住宅ローン借入可能額の試算
住宅ローンとは、住宅や宅地の購入および住宅の建築のため、物件を担保(※)として金融機関などから借り入れるローンです。
住宅ローンをいくら借りるかにより、購入できる住宅の価格が変わります。よって、物件探しを始める前に借り入れられるローンの金額を知れば、購入する物件の予算が明確になります。
ここではまず、住宅ローンの借入額の目安の立て方について、見ていきましょう。
(※担保とは、ローンを借りる人が返済できなくなったときに、ローンを貸した人に返済の原資として提供されるものです)
上限の目安は年収の何倍ぐらい?
住宅ローンの借入上限額の目安は、一般的に年収の5倍程度といわれます。借入上限額の決定に影響する項目は、以下のとおりです。
- 年収
- 借入金利
- 債務者が保有するその他の借り入れ
- 物件の評価
住宅ローン以外に借り入れがある人は、住宅ローンの借入限度額が少なくなる可能性があります。また、担保となる物件の立地や築年数などによっても、借りられるローンの金額に差が出ます。
借入可能額の計算方法
年収を用いた借入可能額の計算は、自分でも可能です。計算は、以下の手順で行います。
- 1年あたりの借入限度額を求める(年収×返済負担率(※1))
- 1カ月あたりの借入限度額を求める(1年あたりの借入限度額÷12)
- 100万円を借入年数で返済した場合の、月額返済額を求める(審査金利(※2)を用いる)
上記の結果をもとに、1カ月あたりの借入限度額÷100万円返済時の月額返済額×100万円を計算すれば、借入可能額が分かります。
(※1:返済負担率とは、年収に対し住宅ローンの年間返済額が占める割合のことです)
(※2:審査金利とは、ローンの借入審査に使用される金利です。将来の金利の上昇を考慮し、ローンの借入時に実際に適用される金利よりも、高めに設定されます。審査金利は一般的に、4%程度です)
早見表やシミュレーションも活用しよう
銀行によっては、ホームページで借入可能額のシミュレーションができます。借入可能額を簡単に知りたい人は、シミュレーションを利用するとよいでしょう。
また、借入限度額の早見表を用意している銀行もあります。銀行窓口を活用し、借入可能額や返済計画・資金計画など、住宅ローンに関する幅広い相談をしてみましょう。
住宅ローン借入に関する平均
次に、住宅ローンに関する平均値をいくつか紹介します。まずは、住宅の購入において住宅ローンを借り入れている世帯の割合を、下表にまとめます。
住宅の種類 | 住宅ローンを保有する世帯の割合(%) |
注文住宅(新築) | 56.9 |
注文住宅(建て替え) | 31.1 |
分譲戸建て住宅 | 68.7 |
分譲マンション | 63.5 |
中古戸建て住宅 | 52.5 |
中古マンション | 50.3 |
報道発表資料:「平成29年度 住宅市場動向調査報告書」の修正について - 国土交通省
金利タイプ別構成比
住宅ローンの借り入れで適用される金利の種類は、下表の3つです。
金利の種類 | 詳細 |
変動金利 | 金融情勢に応じて、適用する金利を一定期間ごとに変動させる |
固定金利期間選択型 | 一定期間のみ金利を固定。期間終了後は、変動金利となる |
全期間固定金利型 | 借入時の金利が、ローンを完済するまで適用される |
2017年に貸し出された住宅ローンのうち、最多の金利タイプは変動金利で、60%程度です。次に多いのが固定金利期間選択型(10年以下)で、10%を超えます。
全期間固定金利型(10年超)は、だいたい10%程度の構成比で、3番目に多い金利タイプです。
返済月額
住宅ローンを借り入れている人の返済額の平均は、下表のとおりです。
住宅の種類 | 年間返済額(円) | 月間返済額(円) |
注文住宅 | 130万5000 | 約10万9000 |
分譲戸建て住宅 | 119万2000 | 約10万 |
分譲マンション | 123万1000 | 約10万3000 |
