住宅ローン契約に年齢制限はある?
住宅ローンの契約には、年齢制限が設けられているのが一般的です。住宅ローンの年齢制限の目安について、知っておきましょう。
住宅ローンについて
住宅ローンとは、その名の通り住宅購入費を借り入れるためのローンです。
原則として、個人が居住するための住宅購入やリフォーム費用、および住宅に付随する土地購入費のための借り入れに限定されています。投資用や賃貸専用の住宅取得費には利用できません。
住宅ローン借り入れ後は、金融機関に対して『元本+利息』を毎月返済していきます。利息とは、融資に対する手数料のようなもので、借入額・金利・借入期間によって金額が決まります。
金利は金融機関によって異なります。返済額を安く抑えたい場合は、金利が低い金融機関を探すことが重要です。
ほとんどが20歳以上からで上限もある
住宅ローンには、以下のような種類があります。
区分 | 概要 | 種類 |
公的ローン | 国や自治体などが提供する住宅ローン | ・財形融資 ・自治体融資 ・住宅金融支援機構融資 など |
民間ローン | 金融機関などが提供する住宅ローン | ・銀行ローン ・信用金庫ローン ・提携ローン(フラット35) など |
ほとんどの住宅ローンで、借入時に年齢が20歳以上であることが条件とされており、上限も設定されています。
銀行によるが目安は70歳未満
住宅ローン借入時の年齢の上限は、70歳が目安です。住宅ローンの契約の際、『団体信用生命保険』への加入を条件としている商品が数多くあります。
団体信用生命保険とは、住宅ローン契約者が死亡したり、病気になったりした場合に、保険金で住宅ローン残高を弁済できる生命保険のことです。
この団体信用生命保険の保障期間が80歳までであるため、80歳までに住宅ローンを完済できるよう、多くの金融機関で借入時の年齢制限を70歳までとしています。
具体的な年齢の上限は商品によって異なるので、希望の住宅ローンの条件を確認するようにしましょう。
年齢は重要な審査事項
住宅ローンは数千万円単位の高額な借り入れになるため、審査において『返済能力』が詳細に調査されます。
返済能力をはかる項目として、収入額や勤務先、勤続年数なども当然チェックされますが、年齢も重要な審査項目のひとつです。
年齢が若すぎると、働き始めたばかりで十分な貯蓄がなく、延滞リスクが高いと判断できるため、金融機関から敬遠されがちです。
一方で高齢になると、退職などで収入が下がったり、病気にかかる確率が上がったりと、回収が難しくなる懸念があるため、同じく敬遠されがちです。
高額な貸し付けを行う側としては、少しでも返済が滞るリスクを減らしたいため、申込者の年齢を重視するのです。
各銀行の借入時年齢条件の例
住宅ローンの主要な借入先である銀行は、借入時の年齢を何歳に設定しているのでしょうか。主な銀行の借入時年齢の条件を紹介します。
メガバンクは70歳以下
巨大な資産を有する銀行のことを、『メガバンク』と呼びます。日本におけるメガバンクは、三菱UFJフィナンシャルグループ・三井住友フィナンシャルグループ・みずほフィナンシャルグループです。
メガバンクの住宅ローンの借入時年齢上限は、以下のように設定されています。
銀行 | 借入時年齢下限 | 借入時年齢上限 | 完済時年齢 |
三菱UFJ | 20歳以上 | 70歳の誕生日まで | 80歳の誕生日まで |
三井住友 | 20歳以上 | 70歳の誕生日まで | 80歳の誕生日まで |
みずほ | 20歳以上 | 71 歳未満 | 81 歳未満 |
三菱UFJ住宅ローン
三井住友住宅ローン・三井住友住宅ローン(諸費用・リフォーム口)
みずほ住宅ローン
楽天銀行は借入時年齢65歳6カ月未満
楽天銀行の住宅ローンは、2018年オリコン顧客満足度調査や価格.com住宅ローンカテゴリ人気ランキングなどで1位を獲得している、人気の商品です。
借入時の年齢の下限は、満20歳です。借入時年齢上限と完済時年齢は、商品によって異なります。
種類 | 借入時年齢上限 | 完済時年齢 |
