FXのナンピンって何?
まず、ナンピンの意味について基本事項を確認しましょう。
ナンピンとは難を平らにするという意味
『ナンピン』とは、相場が予想と反対の方向へ動き含み損が生じたときに、さらに資金を投じることで損失の影響を薄める投資手法のことです。漢字で書くと『難平』となり、難(損失)を平らにするという意味があります。
為替は、短期的に大きく下げる(もしくは上げる)ことがあっても、その直後にもとの価格付近へ戻るという動きがしばしばみられます。そのような流れを読んで、積極的に資金を投じるのがナンピンです。
難平(ナンピン) - 為替用語集|【FX・外為】FX取引の外為ジャパン|世界とつながる、未来が広がる。
ナンピン売りやナンピン買いとは
FXでは、新規で通貨を買うことで取引を開始するロングポジション(※1)と、売りから開始するショートポジションの、2種類のスタンスを取ることができます。
含み損が生じるのは、ロングポジションの場合は相場が予想に反し下落したとき、ショートポジションであれば上昇したとき(※2)です。
したがって、ロングの場合は、同じ通貨をさらに買い足す『ナンピン買い』を行い、ショートでは売り足す『ナンピン売り』を行うことになります。
これは、当初より有利な価格で買いや売りを入れることになるので、相場がもとの位置付近まで戻れば、含み損を効果的に縮小する、あるいは利益を出すことすら可能になります。
(※1.ポジション:通貨を新規で売買し決済せず保持している状態を、ポジションと呼びます)
(※2.ショートポジションでは初めに売った通貨を、さらに相場が下落してから買い戻すことで利益が生じます)
ナンピンのメリット
含み損が生じたときにナンピンを行うメリットは、どのような点なのでしょうか。
損失の回復を早める
仮に、1ドル105円のとき新規でロングポジション(1通貨)を持った後、相場が予想に反し102円まで下落したときを想定してみます。
この場合では、為替が104円、103円、そして102円のときに一度ずつナンピン買いを入れます。そして、相場が上昇に転じれば、104円のところで全体の含み益が2円となり、105円まで回復するのを待たずに利益を確定できることになります。
実際には、FXの売りと買いの間にスプレッドと呼ばれる価格差があるので、計算が少し複雑になりますが、ナンピンを上手く利用できたときは、損失の回復を早める力になることも事実です。
損切りがないので精神的に楽
ナンピンを行わない場合、一定の含み損が生じたときに取引を決済し、損切りすることもあり得ます。
ナンピンを行う場合は、現状のポジションを決済せずに含み損に対処できるので、損切りすることの精神的な負担を感じずに済むこともできます。
ナンピンのデメリット
ナンピンはデメリットとなる場合もあることを、認識しておく必要があります。
損失がどんどん膨らむリスク
ナンピンは相場の読みが外れると、損失を大きくするリスクがあります。基本的にナンピンはある程度待てば、相場が自分の予想した方向に反転するだろうと予想して行うものです。
したがって、トレーダーは相場の底付近を見計らってナンピンを行います。しかし、その後に相場が底割れし状況が悪化した場合は、ナンピンの分が含み損に上乗せされます。
この増えた分の損失も取り返そうと、さらにナンピンを行い、再度相場が悪くなるということを繰り返すと、結果的に大きな損失へと膨らんでしまいます。
塩漬けによる資金効率の悪化
ナンピンのために投入した資金は、決済取引を行わない限り動かすことができません。つまり運用できない『塩漬け』のような状態になります。
当然、塩漬けにより新たな投資活動を行えない期間は、そこからの利益も発生しません。手元にはナンピンで維持した含み損があるだけ、ということになります。ナンピンを行う際には適宜、資金管理にも気を配る必要があります。
マイナススワップ
為替レート以外でFXの損益に関わる要素に、『スワップポイント』というものがあります。スワップポイントは、売買した通貨間の金利差を清算する仕組みです。
金利の低い通貨を売り、高い通貨を買うという取引を行っている場合は、スワップポイントはトレーダーの利益になりますが、逆の取引の場合は損失(マイナススワップ)となります。
マイナススワップとなるポジションを保持したまま、ナンピンが成功するまで待ち続けることは、このマイナス金利差分も日々増え続け、最終的に無視できない損失となり得ます。
ナンピンを行う際には、通貨ペアに設定されたスワップポイントを、FX会社のHPで確認したほうがよいでしょう。
スワップポイントとは?|FX|外為オンライン FX取引 - あなたの為の、外為を。
ナンピンは必ずしも悪ではない?
