海外移住する場合は住宅ローンはどうなる?
転勤などにより海外へ移住した場合、住宅ローンはどうなるのでしょうか。
単身赴任で家族は残る場合
住宅ローンは、契約者本人が居住することを目的として住宅を購入する場合に利用できます。しかし、単身赴任などのやむを得ない理由で、本人が居住できなくなる場合もあるでしょう。
本人が海外に単身赴任し、残った家族がその住宅に住み続ける場合は、一般的にはローン契約を継続できます。単身赴任が決まったときは、契約先の金融機関に伝える必要があります。
家族も一緒に移住する場合
家族も一緒に海外へ移住し、長期間空き家になる場合は、住宅ローン残債の一括返済を金融機関から求められることがあります。
住宅ローンの一括返済を求められた場合は、余剰資金がある場合は別として、自宅を売却し、その代金を住宅ローンの一括返済に充てるなどの検討が必要です。
仮にローン契約の継続が可能でも、ローンの返済に加え税金や、空き家の維持・管理にコストがかかり負担になることも考慮しなければなりません。
売却と賃貸はどちらが良い?
売却と賃貸のどちらが良いかは、各世帯の家計状況や、今後のライフプランなどにより異なります。
賃貸に出す場合は、住宅ローンより金利が高めの賃貸住宅ローンなどに借り換えが必要かもしれません。各家庭によってさまざまなので、まずは、返済中の金融機関に相談してみましょう。
賃貸では固定資産税や修繕費、管理費用などのコストがかかります。不動産会社に家賃とコストの見積りを依頼し、家賃収入からどの程度の金額を返済に回せるか把握することも必要です。
売却する場合は、不動産会社などに売却価格の見積もりを依頼してみましょう。売却価格から仲介手数料などのコストを引いた金額が、ローンの残債額以上であれば自宅を売却したお金で住宅ローンの一括返済が可能です。
海外在住で住宅ローンは組めるか
海外赴任中に住宅ローンは組めるのでしょうか。
海外在住中の場合のポイント
住宅ローンを組めるのは本人、もしくは家族が居住する住宅を購入する場合です。
したがって、家族全員で海外に居住している世帯が住宅ローンを組むには、近いうちに家族全員もしくは世帯主以外の家族の帰国が決まっていなければなりません。
また、住宅ローンの審査・契約には、さまざまな書類の用意も必要です。海外赴任が1年以上におよび非居住者(※)になると、日本では所得税を徴収されないことから源泉徴収票が発行されません。
通常は、源泉徴収票の代わりに『海外勤務者用の給与証明書』を勤務先に作成してもらい提出することで代用できます。
(※非居住者とは、日本国内に住所を持たず、現在まで引き続き1年未満しか国内に居住していない個人を指します)
ローン手続きについて
住宅ローンのほとんどの手続きは郵送やインターネットなどを利用できますが、本契約は本人が帰国して手続きをしなければなりません。また、物件の選定や別途面談などで帰国が必要になることもあります。
また、海外勤務中は住民票・印鑑証明書を取得できません。代わりに赴任先の日本大使館・総領事館に、在留証明書などの書類を発行してもらい提出します。取り寄せに時間がかかる場合もあるので、早めに準備を始める方がよいでしょう。
さまざまな書類が必要になりますので、金融機関や不動産会社と相談し計画を立てて、不備のないように手続きを進める必要があります。
海外赴任時の住宅ローン控除手続き
住宅を取得し一定の条件を満たすと『住宅ローン控除』を受けられます。住宅ローン控除とは、10年間にわたり年末の住宅ローン残高の1%(最高で40万円まで)が所得税から戻ってくる制度です。
国内で働く会社員が控除を受けるには、物件を購入・入居した翌年に確定申告をし、2年目以降は年末調整の際に必要書類を提出して手続きを行います。
では、海外赴任時の住宅ローン控除はどうなるのでしょう。
単身のケース
海外に1年以上単身赴任中の人(非居住者)が日本で住宅を取得した場合(※1)、以下の条件をすべて満たすと住宅ローン控除を受けられます。なお、控除を受けるには国内に納税管理人(※2)を定め、確定申告を代行してもらうことが必要です。
- 家族が住宅引渡日から6カ月以内に入居し、その年の12月31日において居住している
- 単身赴任終了後は家族と一緒にその住宅に居住する見込みである
ただし、非居住者は国内源泉所得のみが控除の対象です。国内源泉所得とは、国内での勤務に対する給与のように、所得が発生する源泉が日本国内にある所得を指します。
海外に転勤し支払われる給与(非居住者)は、通常、国外源泉所得として扱われ住宅ローン控除の適用外です。
(※1:平成28年4月1日以降に国内に住宅を取得した場合です)
(※2:納税管理人は、住所が日本にない納税者に代わり確定申告書の提出や税務署からの書類の受け取りなどを行います)
家族で移住するケース
住宅の取得日から6カ月以内に入居しても、その年の年末前に家族を伴い海外赴任すると住宅ローン控除を受けられません。しかし、海外赴任終了後は必要書類を添えて確定申告をすることで控除を受けられます。
また、住宅ローン控除を受けている人が家族を連れて海外赴任した場合も、赴任中は控除を受けられません。海外赴任の前に管轄の税務署に必要書類を提出し、帰国後に確定申告をすると再び控除を受けられます。
どちらの場合も住宅ローン控除の適用期間は、当初の住み始めた年から数えます。例えば、10年の適用期間で最初の2年間控除を受けた人が3~5年目は家族と共に海外赴任をし、6年目に帰国したとします。このケースでは、帰国後の控除の適用期間は5年です。
まとめ
海外に単身赴任する場合は一般的には住宅ローンの契約を継続できますが、家族を連れて海外赴任するケースでは一括返済を求められることもあります。
海外赴任を機会に住宅の売却や賃貸を考える場合は、いくらのコストがかかり、どの程度の金額が手元に残るかを把握した上で検討しましょう。