変動金利(固定特約付き) | 65歳6カ月未満 | 80歳未満 |
フラット35 | 70歳未満(申込時年齢) | 80歳未満 |
変動金利(固定特約付き) - 新規お借り入れ - 商品詳細説明書|住宅ローン|楽天銀行
商品詳細説明書 - フラット35新規お借り入れ|住宅ローン|楽天銀行
年齢別のマイホーム購入割合
マイホームを購入するのは何歳くらいの人が多いのでしょうか。『18年度・住宅市場動向調査』から、マイホームの購入年齢のデータを照会します。
住宅市場動向調査 年度次 2018年度 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
購入年齢は年々上昇
注文住宅・戸建て住宅の購入年齢は、年々上昇しています。マンションについては、分譲・中古ともにやや年齢が下がっていますが、大きな変化は見られません。
種類 | 15年(歳) | 16年(歳) | 17年(歳) | 18年(歳) |
注文住宅(建て替え除く) | 40.6 | 40.9 | 41.0 | 41.4 |
分譲戸建住宅 | 39 | 38.9 | 39.6 | 39.7 |
中古戸建住宅 | 44.6 | 44.3 | 45.8 | 46.2 |
分譲マンション | 43.3 | 43.3 | 44.1 | 42.7 |
中古マンション | 45.6 | 46 | 47.2 | 46 |
新築は30歳代、中古は40歳代が平均年齢
新築住宅や分譲戸建住宅を購入した人は30代、中古マンションを購入した人は40代が多いとの結果が出ています。建て替えやリフォームは、60歳以上が半数以上を占めています。
種類 | 30歳未満(%) | 30代(%) | 40代(%) | 50代(%) | 60代(%) |
注文住宅(新築) | 11.6 | 43.7 | 23.1 | 10.4 | 10.9 |
分譲戸建住宅 | 9.7 | 51.7 | 22.2 | 9.1 | - |
中古戸建住宅 | 5.2 | 30 | 29.7 | 17.2 | 15.5 |
分譲マンション | 5.3 | 49.5 | 22.3 | 10.6 | 12.2 |
中古マンション | 6.2 | 29.1 | 30.9 | 16.0 | 16.9 |
建て替え | - | 6.9 | 11.9 | 15.8 | 63.4 |
若いうちに住宅ローンを組むとお得?
マイナス金利政策の影響で、住宅ローンも昔より低金利になっており、若い人でも借り入れやすくなっています。住宅ローンは若いうちに組んだ方がお得なのでしょうか。
賃貸住宅の家賃負担がなくなる
若いうちに住宅ローンを組んでマイホームを購入すると、賃貸住宅の家賃負担がなくなるというメリットがあります。
もちろん、住宅ローンの返済は発生しますが、賃貸住宅はどれだけ家賃を払い続けても、自分のものになることはありません。マイホームを購入してしまえば、完済後は自分の資産になります。
返済期間を長く組める
若いうちに住宅ローンを組むと、返済期間を長く設定できる点もメリットです。返済期間を長くできれば、その分月々の返済額が下がるので、家計への負担を軽減できます。年齢を重ねて収入が増加すれば、より返済が楽になっていくでしょう。
その分利息の負担は増える
住宅ローンの利息は、完済するまで毎月支払わなくてはならないものです。
返済期間が長くなると、それだけ利息の支払い回数が増え、最終的な支払利息の総額が高くなってしまいます。
総返済額を安く抑えたいのであれば、ボーナスなどで家計に余裕ができたときに繰り上げ返済をするなど、対策を考えておきましょう。
転職や転勤の可能性も視野に入れておこう
20代、30代でマイホームを購入するときには、転職や転勤の可能性も視野に入れておきましょう。
マイホームを購入したにもかかわらず、急な転勤によってすぐに手放すことになったり、転職で収入が下がって返済が苦しくなったりするかもしれません。
