FXとは
FXとは『Foreign Exchange(フォーリンエクスチェンジ)』の略語で、日本語では『外国為替証拠金取引』といいます。
TVやネットでFXという単語を目にする機会はあっても、具体的には何をするのか分からない人もいるでしょう。まずは、FXの概要を解説します。
通貨と通貨の交換
FXは、通貨と通貨の交換によって利益を得る投資方法です。世界には数多くの通貨が存在しており、国によって使用している通貨の種類が異なります。
そのため、アメリカに行くときには円からアメリカドル、イギリスに行くときには円からポンドというように、通貨を交換しなくてはなりません。
しかし、各通貨の価値は常に変動しているので、あるときは1ドル100円で交換できたのに、次に交換するときには1ドル106円かかったということが起こります。
この通貨の交換比率のことを『為替レート』といい、為替レートの変動を利用して利益を得るのがFXです。
外貨同士の交換もできる
FXでは外貨同士の交換もできます。損益の計算は『pips(ピプス)※』の計算方法を理解しておけば、それほどむずかしくはないでしょう。
pipsとは、FXの損益表示に用いられる単位のことです。日本円では『1pip=1銭=0.01円』で、小数点第2位の数字を見ると獲得したpipsがわかります。
- 1ドル=100.00で買い、100.08で売り=8pips獲得
外貨の場合は小数点第4位を見ましょう。
- ユーロを1.0700ドルで買い、1.0708で売り=8pips獲得
外貨同士の交換で獲得したpipsを日本円に換算する場合は、円対外貨の為替レートを獲得したpipsに掛けます。アメリカドルの為替レートが106円だった場合は『8×1.0600=8.48pips』です。
(※2以上の数値になると複数形になるためpips、1の場合は単数形でpipとなります。しかし、FXの損益計算で単数が出ることはほとんどないため、pipsと紹介しています)
24時間取引可能
投資方法には株式や投資信託などさまざまな種類がありますが、その多くは取引可能時間が決まっています。例えば、株式の取引は証券取引所が開いている時間にしか、直接取引ができません。
しかし、FXはネットワーク上の『外国為替市場』で取引が行われるため、各国の金融機関が営業を停止する土日や元旦以外は、24時間取引ができます。
なお、FXでは『東京市場』『ロンドン市場』『ニューヨーク市場』が3大市場といわれており、その他にもいくつか市場がありますが、それぞれが独立しているわけではありません。
すべての市場はネットワーク上でつながっており、ある時間帯にもっとも活発に取引が行われている国を『○○市場』と呼びます。
出典:はじめてのFX取引|はじめよう!くりっく365|くりっく365公式ホームページ
FXで利益を得る仕組み
FXが為替レートの変動を利用した投資方法であることは前述しましたが、為替レートをどう利用して利益を出すのでしょうか。FXで利益が出る仕組みを、具体的に見ていきましょう。
為替差
FXで利益を得る方法は、仕組みだけ見るととても単純なものです。同じ通貨でも、あるときは1ドル100円、あるときは1ドル106円のように為替レートに差があります。
そのため、為替レートが安いときに円をほかの通貨に交換し、通貨の価値が上がったときに円に戻せば差益が生まれるのです。
例えば、1ドル100円のときに円をドルに交換し、1ドル106円になったときに円に戻したとしましょう。すると、6円の差益が生まれます。海外旅行で通貨を両替したことがある人は、すぐにイメージできるでしょう。
ただし、いつ通貨の為替レートが上がり、いつ下がるのかを確実に予測することはできません。そのため、仕組みは単純でも、損失が出ることがあるのです。
レバレッジ
当然ですが、交換する金額が大きいほど差益も大きくなります。1ドル100円のときに1ドルに交換し、106円のときに円に戻しても差益は6円ですが、100ドルに交換していれば差益は600円です。
そうはいってもあまり資金がないという人は、『レバレッジ』を利用すれば、少ない資金で大きな利益を出せる可能性があります。
レバレッジとは、自己資金を担保に、その金額の数倍の取引ができる仕組みです。最高25倍までかけられるので、自己資金が1000円でも2万5000円分の取引ができます。
レバレッジをかけて運用が上手くいけば、本来よりも大きな利益を得ることが可能です。ただし、取引額が大きくなる分、上手くいかなかったときの損失も大きくなるというリスクがあります。
スワップポイント
FXで利益を得る方法は、為替差だけではありません。各通貨の金利差を調整するための、『スワップポイント(金利差調整額)』でも利益を得ることが可能です。
どの通貨でも、貸し借りの際には利息が発生します。その利息の金額を決めるのが金利です。そして、金利は通貨によって異なるため、通貨を交換するときには差額を調整する必要があります。
その差額調整のために使われるのが、スワップポイントです。低金利の通貨を高金利の通貨に交換した場合、そのポジションを保有(※1)している間は、毎日スワップポイントが付与されます(※2)。
ただし、高金利の通貨を低金利の通貨に交換すると、反対にスワップポイントを支払うことになり、損失が発生するので注意が必要です。
(※1.ポジションの保有とは、取引が成立した状態を保持していることです)
(※2.スワップポイントは、金融機関が営業していない土日は付与されません。ただし、翌営業日に休みの間の分もまとめて付与されます)
