです。
- 第1期:4月
- 第2期:7月
- 第3期:12月
- 第4期:翌年2月
納期限の詳細は、市区町村ごとに決まっています。詳細は、納税通知書または市区町村ホームページで確認しましょう。
納税通知書で税額を確認してみよう
固定資産税の納税者には、その年の5月ごろに納税通知書および納付書が送られます。納税通知書に記載されるのは、納税者名や納税額・納期限などの基本事項です。
納税通知書を受け取った納税者は、納付書を使い以下のいずれかの方法で納税します。
- 指定された金融機関窓口
- 指定されたコンビニ窓口
- 口座振替
- クレジットカード
- ペイジー(※)
口座振替を希望する人は、あらかじめ金融機関への登録が必要です。口座振替を登録している場合、翌年以降は納付書が送付されない場合もあります。
(※ペイジーとは、税金や公共料金、各種料金などの支払いを、パソコンやスマートフォン・携帯電話・ATM(エイティーエム:現金自動預払機)からできるサービスです)
固定資産税は自分で計算も可能
固定資産税は、自分で計算することもできます。不動産を所有している人は、税率や計算方法などを知っておきましょう。
固定資産税の計算式
固定資産税の計算式は、以下のとおりです。
- 固定資産税額=課税標準額×標準税率(%)
固定資産税の標準税率は、1.4%です。ただし、財政などの理由で必要があると認められた場合、標準課税とは異なる税率になります。
課税標準とは
『課税標準』とは、税額を計算するうえで、基準となる評価額です。固定資産税における課税標準は、通常、『固定資産税評価額』と同額です。
ただし、所有する不動産が何らかの特例措置の対象となっている場合、課税標準は固定資産税評価額よりも低くなることがあります。なお、固定資産税評価額の目安は、以下のとおりです。
- 土地:時価の70%程度
- 新築物件:請負工事金額の50~60%程度
3年ごとに評価替えが実施される
固定資産税評価額は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき、3年に1度の基準年度に見直されます。直近では18年に評価替えが行われました。次回の見直しは、21年度です。
固定資産税評価額は、通常3年間は据え置かれますが、不動産の価値が大幅に値下がった場合などには、3年を待たずに評価替えが行われることがあります。
これは、不動産の時価に対し、高すぎる固定資産税が課せられないようにするためです。固定資産税評価額の今後の見直しなどについて知りたい人は、市区町村窓口に相談しましょう。
評価額や課税標準額の計算方法
ここからは、固定資産税評価額や課税標準額の計算方法を、さらに詳しく見ていきます。
<税金の種類><固定資産税・都市計画税(土地・家屋)> | 東京都主税局
納税通知書や評価証明書で確認できる
固定資産税評価額は、納税通知書や評価証明書で確認できます。納税通知書の具体例は、以下のとおりです。
納税通知書の紛失などにより、固定資産税評価証明書が必要な人は、不動産のある市区町村窓口に申請し発行を受けましょう。申請には、市区町村ごとに定められた手数料がかかります。
土地の評価額
土地の固定資産税評価額を求める計算式は、以下のとおりです。
- 土地の固定資産税評価額=固定資産税路線価(※1)×土地面積×補正割合(※2)
固定資産税路線価とは、市区町村が決める土地の価格で、原則として3年ごとに改定されます。路線価は、どの地域の不動産でも一律の基準で固定資産税額が決まることを目的に、設定されています。
固定資産税路線価は、ウェブサイトの全国地価マップや市区町村窓口で確認しましょう。
(※1:路線価とは、公道に面した1平方mあたりの土地の評価額です)
(※2:土地の形状や用途(借家など)によっては、固定資産税評価額が一定の割合で補正されます)
家屋の評価額
家屋の固定資産税の計算は、再建築価格方式で行われます。再建築価格方式とは、評価対象と同一の建物を再建築した場合に必要な費用に、時の経過による減価補正を考慮し、建物を評価する方式です。
再建築価格方式の計算式は、下表のとおりです。
計算式 | |
新築家屋 |
再建築価格×経年減点補正率
|
在来分家屋 | 前基準年度の再建築価格×建築物価の変動割合 |
在来分家屋の評価は、3年ごと見直されます。なお、見直しにより評価額が前年度を超える場合に適用されるのは、前年度の評価格です。
マンションの場合
マンションの固定資産税は、以下の二つの合計で求めます。
- 建物の専有部分にかかる固定資産税
- 土地の固定資産税
マンションでは、マンションの敷地すべてにかかる固定資産税に、専有部分の持分割合を乗じた分の税金が、それぞれの所有者に課せられます。
所有者ごとの持分割合は、登記簿謄本(※)もしくはマンションの売買契約書で確認しましょう。
(※登記簿謄本とは、土地・建物の所在・面積、所有者の住所・氏名、その物件の権利関係などが記載された、不動産登記簿の写しをいいます。交付が義務付けられているため、法務局(登記所)にて誰でも交付・閲覧が可能です)
分譲マンションの固定資産税はどのように課税されますか? | 岡崎市ホームページ
課税標準の特例
一定の条件を満たす不動産の場合、税金が軽減される特例を受けられます。特例の対象となる物件では固定資産税を大幅に抑えられるため、購入物件を選ぶ際のポイントとして知っておきましょう。
なお、住宅用地および新築住宅の特例を受けるには、特別な手続きは必要ありません。長期認定住宅の特例を受けるには、期限内の申告が必要です。
住宅用地
住宅用地における固定資産税の軽減措置は、下表のとおりです。
区分 | 軽減措置 |
小規模住宅用地 (200平方m以下の部分) |
固定資産税評価額×1/6 |
一般住宅用地 (200平方m超の部分) |
固定資産税評価額×1/3 |
