ロボアドバイザーとは
ロボアドバイザーとは、AI(エーアイ:人工知能)が自動で資産運用や資産形成を行うサービスです。まず、ロボアドバイザーの基本事項を確認しましょう。
AIを用いた助言サービス
ロボアドバイザーは、AIが投資家1人1人に合った資産運用や、資産形成の方法を提案します。金融工学に基づいた提案がされるため、提案内容に差が生じない点が特徴です。
質問に答えて最適な運用を提示
ロボアドバイザーでは、インターネット上で回答したアンケートをもとに、最適な運用方法が提案されます。希望する人は、ロボアドバイザーを取り扱う金融機関のホームページを確認しましょう。
質問の詳細は、ロボアドバイザーにより異なりますが、質問内容の例は以下の通りです。
- 年齢
- 投資経験
- 投資期間
- 投資目的
多くのロボアドバイザーでは、アンケートを無料で実施しています。また、質問は選択式で簡単に回答できるため、興味がある人は試してみましょう。
ロボアドバイザーのメリット
ロボアドバイーザを利用して資産運用をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
手間がかからない
投資信託を運用するには、以下の手続きが必要です。
- 投資信託の銘柄選定
- 投資信託の購入
- 投資信託の売却
銘柄を選ぶ際には、各商品の手数料やリスクなどを比較する必要があります。また、投資信託の購入や売却は、金融機関の窓口に出向くか、インターネットなどを利用し、自分で手続きをしなければなりません。
ロボアドバイザーを利用すれば、アンケート結果をもとに自動で銘柄を選定し、投資信託の売買も行ってくれるため、手間が比較的かからずに資産運用が可能です。
気遣いが必要ない
投資信託の購入後は、以下の点に注意しながら運用する必要があります。
- 市場の状況
- 保有する投資信託の運用成績
- 計画的なリバランス(※1)
投資信託は、市場の状況に合わせて基準価額(※2)が変動します。個人で投資信託を運用する場合、定期的に市場や基準価額を確認し、基準価額の値動きを見た上で、売買を行わなければなりません。
しかし、ロボアドバイザーを利用すれば、運用方針に基づき自動で売買を行ってくれるため、情報収集や売買のタイミングを検討するといった気遣いが不要です。
また、リバランスも自動で行われるため、運用中のメンテナンスを気にする必要もありません。
(※1:リバランスとは、複数の資産に分散して投資する場合、相場の変動を受け時間の経過とともに変わってくる資産配分を、計画通りに修正することです)
(※2:基準価額とは、投資信託の値段のことで、1口もしくは1万口当たりで示されます。なお、基準価額は1日1回算出されます)
アメリカのように手数料が下がっていく?
日本よりも早くロボアドバイザーのサービスが開始されたアメリカでは、日本に比べ低い手数料でサービスを利用できます。
アメリカのロボアドバイザーの手数料例を、以下に2つ紹介します。
ロボアドバイザー名 | 手数料 |
Wealthfront(ウェルスフロント) | 0.25% |
Betterment(ベターメント) | 0.25~0.4% |
2018年9月19日現在、日本国内のロボアドバイザーは、1%前後の手数料であることがほとんどです。しかし、今後は世界の水準に合わせて、手数料が下がる可能性もあるでしょう。
Wealthfront: Financial Planning Robo-Investing for Millennials
Our Pricing | Betterment
ロボアドバイザーのデメリット
次に、ロボアドバイザーを利用するデメリットを説明します。
リスクは必ずある
