投資信託の利回りの基礎知識
投資信託は多くの投資家から資金を集め、運用会社が運用を行い、利益を投資家に還元する金融商品です。
ここでは、投資信託の利回りの基本事項を解説します。
利回りとはどのようなものか
投資信託の利回りとは、投資額に対してどのくらいの利益がでたかを示すものです。例えば、10万円を投資したファンドで1万円の利益がでた場合、利回りは10%(1万円÷10万円×100)です。
投資信託の利益
投資信託の利益には、以下の2つがあります。
- 譲渡益
- 分配金
譲渡益は、購入したときよりも高い価格で投資信託を売却することにより得られる差益です。分配金は、投資信託の収益から投資家に還元されるお金です。
分配金は通常、各ファンドの目論見書(もくろみしょ※)が定める決算ごとに支払われます。
(※目論見書とは、投資信託の売買に必要な重要事項が記載された書類です)
利回りに影響を与える要素
利回りに影響を与える要素には、以下があります。
- 運用成績
- 分配金
- 手数料
- 税金(※)
好調な運用成績や分配金は、利回りを上げる要素です。運用成績が低迷している場合は、利回りがマイナスになることもあるので、注意しましょう。
手数料および税金は、投資信託の運用に必要なコストです。利回りを考える際には、利益からコストを差し引かなければなりません。
投資信託では、購入時や保有時・売却時に手数料がかかります。手数料の有無や金額はファンドにより異なるため、目論見書で確認しましょう。
(※投資信託の分配金および譲渡益には、通常20%の税金がかかります。ただし2037年までは復興特別所得税が上乗せされるため、20.315%です)
投資信託の利回りの計算
投資信託の利回りは、以下の式で計算できます。
- 利回り=(利益−コスト)÷投資額×100
例えば、購入手数料1%(税抜)のファンドを10万円購入し、分配金を1000円(課税前)受け取ったとします。1年後に10万2000円(課税前)で売却した場合、利益は3000円(分配金1000円+譲渡益2000円)です。
コストは、下表にをご覧ください。
項目 | 金額 |
購入手数料(外枠方式※) | 1080円(10万円×1.08%) |
分配金の税金 | 203円(1000円×20.315%) |
譲渡益の税金 | 406円(2000円×20.315%) |
合計 | 1689円 |
1年間の運用で得た利益から、コストを引いた金額は、1311円(3000円-1689円)です。よって利回りは、1.31%(1311円÷10万円×100)と計算できます。
なお、投資年数が1年以上の場合は、利益からコストを引いたものを、年数で割って計算しましょう。
(※購入手数料には、投資額に手数料を含む内枠方式と、投資額とは別に手数料を支払う外枠方式があります。本項では、投資額の10万円とは別に手数料を支払う、外枠方式で計算しています)
見せかけの利回りに注意
分配金が支払われるファンドでは、分配金の利回りの計算も大切です。分配金利回りの計算方法は、以下のとおりです。
- 分配金利回り=1年間の分配金合計額÷現在の基準価額(投資信託の値段)×100
ここでは、分配金の利回り計算をする際の注意点を解説します。
投資信託の分配金利回りランキングの見方に注意! | 日本証券業協会
毎月分配型投信の分配金利回り
分配金は通常、利益から支払われます。しかし、投資信託によっては、利益以上の分配金を出しているケースがあります。
その場合、分配金の原資となるのは、投資信託の元本です。これは、投資した元本を回収しているにすぎず、利益とは呼べません。
投資信託は、ファンドにより分配金が支払われる頻度が異なります。特に『毎月分配型』のファンドは、利益がでていない月にも分配金が支払われている可能性があるので、注意しましょう。
本当の利回りで比較しよう
分配金額だけでなく、基準価額の騰落を含めた利回りは、以下の式で計算できます。
- 基準価額込みの利回り=(現在の基準価額-1年前の基準価額+1年間の分配金合計額)÷1年前の基準価額×100
例えば、1年間の分配金合計額が1500円、1年前の基準価額が8000円、現在の基準価額が7500円の投資信託の利回りを計算してみましょう。
計算式 | 利回り(%) | |
分配金の利回り | 1500円÷7500円×100 | 20 |
分配金+基準価額の利回り | (7500円-8000円+1500円)÷8000円×100 | 12.5 |
このように、分配金のみで計算した利回りと、基準価額込みの利回りには、大きな差がでることがあります。分配金が多く支払われているファンドを選ぶ際には、基準価額も含めた利回りを計算することが重要です。