マンションの場合、戸数×200平方m以下の部分が、小規模住宅用地として計算されます。
新築住宅
居住部分の床面積が、1戸につき50平方m以上280平方m以下である新築マンションは、以下の軽減措置を受けられます。
- 120平方m以下の部分:固定資産税額×1/2
- 120平方m超える部分:120平方m相当分についての1/2
軽減措置を受けられる期間は、下表のとおりです。
項目 | 軽減される期間(新築からの年数) |
3階建て以上の準耐火構造および耐火構造住宅(マンション) | 5 |
一般住宅(上記以外) | 3 |
なお、特例の対象となるのは、20年3月31日までに新築された住宅に限ります。
長期優良住宅
認定長期優良住宅の場合、新築住宅の特例を受けられる期間が、下表のように延長されます。
項目 | 軽減される期間(新築からの年数) |
3階建て以上の準耐火構造および耐火構造住宅(マンション) | 7 |
一般住宅(上記以外) | 5 |
認定長期優良住宅の軽減措置を受けるには、必要書類をそろえ、市区町村窓口で申告しなければなりません。申告に必要な書類は、下表のとおりです。
書類名 | 入手方法 |
認定長期優良住宅に対する固定資産税減額申告書 | ・市区町村窓口 ・市区町村のホームページからダウンロード |
長期優良住宅認定通知書(写し) | 市区町村により認定されると発行 |
申告の期限は、新築した翌年の1月31日です。何らかの理由で期限に間に合わなかった場合は、申請書に理由を記載しましょう。
(※認定長期優良住宅とは、09年6月4日~20年3月31日に新築された住宅のうち、良い状態で長く居住するために、一定の基準で設計された住宅です。都道府県知事もしくは市町村長に認定される必要があります)
固定資産税の計算例
ここでは、固定資産税の計算例を解説します。軽減措置の計算方法も、併せて確認しましょう。
新築マンションの場合
以下の条件の新築マンション(築5年まで)を例に、固定資産税を計算してみます。
- 専有面積:100平方m
- 土地の固定資産税評価額:1650万円
- 建物の固定資産税評価額:1100万円
固定資産税の求め方は、下表のとおりです。
項目 | 計算式 | 税額(円) |
土地 | 1650万円×1/6×1.4%(標準税率) | 3万8500 |
建物 | 1100万円×1/2×1.4% | 7万7000 |
合計 | 3万8500円+7万7000円 | 11万5500 |
中古マンションの場合
上記のマンションにおいて、築年数が6年を経過した場合の固定資産税の計算方法は、下表のとおりです。
項目 | 計算式 | 税額(円) |
土地 | 1650万円×1/6×1.4%(標準税率) | 3万8500 |
建物 | 916万3000円×1.4% | 12万8282 |
合計 | 3万8500円+12万8282円 | 16万6782 |
マンションは、年数が経過するにつれ、建物の固定資産税額が安くなります。ただし、新築から6年目以降は新築住宅の特例が受けられなくなるため、新築時よりも固定資産税額が上がります。
エクセルで計算してみよう
固定資産税額は、エクセルを使っても計算可能です。自分では計算が難しい人は、シミュレーションができるウェブサイトを利用する方法もあります。
ただし、ウェブサイトのシミュレーションを利用する場合は参考程度にとどめ、納税通知書の税額に疑問がある場合は、市区町村窓口に相談に行きましょう。
覚えておきたいポイント
ここでは、マンションと固定資産税について、覚えてくとよいポイントを解説します。税金を減らすことで、コストを抑えた不動産運用を目指しましょう。
空き家対策法とマンション経営は関係ある?
先述のとおり、住宅用地の固定資産税には、軽減措置が設けられています。しかし、15年に空家等対策の推進に関する特別措置法が成立したことで、特定空家の敷地には、軽減措置が認められなくなりました。
特定空家とは、以下の状態にある住宅をいいます。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある
- 著しく衛生上有害となるおそれがある
- 適正な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている
- その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である
特定空家にあたる住宅を保有している人は、マンション経営をすることで軽減措置を受けられるようになり、固定資産税を大幅に減らせる可能性があります。
住宅:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 - 国土交通省
マンションと戸建ての固定資産税比較
マンションと戸建てでは、課せられる固定資産税に差が出ます。マンションと戸建ての固定資産税に関する違いは、下表のとおりです。
項目 | マンション | 戸建て |
新築住宅の軽減措置の適用期間(年) | 5 | 3 |
購入代金に占める割合 | 建物が多い | 土地が多い |
建物の耐用年数(年) | 47 | 22 |
このように、戸建ては、マンションに比べ軽減措置を短い期間しかを受けられません。しかし、戸建ての耐用年数は22年とマンションの47年よりも短く設定されているため、以降、建物の減価償却はなされないことから、税額は減ります。
まとめ
マンションを保有している人は、所有する住居および、マンションの敷地全体に持分割合を乗じた部分にかかる固定資産税を納めなければなりません。
マンションが立つ土地には、住宅用地の軽減措置があります。また、新築のマンションでは、新築住宅の軽減措置が受けられます。
税金額の詳細は納税通知書で確認可能です。疑問点がある人は、市区町村窓口で相談しましょう。