スプレッドとは
『スプレッド』とは、どのようなものか詳しく見ていきましょう。
幅や広さという意味
スプレッドとは、『広がり・幅』という意味を持つ言葉です。FXでは、通貨の買値(ASK・アスク)と売値(BID・ビッド)の価格差をいいます。
FX会社の取引画面には下図のように、買値と売値が同時に表示されます。この2つの価格差がスプレッドであり、小さいほど取引では有利となります。
出典:FXスプレッドとは?|業界最高水準の低スプレッド|FXブロードネット
スプレッドの計算方法
スプレッドを実際に計算してみましょう。
米ドル/円の為替レートを買値101.738円、売値101.735円とすると、スプレッドは以下により計算できます。
スプレッド=買値101.738円−売値101.735円=0.003円(0.3銭)
0.3銭は米ドル1通貨(※)あたりのスプレッドです。よって、米ドル1万通貨を買った場合のスプレッドは以下となります。
0.3銭×1万通貨=3000銭(30円)
さらに、米ドル1万通貨の売り決済でも30円のスプレッドが発生し、売買に60円のスプレッドがかかるということです。
(※1通貨は日本円であれば1円、米ドルでは1ドル、ユーロでは1ユーロを指します)
スプレッドの仕組み
通常、FX会社が提示するレートは、カバー先と呼ばれる金融機関から提供されるレートを基準に決められます。
例えば、カバー先がFX会社に米ドル/円のレートを、101.123円で提供したとしましょう。FX会社は101.123円を基準に、買値101.125円・売値101.121円といったスプレッドを加えたレートをトレーダーに提示します。
また、為替レートは買値が売値を上回っており、注文が約定(※)するとスプレッド分だけ損失が発生する仕組みとなっています。
仮に上記のレート買値101.125円で米ドルを買うと利益を得るには、売値101.121円が現在より0.004円(スプレッド分)を超える値幅で上昇する必要があります。
トレーダーはスプレッドの存在により、マイナスの状況から取引を始めることになるのです。
(※約定とは、買いまたは売りの注文が成立することをいいます)
FXの手数料
FXの売買手数料について見ていきましょう。
売買手数料は無料が多い
現在は、売買手数料を無料としているFX会社が一般的です。
外貨預金では一般的に片道0.5~1円程度の手数料がかかり、株取引では売買手数料が発生します。
しかし、FXでは、売買手数料や口座維持費、取引口座への入出金などを無料とする会社が多く、他の金融商品に比べて取引コストが抑えられる点が特徴です。
ごく一部のFX会社のみかかる場合あり
ごく一部ではありますが、売買手数料がかかるFX会社もあります。
手数料が必要となるのは、1万通貨未満の取引や自動売買においてなど、何らかの条件付きのケースが一般的です。
参考までに、売買手数料がかかるFX会社の一部を下表にまとめました。
会社名 | 1万通貨以上 | 1万通貨未満 |
FXプライムbyGMO | 無料 | 1通貨あたり3銭(片道) |
マネックス証券 | 無料 | 1000通貨あたり30円(片道) |
FX PLUSの取引手数料について教えてください。 | マネックス証券
取引概要(選べる外貨)|FXならFXプライムbyGMO
スプレッドが実質の手数料
FXでは売買手数料を無料とする会社が多く、スプレッドが実質的な手数料となっています。
スキャルピング(※)のように売買を何度も繰り返す取引スタイルは、手数料であるスプレッドが利益に大きく関係します。例を挙げて見ていきましょう。
スプレッドをA社:0.3銭、B社:1銭とします。1万通貨の買い、または売り注文が約定した場合、スプレッドは1回につき以下となります。
A社:0.3銭×1万通貨=3000銭(30円)
B社:1銭×1万通貨=1万銭(100円)
A社・B社のスプレッドを注文の約定回数ごとに、下表にまとめました。回数が多くなると、まとまった金額になることが分かります。
約定回数 | 2回 | 10回 | 20回 |
A社 | 60円 | 300円 | 600円 |
B社 | 200円 | 1000円 | 2000円 |
(※スキャルピングとは、小さな値幅での取引を1日に何度も繰り返し、利益を積み重ねていく取引手法のことです)
スプレッドの基礎知識
ここでは、スプレッドの基礎知識を解説します。
スプレッドの単位
FXでは、為替レートが動くときの最小値幅単位として『pips』が用いられ、スプレッドを表す際にもpipsを使用します。
1pipsは、通貨の最小単位の1/100とされており、日本円の最小単位は1円なので、1pips=0.01円(1銭)、0.1pips=0.001円(0.1銭)となります。スプレッドが5銭であれば5pips、0.5銭では0.5pipsです。
米ドルの場合は最小単位がセントですが、1セントは0.001ドルなので1pips=0.0001米ドルとできます。
