投資信託の特徴とリターン
資産運用の手段の一つに、『投資信託』というものがあります。投資信託とは何なのか、特徴やリターンについて把握しておきましょう。
投資信託の仕組み
投資信託は、以下のような仕組みで運用が行われる金融商品です。
- 販売会社が投資信託を販売し、投資家から資金を集める
- 運用会社が資金の運用方法を決める
- 信託銀行が運用会社の指図を基に資産運用を行う
- 運用によって生じた成果を、投資額に応じて投資家に分配する
投資信託の運用で得られる成果には、主に『分配金』と『売却益』があります。
- 分配金:資金の運用による利益を分配するもの
- 売却益:購入時よりも高い価格で投資信託を売却することで生じる差益
ただし、投資信託には、毎月や半年あるいは1年ごとに分配金が支払われる『分配金がある』タイプと、解約または売却するまで分配金を支払わずに再投資する『分配金がない』タイプがあります。
また、予定通りの利益が出せなかった場合には、元本を削って捻出した『特別分配金』が分配されることがあります。
投資信託のメリット
投資信託には、以下のようなメリットがあります。
- 資金が自動的に分散投資されるためリスクを軽減しやすい
- 100円から運用を始められる
- プロに運用を任せられるので、自分で投資先や投資方法などを考える必要がない
- 個人投資家が買えない国や地域の金融商品にも投資できることがある
資産運用のリスク軽減の基本は、資金をさまざまな国や地域、金融商品に分けて運用する分散投資です。通常、分散投資するには自分で情報を集めて分析し、どこにどれくらいの資金を投資するのかを決めなくてはなりません。
しかし、投資信託はさまざまな国や地域の、複数の金融商品を1パックにしたような金融商品であるため、一つの商品を購入するだけで自動的に分散投資ができるというメリットがあります。
投資信託のデメリット
投資信託のデメリットも見てみましょう。
- 元本保証がないので、運用結果によっては損失が発生する
- 販売会社・運用会社・信託銀行など多くの機関が関わっており、手数料がかかる
投資信託の購入・運用・中途解約時にかかる手数料には、以下のようなものがあります。
- 購入時手数料:販売会社に投資信託購入時にかかる経費として支払う手数料
- 信託報酬:運用会社に資産運用にかかる経費として支払う手数料
- 信託財産留保額:投資信託を中途解約(売却)する際にかかる手数料
これらの手数料は、販売会社や運用会社、商品ごとに金額が異なります。手数料は預けている資産から引かれていくもので、手数料が高いほど資産や利益が目減りしやすいので、事前に手数料について調べておくことが重要です。
基準価額と分配金
投資信託は1パックの商品を、『口(くち)』という単位を使って数えます。1口あたりの金額は、『純資産総額÷投資信託の受益権総口数』で計算可能です。この式で計算した金額を『基準価額』といいます。
- 純資産総額:『投資信託の資産総額(※)-運用コスト』で算出した金額
- 受益権総口数:投資家が保有する投資信託の総数
注意したいのは、投資信託の純資産総額に、分配金支払い用のストックである『分配原資』も含まれることです。そのため、分配型の投資信託では、分配金の支払い後に基準価額が下がります。
(※資産総額とは、その投資信託が保有する金融商品の時価総額と、金融商品から得た利益の総額のことをいいます)
投資信託の利回りとは
投資信託で資産運用を始めるときには、前もって『利回り』をシミュレーションしてみましょう。利回りとは、投資信託を一定期間運用した場合の、投資額に対する収益(利子や分配金、売却益などの総額)の割合のことです。
通常、利回りというと1年間で得た利益(年利)を指しますが、投資信託の商品ページなどでは6カ月の短期利回りや、3年・5年・10年などの長期利回りも表示されていることがあります。
その表示は過去の実績ですが、その投資信託の目的・特色を踏まえ、自分に合った商品か判断していくことができます。
利回りや利率の見方
投資信託の商品ページでの、利回りの見方を覚えておきましょう。多くの証券会社のサイトなどでは、以下のように利回りが表示されています。
パフォーマンス | 6カ月 | 1年 | 3年 | 5年 |
リターン(年率・%) | -10.85 | 49.88 | -12.97 | -11.49 |
この場合、1年間の運用成績だけ見ると、+49.88%の利益が得られていますが、5年運用した場合は-11.49%となっています。利益と損失の振れ幅が大きく、リスクが高い商品だということです。
なお、資産運用では『利率』という言葉もよく出てきます。利率とは、投資した金額に対する利子の割合を示すものです。
投資信託の利回りは、利子や分配金などのすべての収益の割合を指すものなので、利率とは異なります。
投資信託の利回りの計算
投資信託の利回りは、以下の式によって計算します。
- 投資信託の利回り={(利益-運用コスト÷運用年数)÷投資金額}×100
例えば、10万円分の投資信託を1年間運用し、2500円の利益が出て、運用コストが500円かかったとしましょう。この場合の利回りは『2%』です。
- 投資信託の利回り={(2500円-500円÷1年間)÷10万円}×100=2
Excelで簡単に計算しよう