ナンピンのデメリットを上手く扱い、大きな損失を生まないようにするためには、どのようなことを留意するべきでしょうか。
スワップの利用など根拠のある戦略
FXにはスワップポイントからの利益を狙い、中長期にわたりポジションを保持するトレード手法もあります。
この考え方は、ナンピンを行うトレードにも応用が可能で、売買する通貨ペアを上手く選んでおけば、相場の回復を待っている間にもスワップポイントの利益が、ある程度含み損を相殺できます。
また、相場が上手く回復した後に決済できれば、むしろ利益を大きくすることも可能になります。
最終的に必ず損切りは行うこと
どのような投資でも、損失が生じることは避けられません。ナンピンのためにすべての資金を投入してしまうと、損失がさらに大きくなるリスクが増えます。また、なんとか持ちこたえていたとしても、塩漬け状態になってしまいます。
ナンピンにより投資機会を失わないようにするためには、投入する資金の枠を決めておくか、回復が難しそうなら損切りの決済をするなど、スタンスを決めておくことも大切です。
レバレッジの管理が重要
レバレッジとは、手持ち資金の数倍以上にあたる通貨を取引できるFXの仕組みです。ナンピンを想定した取引の場合は、大きすぎるレバレッジを設定しないほうが賢明です。
レバレッジは、効率的に利益を上げる機会を増やしますが、同時に、損失を膨らませるリスクも大きくします。そして、大きなレバレッジで保持したポジションが、大きな含み損を抱えるようになると、証拠金の時価評価額(※)も大きく減額します。
ナンピンは、繰り返し資金を投入するので含み損が膨らむことになり、証拠金への影響も無視できなくなります。FXの場合、証拠金の損失がある程度以上になると、ロスカットといわれる強制決済による損失確定が行われるので、その点も注意が必要です。
(※証拠金とは、トレーダーがFX会社へ預ける担保金のことで、その時価評価額(有効証拠金)は取引の損益状況によりつねに増減しています)
ナンピンを使う場合に覚えておきたいこと
ナンピンを想定して取引を行う場合には、以下のことを覚えておきましょう。
相場の循環によりいつかは失敗する可能性
為替相場や株価などには、大きなサイクル(循環)の上に、中小の波動が乗る形で日々変動しています。したがって、小さな上下動にだけ注目していると、相場全体のトレンド(流れ)がみえなくなりがちです。
全体のトレンドをみずに(あるいは読み誤って)ナンピンを行うと、損失が拡大し失敗するリスクが大きくなります。
たとえば、移動平均線(※1)であれば目先の5本平均だけでなく、期間の長い平均線も活用し、トレンドを読む必要があります。また、チャートに関しても分足だけでなく、日足や週足(※2)も参考にしたほうがよいでしょう。
(※1.移動平均線:時刻を一定間隔で区切って、連続する数区間の終値(など)から出した平均値をグラフに描いたもので、相場トレンドの解析によく使われます)
(※2.足:為替などの値動きを、始値、終値、高値、安値で表示する方法をローソク足といい、その数字を取り出す時間間隔には、分、日、週などがあります)
為替チャート・FXチャートの見方|はじめてのFX|FXなら上田ハーローFX
平均購入価格を計算をする
平均購入価格は、ナンピンの損益を決める境界線のような働きをします。
FXのナンピンでは、断続的に通貨の買い増し(あるいは売り増し)を行いますが、その間に投入した資金総額を、買った(あるいは売った)通貨の総数で割り算すると、1通貨あたりの平均価格を知ることができます。
- 平均購入価格(円)= ナンピンで投入した総資金額 (円)÷ 全通貨数
先述した、105円から102円に相場が下落したときのナンピンについて計算すると、以下のようになります。
- 平均購入価格 103.5(円)=(105 + 104 + 103 + 102)÷ 4
この場合は、相場が103.5円まで回復すると損益がゼロになります。
結局トータルでみると、全通貨をこの平均価格で取引したものと同じになるので、ナンピン取引の決済を行う目標価格となるわけです。
ナンピン中は、自分の取引の平均購入価格について、常に把握しておくようにするとよいでしょう。
ナンピン買い│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
少ない通貨単位などで資金管理をしっかり
FXでは、レバレッジを利用して一度により多くの通貨を取引し、効率的に利益を得る手法がよく使われます。
しかし、ナンピンを想定している場合には、一度に大量の通貨を売買するのではなく、相場が悪化した場合に状況に合わせ、細かく資金投入することが賢明です。
一度の売買通貨単位は、FX会社ごとに1万通貨や1,000通貨など設定が異なりますが、ナンピンの場合は、取引単位にも留意してFX会社を選ぶほうがよいでしょう。
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まとめ
FX取引において、相場が予想と反対に動き含み損が生じた場合でも、さらにポジションを積み増して1通貨あたりの平均購入価格を下げ、損失を薄める手法がナンピンです。
ナンピンは損切りを行わないための手法ですが、相場のトレンドが予想と大きく異なる方向へ振れる場合などでは、さらに損失を増大させてしまうリスクもあります。
ナンピンを成功させるには、レバレッジを大きくしないこと、資金管理をしっかりすること、平均価格を常に把握することなどの注意が必要です。