投資信託と複利について
資産運用をするとき、株式や債券以外に『投資信託』という選択肢があります。まずは、投資信託や資産運用をする際に重要な『複利』の概要について理解しましょう。
投資信託とは?
投資信託とは、投資家から集めた資金を資産運用の専門家が様々な投資先に投資して、その投資先から得た利益を投資家に分配するという仕組みの金融商品です。
株式や債券など、数々の金融商品が1パッケージにまとめられたパック商品のようなもので、1種類の商品を購入するだけで、自動的に分散投資ができるというメリットがあります。
仮に、その投資信託の投資先の一つで損失が出ても、他の投資先の利益でカバーできる可能性が高く、株式などよりもリスクを抑えた運用が可能です。
ただし、まったくリスクがないわけではなく、それなりの損失が出る可能性はあります。また、商品ごとにリスクの度合いが異なるため、事前調査することが大切です。
複利とは?
投資信託で資産運用をするのであれば、『複利効果』を活用することを考えましょう。複利効果とは、資産運用で発生した利益を利用して、より大きな利益を得ることです。
複利の仕組み
複利の仕組みを見てみましょう。投資信託を一定期間運用し、どれくらいの利益を得たかを示す数値のことを、『利回り』といいます。
仮に、50万円分の投資信託を年利5%の利回りで運用したとしましょう。この場合、1年間で2万5000円の利益が発生します。
この2万5000円を消費し、翌年も50万円を年利5%で運用すると、翌年も2万5000円の利益が得られます。
しかし、2万5000円を再投資し、52万5000円で運用すると、翌年は2万6250円の利益を得ることが可能です。この、資産運用で発生した利益で、新たな利益を得る仕組みが複利効果です。
複利は長期投資の強い味方
投資信託は、複数の投資先に資金を分散して投資し、それぞれの投資先から少しずつ利益を獲得していく、中~長期の運用向きの金融商品です。そして、長期運用するときに、複利効果は強い味方になります。
前述のとおり、複利効果を狙った資産運用をする場合、発生した利益を当初の投資資金に上乗せしていきます。
少額であっても、長期間上乗せし続けていけばそれなりの金額になり、発生する利益も大きくなっていくのです。
短期間で大きな利益を狙う投資はリスクも高く、大きな損失が出る恐れがあります。老後資金の形成が目的である場合など、長い時間をかけられるのであれば、複利効果を活用して安定した運用をするのがおすすめです。
投資信託の複利効果は本当か嘘か
メリットが非常に大きく感じる複利効果ですが、しっかりポイントを押さえておかないと、あまり効果が得られません。また、複利効果を狙うことのデメリットも存在します。
複利効果の条件
複利効果を狙った資産運用をする場合、購入する商品に条件があります。それは、基準価額(※)が「右肩上がり」で、今成長している商品を選ぶことです。
商品価値が下がっている投資信託では利益が得られないので、複利効果も得ようがないからです。短期的に基準価額が下がっただけで、以降は持ち直しているのであれば問題ありません。
しかし、基準価額のチャート(グラフ)が山型を描いている場合は、高値のピークを迎えて成長が止まり、あとは落ちていくだけの可能性があります。購入を検討している商品の状況をしっかり調査しましょう。
(※基準価額とは、投資信託1口あたりの価格のことです)
複利を利用するなら分配金のないタイプ
投資信託には、定期的に分配金が支払われるタイプと、分配金がないタイプがあります。定期的に分配金が入るのはうれしいことではありますが、複利効果を利用するのであれば、分配金がないタイプを選びましょう。
分配金を受け取ると、その分再投資に回す資金が減少するためです。一度分配金を受け取り、自分で再投資してもよいですが、受け取った分配金には税金がかかるので、その分資金が目減りします。
分配金なしのタイプであれば、そのまま利益が投資資金に組み入れられるため、より効率よく複利効果を得ることが可能です。
デメリットももちろんある
分配金なしのタイプを選ぶことには、デメリットもあります。それは、何らかの理由で投資信託の基準価額が大幅に下がると、再投資されていた利益が消失することです。
分配金を受け取っていれば、その分は手元に残るので、基準価額が下がっても利益がなくなることはありません。
しかし、分配金なしで利益が全額再投資されており、その再投資された金額を上回るほどの損失が出た場合、それまでの利益がなかったことになってしまいます。
投資信託は分散投資が基本なので、そこまで大きな損失が出る可能性は低いですが、こういったリスクがあることは理解しておきましょう。
いつ買うと複利効果が高い?
