住宅ローンの親子リレーローンの仕組み
『住宅ローン』とは、新築や中古の一戸建ておよび、マンションを購入する資金として借り入れるローンです。『親子リレーローン』では、一定の条件のもと2世代にわたり、住宅ローンの返済をしていくことになります。
親子リレーローンでは通常、親を住宅ローンの借入人、子を連帯債務者として、住宅ローンを借り入れます。ここではまず、親子リレーローンの基本事項を見ていきましょう。
申し込み条件は
親子リレーローンを利用するには、年齢や収入など一定の条件があります。条件の一例は、下表のとおりです。
条件 | |
りそな住宅ローン | ・現在同居しているもしくは、将来同居の予定がある親・子 ・借入時の年齢が満20歳以上70歳未満で、完済時の年齢が満80歳未満(親は完済時に80歳以上でもよい) ・前年度の年収が税込100万円以上 ・勤続年数1年以上の給与所得者もしくは、勤続年数3年以上の給与所得者以外の人 ・団体信用生命保険(※)に加入できる |
フラット35 | ・申込者の子・孫および、配偶者で、定期収入がある ・申込時の年齢が満70歳未満 ・連帯債務者になれる人 |
借り入れの条件は、銀行により差があります。いくつかの銀行で相談し、比較検討するとよいでしょう。
(※団体信用生命保険は、住宅ローンを組む人が被保険者(保険の対象者)、銀行が契約者および保険金受取人となり契約します。債務者の死亡・高度障害状態により保険金が支払われ、以後のローン返済が不要となります)
親子ペアローンと違いは
住宅ローンには、親子リレーローンのほかに親子ペアローンがあります。親子リレーローンと親子ペアローンの違いは、下表のとおりです。
項目 | 親子リレーローン | 親子ペアローン |
概要 | 1本のローンを親子で引き継いで返済 | 2本のローンを親子でそれぞれ返済 |
債務者 | 親(子は連帯債務者) | 親と子 |
返済期間 | 子の年齢による | 親と子のそれぞれの年齢による |
親子ペアローンは、親と子がそれぞれローンを組み、同時に返済していくローンです。ペアローンを利用すると、親と子の収入を合算して考えるため、単独よりも大きな金額の借り入れが可能となります。
親子リレーローンの主なメリット
親子リレーローンは、条件に該当する人を後継者とし、住宅ローンを引き継ぐことで、長期間にわたり住宅ローンを返済していく仕組みです。では、親子リレーローンには、どのようなメリットがあるのでしょう。
借入期間を長くすることが可能
親子リレーローンを利用すると、借入期間を長くできます。例えば、フラット35の場合、住宅ローンの借り入れ期間は15年(申込者または連帯債務者が満60歳以上の場合は10年)以上と決められています。
また、借入期間の上限は『80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ)』もしくは、35年のどちらか短いほうです。
例えば、60歳3カ月の人が申込者として住宅ローンを組む場合、単独ローンと親子リレーローンの返済期間の違いを見てみましょう。なお、子の年齢は30歳5カ月とします。
親子リレーローンの有無 | 返済期間 |
なし | 80歳-61歳=19年 |
あり | 80歳-31歳=41年(最長35年) |
このように親子リレーローンでは、返済期間をより長くできる点が魅力です。
住宅ローン控除を受けられる
親子リレーローンでは、『住宅ローン控除』を受けられます。住宅ローン控除とは、住宅の取得や一定の増改築・ リフォーム工事を行って、10年以上のローンを組んだ場合に、所得税が控除される制度です。
親子リレーローンでは、物件は親子の共有名義として登記され、返済負担の割合に応じた住宅ローン控除を、親子それぞれが受けられます。
融資額が大きくなる
親子リレーローンでは、単独で借り入れるよりも、大きな金額の借り入れが可能です。大きな額の融資を受けられる理由は、以下のとおりです。
- 返済期間が長い
- 収入を合算できる
親子リレーローンでは、親と子の収入を合算して融資の審査が行われます。よって、単独で借りるよりも、大きな金額の借り入れが可能です。
親子リレーローンの主なデメリット
親子リレーローンには、どのようなデメリットがあるのでしょう。最後に、親子リレーローンを利用する際の注意点を解説します。
返済計画を変えにくい
親子リレーローンでは、2代にわたり返済することを条件に、ローンが貸し出されます。借入後、何らかの理由で返済が難しい状況となっても、返済計画の変更が難しい点は、知っておきましょう。
返済が難しくなるケースには、以下が考えられます。
- 親や子の収入が予想外に減少した、もしくはなくなった
- 家族間でトラブルが起き、同居が難しくなった
- 転勤などにより、別居を余儀なくされた
相続時のトラブルの可能性
親子リレーローンでは、親と子の返済割合にあわせて、それぞれの持ち分が決まります。親が亡くなった場合、子が1人であれば、親の持ち分を相続すれば問題ありません。
しかし、子が複数人いた場合、親の持ち分が兄弟全員の相続財産となるため、トラブルになる可能性があります。
トラブルを防ぐためには、事前に話し合いを行い、住居以外に兄弟に渡す財産を用意しておくなどの対策をしておく必要があるでしょう。
まとめ
親子リレーローンは、1つの物件に対するローンを親子で借り入れるため、より多くの金額を借りられる点がメリットです。
ただし、返済期間が長期にわたるため、返済計画をよく検討した上で借り入れましょう。また、兄弟がいる人は、相続について話し合ったうえでローンを組むことが重要です。