中古戸建て住宅 | 110万 | 約9万2000 |
中古マンション | 96万4000 | 約8万 |
返済期間
住宅ローンの返済における返済期間の平均は、下表のようになっています。
平均返済期間(年) | |
注文住宅(建物) | 31.1 |
注文住宅(土地) | 33.2 |
分譲戸建て住宅 | 30.7 |
分譲マンション | 29.7 |
中古戸建て住宅 | 26.3 |
中古マンション | 24.7 |
借入可能額の指標
借入可能額を考えるには、目安となる指標を知っておくことが大切です。ここでは、借入可能額を考えるにあたり、参考となる3つの指標を解説します。
返済負担率
返済負担率とは、年収に対し住宅ローンの年間返済額が占める割合のことです。返済負担率は、以下の式で求めます。
- 返済負担率(%)=年間返済額÷年収×100
例えば、年収500万円の人が1年間で150万円の住宅ローンを返済している場合、返済負担率は30%(150万円÷500万円×100)です。
返済負担率は、一般的に35%以内に抑えることが望ましいとされます。返済負担率が35%を超える場合は、借入額を再検討しましょう。
融資率
融資率とは、建設費や購入価額に対して、住宅ローンの借入額が占める割合です。融資率は、以下の計算式で求めます。
- 融資率=借入額÷住宅の建築費もしくは購入価格
例えば、3000万円の住宅を購入するために2700万円の住宅ローンを借り入れた場合、融資率は9割(2700万円÷3000万円)です。
フラット35(※)では、融資率が9割以下か9割超かによって、金利が変わります。金利を抑えたい人は、頭金を準備することで、融資率を下げる方法があります。
(※フラット35は、取り扱い先の民間金融機関と住宅金融支援機構が提供している、長期固定金利の住宅ローンです)
借入限度額
借入限度額は、債務者が借り入れられる最大のローン金額のことです。借入限度額は、年収に対する借入可能額や返済比率等をもとに、各金融機関が決定します。
ただし、借入限度額いっぱいの住宅ローンを組んでしまうと、返済中の負担が大きくなる可能性があります。無理なく返済していくためには、余裕を持った借入額にすることが大切です。
覚えておきたいポイント
住宅ローンは、借入額が大きく返済期間が長いといった特徴があります。よって、借入前に借入条件や資金計画などをよく検討することが重要です。
住宅ローンを借り入れるにあたっては、以下のポイントを確認しましょう。
完済時年齢
住宅ローンの借入時に確認するポイントの1つ目は、完済時の年齢です。住宅ローンの返済中は、滞納することなく毎月返済を続けていかなければなりません。
完済時の年齢によっては、定年退職などにより、ローンの返済が難しくなる可能性もあります。ローンを借り入れる際には、返済中の年齢と収入を考えることが大切です。
返せる額かどうかが重要
借入限度額は、現在の収入をもとに計算されます。よって、借入限度額いっぱいに借り入れをした場合、返済中の状況の変化によっては、返済が苦しくなることも考えられます。
返済が難しくなるケースには、以下が考えられます。
- 転職・退職により、収入が減る
- 教育費がかかる
- 病気やけがなどにより治療費がかかるまたは、収入が減る
住宅ローンは、返済中に収入や支出に変化があっても、無理なく返済できる金額で借り入れることが重要です。
住宅ローンは夫婦で組むことも可能
住宅ローンは、夫婦で組むこともできます。夫婦で借り入れる住宅ローンには、どのような種類があるのでしょう。
収入合算とは
夫婦で住宅ローンを借りる場合、夫と妻の収入を合わせて住宅ローンの借入額を計算する『収入合算』が行われます。収入合算をすると、単独で借り入れるよりも借入額を大きくできます。
収入合算の魅力は、借入額を大きくすることで、購入できる住宅の選択肢を広げられる点です。収入合算するには、いくつかの方法があります。
連帯保証型のメリット