高い複利効果を得るには、底値のタイミングで購入するのがベストでしょう。しかし、相場がどのように変化するのかはわかりません。
専門家でも正確な予測はむずかしいとされており、今が安値と思って購入しても、実は高値だったということも起こり得ます。
高値のときにうっかり大量購入することを避けるには、『ドルコスト平均法』という手法を利用しましょう。
ドルコスト平均法とは、定期的に一定額の投資信託を購入し続ける方法です。そうすれば、自動的に高値のときは購入数が減り、安値のときは購入数が増え、結果的に購入価格が平準化されます。
ただし、安値のときにも一定額しか購入しないので、大きな利益を得にくく、購入時手数料もかさむというデメリットがあることを理解しておきましょう。
分配金とは
複利効果を活用したい場合は、分配金がないタイプの投資信託を選ぶとよいと説明しましたが、そもそも分配金とは何なのでしょうか。分配金の概要や注意点を知っておきましょう。
株の配当のようなもの
分配金とは、株式の配当金のようなものです。投資信託では、投資家の資金を複数の投資先に投資して運用しており、それらの運用がうまくいけば当然利益が発生します。
この利益を、投資家の投資額に応じて還元するものが分配金です。運用会社は、投資先から得た利益の一部を『分配原資』として積み立てており、そこから分配金が支払われます。
月1回分配金が支払われる『毎月分配型』、年1回分配金が支払われる『年1回分配型』など、いくつか種類があるので、投資信託の目論見書(※)などで調べておきましょう。
(※目論見書とは、その投資信託の運用方針や運用実績など、投資判断の際の重要事項が記載されている書類のことです)
定期収入が欲しい人が選びやすい
分配金が支払われる投資信託は、将来のために資産を形成するよりも、定期収入が欲しい人が選びやすい傾向にあります。副業代わりに分配金が受け取れる投資信託を購入している人もいるでしょう。
しかし、分配金の金額はずっと一定なわけではなく、投資信託の運用結果などによって増減することがあります。
そのため、『その投資信託を保有しているだけで、毎月〇〇円収入が増える』などと安易に考え、分配金を充てにするのは危険です。
また、分配金は分配原資から支払われるといっても、投資信託の保有資産から捻出されることに変わりありません。よって、分配金の支払い後には、投資信託の基準価額が下がる点も理解しておきましょう。
特別分配金に注意
投資信託の分配金には『普通分配金』と『特別分配金』がありますが、特別分配金には注意が必要です。
普通分配金とは、投資先から得た利益を投資家に分配するものです。対して、特別分配金は、投資家の資金(個人元金)から支払われます。つまり、投資家の資金が払い戻されているだけなのです。
投資信託の分配金は、あらかじめ支払い額が公表されています。しかし、運用がうまくいかず、全投資家に約束通りの分配金を支払えるほどの利益が出ないことがあります。
そのようなときに、約束通りの金額を支払うために個人元金から分配金が支払われるのです。とくに、高分配金の投資信託では特別分配金が支払われるリスクが高いので、分配金額だけで安易に購入商品を決定しないよう注意しましょう。
複利計算のシミュレーション
投資信託で複利効果を活用した長期運用をしたい場合は、購入前に複利効果をシミュレーションしてみましょう。
複利の計算例
100万円を年利3%で5年間運用、分配金なしで利益は全額再投資するとして、複利を計算してみます。
年数(年) | 投資額 | 利益 |
1 | 100万円 | 3万円 |
2 | 103万円 | 3万900円 |
3 | 106万900円 | 3万1827円 |
4 | 109万2727円 | 3万2782円 |
5 | 112万5509円 | 3万3765円 |
運用が順調にいけば、このように投資額とともに得られる利益が年々増えていきます。ただし、毎年確実に年利3%で運用できるとは限りません。
何らかの理由で利益が大きく減少したり、損失が出たりする可能性があります。あくまでも、運用が順調にいった場合の目安として見ておきましょう。
計算できるサイトを使ってみよう
自分で複利を計算するのが面倒だという人は、シミュレーションサイトを利用するのがおすすめです。初期投資額や運用年数など、簡単な項目を入力するだけで、複利が試算できます。
複利効果シミュレーション|ファンド情報|投資信託・資産運用なら【さわかみ投信株式会社】
複利運用の方法としてはインデックス型で
投資信託には、『インデックスファンド(※)』と『アクティブファンド』という、2つのタイプが存在します。複利効果を生かしたいのであれば、インデックスファンドを購入するのがおすすめです。
(※ファンドとは、投資信託のことです。投資信託の運用会社を指す場合もあります)
インデックスファンドとは
インデックスファンドとは、日経平均株価などの市場平均と連動した成果を得ることを目標としている投資信託のことです。
例えば、主な投資先が国内株式の場合は日経平均株価、米国株式の場合はNYダウなど、連動対象(ベンチマーク)は投資信託によって異なります。
