自宅兼事務所にかかる費用で経費となるもの
自宅兼事務所を建てると、住宅ローンの返済や固定資産税などさまざまな費用が発生します。しかし、これらの費用をすべて経費として計上することはできません。スムーズに経理処理できるように、どの費用であれば経費計上できるのかを知っておきましょう。
減価償却費や固定資産税
自宅兼事務所は『固定資産』に該当します。固定資産とは、1年以上使用することを前提として保有する資産のことです。
そして、固定資産を保有した場合には、その固定資産の評価額に応じた固定資産税が発生します。この固定資産のうち、事務所として利用している割合(事業割合)に対する固定資産税は、経費計上することが可能です。
また、高額で長期間使用するものを購入した場合、購入にかかった費用を一括で経費にすることはできません。法定耐用年数に応じた期間で分割し、長期間かけて経費に計上していきます。これを減価償却といいます。
自宅兼事務所の事務所部分の取得にかかった費用は、減価償却費として経費に計上できます。
利息など元本以外の住宅ローン諸費用
住宅ローンを組んで自宅兼事務所を建てた場合、当然借入金を返済していかなくてはなりません。
返済額は『元金+支払利息』で決まりますが、経費として計上できるのは、返済額のうち事務所部分にかかる支払利息のみです。元金は借り入れたお金を返しているだけなので、経費に計上することはできません。
なお、住宅ローンを組む際には事務手数料や保証料、印紙代といった諸費用が発生しますが、事業割合分の諸費用は経費計上することが可能です。
経費計上する住宅ローン利息の計算方法
住宅ローンの支払利息のうち、いくら経費計上できるのか、計算方法を知っておきましょう。
事務所の床面積を自宅の総面積で割る
自宅兼事務所の住宅ローンの支払利息を経費計上するには、住宅ローンの支払利息を『事務所分』と『家事分(自宅分)』に分けなくてはなりません。これを『家事按分(かじあんぶん)』といいます。
事務所分の割合は、自宅兼事務所のうち事務所として利用している床面積を、自宅兼事務所の総面積で割って算出します。
仮に、支払利息が月1万円、事務所分の割合が30%だったとしたら、支払利息のうち3000円は経費計上できるということです。
事務所部分のみを経費にできる
自宅兼事務所にかかる費用のうち、経費計上できるのは事務所分のみです。事務所分を何割にするのか、法律で規定されているわけではありません。
しかし、税務署から指摘された場合に、なぜその割合で計上したのか明確な根拠を提示する必要があります。できるだけ多く経費計上したいからといって、事務所用として使用していない部分まで含めるようなことは避けましょう。
住宅ローン利息を経費とする場合の確定申告
住宅ローンの支払利息を経費計上した場合、どのように確定申告すればよいのでしょうか。
収支内訳書又は青色申告決算書に記入
住宅ローンの支払利息を経費計上した場合、白色申告の場合は『収支内訳書』に、青色申告の場合は『青色申告決算書』に金額を記入します。
項目は利子割引料
住宅ローンの支払利息の金額を記入する項目は、『利子割引料』です。収支内訳書では2ページ目に、青色申告決算書では3ページ目に記入欄があります。
利子割引料の内訳記入欄もありますが、この欄は金融機関以外に利息を支払った場合に記入する欄なので、住宅ローンの支払利息のみの場合は記入する必要はありません。
住宅ローン諸費用を経費とする場合の注意点
住宅ローンを利用して住宅を新築した場合、『住宅ローン控除』が受けられます。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を新築・購入・増改築し、所定の要件を満たした場合に、一定額を所得税額から控除して税額を軽減できる制度です。
住宅ローン控除を受ける予定がある場合、住宅ローン諸費用を経費計上する際に注意しておきたいことがあります。
No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
住宅ローン控除の適用は自宅部分のみ
住宅ローン控除は、個人の居住用の住宅を対象とした控除です。よって、住宅ローン控除を組んで自宅兼事務所を建てた場合、住宅ローン控除を適用できるのは『自宅部分のみ』となります。
事務所部分が50%以上の場合は適用不可
住宅ローン控除の要件のひとつに、『新築・購入した住宅の床面積の1/2以上の部分が自分の居住用として使用されていること』というものがあります。
住宅ローン諸費用の50%以上を経費として計上している場合、住宅ローン控除が適用できなくなるので注意が必要です。
まとめ
住宅ローンを利用して自宅兼事務所を建てた場合、『事務所部分』にかかった固定資産税や減価償却費、住宅ローンの支払利息、その他諸経費に限り経費計上できます。
税務署から自宅分と事務所分の割合について説明を求められることもあるので、できるだけ経費にしたいからといって、事務所分を多く計上するようなことは避けましょう。