1pips(ピップス)とはなんですか? - よくあるご質問:FAQ | 新生銀行
原則固定スプレッド
国内のFX会社におけるスプレッドは、『原則固定』であることが一般的です。通貨の売値や買値が変動しても、原則スプレッドは一定に保たれますが、以下の場合などにおいて、拡大することがあります。
- 市場の価格急変時(重要指標発表時、要人発言時、震災などの発生時など)
- 市場の流動性が低下している場合(米国市場閉場前後、年末年始など)
流動性とは取引量を意味し、通貨の取引量が減少すると価格が不安定になりスプレッドが広がりやすくなります
FXスプレッドとは?|業界最高水準の低スプレッド|FXブロードネット
変動スプレッド
市場の状況に合わせて常に変動する可能性があるスプレッドのことを『変動スプレッド』といい、海外のFX会社で多く採用されています。
変動スプレッドでは、トレーダーはNDD方式(ノンディーリングディスク方式)により、インターバンク市場(※)と実質的な直接取引を行います。
NDD方式では、トレーダーの注文は直接インターバンク市場へ出され、カバー先の金融機関が注文に応じレートを提示します。
そして、FX会社は、提示されたレートから、最もスプレッド差が狭いものを発注者へ提示し、売買が成立する仕組みです。
FX会社によるスプレッドの調整は行われず、市場の状況に合わせて広がったり、狭くなったりと変動します。
(※インターバンク市場とは銀行間の取引市場をいい、電話やインターネットなどにより短期資金・外貨・手形を取引します)
スプレッドゼロは本当か
FX会社の中には、極めてゼロに近いスプレッドを設定する会社もありますが、どのように収益を得ているのでしょうか。
スワップポイントで徴収
FX会社によっては、『スワップポイント(※)』から手数料として、一部を徴収することがあります。
スワップポイントは、トレーダーが取引会社を決める際の重要な判断材料です。よって、顧客獲得のための戦略や方針に基づき、金額を調整する会社もあり各社で異なります。
(※スワップポイントとは、取引の際に発生する2国間の金利差のことです)
強制ロスカットで徴収
『ロスカット』とは、保有ポジション(※)の含み損が一定基準に達した際に、FX会社が損失拡大を防ぐために行う強制決済です。
2009年の改正内閣府令により義務付けられ、トレーダーの資産を守るためのルールですが、その一方でFX会社はロスカットから利益を得ています。
国内のFX会社の取引は、DD方式(ディーリングディスク方式)が一般的です。注文をインターバンク市場へ流さず、トレーダーとFX会社が直接取引を行い、両者は利益が相反する関係となります。
仮にトレーダーの買い注文が約定すれば、FX会社は売りポジションを持ちます。売値が上がればトレーダーが儲け、下がればFX会社の儲けです。
ロスカット時はトレーダーは強制決済により損失を被り、FX会社は収益を受け取ります。
(※ポジションとは、取引において保有している外貨資産の状況をいいます)
ロスカット・ルールの整備・遵守の義務付け:一般社団法人 金融先物取引業協会
スプレッドに関する注意点
ここでは、スプレッドに関する注意点について説明します。
銭とpipsの違い
pipsは、スプレッドを表示する際に、全ての通貨ペアに対して使われます。一方、銭は、日本人に分かりやすいという理由から用いられている単位です。よって、米ドル/円、ユーロ/円などの、対円の通貨ペアに限って使用されます。
ユーロ/米ドル、ポンド/米ドルなど、対円以外の通貨ペアではpipsを使用します。
狭いだけでは勝てない
スプレッドが狭い場合でも、約定力が低いと取引に不利となります。約定力は、スリッページや約定拒否が少ないほど高いといえます。スリッページとは、注文価格と実際の約定価格の差のことです。
例えば、取引画面上で111.012円で発注した買い注文が、111.022円で約定すると1銭のスリッページとなります。仮に、スプレッドが0.3銭であれば損失1銭が上乗せされ、注文によるコストは1.3銭に増えます。
スリッページや約定拒否は相場の大きな変動や、注文の殺到などにより発生することがあり、FX会社のシステム処理能力などが原因とされています。
よって、許容スリッページの設定(※)や、システムが安定した会社を選択するなどをして、対策をすることが大切です。
(※許容スリッページの設定とは、注文時にスリッページの限度幅を事前に設定することをいいます)
GMOクリック証券 - スリッページについて | FXネオ | サービス一覧
スプレッドは経費にはならない
確定申告では、スプレッドは経費として認められません。スプレッドは決済後の損益にすでに含まれているので、必要経費として差し引くと二重計算になってしまうからです。
スプレッド比較によるおすすめ国内FX会社
