投資信託解約から入金までの流れ
まず、投資信託(ファンド)の解約から入金までの流れを見ていきましょう。
解約請求
投資信託を売却(換金)する場合は、購入した販売会社に対し『解約請求』をしなければなりません。解約請求とは、保有する投資信託を解約し換金する方法で、証券会社などの販売会社を通して、運用会社に信託財産の一部の解約を請求します。
一般的には、販売会社のホームページから解約注文を入れることで、解約請求の手続きが完了し、販売会社から運用会社に解約が連絡される流れです。
運用会社は解約代金をファンドが保有する資産を売却して調達し、投資家に代金を支払います。
投資信託は解約請求のほかに買取請求(※)による売却も可能です。どちらの方法で換金しても受け取る金額や税制面での違いはありません。しかし、換金方法を解約請求のみとする販売会社もあり、解約請求が換金方法の基本といえるでしょう。
(※買取請求とは、保有する投資信託を販売会社に買い取ってもらい換金する方法です)
入金まではどのくらい?
解約代金の入金日は投資信託ごとに決められており、請求から数日以上を要します。入金がいつであるかは目論見書で確認が可能です。
一般的には国内株式に投資するファンドは、解約を申し込んだ日から3営業日目を入金日としています。
しかし、販売会社やファンドの種類によっては、解約請求から入金までに1週間程度かかるものもあります。解約を申し込む際には入金までに要する期間を考慮して、解約請求を完了させましょう。
解約時の注意点
ここでは、解約における注意点を見ていきます。
信託財産留保額とは
『信託財産留保額』とは、投資信託を途中で換金する際に、換金する投資家が負担する費用で、解約時にも発生します。
投資家が受け取る解約代金は、投資信託の資産を売却して調達されますが、売却には手数料などの費用が必要です。解約のために発生する費用であることから、解約請求をした投資家が、信託財産留保額として負担しなければなりません。
信託財産留保額は『基準価額に対して〇%』という形で、解約代金から差し引かれます。一般的には0.3%程度が目安ですが、必要としないファンドもあることを覚えておきましょう。
信託財産留保額│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
売却益にかかる税金
投資信託の解約による利益には、20.315%(所得税15.315%(復興特別所得税を含む)・住民税5%)の税金が課せられます。
解約益は『譲渡所得』に区分され、『申告分離課税』の対象です。申告分離課税とは、他の所得とは分離して所定の方法で税額を計算し、確定申告をして税金を納める課税方式をいいます。
しかし、投資信託の取引に『特定口座』を利用すると、確定申告を不要または簡単にすることも可能です。
特定口座は『源泉徴収あり・なし』のどちらかを選んで利用します。源泉徴収ありの口座を選ぶと、金融機関が税額を計算し源泉徴収を行うので、原則として確定申告は不要です。
源泉徴収なしの口座では、1年間の損益を計算した『特定口座年間取引報告書』が金融機関から交付されます。報告書をベースに確定申告書を作成でき、時間と手間を削減できるでしょう。
投資信託 投資信託の税制 特定口座のご案内 : 三井住友銀行
基準価額やレート
投資信託の解約時の基準価額(投資信託の値段(時価))は、解約請求を申し込んだ時点では決まっていません。
解約にはファンドごとに締切時間が設けられており、午後3時とするものが一般的です。
通常、国内の資産を投資対象とするファンドは、締切時間までに解約を申し込むと、当日の夜頃確定する基準価額が解約に適用されます。解約請求が締切時間を過ぎると、適用されるのは翌営業日に算定される基準価額です。
海外の資産を投資対象とするファンドは、現地の市場取引が終了してから基準価額が計算されます。日本時間との時差から、基準価額が決まるのは解約申込日(※)の翌営業日以降であることを知っておきましょう。
なお、海外ファンドの基準価額の計算に使用される為替レートは、原則、申込日翌営業日の午前中のレートです。
(※申込日とは売買注文を出した日のことを指し、注文申込の締切時間までに発注した場合は当日、発注が締切時間以降になると翌営業日が申込日です)
基準価額決定、約定確認のタイミングは? | 取引ガイド | 投資信託 | 楽天証券
知っておきたいポイント
ここでは、投資信託の解約において、知っておきたいポイントを見ていきます。
解約タイミング
投資信託の基準価額が購入価格より値上がりしているときは、解約を検討する一つのタイミングといえます。
保有中のファンドの利益は単なる含み益であり、確定した利益ではありません。「もう少し待てばもっと値上がりするかも」と解約を先延ばしにすると、値下がりした場合は解約のタイミングを逃がすことになるでしょう。
投資信託は複数回に分けた解約も可能です。今後も値上がりしそうであれば保有する投資信託の一部を解約し、その後の値動きを見て残りの部分の解約を判断することもできます。
利益確定の注意点
ファンドに『クローズド期間』が設定されていると、一定期間の解約が原則として認められず、利益を確定できない場合があるため注意しましょう。
投資信託では主に運用を安定させる目的で、ファンドの新規設定後の一定期間を解約禁止とするケースがあります。この場合の解約が禁止される一定期間が、クローズド期間です。
クローズド期間はファンドによって異なり、3~6カ月または1年とするものが一般的ですが、近年は設定しない投資信託も増えています。
クローズド期間│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
主な銀行や証券会社での解約手続き
参考として、銀行や証券会社の解約手続きを見ていきましょう。
みずほ銀行
みずほ銀行では、以下のいずれかの方法で解約が可能です。なお、インターネットバンキング・テレホンバンキングの利用には、『みずほダイレクト』の契約が必要となっています。
- みずほダイレクト:ネットバンキング
ログイン後、投資信託メニューの「解約・買取注文」から解約が可能 - みずほダイレクト:テレホンバンキング
電話による手続き(受付時間:月~金曜日9~15時)
0120-898-324 13# 2#
フリーダイヤルを利用できない場合
03-3211-632413# 2#(通話料有料) - 取引店の窓口で手続き
取引印鑑・本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)・マイナンバーの用意が必要
投資信託を解約したい | FAQ(よくあるご質問)| みずほ銀行
イオン銀行
イオン銀行ではインターネットバンキングから解約が可能です。解約の流れは以下の通りです。
- ネットバンキングにログインし、上部メニューから『投資信託』『お取引等』の順に選択
- 画面が変わったら、メニューから『お取引』を選択し『解約ボタン』をクリック
- 保有ファンド一覧が表示されるので、解約するファンドを選び『解約』ボタンをクリック
- 表示される『申し込みに関する注意事項』を確認し、『確認して次へ』をクリック
- 解約注文の入力画面が表示されたら、全てと一部のどちらかを選択。解約が一部の場合は金額も入力し、内容を確認して『確認』をクリック
- 取引パスワードを入力して解約注文が完了
楽天証券
楽天証券における解約注文の基本的な流れは、以下の通りです。
- ホームページからログインし、『投信』『注文』『投信』『解約注文』の画面へ進み、保有する銘柄を表示させる。解約する銘柄の『解約』ボタンをクリック
- 解約が一部の場合は『一部解約』を選び解約する口数を入力。全て解約する場合は『全て解約』を選択し、確認ボタンをクリック
- 表示される前画面で入力した内容を確認し、取引暗証番号を入力して注文ボタンをクリック
- 注文完了画面が表示される
まとめ
投資信託の解約は販売会社のホームページから、簡単に申し込めますが解約代金の入金までには申込日から3営業日以上を要します。
解約には信託財産留保額が発生するファンドがあることや、利益には税金が課せられることも覚えておきましょう。