収入合算の方法の一つが、連帯保証型です。連帯保証型では、収入を合算した人が連帯保証人となります。
連帯保証人は、主債務者と連帯して債務を負担することを約束した保証人で、主債務者が返済できなくなったときに、代わりに返済する義務を負います。
連帯保証型の住宅ローンを契約する際の基本事項は、下表のとおりです。
項目 | 詳細 |
債務者 | 夫もしくは妻(ローンを申し込んだ人) |
収入合算する人の立場 | 連帯保証人 |
住宅ローンの本数 | 1本 |
団体信用生命保険(※1) | 債務者のみ加入 |
住宅ローン控除(※2) | ローン申込者のみ対象 |
連帯保証型のメリットは、債務者が返済をし続ける限り、連帯保証人には返済の義務が生じない点です。
(※1:団体信用生命保険は、住宅ローンを組む人が被保険者(保険の対象者)、銀行が契約者および保険金受取人となり契約します。債務者が死亡・高度障害状態になると保険金が支払われ、以後のローン返済は不要になります)
(※2:住宅ローン控除とは、住宅の取得や一定の増改築・ リフォーム工事を行い10年以上のローンを組んだ場合に、所得税が控除される制度です)
連帯債務型のメリット
収入合算の2つ目は、連帯債務型です。連帯債務型では、夫と妻がお互いに連帯債務者(※)となります。
例えば、3000万円の住宅ローンを、夫が2000万円妻が1000万円の持ち分で借り入れたとします。
この場合、自分の持ち分のローンを、それぞれ毎月返済しなければなりません。相手の返済が滞った場合には、連帯債務者が滞納分も返済する必要が生じます。
連帯債務型の住宅ローンの基本事項は、下表のとおりです。
項目 | 詳細 |
債務者 | 夫および妻(主たる債務者と連帯債務者) |
住宅ローンの本数 | 1本 |
団体信用生命保険 | 多くの場合、夫もしくは妻のどちらか1人 |
住宅ローン控除 | それぞれの持ち分に対し受けられる |
連帯債務型では、住宅ローン控除を夫婦で受けられるメリットがあります。
(※連帯債務者は、主債務者と連帯して同一の債務を負います。よって連帯債務者は、主債務者と同じ立場で、ローンの返済をしていかなければなりません)
ペアローンのメリット
収入合算の3つ目は、ペアローンです。ペアローンでは、1つの物件に対し夫と妻がそれぞれ住宅ローンを組み、お互いに連帯保証人となります。ペアローンの基本事項は、下表のとおりです。
項目 | 詳細 |
債務者 | 夫および妻(それぞれが住宅ローンを契約) |
住宅ローンの本数 | 2本 |
団体信用生命保険 | 夫と妻がそれぞれ加入 |
住宅ローン控除 | それぞれの住宅ローンに対し受けられる |
ペアローンでは、夫と妻が住宅ローン控除を受けられます。また、それぞれが団体信用生命保険に加入するため、相手が死亡もしくは高度障害状態になったときに、相手の住宅ローンの返済義務がなくなる点もメリットです。
住宅ローンの借入可能額を夫婦で上げる方法。収入合算とペアローン
自営業の人の注意点
給与所得を得ている会社員は、会社から渡される源泉徴収票をもとに、借入額が決まります。しかし、給与所得でない自営業の人は、源泉徴収票がありません。
ここでは、自営業の人が住宅ローンを借り入れる際のポイントを解説します。
所得金額で計算
自営業の人が住宅ローンを借りる際に審査されるのは、所得です。自営業の人の収入を考えるには、以下の3つのポイントがあります。
- 売り上げ:商品の販売やサービスの提供といった、仕事を通じて得た売上高
- 経費:事業を行うためにかかった費用
- 所得:売り上げから経費を引いた金額
住宅ローンでは、所得を基準として借入限度額が計算されます。
安定した所得がポイント
自営業の人が住宅ローンを借りるうえでは、毎年安定した所得を得ていることも重要なポイントです。住宅ローンの借入時には、毎年安定した収入を得ていることを証明する書類として、以下の提出を求められます。
- 所得証明書
- 納税証明書
- 住民税課税決定通知書
- 確定申告書の控え
