証拠金と関連用語について知っておく
FXは、正確な呼び名を『外国為替証拠金取引』といいます。ここでの『証拠金』とは、トレーダーがFX会社に預ける保証金のことです。
FXでは現実の通貨をやり取りするのではなく、この証拠金の額から決まる数量の通貨ペア(※)を、形式的に売買し差益を狙います。
ここではまず、その証拠金に関連するいくつかの事項について、確認しておきましょう。
(※通貨ペア:FXでは、売買を行う2つの通貨をこのように呼びます)
必要証拠金と有効証拠金とは
FX取引に関する用語に、『必要証拠金』と『有効証拠金』というものがあり、それぞれの意味をまとめると、以下のようになります。
- 必要証拠金:FXのトレーダーが一定のポジション(※)を維持するために、最低限FX会社に預けておく必要がある証拠金額
- 有効証拠金:FX会社に預けた証拠金額にその時点の評価損益を加えた、証拠金の時価評価額(純資産額)
(※ポジション:FX取引で、ある通貨ペアの売買を行い、それに対する決済取引を行わないままの状態をポジションを持つ、あるいはポジションを維持しているといいます)
証拠金維持率とは
FXの証拠金の関連用語には、『証拠金維持率』というものもあります。
- 証拠金維持率:有効証拠金が、必要証拠金をどの程度カバーしているかを示す率
証拠金維持率は、トレーダーの資金繰り状況をFX会社が評価する際に使用する、代表的な数値です。
証拠金維持率とはなんですか? - よくあるご質問 - FX/CFD取引のDMM.com証券
マージンコールとロスカット
FX会社は、常にトレーダーの資産状況を評価しており、証拠金維持率が一定水準を下回ると警告を発します。これが『マージンコール』です。
マージンコールが発生するということは、その時点のトレーダーの取引内容では、現状のポジションを維持することが困難だという意味であり、トレーダーは証拠金を追加(追証)するなどの必要があります。
仮に、そのまま為替相場が悪いほうへ進んだ場合は、『ロスカット』と呼ばれる強制的な損失確定決済が行われることになるので、マージンコールには注意が必要です。
証拠金計算は必須?
ここでは、FX取引において、日ごろから証拠金を把握しておくことの意味をみていきます。
資金管理の基本
FX取引が相手にする為替相場は常に細かく変動しており、その結果生じる含み損益は、有効証拠金に影響を与えます。
レバレッジ(※)を効かせ多くの通貨を売買していれば、この含み損益の影響もそれに応じて大きくなります。
安全に、そして継続的にFX取引を行うためには、相場が不利に動いた際にも証拠金にゆとりがあるよう、取引開始時点から気を配っておく必要があります。
(※レバレッジ:FX取引において、証拠金の数倍以上に相当する通貨を売買できる仕組みのことです)
資金管理が甘いとロスカットに
有効証拠金の評価額が減少した場合、証拠金維持率も減少し資金状況が悪化します。相場は短期間に激変することもあるので、そのような場合に証拠金維持率が大きく減少すると、それだけでロスカットが発動されてしまいます。
ロスカットされると、そのポジションが強制的に決済され、結果的に損失だけが残ってしまうので、日ごろからトレーダーは資金管理に気をくばり、ロスカットを防ぐよう配慮する必要があります。
証拠金の計算方法
FXの取引を行っている状態での証拠金は、どのように計算するのでしょうか。
必要証拠金と有効証拠金を出す
必要証拠金は通貨レート、およびトレーダーが設定しているレバレッジ倍率を使い、以下のように計算します。
- 必要証拠金(円)=(通貨レート(円)× 通貨数量)÷レバレッジ倍率
この場合、一般的に通貨レートは、各FX業者が決めたタイミングで日に一度、時価評価される価格が使われます。
有効証拠金を計算するには、建玉時(※)の通貨レートと現在のレートを用い、まず含み損益を計算します。その後、損益額とFX会社に預けている証拠金額を用い、以下のように計算します(新たな注文を出していない状態を想定)。
- 含み損益(円)=(現在のレート(円)- 建玉時のレート(円))×通貨数量
- 有効証拠金(円)=証拠金額(円)+含み損益(円)
上記の計算式は、含み損があるときには、有効証拠金が減少することを意味します。
(※建玉:FXなどで新規注文が成立し、通貨保持の状態になることを、玉を建てるといいます)
証拠金維持率を算出する
証拠金維持率は、上記の計算で出した必要証拠金と有効証拠金の比率を表した数値で、以下のように計算します。
- 証拠金維持率(%)=(有効証拠金 ÷ 必要証拠金)× 100
その時点の有効証拠金が必要証拠金と同じ額(証拠金維持率100%)であるということは、基本的には新たな建玉ができない、あるいはそのリスクが大きくなっていると考えることもできます。