基本的に借金はしないようにできている
FXというと、『貯金を溶かした』『数千万円の借金を抱えた』などのニュースを目にすることもあり、不安に思う人もいるでしょう。しかし、FXは基本的に借金はしないようにできています。
そもそも、FXを始めるのに多額の資金は必要ありません。最低4円から取引できるツールも存在します。また、『マージンコール』や『ロスカット』などの仕組みもあり、多額の損失が出にくいよう工夫されているのです。
それでも多額の損失を出し、借金まで背負う人がいる理由は、無理なレバレッジをかけたり、損失を取り返そうと躍起になったりといったことが挙げられます。
無理な取引はせず、マージンコールやロスカットについて理解していれば、大きな損失が出ることはありません。
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マージンコール
マージンコールとは、大きな損失が出そうなときに警告してくれる仕組みのことです。口座を確認するよう促す、ツール画面が変化するなど、警告内容・方法はFX会社によって異なります(※1)。
マージンコールが出るタイミングは、『証拠金維持率』を下回ったときです。証拠金維持率とは、投資家の純資産に対する必要証拠金(※2)の割合のことで、やはりFX会社によって異なります。
マージンコールは多額の損失が出ないようにする便利な仕組みではありますが、そもそもマージンコールが出るときは、最低限の証拠金維持率さえ維持できていないときです。
非常にリスクが高い取引をしているということなので、リスクを抑えるためにもマージンコールが出ないような取引を心がけましょう。
(※1.FX会社によっては、マージンコールという仕組みがない場合があります)
(※2.必要証拠金とは、あるポジションを取るために、最低限担保として必要な預託金のことです)
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ロスカット
FXでは、投資家が決済注文をして、それが約定(やくじょう)してはじめて損益が確定します。決済注文が約定するまでは、どれだけ利益や損失が出ていても確定はしていません。この状態を、『含み益』『含み損』といいます。
しかし、マージンコールが出るほどの証拠金維持率をさらに下回り、一定額以上の含み損が出ると、これ以上損失が膨らまないように強制的に決済が行われ、損失が確定されます。これが『ロスカット(強制ロスカット)』という仕組みです。
ロスカットが行われる証拠金維持率は、FX会社によって異なります。多額の損失が出ている状態でロスカットされてしまうと、その損失が確定してしまうので、利用しているFX会社のロスカットラインを調べておくことが重要です。
取引方式の種類
FXには、『NDD方式』と『DD方式』という二つの取引方法があり、FX会社によって採用している取引方法が異なります。
FXを始めるときには、自分でFX会社を選んで、そこで口座を開設しなくてはなりません。二つの取引方法の違いを理解して、自分に合う取引方法を採用しているFX会社を選べるようになりましょう。
インターバンクとは
『NDD方式』と『DD方式』の違いを理解するには、まず『インターバンク(銀行間取引市場)』について理解する必要があります。
インターバンクとは、世界中の金融機関が土日の休業日を除く24時間、外国為替取引や短期資金取引を行っているネットワーク上の市場のことです。
FXの取引の際に用いられる為替レートやスワップポイントの計算時に使われるレートは、このインターバンクでの取引の際に用いられるレートが基になっています。
そして、インターバンクとのつながり方によって、『NDD方式』と『DD方式』に分類されるのです。
NDD方式
NDD方式(No Dealing Desk:ノーディーリングデスク)とは、投資家の注文が直接インターバンク市場の金融機関に流される方式のことで、インターバンク直結型とも呼ばれます。
FX会社は投資家とインターバンクの仲介を行うだけで、注文には介入しません。投資家の注文内容をインターバンクに流し、提携している金融機関が提示する為替レートの中から、1番スプレッド幅が小さい(コストが低い)ものを投資家に提示します。
取引の透明性が高い、スリッページ(※)が起こりにくいなどのメリットがありますが、取引コストが高い点がデメリットです。また、NDD方式を採用しているのは海外のFX会社が多く、日本国内ではあまり見られません。
(※2.スリッページとは、FX会社のシステムやサーバーなどの仕様が原因で、注文価格と約定価格に発生する差のことです)
DD方式
DD方式(Dealing Desk:ディーリングデスク)とは、投資家の注文がFX業者のDealing Deskに一旦置かれ、FX業者がインターバンクに注文を出す仕組みの取引方法です。
FX取引時の為替レートはFX業者独自のものであり、インターバンクの為替レートとは異なるため、取引の透明性が低い、スリッページが起こりやすいなどのデメリットがあります。
しかし、NDD方式よりもコストが安い点がメリットです。DD方式のFX会社は日本に多く、同じ通貨の取引でも、海外のFX業者よりも安価なコストで取引できる可能性があります。
取引の透明性が高いNDD方式するか、コストを抑えるためにDD方式するか、どちらがよいかをよく考えてみましょう。
店頭FXと取引所FX