投資信託は、値動きがある運用商品であるため、場合によっては資産が減少する可能性があります。投資信託の運用で考えられるリスクは、以下の通りです。
リスクの種類 | 詳細 |
価格変動リスク | 投資信託が組み入れている株式や、債券の価格が変動するリスク |
為替変動リスク | 為替レートが変動するリスク |
信用(デフォルト)リスク | 債券などを発行する国や企業の財政難や経営不振などにより、利息や償還金(※)を支払うことができなくなるリスク |
金利変動リスク | 金利が変動するリスク |
ロボアドバイザーの助けを借りることで、リスクを軽減することはできますが、リスクをゼロにはできない点には、注意しなければなりません。
(※償還金とは、投資信託の信託期間終了時に投資家に返還される資金です。金額は、償還日の基準価額×保有口数で計算されます)
詳細な質問が難しいケースがある
ロボアドバイザーは、インターネット上で手続きや運用が可能です。それにより、時間や場所を選ばず取引できるメリットがある一方、手続きなどを自分で行わなければなりません。
ロボアドバイザーの手続きや運用方針などに疑問がある場合は、ロボアドバイザーのサービスを提供する金融機関に質問をしましょう。
質問はコールセンターやメールなどでできますが、金融機関により受付方法が異なり、場合によっては詳細な質問が難しいケースもあります。
ロボアドバイザーの種類
ロボアドバイザーは、『アドバイス型』と『投資一任型』の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。また、NISA口座とロボアドバイザーについても見ていきましょう。
アドバイス型
アドバイス型では、ロボアドバイザーの提案を受けながら、自分で資産運用を行います。なお、アドバイス型の特徴は以下の通りです。
- アドバイスをもとに自分で金融商品の売買を行う
- リバランスも自分で行う
- 手数料は低め
アドバイス型では、実際の運用は自分自身で行います。そのため、運用経験がある人や、投資を積極的に楽しみたい人に向いているといえます。
また、投資一任型と比較して手数料が低めに設定されているため、コストを抑えてロボアドバイザーを利用したい人におすすめです。
投資一任型
投資一任型では、運用方針の提案から実際の運用まで、全てをロボアドバイザーに任せられます。投資一任型の特徴は、以下の通りです。
- 金融商品の売買をロボアドバイザーが行う
- リバランスもロボアドバイザーが行う
- 手数料が高め
投資一任型は、投資初心者や運用をする時間が取れない人に向いています。ただし、アドバイス型よりも手数料が高く、運用のコストがかかる点に注意しましょう。
NISA口座の利用について
NISA(ニーサ)は、投資信託や株を運用して得た分配金や配当金、譲渡益にかかる税金(20.315%※)が、一定期間控除される制度です。
NISAを利用するにはNISA口座を開設し、運用商品の取引をする必要があります。ロボアドバイザーとNISA口座が併用できるかは、ロボアドバイザーの種類により異なります。
アドバイス型 | 投資一任型 | |
NISA口座との併用 | できるものもある | 不可 |
アドバイス型のロボアドバイザーの提案をもとに、NISA口座で運用を行うことは可能です。
一方、投資一任型のロボアドバイザーは、金融商品の売買も一任するため、ロボアドバイザーとの併用はできません。
(※分配金や譲渡益にかかる税率は通常20%ですが、37年までは復興特別所得税がかかるため20.315%となります)
NISAとは? : 金融庁
ウェルスナビ「WealthNavi for SBI証券」でNISA口座の利用はできますか?...