どの書類が必要かは、ローンを組む銀行により異なります。また、確定申告書の控えは多くの場合、直近2期や3期など複数年分の提出を求められる点に注意しましょう。
住宅ローンの借入可能額、自営業者では?申し込みのポイントも解説
主な金融機関の限度額とシミュレーション
最後に、いくつかの金融機関を例に、住宅ローンの借入限度額をシミュレーションしてみます。なお、シミュレーションに使用する金利は、19年4月15日現在のものとします。
みずほ銀行
みずほ銀行の住宅ローン適用金利は、以下のとおりです。
- 変動金利: 0.525~0.775%
- 固定金利期間選択(5年):0.55~0.8%
- 固定金利期間選択(10年):0.65~0.9%
例えば、毎月の返済額10万円、ボーナス返済額10万円、その他の借り入れなしで住宅ローンを借り入れたとします。この場合の借入限度額のシミュレーンは、下表のとおりです。
変動金利(円) | 固定金利期間選択(円) | |||
5年 | 10年 | |||
借入期間 | 30年 | 3281万 | 3269万 | 3222万 |
35年 | 3771万 | 3775万 | 3692万 |
ろうきん
ろうきんの住宅ローン適用金利は、以下のとおりです。
- 変動金利: 0.625%
-
固定金利期間選択(5年):0.75%
- 固定金利期間選択(10年):0.8%
仮に、3000万円の住宅ローンを30年で借り入れた場合、金利別の返済額および、総返済額は下表のようになります。なお、ボーナス返済はないものとします。
変動金利(円) | 固定金利期間選択(円) | ||
5年 | 10年 | ||
毎月の返済額 | 9万1411 | 9万3085 | 9万3760 |
1年間の返済額 | 109万6932 | 111万7020 | 112万5120 |
総返済額 | 3290万7937 | 3351万615 | 3375万3636 |
上記と同条件で、3500万円借り入れた場合のシミュレーションは、下表のとおりです。
変動金利(円) | 固定金利期間選択(円) | ||
5年 | 10年 | ||
毎月の返済額 | 10万6646 | 10万8599 | 10万9387 |
1年間の返済額 | 127万9752 | 130万3188 | 131万2644 |
総返済額 | 3839万2652 | 3909万5747 | 3937万9255 |
住宅ローンシミュレーション|ローンシミュレーション|中央労働金庫
JA
JA(ジェイエー)の住宅ローン適用金利は、各JAにより異なります。ここでは、JA相模原市を例に、シミュレーションを見てみましょう。JA相模原市の適用金利は、以下のとおりです。
- 変動金利: 0.6%
-
固定金利期間選択(5年):0.675%
- 固定金利期間選択(10年):0.75%
仮に、3000万円および3500万円の住宅ローンを30年で借り入れた場合、金利別の返済額は下表のようになります。なお、ボーナス返済はないものとします。
借入額(円) | 変動金利(円) | 固定金利期間選択(円) | ||
5年 | 10年 | |||
毎月の返済額 | 3000万 | 9万1078 | 9万2078 | 9万3085 |
3500万 | 10万6258 | 10万7425 | 10万8599 | |
1年間の返済額 | 3000万 | 109万2947 | 110万4945 | 111万7026 |
3500万 | 127万5105 | 128万9102 | 130万3197 |
まとめ
住宅ローンには、借入限度額があります。借入限度額は年収などにより異なるため、知りたい人は、銀行窓口もしくはホームページでシミュレーションをするとよいでしょう。
借入限度額いっぱいの住宅ローンを組んでしまうと、場合によっては返済が難しくなることもあります。毎月の返済額などをよく確認し、資金計画をしっかりと立てたうえで借り入れることが重要です。