FX会社を選ぶ前に、『店頭FX』と『取引所FX』についても知っておきましょう。
店頭FXとは
店頭FXとは、投資家とFX会社が直接契約を結び、取引所を経由せずに取引を行うFXのことで、OTC取引と呼ばれることもあります。どこかの店舗の窓口で取引の注文を行うことではありません。
取り扱い通貨やスワップポイント、スプレッド、為替レートなどはすべてFX会社が決めており、FX会社と契約した時点で、提示された条件に合意したとみなされます(相対取引)。
店頭FXはFX会社が利益を得やすい分、取引にかかる手数料が低いのがメリットです。しかし、取引の透明性が低い、スリッページが起こりやすいなどのデメリットもあります。
取引所FXとは
取引所FXとは、公的な取引所を経由して取引を行うFXのことです。国内での取引所FXは、東京金融取引所に上場されている『くりっく365』に限られます。
くりっく365の取引は、直接東京金融取引所で行うわけではありません。『くりっく365取引参加者』と認められたFX会社で口座を開設し、そのFX会社で取引を行います。
ただし、適用する為替レートやスワップポイントなどは東京金融取引所が決定するので、どのFX会社を利用しても、取引価格は同じです。
また、くりっく365取引参加者が破綻しても証拠金が保全される、スリッページが起こりにくいなどのメリットもあります。
業者が利益を得る仕組み
投資家は通貨の為替差やスワップポイントで利益を得られますが、FX会社はどうやって利益を得るのでしょうか。
スプレッドやスワップ
FX会社の収入源として、スプレッドやスワップポイントがあります。スプレッドとは、通貨の売値と買値の差のことです。
FX会社が提示する為替レートは、インターバンクの為替レートよりも売値は高く、買値は安くなるように設定されています。
- 売値:FX会社が投資家に通貨を売るときの価格
- 買値:FX会社が投資家から通貨を買うときの価格
つまり、投資家は実レートよりも高く通貨を購入し、安く通貨を売っているのです。そして、その差額がFX会社の利益になります。この差額が少ない(スプレッド幅が狭い)ほどコストが安いということです。
また、高金利の通貨を低金利の通貨に交換した際に、投資家はスワップポイントを払うことになりますが、これもFX会社の利益になります。
マリー取引
FX会社は『マリー取引』でも利益を得ています。マリー取引とは、FX会社が行う売買注文の相殺取引のことをいいます。
例えば、同じタイミングで買い注文が100、売り注文が100入ったとしましょう。それぞれの金額が同じなので、この注文をインターバンクに流さずに相殺するのです。
すると、インターバンクへの手数料が不要になるので、相殺分のスプレッドが丸々FX会社の利益になります。買い注文が200、売り注文が100などの場合は、はみ出た100だけインターバンクに流します。
注文が相殺されたのに、スプレッドを支払うことに不満を感じる人もいるでしょう。しかし、FX会社がより多くの利益を得ることで、スプレッド幅をさらに狭くするなど投資家にも還元されています。
ビットコインFXとは
仮想通貨のビットコインの取引には、『現物取引』と『証拠金取引(FX)』が存在します。ビットコインの現物取引とは、ビットコインを現在価格で売買する取引です。
買い注文から入る必要があり、購入したビットコインの価格が購入時よりも上がればその分が利益に、購入時よりも下がればその分が損失になります。それでは、ビットコインのFX取引とは、どのような取引なのでしょうか。
Lightning FX (ビットコイン FX)とは - ビットコイン取引所【bitFlyer Lightning】
ビットコインでの証拠金取引
ビットコインのFX取引とは、口座に預け入れた資金を証拠金に、差金決済によってビットコインを売買する取引です。
実際にビットコインを購入するのではなく、ビットコインを売買したと仮定して、その差額相当額の金銭の受け渡しで決済を行います。
ビットコインのFX取引では、買い注文と売り注文のどちらから始めてもかまいません。ビットコインの価格が上がると予測した場合は買い注文、下がると予測した場合は売り注文を入れ、予測通りに値動きした場合に、その差額が利益となります。
ビットコイン自体を購入しているわけではないので、利益や損失はあくまでも差額の部分のみで判断することを理解しておきましょう。
ビットコインFXのメリットや注意点
ビットコインのFX取引では、通常のFXと同じくレバレッジがかけられるので、自己資金より大きな利益を狙えるというメリットがあります。
また、現物取引ではビットコインの価格が下がると損失が出ますが、ビットコインのFX取引では売り注文を入れることで、価格が下がった場合にも利益を出すことが可能です。
ただし、レバレッジをかけると、より大きな損失が出るリスクも上がるので注意しましょう。
また、ビットコインの取引所が突然破たんしたり、ハッキングによって仮想通貨が流出したりといった問題が起こる可能性もあるので、取引所選びは慎重に行うことが重要です。
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まとめ
FXは、通貨の為替レートが変動することを利用した投資方法です。貯金がなくなったり、借金を抱えたりといったニュースを目にする機会もありますが、実は多額の損失が出ないような仕組みが用意されています。
基本的な知識をしっかり身に付けて、リスクを抑えた取引ができるように準備しておきましょう。