投資信託は、数年~数十年と長期間運用するのに向いている商品です。そのため、購入前に投資額と運用年数を決めてから、利回りをシミュレーションする必要があります。
とはいえ、数年、数十年分の利回りを自分で計算するのは大変なので、Excelを使って簡単に計算してみましょう。
A | B |
投資額 | 100,000 |
利回り | 3% |
運用年数 | 10 |
結果 |
上記のように、A列に項目を、B列に投資額・利回り・運用年数を入力します。そして、その下に『=B1*(1+B2)^B3』の式を入力すれば、自動で運用結果が計算されるので便利です。
安定志向の金融商品3選
投資信託は元本保証がないので、運用が上手くいかないときには資金が減る可能性があります。資金が減るリスクは取りたくないけれど、資産運用はやってみたいという人は、安定志向の金融商品を検討してみましょう。
銀行預金
普段の生活で使うため意識することは少ないですが、銀行預金は金融商品の一種です。口座に預け入れたお金は、銀行の金庫で保管されるわけではありません。
事業者に貸し付けたり、債券を購入したりして運用されています。年1回『利息』として振り込みがあるのは、預けたお金の運用で得た利益が還元されているためです。
銀行預金は銀行が破綻したとしても、1銀行1預金者ごとに1000万円まで保証されるため、安定性は非常に高い金融商品だといえます。
ただし、2019年9月時点で普通預金の平均金利は0.001%(年利)、定期預金の平均金利は0.01~0.017%(年利)と超低金利であるため、利益はほとんど見込めません。
預金種類別店頭表示金利の平均年利率等 : 日本銀行 Bank of Japan
個人向け国債
個人向け国債も、安定志向の人向きの金融商品です。国債とは、国がお金を借りるために発行する債券のことをいいます。国が発行するものであるため、破たんのリスクなどが非常に低く、安定しているのが特徴です。
国債を保有すると、半年に1回利子が支払われます。また、国債には満期が設定されており、満期まで保有し続ければ投資した資金がそのまま戻ってくるので、基本的には元本割れを起こすことがありません。
個人向け国債には3年・5年・10年の3種類がありますが、どれも金利が最低でも0.05%あるので(※)、銀行預金よりは利益が期待できます。
(※10年の個人向け国債は変動金利であるため、半年ごとに金利が見直されます)
ロボアドバイザーTHEO
銀行預金や個人向け国債より、もっと多くの利益は得たい、でも自分で資産運用をする自信がないという人は、ロボアドバイザーを使ってみましょう。
ロボアドバイザーとは、資産運用のアドバイスや運用方法の提案などをしてくれる、インターネット上のサービスのことです。資産運用や資産配分の調整まで自動でしてくれるロボアドバイザーもあります。
例えば、『ロボアドバイザーTHEO(テオ)』は、最低1万円から運用可能で、自動でグローバル投資をしてもらえます。
多くの金融機関がロボアドバイザーを開発しており、手数料やサービス内容がそれぞれ異なるので、自分に合うものを探してみましょう。
年利5.0%やそれ以上を目指すなら
投資信託の平均利回りは1.5~7.0%程度で、商品によって異なります。年利5.0%以上の利回りを目標にする場合、どのような商品を選ぶとよいのでしょうか。
インデックスファンド
投資信託は、株式型や債券型など、主な投資先によって種類が分かれています。債券型は低リスクである代わりに、平均利回りも1.5~3.5%程度と低めです。
年利5.0%を目指す場合は、債券型よりもリスクは高くなりますが、平均利回りが5.0~7.0%の株式型を選択した方がよいでしょう。また、投資信託には『インデックスファンド』と『アクティブファンド』があります。
- インデックスファンド:市場平均と連動した運用成果を目指す投資信託
- アクティブファンド:市場平均以上の運用成果を目指す投資信託
アクティブファンドはより大きな利益を目指せる代わりに、リスクと手数料が高くなります。安定した運用、低コストの運用を希望する場合は、インデックスファンドを選ぶのがおすすめです。
不動産投信
年利5.0%を目標にしている人は、不動産を主な投資先とした『不動産投資信託(REIT:リート)』も検討してみましょう。不動産投資信託の利回りは2.0~5.3%程度あり、商品によっては年利5.0%以上も期待できます。
ただし、不動産投資信託には不動産の価値や入居率、災害などによって基準価額が大きく下落するリスクがあることは理解しておきましょう。
ETF
ETF(上場投資信託)も、年利5.0%を目指すときに検討したい金融商品です。『上場された』投資信託なので、株式の購入と同じように、証券会社を介して証券取引所に売買注文を出して購入します。
ETFの中には、『上場インデックスファンド新興国債券』など、配当利回りが5.7%を超える商品もあり、運用が上手くいけば年利5.0%以上の利回りを期待できます。
1566 - 上場インデックスファンド新興国債券(上場新興国債) | ETF(上場投資信託)|日興アセットマネジメント
保有数や購入額平均などの統計
投資信託の保有数や平均購入額など、投資信託に関する統計データを、投資信託協会による『2018年度投資信託に関するアンケート調査報告書』から紹介します。
投資信託に関するアンケート調査報告書-2018年(平成30年)投資信託全般 - 投資信託協会
どのくらいの人が保有してる?
