住宅ローンとは
まず、住宅ローンとはどのようなローンか見ていきましょう。
住宅であれば基本的に利用可能
住宅ローンとは、本人が住む目的で住宅を取得する場合に利用できるローンです。人に貸すためや、セカンドハウスとして利用する物件の取得には利用できません。
自分が住む物件であれば、新築や中古、戸建やマンション、また、リフォームや住宅を建設するための土地の購入にも利用できます。
公的ローンとは
住宅ローンの中には、『公的ローン』と呼ばれる公的機関が融資するローンがあります。主な公的ローンは以下の通りです。
公的ローン | 詳細 |
財形住宅融資 | 財形貯蓄を1年以上行い、その残高が50万円以上であるなどの条件を満たす勤労者が利用できるローン |
自治体融資 | 自治体が居住者などを対象に、独自に提供しているローン。直接融資のほかに民間ローンに利子補給(※)する場合もある |
(※利子補給とは、特定の融資に対して国や自治体などが借入者の利子負担を軽減する目的で、利子の一部もしくは全額分を給付することです)
民間ローンとは
民間ローンとは、銀行・信用金庫・労働金庫・住宅ローン専門会社などの民間金融機関が融資する住宅ローンです。主な民間ローンには以下があります。
種類 | 詳細 |
民間融資 | 銀行・ネット銀行・信用組合・労働金庫・ノンバンクなどが融資するローン。商品が豊富でニーズに合わせた選択が可能。金利キャンペーンを常時行っている金融機関があるなど、競争が激しい |
提携ローン | 金融機関と不動産会社やハウスメーカーなどと提携して、その会社が販売する住宅の購入者などを対象に融資を行うローン。通常より金利の優遇があるなど好条件でローンを組めるケースが多いが、利用できる金融機関は限定される |
金利の種類と計算
住宅ローンの金利の種類と返済額の計算の仕方を解説していきます。
金利の種類
住宅ローンの金利の種類には『全期間固定金利型』・『固定金利選択型』・『変動金利型』があり、それぞれ以下の特徴を持ちます。
金利タイプ | 特徴 |
変動金利型 | ・返済中に定期的に金利・返済額の見直しがあり、変更されることがある ・他の二つの金利タイプに比べ低金利である場合が多い ・返済中に金利が上がり返済額が増える可能性がある |
全期間固定金利型 | ・借入時に返済終了までの全期間の金利が確定し固定される ・月々の返済額・総返済額が借入時に決まる ・返済中に金利の上昇を気にする必要はないが、他のタイプに比べ金利が高め |
固定金利期間選択型 | ・借り入れ当初の一定期間の金利が固定される ・一般的に固定期間が短いほど、当初の金利の引下げ幅が大きい ・固定期間が終わると自動的に変動金利が適用されるが、所定の手続きにより再び固定金利期間選択型を選べるローンが多い |
返済額の計算
住宅ローンの毎月返済額は、以下の計算式(aは返済回数)により算出できます。
毎月返済額=借入金額×月利×(1+月利)a乗÷{(1+月利)a乗-1}
月利とは1カ月当たりの金利のことです。
以下の条件で毎月返済額を計算してみましょう。月利は簡易的に、年利÷12カ月=0.01÷12として計算します。
借入金額:3000万円 金利:年1.0%(全期間固定金利型)
返済期間:35年(返済回数420回)ボーナス返済:なし 返済方法:元利均等返済
毎月返済額=3000万円×(0.01÷12)×(1+0.01÷12)420乗÷{(1+0.01÷12)420乗-1}
上記の条件における毎月返済額の目安は、約8万4700円と試算できます。
シミュレーションしてみよう
計算式を使い返済額を求めるのは非常に複雑なため、金融機関のシミュレーションサイトを利用するほうがよいでしょう。
上記の例と同じ条件で、住宅金融支援機構のホームページにあるシミュレーションサイトを使い毎月返済額を試算してみましょう。
シミュレーションの結果、毎月返済額は8万5000円になり、自分で計算する場合とほぼ同じ金額です。シミュレーションを使うと総返済額の目安も同時に計算されます。この場合の総返済額の目安は3557万円です。
返済方法
金融機関から融資を受けると、元金(実際に借りた金額)に利息を上乗せして返済します。つまり、『毎月返済額=元金+利息』ということです。
住宅ローンの返済方法には、『元利均等返済方式』と『元金均等返済方式』があります。元利均等返済は以下の右図のように、毎月返済額(元金+利息)が一定の返済方法です。
一方、元金均等返済は毎月一定の元金返済分に、元金残高に応じた利息を加えて毎月返済額が算定されます。返済が進み元金残高が減るにつれ利息の支払いが減り、毎月返済額が徐々に減っていく仕組みの返済方法です。
出典:元金均等返済と元利均等返済の違いは何ですか。:よくある質問:長期固定金利住宅ローン
元利均等返済方式
元利均等返済には、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