アドバイス型で比較したおすすめ
ここでは、アドバイス型で比較した、おすすめのロボアドバイザーを紹介します。
投信工房
『投信工房』は、ロボアドバイザーの利用手数料が無料です。信託報酬(※1)はかかりますが、インデックスファンド(※2)を中心とした運用の提案がされるため、コストを抑えた運用を目指せます。
投信工房の特徴は、自動リバランスがある点です。18年9月19日現在、利用料無料のアドバイス型ロボアドバイザーで自動リバランス機能があるのは、投信工房のみとなっています。
なお、リバランスの方法は、以下の3つです。
リバランスの方法 | 詳細 |
一括リバランス | アドバイスを参考に自分で行う |
積立リバランス | リバランスを考慮した銘柄選定が、積立時に自動で行われる |
自動リバランス | 指定した日に自動でリバランスがされる |
(※1:信託報酬とは、投資信託の運用・管理に必要な費用のことです)
(※2:インデックスファンドとは、日経平均やTOPIX(トピックス)など、特定の指標に連動した運用成績を目指す投資信託で、手数料が安く設定される傾向にあります)
ファンドロボ
『ファンドロボ』は、SBI(エスビーアイ)証券で取り扱う投資信託の中から、最適なファンドを提案してくれるロボアドバイザーです。利用料は無料で、SBI証券に口座がなくてもアドバイスを受けられます。
ファンドロボでは、いくつかの質問に答えることで、リスク許容度別にグループに分類されます。その後、希望する投資地域や投資資産によって、1~3本のおすすめファンドが提示されます。
ファンドの選定は、世界有数の投資信託評価機関である、モーニングスター社のデータをもとに行っているため、運用実績や運用効率の優れた投資信託を提案してもらえる点が魅力です。
SBI証券(旧SBIイー・トレード証券)|SBI-ファンドロボ
answer
『answer(アンサー)』は、マネックス証券が運営する、利用料無料の資産運用サポートアプリです。18年9月19日現在、295銘柄の投資信託から最適な運用方針をシミュレーションしてくれます。
分析対象銘柄の投資先は、国内外の株や債券、REIT(リート※1)、コモディティ(※2)です。
なお、マネックス証券に口座を保有していない人でも利用できます。また、NISAにも対応しているため、多くの人が使えるアプリだといえるでしょう。
(※1:REITとは、複数の不動産を運用し、賃貸収入や売買益を投資家に分配する投資信託のことです)
(※2:コモディティとは、商品先物取引で取引されるエネルギーや貴金属、穀物といった商品です)
answer-誰でも無料で使える、投資信託による資産運用シミュレーションアプリ
fund eye
『fund eye(ファンドアイ)』は、SMBC(エスエムビーシー)日興証券が提供する、投信取引サポートツールです。
fund eyeで受けられるサービスは、以下の通りです。
- 運用を始めるにあたり、最適な銘柄の提案
- 最適なポートフォリオ(※)の提案
初めて投資信託を購入する人は、アンケートに回答することで、投資目的や運用方針に合った銘柄を選定してもらえます。
すでに投資信託を保有している人は、保有している銘柄と金額を回答すると、最適なポートフォリオやリバランスが提案されます。
なお、SMBC日興証券に口座を持っていなくても、誰でも無料で利用可能です。
ロボアドバイザーで手堅くNISA投資。各社比較して効率的な運用を
投資一任型で比較したおすすめ
次に、投資一任型で比較した、おすすめロボアドバイザーを紹介します。
THEO
項目 | 詳細 |
手数料(税抜) | ・3000万円以下の部分:年率1% ・3000万円を超える部分:年率0.5% |
投資対象 | 40種類のETF(エーティーエフ※1)を通じ、1万1000銘柄以上 |
最低投資額 | 1万円(積立の場合) |
THEO(テオ)の特徴は、徹底した分散投資(※2)による安定した資産の成長を目指している点です。
アジアや北米、欧州や南米など、さまざまな地域に投資をしているだけでなく、以下の9つに投資することでリスクの軽減を図っています。
- 先進国株
- 新興国株
- 先進国国債
- 投資適格債券(信用力が高い債券)
- ハイイールド債券(信用度が低い分、金利が高い債券)
- 新興国債券
- REIT
- コモディティ
- 通貨
(※1:ETFとは証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託のことです)
(※2:分散投資とは、投資先を1つに限定せず、複数の資産に分けて投資をすることです。これにより、値下がりなどにより資産が減るリスクを分散する効果があります)
THEO[テオ] by お金のデザイン | ロボアドバイザーで、おまかせ資産運用