投資信託保有率の推移は、2016年が『16.0%』、17年が『15.6%』、18年が『14.7%』とやや減少傾向にあります。
現在保有していないものの、過去に投資信託を保有したことがある人は16年が『8.6%』、17年が『8.0%』、18年が『8.3%』とほぼ横ばいです。
投資信託の購入額はどのくらい?
投資信託の現保有の平均購入額は、『433万円』です。ただし、これはすべての種類の投資信託の総合計であり、保有・金額階層別に見ると100万円未満との回答がもっとも多く「50.9%」となっています。
償還や売却資金はどうしてる?
投資信託の償還(※1)や売却による資金の使い道は、生活資金と回答した人が『24.2%』との結果が出ています。
また、預貯金・MRF(※2)に回した人は『22.7%』で、償還・売却資金を生活資金に充てた人の割合とそれほど変わりありません。
(※1.償還とは、運用期間が終了した投資信託の信託財産を、保有口数に応じて投資家に返還することです)
(※2.MRFとは、主に公社債などで運用されており、株式は含まれないリスクが低い投資信託のことです)
投資信託本数上位の証券会社2019
投資信託の商品数は全部で6,124本(公募投信)ですが(2019年10月時点)、そのうち何本取り扱っているかは、金融機関によって異なります。
投資信託は、証券口座を開設した金融機関が取り扱っている商品しか購入できません。取り扱い商品以外の投資信託を購入したければ、その投資信託を取り扱っている金融機関で、新たに証券口座を開設する必要があります。
あまり口座を増やさずに、できるだけ自由に投資信託を選びたい場合は、投資信託の取り扱い本数が多い金融機関を選びましょう。ここでは、投資信託の取り扱い本数上位の証券会社を紹介します。
楽天証券
楽天証券は、投資信託の取り扱い本数が2649本と、非常に豊富な証券会社です。購入時手数料が無料のノーロードや、人気の毎月分配型の取り扱い本数が多い点も魅力です。
SBI証券
SBI証券は、2649本もの投資信託を取り扱っています。口座開設数は460万以上と、ネット証券の中で1番多く、実績も十分な証券会社です。
マネックス証券
マネックス証券の投資信託の取り扱い本数は1180本と、上記で紹介した証券会社よりは少なめです。しかし、マネックス証券のオリジナルファンドがあったり、複数のロボアドバイザーが用意されていたりと、その他のメリットが多くあります。
利回りランキング上位のファンドを紹介
続いて、利回りランキングで上位の投資信託を見ていきましょう。なお、利回りはその時々の経済情勢などによって変わるため、必ずしも表示通りの結果が得られるものではありません。
また、利回りが高い商品はその分リスクも高く、大きな損失が出る可能性があるので注意が必要です。
ニッセイJPX日経400アクティブファンド
『ニッセイJPX日経400アクティブファンド』は、成長が期待できる国内株式を主な投資先としている投資信託です。直近1年間の利回りは-12.73%とマイナスが出ていますが、3・5年と運用した場合の利回りは7.0%を超えています。
ニッセイJPX日経400アクティブファンド|投資信託のニッセイアセットマネジメント
アムンディ・グラン・チャイナ・ファンド
中国市場への投資にチャレンジしてみたい人は、『アムンディ・グラン・チャイナ・ファンド』を検討してみましょう。やはり直近1年間では-12.26%となっていますが、長期的な利回りは6.0%を超えています。
アムンディ・グラン・チャイナ・ファンド | アムンディ・ジャパン
M&Aフォーカス・ファンド
高利回りの投資信託を探している人には、『M&Aフォーカス・ファンド』もおすすめです。国内取引所上場株式を主な投資先としており、3年運用した場合の利回りは11.88%となっています。
M&Aフォーカス・ファンド|三井住友DSアセットマネジメント
まとめ
投資信託の利回りとは、投資信託を一定期間運用した場合の、投資額に対する収益の割合のことです。
利回りの見方や計算方法などをしっかり理解して、投資をしようと思う投資信託の目的・特色を踏まえ選択しましょう。