2018年利回りランキング上位の商品
ここからは、利回りの高いファンドを紹介します。まず、18年利回りランキング上位のファンドを見ていきましょう。なお、利回り計算の期間は17年11月9日~18年11月8日の1年間です。
ニッセイJPX日経400インデックスファンド
『ニッセイJPX(ジェイピーエックス)日経400インデックスファンド』は、成長が期待できる日本企業の株式を投資対象とするファンドです。
項目 | 詳細 |
17年11月9日の基準価額 | 1万2596円 |
18年11月8日の基準価額 | 9918円 |
1年間の分配金合計額 | 2400円 |
分配金のみの利回り | 24.19% (2400円÷9918円×100) |
基準価額を含めた利回り | -2.20% ((9918円-1万2596円+2400)÷1万2596円×100) |
ニッセイJPX日経400アクティブファンド|投資信託のニッセイアセットマネジメント
アムンディ・グラン・チャイナ・ファンド
『アムンディ・グラン・チャイナ・ファンド』は、中国経済圏の企業の株式を投資対象としています。
項目 | 詳細 |
17年11月9日の基準価額 | 1万2109円 |
18年11月8日の基準価額 | 8954円 |
1年間の分配金合計額 | 2100円 |
分配金のみの利回り | 23.45% (2100円÷8954円×100) |
基準価額を含めた利回り | -8.71% ((8954円-1万2109円+2100)÷1万2109円×100) |
アムンディ・グラン・チャイナ・ファンド | アムンディ・ジャパン
M&Aフォーカス・ファンド
『M&A(エムアンドエー)フォーカス・ファンド』の投資対象は、日本国内の取引所に上場されている株式のうち、M&A(企業の合併・買収)価値に魅力がある企業です。
項目 | 詳細 |
17年11月9日の基準価額 | 1万2578円 |
18年11月8日の基準価額 | 1万1014円 |
1年間の分配金合計額 | 1200円 |
分配金のみの利回り | 10.89% (1200円÷1万1014円×100) |
基準価額を含めた利回り | -2.89% ((1万1014円-1万2578円+1200)÷1万2578円×100) |
SBI証券の投資信託利回りランキング
最後に、SBI(エスビーアイ)証券で取り扱う投資信託の、18年11月8日付けの利回りランキングを紹介します。
トータルリターンランキング
トータルリターンとは、対象期間中の基準価額の騰落率をあらわすもので、分配金は再投資したものとして計算します。ランキングの集計期間は、17年11月1日~18年10月31日です。
順位 | ファンド名 | トータルリターン(%) | ||
6カ月 | 1年 | 3年 | ||
1 | UBS(ユービーエス)原油先物ファンド | 9.18 | 30.21 | 2.70 |
2 | 東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン | 4.68 | 26.97 | 26.15 |
3 | 明治安田-小型株ファンド | -8.16 | 23.05 | 30.36 |
4 | 日興グローイング・ベンチャーファンド | -7.20 | 22.79 | 31.91 |
5 | SBI小型成長株ファンド・ジェイクール | -7.60 | 20.66 | 30.00 |
分配金利回りランキング
SBI証券の分配金利回ランキングは、月末時点の1年前の基準価額と年間の分配金合計額をもとに計算します。
月末時点の基準価額と1年前の基準価額を比較し、月末時点の基準価額が下落していた場合は、価額の減少が考慮されています。18年10月末時点の分配金利回りランキングは、下表のとおりです。
順位 | ファンド名 | 分配頻度 | 分配金利回り(%:年率) |
1 | 明治安田J-REIT(ジェイリート)戦略ファンド | 毎月 | 11.96 |
2 | One-DIAM(ワンダイアム)J-REITオープン | 毎月 | 11.94 |
3 | One-DIAM J-REITオープン | 隔月 | 11.91 |
4 | 三菱UFJ(ユーエフジェイ)国際-Jリートオープン | 3カ月ごと | 11.28 |
5 | 三菱UFJ国際-Jリートオープン | 毎月 | 10.89 |
まとめ
利回りを利用すると、投資信託の運用成績をわかりやすく比較検討できます。
利回りには、すべての利益やコストを考慮したものだけでなく、分配金合計額をもとにしたものや、分配金に基準価額の騰落を加味したものがあります。目的にあわせて、利回り計算を使い分けましょう。