また、住宅は経年劣化するものなので、将来的にリフォームや建て替えが必要になることもあるでしょう。マンションであれば、管理費や修繕費が追加で必要になるケースもあります。
さらに、都会を選んだものの、田舎に移り住みたくなるなど、心境の変化もあり得ます。年月が経つほどこのような変化が起こりやすいため、今後のライフプランや将来かかる可能性がある費用について、しっかり考えることが大切です。
50歳以上で住宅ローンを組む場合
50歳以上で住宅ローンを組む場合、注意したい点がいくつかあります。
若い年齢での契約と比べ返済期間が短い
多くの住宅ローンが借入時や完済時の年齢に上限を設定しているため、50歳以上で住宅ローンを組むと、どうしても若い年齢での契約と比べて返済期間が短くなります。
すると、月々の返済額が高額になるため、家計の負担が重くなるでしょう。50歳以上となると、老後資金の確保も考える必要があるため、住宅ローンの返済で家計が圧迫されるのは避けたいところです。
リフォーム資金など、新築と比較して少額の借り入れであればそこまで心配する必要はありません。しかし、新築や建て替えなどで高額の借り入れを考えている場合は、その他の支出の予定についてもよく考えましょう。
30年で組めても定年後の返済が続く
50歳になってすぐ、完済時年齢が80歳の住宅ローンに申し込めば、返済期間を30年に設定できる可能性はあります。しかし、長期ローンを組むと、定年後も返済が続くので、老後の家計の大きな負担になるでしょう。
総務省統計局の資料によると、定年後に再雇用を受けた場合、現役のときの7割程度に収入が下がるとされています。さらに再雇用を終え年金生活が始まると、再雇用期間中の5割程度まで下がるとの結果が出ています。
このときに住宅ローンの返済が続いていると、生活に大きな影響を及ぼすリスクがあることを考慮しておきましょう。
団体信用生命保険に入れない可能性も
多くの住宅ローンの貸し付け条件となっている団体信用生命保険ですが、50歳以上では加入できない可能性があります。
病気のリスクは50代で大きく上昇
団体信用生命保険も、通常の生命保険と同じく、健康状態に問題がある人は加入できません。
病気のリスクは40~50代頃から大きく上昇します。50歳以上で団体信用生命保険に加入しようとしても、健康状態に問題が出ていると、加入審査に通過できなくなります。
多くの住宅ローンは、団体信用生命保険の加入が必須なので、団体信用生命保険に加入できないと住宅ローンも組めない点に注意しましょう。
りそな銀行の団信生命は50歳未満の条件
りそな銀行の団体信用生命保険は、借入時に50歳未満であることが条件です。一般的な財団に比べると年齢制限が厳しいため、りそな銀行での借り入れを検討している場合は、40代までの間に契約を済ませる必要があります。
60歳以上で住宅ローンを組む場合
借入時年齢の上限が70歳前後に設定されている住宅ローンが多いので、60歳以上で住宅ローンを組むことは可能です。
しかし、60歳以上で住宅ローンを組むのは、50歳以上で組むときよりもさらにハードルが高くなります。
審査では年収や健康状態も考慮される
以下は、『18年度・民間住宅ローンの実態に関する調査』の、住宅ローンの貸し付け機関が審査の際に考慮する項目の割合のデータです。
項目 | 割合(%) |
健康状態 | 98.6 |
借入時年齢 | 98.3 |
完済時年齢 | 97.7 |
勤続年数 | 95.7 |
年収 | 95.6 |
健康状態や借入時年齢、年収などが重視されていることがわかります。とくに、健康状態を重要視しているが非常に多いのが特徴です。
60歳以上になると、それまでよりもさらに健康状態に問題が出やすくなります。団体信用生命保険の審査に落ちる可能性も高まるため、健康なうちに契約を済ませた方がよいでしょう。
自己資金を多く用意し、借入額を少なくする
60歳以上で住宅ローンを組む場合、あまり長期間の返済期間は設定できません。完済時年齢80歳の住宅ローンを60歳ちょうどに契約したとしても、最長20年です。