対して、アクティブファンドは、市場平均以上の成果を得ることを目標としている投資信託です。積極的に投資をする分、大きな利益を期待できるというメリットがありますが、その分損失も出やすいというデメリットがあります。
バランスのよさがメリット
インデックスファンドは、市場平均と連動した成果を目標としているため、主な投資対象が先進国の主要な株式などである場合が多く、バランスがよいというメリットがあります。
バランスがよい投資信託は安定した運用がしやすいため、複利効果を狙った長期運用向きです。
コストを抑えることがポイント
投資信託は、購入時・運用時・売却時などに様々な手数料が発生します。基本的に手数料は利益から差し引かれるので、複利効果を効率よく得るには、それらのコストをいかに抑えるかがポイントです。
インデックスファンドは、購入時手数料がかからないノーロード商品など、運用コストが低い商品が多いことも、複利効果を得たい人におすすめする理由の一つです。
アクティブファンドは、積極的な投資のための調査などに経費が掛かることから、インデックスファンドよりも運用コストが高いものが多く、利益が目減りしやすいというデメリットもあります。
長期運用をする予定なのであれば、コストがかさむアクティブファンドは避けた方がよいでしょう。
手数料でおすすめの証券会社
投資信託にかかる手数料は、商品の種類だけでなく、金融機関によっても金額が大きく異なります。ここでは、運用コストを抑えたい人におすすめの、手数料が安い証券会社を紹介します。
フィデリティ証券
フィデリティ証券は、2019年の『オリコン顧客満足度調査ネット証券投資信託部門』で第1位を獲得した証券会社です。
フィデリティ証券の大きな特徴は、『スタート0%プログラム』という、新規口座開設から最大3カ月間、すべての投資信託が購入時手数料無料で購入できる特典があることです。
購入時手数料は、購入価格の0~3%程度かかるのが一般的で、商品によっては数万円かかることもあります。購入時手数料の高さで購入をためらっていた商品でも、フィデリティ証券であれば購入しやすいでしょう。
フィデリティ証券公式サイト|投資信託(ファンド)・株式・REIT・ETFなど
SBI証券
SBI証券は、取扱商品数が多く、手数料も安いとして人気の証券会社です。購入時手数料がかからないノーロードの取扱い数も1360本と多く、低コストの商品を探している人も、希望の商品を見つけやすいでしょう。
つみたてNISA(ニーサ※1)やiDeCo(イデコ※2)の口座を開設した人を対象に、特定の投資信託の購入時手数料キャッシュバックキャンペーンを開催しているのも魅力です。
(※つみたてNISAとは、少額の長期積立分散投資を対象とした、税制優遇制度のことです)
(※iDeCoとは、掛金で購入した金融商品を運用し、その運用結果に応じた年金を受け取る、個人年金制度のことです)
楽天証券
楽天証券も非常に人気の高い証券会社です。SBI証券と同じくノーロードの商品数が多く、購入時のコストを抑えられます。
また、投資信託の残高に応じて楽天スーパーポイントが付与されるなど、楽天証券ならではの特典があり、お得に利用できる点もメリットです。
楽天証券 | ネット証券(株・FX・投資信託・確定拠出年金・NISA)
おすすめのファンド
続いて、複利効果を狙った資産運用におすすめのファンドを紹介します。
楽天・全世界株式インデックスファンド
『楽天・全世界株式インデックス・ファンド』は、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース)をベンチマークとしたインデックスファンドです。アメリカを中心に、日本やイギリス、カナダなど、世界各国の株式に投資しています。
購入時手数料や運用手数料が非常に安く、コストを抑えた運用を希望する人におすすめです。
楽天・全世界株式インデックス・ファンド | 投資信託・ETFのご案内 | 投資信託・ETFなら楽天投信投資顧問
ニッセイ外国株式インデックスファンド
『ニッセイ外国株式インデックスファンド』も購入時手数料や換金手数料が無料で、運用コストを安く抑えられます。
MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円換算ベース)をベンチマークに、アメリカやイギリスなどの株式に投資をしています。
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド|投資信託のニッセイアセットマネジメント
ひふみ投信
『ひふみ投信』は、『守りながら増やす』ことを目標に、投資先を徹底調査して、成長が期待できる日本企業に投資をしています。
ひふみ投信はアクティブファンドでありながら、運用時手数料が安く、購入時手数料もかからないなど、運用コストが安いのが特徴で大変人気があります。
まとめ
老後の資金作りなど、投資信託による長期運用を計画している人は、複利効果を生かした運用がおすすめです。
複利効果の内容や、より複利効果を生かせる運用方法を理解し、効率よく資産を増やせるようになりましょう。