スプレッドでの比較による、おすすめの国内FX会社を紹介します。
外為どっとコム
『外為どっとコム』では、米ドル/円のスプレッドが0.3銭と業界最狭水準です。また、高金利通貨である南アフリカランドと円の通貨ペアは1銭、メキシコペソ/円は0.5銭で、これらにおいても、業界最狭水準のスプレッドとなっています。
なお、主な通貨ペアにおけるスプレッドは、以下の通りです。
通貨ペア | 米ドル/円 | ユーロ/円 | ポンド/円 | 豪ドル/円 |
スプレッド(原則固定) | 0.3銭 | 0.5銭 | 1銭 | 0.7銭 |
外貨ネクストネオの狭小スプレッド| FX取引サイト│FXを始めるなら外為どっとコム
GMOクリック証券
『GMOクリック証券』では、米ドル/円のスプレッドが0.3銭と業界最狭水準を誇ります。
また、12~17年まで6年連続で年間FX取引高(売掛代金)が世界第1位(※)となるなど、信頼度の高い会社です。
主な通貨ペアにおけるスプレッドは、以下となっています。
通貨ペア | 米ドル/円 | ユーロ/円 | ポンド/円 | 豪ドル/円 |
スプレッド(原則固定) | 0.3銭 | 0.5銭 | 1銭 | 0.7銭 |
(※Finance Magnates(ファイナンス・マグネイト)による『2017年年間FX取引高調査報告書』における結果です)
GMOクリック証券 - FXネオのスプレッド・取引手数料 | FXネオ | サービス一覧
SBI FXトレード
『SBI FXトレード』は、米ドル/円では0.27銭という、非常に狭いスプレッドで取引が可能です。
また、100万通貨以下の取引は原則固定のスプレッド、100万通貨を超える場合は変動制を採用しており、注文数量によりスプレッド値が異なります。
主な通貨ペアにおける1~100万通貨取引時のスプレッド(原則固定)は、以下の通りです。
通貨ペア | 1~1万通貨 | 1万1~100万通貨 |
米ドル/円 | 0.27銭 | 0.29銭 |
ユーロ/円 | 0.39銭 | 0.49銭 |
ポンド/円 | 0.89銭 | 0.99銭 |
豪ドル/円 | 0.59銭 | 0.69銭 |
スプレッド比較によるおすすめ海外FX会社
比較的好条件のスプレッドを提供する、海外のFX会社を紹介します(全て変動スプレッドを採用)。
LAND-FX
『LAND-FX(ランドFX)』は、海外FX会社の中でもスプレッドが狭いとされるFX会社です。取引口座として、Live口座・ECN口座があります。
ECN口座は、狭いスプレッドでの取引が可能ですが、取引の際に1Lot(10万通貨)につき往復7ドルの手数料が必要です。
各通貨ペアにおける最小スプレッド(※)は、以下となっています。
口座名 | Live口座 | ECN口座 |
スプレッド | 0.7pips~ | 0.1pips~ |
(※最小スプレッドとは、一定期間の計測における最も小さいスプレッドをいいます)
TITANFX
『TITAN FX(タイタンFX)』には、『Zeroスタンダード口座』や、『Zeroブレード口座』などの取引口座があります。
Zeroブレード口座では、スプレッド0pipsから取引が可能となっています。取引には1Lot(10万通貨)につき3.5ドルの手数料が必要です。
各通貨ペアにおける平均スプレッド(※)は、以下となっています。
口座名 | 米ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 |
Zeroスタンダード口座 | 1.33pips | 1.74pips | 2.12pips |
Zeroブレード口座 | 0.33pips | 0.74pips | 1.12pips |
(※平均スプレッドとは、一定期間中に計測したスプレッドの平均値です)
Titan FX(タイタンFX)- ECN(FX、CFD、コモディティ)
AXIORY
『AXIORY(アキシオリー)』には、『スタンダード口座』と『ナノスプレッド口座』があります。
ナノスプレッド口座では、1注文10万通貨につき3ドルの取引手数料が必要ですが、狭いスプレッドでの取引が可能です。
各通貨ペアにおけるスプレッドは、以下となります。
取引口座 | 米ドル/円 | ユーロ/円 | ユーロ/米ドル |
スタンダード口座 | 0.4銭~ | 0.4銭~ | 0.3銭~ |
ナノスプレッド口座 | 0.1銭~ | 0.1銭~ | 0.1銭~ |
AXIORY(アキシオリー)公式サイト | FX・CFD取引 | 日本語
まとめ
スプレッドとは、為替レートの買値と売値の差額をいい、狭いほど取引では有利とされます。
国内のFX会社では、原則固定のスプレッドが一般的で、価格の急激な変動や取引量の減少などにより変動することがあります。
スプレッドは実質的な取引コストになり、FX会社によって異なるため、取引会社を決める際には、しっかりと確認しましょう。