月々の返済額が上がり、家計への負担が重くなるため、自己資金を多く用意して借入額自体を少なくすることを検討しましょう。
ただし、退職金や貯金の大半を住宅ローン返済につぎ込むのは避けたいところです。今は平均寿命が延びているため、年金生活が長くなる可能性があります。
返済で退職金や貯金を使い切ってしまうと、将来の生活費が足りなくなることも考えられます。高齢で住宅ローンを利用する場合は、老後の生活資金との兼ね合いをよく考えましょう。
住み替えやリフォームのローンを組める銀行
住宅ローンの借入可能額は、『住宅の評価額』を目安に決定されます。住宅ローンは借入額が高額であるため、取得する住宅が担保として設定されます。
返済ができなくなったときに、住宅を売却して貸付金を回収することが目的です。評価額以上の貸し付けを行うと、万が一のときに貸付金が回収できなくなるので、評価額が目安にされているのです。
しかし住宅は、年々評価額が落ちていきます。そのため、中古物件を購入してリフォームを行う場合は、購入する住宅に担保としての価値がないとして審査に通らないことがあります。
古い住宅を購入してリフォームする場合は、リフォームに対応した住宅ローンを選んだ方が、審査に通過しやすくなります。
60歳からの住宅応援ローン(愛称:ロクマル) | 三井住友信託銀行株式会社
年齢を重ねてから住宅ローンを組むときは
年齢を重ねてからの住宅ローンは、若いときよりも審査に通りにくくなります。できるだけ審査に通りやすくするためのポイントや、高齢で住宅ローンを組む上での注意点を知っておきましょう。
親子リレーやリバースモーゲージを検討
年齢を重ねてから住宅ローンを組むときには、『親子リレー返済』や『リバースモーゲージ型住宅ローン』を検討しましょう。
- 親子リレー返済:所定の要件を満たす人を後継者とし、2世代で住宅ローンを返済する制度
- リバースモーゲージ型住宅ローン:契約者が死亡した際に住宅が売却され、その利益でローン残高が一括返済される制度
親子リレー返済を利用すると、後継者の申込時年齢を基準に返済期間が設定できるため、高齢の人でも返済期間を長くできます。
また、リバースモーゲージは、契約者の死亡時に住宅の売却益で住宅ローンが一括返済されるため、月々の返済は利息分のみとなり、家計の負担が軽減できます。
リバースモーゲージ型住宅ローン「あんしん革命」|りそな銀行・埼玉りそな銀行
ワイド団信や収入保障保険を検討
生命保険には、『引受緩和型』という健康状態の審査条件を緩和することで、健康状態に問題がある人でも加入しやすくした商品があります。
多くの住宅ローンで必須となる団体信用生命保険にも、同じように健康状態の審査条件を緩和した『ワイド団信』という商品が存在します。
健康状態に問題があり、住宅ローンの契約がむずかしかった人は、このワイド団信付きの住宅ローンを検討してみましょう。
また、フラット35など、団体信用生命保険の加入が任意の住宅ローンでは、収入保障保険などの民間保険で代用することが可能です。
収入保障保険には、年々保障額が下がっていく代わりに保険料も下がっていく商品があり、保険料の負担を軽くできます。
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返済計画をしっかりと立てておくこと
年齢を重ねてから住宅ローンを組む場合は、より一層綿密な返済計画を立てておくことが重要です。現役のときよりも収入が下がったり、病気にかかったりと、若い世代よりも返済が困難になるリスクが高いためです。
今の収入だけではなく、再雇用期間中や年金生活が始まってからの収入でも返済していけるかを、しっかり考えておきましょう。
まとめ
ほとんどの住宅ローンには、年齢制限が設定されています。借入時年齢の上限は70歳未満が目安です。ただし、住宅ローンごとに上限が異なるため、希望の住宅ローンの条件を調べておきましょう。
また、借り入れ可能な年齢でも、健康状態に問題がある場合などは、審査に落ちる可能性が高くなります。スムーズに審査に通過したいのであれば、早めの借り入れがおすすめです。