・毎月返済額が一定で、返済計画が立てやすい ・元金均等返済に比べ返済開始当初の毎月返済額が少ない |
・元金均等返済に比べ総返済額が多い ・返済開始後しばらくは、元金の減り方が遅い |
返済方法を元利均等返済、その他の条件を以下として、返済をシミュレーションすると下表の結果になります。毎月返済額に占める元金と利息の割合が変化することがわかるでしょう。
借入額:3000万円、返済期間:30年、金利:年1.5%、全期間固定金利型
年目 | 元金(円) | 利息(円) | 毎月返済額(円) |
初回 | 6万6036 | 3万7500 | 10万3536(※) |
10年目 | 7万6621 | 2万6915 | |
20年目 | 8万9012 | 1万4524 | |
29年目 | 10万1869 | 1667 | |
総額 | 3000万 | 727万2768 | 3727万2768 |
(※最終回(360回目)のみ毎月返済額が10万3344円です)
元金均等返済方式
元金均等返済では毎月決まった金額の元金を返済するため、元利均等返済に比べ元金の減り方が早く利息の支払いを抑えられます。
下表は上記の例と同じ条件で、返済方法を元金均等返済としたときのシミュレーション結果です。毎月の元金の返済額は一定で、利息の支払い額が毎月変わります。
元利均等返済に比べ総返済額を減らせますが、返済開始からしばらくは毎月返済額の負担が大きいのが特徴です。
年目 | 元金(円) | 利息(円) | 毎月返済額(円) |
初回 | 8万3333(※) | 3万7500 | 12万833 |
10年目 | 2万5104 | 10万8437 | |
20年目 | 1万2604 | 9万5937 | |
29年目 | 1354 | 8万4687 | |
総額 | 3000万 | 676万8600 | 3676万8600 |
(※最終回(360回目)のみ元金の返済が8万3453円です)
フラット35とは
フラット35とは、住宅金融支援機構(以下機構と表現・※)が民間金融機関と提携し、提供している住宅ローンです。融資の申し込みはフラット35を取り扱う民間金融機関を通して行えます。
(※住宅金融支援機構とは、住宅取得のための安定的な資金供給を支援し、住生活向上への貢献を目指す独立行政法人です)
最長35年の住宅ローン
フラット35は、借入期間が最長35年の全期間固定金利型の住宅ローンです。借入期間中に金利の変動がありません。
利用条件などの機構が定める要件は、取扱金融機関で共通ですが、金利・手数料などは異なります。
借入期間は、最長何年まで?:長期固定金利住宅ローン【フラット35】
フラット35の種類
フラット35には、『買取型』と『保証型』の2種類があります。
買取型では、金融機関が利用者に販売した住宅ローン(フラット35の債権)を機構が買い取ります。その住宅ローンを担保に機構が債券を発行し、投資家に販売して資金を調達するのが買取型の仕組みです。
一方の保証型は機構が住宅ローンに保険を付け、契約者が返済できなくなった場合に金融機関に対し機構が保険金(ローンの残債)を支払います。
買取型 | 保証型 | |
ローンの貸し手 | 金融機関(融資後債権を機構が買い取る) | 金融機関 |
取扱金融機関 | 331機関 | 9機関(新規受付はうち、6機関) |
担保 | 融資対象の住宅・敷地に機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定 | 融資対象の住宅・敷地に金融機関を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定 |
団信 | 新機構団信制度の利用が可能 | 金融機関が提供する団信に加入 |
フラット35の特徴
フラット35の主な特徴は、以下の通りです。
- 全期間固定金利タイプ
- 融資を受けるには適合証明書の取得が必要
- 勤務年数・雇用形態などによる申し込みの制限がない
- 繰上返済手数料・保証料が不要
- 健康面の問題で団体信用生命保険に加入できない人も利用できる
フラット35を利用するには、機構が定める技術基準を融資対象物件が満たさなければなりません。物件検査を受け技術基準に適合していると認められると、適合証明書が交付されます。
民間ローンでは適合証明書の提出は、一般的に必要ありません。フラット35は勤続年数などの人に対する審査基準は低めですが、担保となる物件の審査基準は高めといえるでしょう。
住宅ローンの借り換えって何?
ここでは、住宅ローンの借り換えを見ていきましょう。
住宅ローンの借り換えの仕組み
住宅ローンの借り換えとは、別の金融機関で住宅ローンを新たに契約して資金を借り入れ、現在返済中のローンを一括返済する仕組みをいいます。
借り換えの目的は、今より低金利のローンに借り換えて返済額を減らしたり、異なる金利タイプの商品に借り換え、金利の上昇リスクを抑えたりすることです。
借り換えのタイミングは早めがいい?