証拠金維持率とはなんですか? - よくあるご質問 - FX/CFD取引のDMM.com証券
ユーロドルなど外貨のケースは
外貨同士のペアで取引する場合の必要証拠金は、主軸通貨(ユーロドルであればユーロ)の円建てレートを、そのまま先述した計算式に当てはめて算出します。
有効証拠金は、決済通貨(ユーロドルであればドル)で計算した損益に、その時点の円建てレートを乗じた数値で含み損益を出した後、上記の計算式どおりに算出します。
たとえば、ユーロドルの含み損益であれば、以下のようになります。
- 含み損益(円)={(現在のレート(ドル)- 建玉時レート(ドル))×通貨数量 }× 現在のドル円レート(円)
必要証拠金と有効証拠金が算出されれば、上記の式を使い証拠金維持率を出すことができます。
証拠金計算を簡単にする方法
前述のとおり、FX取引における証拠金計算は何段階かに分かれており、日常的に繰り返すとなるとやや煩雑です。
そのような場合には、便利な計算ツールを使うこともひとつの方法です。
各FX会社の計算機を使う
複数のFX会社が、ホームページ上で証拠金を試算する機能を提供しています。
通貨ペアを選ぶと、その時点のレートを簡単に読み込むことができ、後は通貨数量とレバレッジなどを入力するだけで、その時点で必要な証拠金額を算出してくれます。
証拠金シミュレーション - FX/CFD取引のDMM.com証券
エクセルで自作する
エクセルなどの表計算ソフトであれば、煩雑な計算式も一度設定するだけでコピー&ぺーストが可能なので、その時点の為替レートなどを更新しながら、自分の証拠金状況を日々確認することが容易になります。
考え方としては、以下のような順番で設定するとよいでしょう。
- 証拠金額のセルを決定
- レバレッジ比率のセルを決定
- 建玉時レートのセルを決定
- 現在レートのセルを決定
- 通貨数量のセルを決定
- 上の4、5および2から、必要証拠金を算出、表示
- 上の3,4および5から、含み損益を算出、表示
- 上の1および7から、有効証拠金を算出、表示
- 上の8、6から証拠金維持率を算出、表示
6から9の算出には、先述の各計算式を当てはめます。
主なFX会社の特徴やロスカットライン
一般に、FX会社は証拠金維持率が一定ライン以下になると、ロスカットによる強制決済を行いますが、その基準は会社ごとに個別設定されています。
口座全体と通貨ペア別に選べるSBI FXトレード
『SBI FXトレード株式会社』では、ロスカットの判定方法を口座全体の損益をもとにしたものと、通貨ペアごとの損益をもとにした2通りから選択することが可能です。
口座全体ロスカットの場合は、証拠金維持率を算出(※)し、50%を下回った場合にロスカットが発動します。
通貨ペアごとのロスカットでは、建玉時の必要証拠金に対して50%以上の損失が出た場合に、発動するように設定されています。
(※SBI FXでは、それぞれ有効証拠金を資産評価額、含み損益を損益評価額と呼んでいます)
SBI FXトレードの取引ルール|はじめてのFX|SBI FXトレード
取引高の多いGMOクリック証券
2012年から2017年まで、6年連続で取引高が世界1位(ファイナンス・マグネイト社調べ)、さらに、2014年から2017年までは、預かり資産額が国内1位の実績があり、安定感が売りのひとつとなっているのが『GMOクリック証券株式会社』です。
GMOクリック証券では、証拠金維持率が100%を下回った場合にロスカットアラート(マージンコール)が送られてきます。ロスカットアラートを解消するためには、翌営業日中に追加証拠金を入金するか、決済取引を行う必要があります。
実際のロスカットは、証拠金維持率が50%以下となった場合に発動します。
GMOクリック証券 - ドル・ポンドをはじめ取扱通貨ペアなどFX取引条件 | FXネオ | サービスガイド
口座開設数の多いDMM.com証券
2018年1月時点において、口座開設数が国内1位の『株式会社DMM.com証券』も、人気FX会社のひとつといえます。
DMM.com証券も、ロスカットの基準は証拠金維持率50%以下で、100%を下回った場合に追加証拠金額を求める連絡(マージンコール)が入るようになっています。
安心・厳格のロスカット - FX初心者ガイド - FX/CFD取引のDMM.com証券
まとめ
FX取引において、トレーダーが自身の証拠金状況を把握することは、資金状況とリスクを管理するうえで大切なポイントです。
証拠金の評価は、必要証拠金や有効証拠金などを用い、証拠金維持率を計算して行います。
証拠金維持率は、日々の為替変動から影響を受けているので、短期間でも含み損が大きくなり、FX会社が設定しているロスカット基準を下回る場合には強制ロスカットになるので、定期的にチェックするようにしましょう。