WealthNavi
項目 | 詳細 |
手数料(税抜) | ・3000万円以下の部分:年率1% ・3000万円を超える部分:年率0.5% |
投資対象 | 6~7の海外ETFを通じ、50カ国1万1000銘柄 |
最低投資額 | 利用するサービス(※)により、10万円もしくは30万円 |
>WealthNavi(ウェルスナビ)の特徴は、税金を抑えることで運用コストを下げるDeTAX(デタックス)機能です。ロボアドバイザーで資産運用をすると、配当やリバランス時の利益に対し、税金を納めなければなりません。
DeTAXでは、一定の税額を超えたときに、組み入れ資産の中の含み損がある銘柄をいったん売って、買い戻すことで損失を出します。この損失と利益を相殺することで、税額を軽減し、効率のよい資産運用を目指しています。
WealthNavi(ウェルスナビ)| ロボアドバイザーで全自動の資産運用
楽ラップ
項目 | 詳細 | |
手数料(税抜) | 固定報酬型 | 投資顧問料0.15%+運用手数料(投資金額により0.35~0.5%)+ファンド費用 |
成功報酬併用型 | 投資顧問料0.05%+運用手数料(投資金額により0.35~0.5%)+成功報酬(運用益の積み上げ額の5%)+ファンド費用 | |
投資対象 | 国内外の株式や債券に投資する、楽ラップ専用の低コストインデックスファンド | |
最低投資額 | 10万円 |
『楽ラップ』には、『TVT(ティーブイティー)機能』(下落ショック軽減機能)があります。TVT機能は、国内外の株式市場の価格変動リスクが上昇したときに、株式への投資を減らし、債券への投資を増やすものです。
これにより、株価の下落により資産が減るリスクを減らし、安定的な資産の増加を目指せます。
ダイワファンドラップ オンライン
項目 | 詳細 |
手数料(税抜) | 1%+信託報酬 |
投資対象 | 国内外の株式・債券・REIT |
最低投資額 | 1万円(積立の場合) |
『ダイワファンドラップオンライン』は、大和証券が取り扱うロボアドバイザーで、対人の相談窓口が充実している点がおすすめのポイントです。
サービスや手続き、運用内容に不明点がある人は、大和証券の窓口、および大和証券コレクトセンターで相談ができます。
また、ダイワファンドラップオンラインでは、以下の診断メニューがあります。資産運用において重視したい項目を選び、診断を受けましょう。
- ライフプランニング
- 資産運用プランニング
- リスク許容度診断
ロボアドバイザー比較のポイントは?各商品のおすすめポイントを紹介
ロボアドバイザーの手数料を比較。初心者にもわかりやすく解説します
ロボアドバイザーと税金
先述の通り、ロボアドバイザーの運用で得た譲渡益には、税金がかかります。NISA口座を利用すれば一定期間非課税となりますが、そのほかの口座で取引をする場合は、税金を納めなければなりません。
ロボアドバイザーで運用をするには、以下の口座のうちどれかを開設する必要があります。
口座の種類 | 詳細 |
特定口座(源泉徴収あり) | 原則として確定申告不要 |
特定口座(源泉徴収なし) | 金融機関が発行する年間取引報告書をもとに、確定申告をする |
一般口座 | 自分で取引の損益を計算して確定申告をする |
ここでは、特定口座(源泉徴収あり)について詳しく解説します。
特定口座(源泉徴収あり)を選べば確定申告不要
確定申告などの手間を減らしたい人は、特定口座(源泉徴収あり)の利用がおすすめです。特定口座(源泉徴収あり)では、譲渡益から税金が源泉徴収されるため、原則として確定申告の必要はありません。
また、特定口座内の取引は、自動で損益通算(※)されます。ただし、損益通算ができるのは、同一の特定口座内のみです。
ほかの金融機関で保有する特定口座内の金融商品と損益通算したい場合は、年間取引報告書を利用し、自分で確定申告をする必要があります。
(※損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺して税金を減らすことです)
海外ETFの場合は確定申告が必要
海外ETFでは、利益から以下の2つの税金が引かれます。
- 現地の税金
- 日本国内の税金
この場合、税金を2重に納めていることになるため、確定申告をすれば現地で徴収された税金が返還されます。
資産の多くを海外ETFで運用している人は、確定申告をすることで、運用成績が向上する可能性があります。
まとめ
ロボアドバイザーは、AIが運用方針や資産管理方法を提案してくれるサービスで、アドバイス型と投資一任型の2種類があります。
取り扱っている金融機関により、サービス内容や手数料に差があるため、それぞれを比較して自分に合ったロボアドバイザーを選びましょう。