一般的に金利は、固定金利の方が変動金利より先に変動しやすい傾向にあります。
変動金利は金融機関が1年未満の資金の貸し出しに適用する短期金利を基準にしています。短期金利は日銀によって、実体経済などをもとに慎重に調整されます。
一方固定金利は、長期金利に連動します。長期金利とは、金融機関が1年以上の資金の貸し出しに適用する金利です。主に、景気や金融政策、物価などの長期的な予想で変動します。
つまり、予想で変動する長期金利の方が、経済を先取りした動きになりやすいというわけです。変動金利が上昇し始めてから借り換えようとしても、すでに固定金利は大きく上昇しているかもしれません。
金利の動きに注目してメリットがある場合は、早めに借り換えを検討するほうがよいでしょう。
借り換えのメリットとデメリット
借り換えには返済額を減らす、もしくは将来の金利上昇のリスクを抑えるメリットがあります。
返済中のローンより低金利の商品に借り換えると、総返済額を減らせます。また、変動金利でローンを組んでいる人は、全期間固定金利型や固定期間が長い住宅ローンに借り換えると、金利上昇のリスクを抑えられるでしょう。
しかし、借り換えには諸費用が掛かるというデメリットがあり、事務手数料などが数十万から100万円近くかかることもあります。
借り換えによって返済額を減らしたい場合は、返済額の減少分がコストを上回るか確認してから借り換えましょう。
住宅ローン減税制度を使おう
『住宅ローン減税制度』は正式名を『住宅借入金等特別控除』といい、『住宅ローン控除』とも呼ばれます。ここでは、住宅ローン控除を解説していきます。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは住宅ローンを使い住宅を購入した場合に、年末の住宅ローン残高の1%(1年間の控除額の上限40万円)が還付される制度です。居住開始から10年間が適用期間となっています。
仮に、年末の住宅ローンの残高が2000万円であれば、納めた税金のうち20万円が戻ってくるということです。
控除を受ける条件
住宅を新築または新築住宅を購入した場合に住宅ローン控除を受けるには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 新築または取得日から6カ月以内に入居している
- 控除を受ける年の所得が3000万円以下である
- 購入した住宅の登記簿上の床面積が50平方メートル以上
- 床面積の50%以上が本人の居住用である
- ローンの返済期間が10年以上である
中古の住宅やマンションを取得した場合は、上記の条件に築年数などの条件が加わります。
No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
住宅ローン控除の手続き
住宅ローン控除を受ける1年目は、確定申告による手続きが必要です。2年目以降は会社員などの給与所得者は年末調整での手続きが可能ですが、自営業者は2年目以降も確定申告をしなければなりません。
確定申告では、まず、住民票の写しや源泉徴収票などの必要書類をそろえ、書類を見ながら『(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書』を作成します。
給与所得者の場合は『確定申告書A』に必要事項を記入し、作成した計算明細書と必要書類を添えて期日中に管轄する税務署に提出しましょう。なお、郵送による提出も可能です。
借り換え時の注意
住宅ローン控除の適用中に借り換えしても、以下の条件を満たしていれば引き続き控除を受けられます。
- 借り換えた住宅ローンが当初の住宅ローンの返済のためのものである
- 借り換えた住宅ローンの返済期間が10年以上であるなど、住宅ローン控除の適用要件に該当する
住宅ローン控除を受けられる期間は借り換えた時点から更に10年間ではありません。あくまでも、住宅を取得して最初に入居した年から数えて、10年間です。
海外赴任や海外在住のケース
住宅ローンの返済中に海外赴任となった場合の、住宅ローン控除の適用について見ていきましょう。
家族で赴任や移住する場合
家族を連れて海外に赴任する場合は住宅ローン控除を受けられません。しかし、海外赴任を終えて再び元の住宅に住む見込みであれば、赴任前に以下の書類を住宅所在地の所轄税務署に提出しておくと、帰国後は控除を受けられます。
- 転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書
- 年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
帰国後は控除を受けるための確定申告が必要です。また、再控除の適用期間は、物件を取得し居住を始めた年から数えます。
例えば、2年間の住宅ローン控除を受け3~5年目に家族と共に海外赴任すると、3~5年目は控除を受けられません。6年目に帰国すると控除が適用される期間は5年です。
単身赴任の場合
住宅ローン控除の適用中に海外へ単身赴任する場合は、家族が引き続き居住し海外勤務終了後に本人が一緒に住む見込みであれば、単身赴任中も控除を受けられます。
ただし、非居住者(※)の場合は、控除の対象は国内源泉所得に限定されます。国内源泉所得とは、日本国内に発生源がある所得をいい、一般的には非居住者の海外での勤務に対する給与は国外源泉所得の扱いです。
(※非居住者とは国内に住所を持たず、現在まで引き続き1年未満しか国内に滞在していない個人を指します。海外支店などに1年以上の予定で転勤した場合は、一般的には非居住者です)
まとめ
住宅ローンには、公的ローンと民間ローンがあり、金利タイプや返済方法なども様々です。商品内容をよく吟味して、自分に合った住宅ローンを選ぶとよいでしょう。
また、住宅ローンを変動金利で組むときは、返済中の金利の変動に注目し借り換えのタイミングを検討しましょう。