投資信託の分配金について
まず、投資信託の分配金とは、どのようなものか見ていきましょう。
投資信託とは
投資信託とは、投資家から集めた資金を1つにまとめ、大きな資金として複数の株式や債券などに投資し、運用していく金融商品です。
投資信託は運用会社が開発・組成し、銀行や証券会社などが窓口となり販売します。販売により集まった資金は、投資資産として受託会社(主に信託銀行)が管理・保管をしています。
運用は購入者に代わり資産運用の専門家であるファンドマネージャーが行い、運用による収益は、保有口数に応じて投資家に分配されます。
投資信託は元本保証がない金融商品であり、運用結果によっては元本割れとなることもある点も覚えておきましょう。
分配金とは何?
分配金とは、投資信託の資産のうち分配対象額から、決算ごとに投資家に支払われるお金です。
分配対象額は、投資信託の運用収益である株式や債券などの配当・利子・売買益などに、前期までの分配対象額の繰り越し分を加えた金額となります。
分配金の有無や金額は、決算時の運用成果や分配方針などを考慮した上で、運用会社によって決められます。
分配金は通常、運用収益から支払われる場合が一般的ですが、運用状況によっては元本の一部から支払われる場合もあります。
野村アセットマネジメント|投資信託の基礎知識|投資信託とは|分配金とは?
分配金の種類
分配金には、『普通分配金』と『特別分配金』があり、個別元本を基準に区別されます。
個別元本とは、投資信託の購入時の価格をいい、初回購入時は買付時の基準価額(※)となります。その後は、追加購入や特別分配金の受取により個別元本の額は変動します。
ここでは、普通分配金と特別分配について解説します。
(※基準価額とは、投資信託の時価のことで、営業日ごとに計算・公表されます)
投資信託の個別元本とは何ですか? - よくあるご質問:FAQ | 新生銀行
普通分配金
普通分配金は、分配金受取後の基準価額が個別元本と同額、あるいは上回る金額となる分配金をいい、運用収益の中から支払われます。
例えば、Aさんが9500円で購入した投資信託が決算を迎え、基準価額が1万1000円であったとします。
Aさんに分配金1000円が支払われると、基準価額は1万円に下がりますが、個別元本は決算前と変わらず9500円です。
このケースでは、分配金受取後の基準価額1万円が個別元本9500円を上回るので、普通分配金となります。
出典:普通分配金と特別分配金(元本払戻金)ってなぁに? | 投資信託なら三菱UFJ国際投信
特別分配金
特別分配金は、元本の一部から投資家に支払われる分配金をいい、『元本払戻金』とも呼ばれます。特別分配金受取後の基準価額は、個別元本を下回ります。
例えば、Bさんが1万500円で購入した投資信託が決算を迎え、基準価額が1万1000円であったとします。
Bさんに分配金1000円が支払われると基準価額は1万円に下がり、収益分配前の個別元本1万500円を下回ります。
この場合の分配金1000円の内訳は、基準価額が個別元本を下回った額の500円は特別分配金、残り500円は普通分配金となります。
また、収益分配後の個別元本は特別分配金の支払い分500円だけ下がり、1万円に修正されます。
出典:普通分配金と特別分配金(元本払戻金)ってなぁに? | 投資信託なら三菱UFJ国際投信
分配金の受取方法
分配金の受取方法には『受取型』と『再投資型』があり、どちらか選択できる商品が一般的です。
2つの受取方法について、詳しく見ていきましょう。
受取型
受取型では、決算ごとに分配金を受け取れます。例えば、毎月分配型であれば、原則として毎月決算が行われ分配金が支払われます。
定期的に分配金が受け取れるので、普段の生活費やお小遣いにプラスするなど、運用による収益を自由に利用できます。
ただし、分配金は運用資産の一部を受け取ることになるため、運用に回す資金が再投資型と比べると少なくなります。
再投資型
再投資型では、支払われた分配金で自動的に同じ投資信託が追加購入されます。
追加購入により保有口数が増えるため、複利効果が得られます。運用が順調であれば、保有期間が長期になるほど受取型に比べ利益が大きくなります。
再投資型では利益の確定は売却時であるため、売却のタイミングや売却数量の検討が重要です。
下表は再投資型・受取型の投資信託を、『投資元本100万円、想定利回り年10%』の条件で運用した場合の、元本+運用収益を試算した結果です。なお、運用収益は全て分配金とします。
運用期間 | 再投資型 | 受取型 |
1年 | 110万円 | 110万円 |
5年 | 161万510円 | 150万円 |
10年 | 259万3742円 | 200万円 |
15年 | 417万7248円 | 250万円 |
野村證券 | マネーシミュレーター「みらい電卓」~運用編(資産運用シミュレーション)
分配金にかかる税金
ここでは、分配金にかかる税金について説明します。
普通分配金にかかる税率
普通分配金は課税対象となっており、税率は所得税15.315%(復興特別所得税を含む)と住民税5%を合わせて『20.315%』です。
仮に普通分配金が1000円であれば、1000円×20.315%=203円(1円未満切り捨て)が源泉徴収され、受取額は797円となります。
特別分配金は非課税
特別分配売金は、元本の一部を切り崩して投資家へ支払われる分配金であり、収益ではありません。よって、課税対象となっていません。
法人の場合の税率
法人口座での投資信託の運用は、普通分配金に対して所得税15.315%(復興特別所得税を含む)がかかります。
仮に普通分配金が10万円であれば、10万円×15.315%=1万5315円が源泉徴収され、受取額は8万4685円となります。
投資信託の税金|商品ごとの税金|証券税制 |ガイド・投資講座 |セミナー・マーケット情報|株のことならネット証券会社【カブドットコム】
NISAの分配金は非課税
NISA(ニーサ)を利用し投資信託を運用すると、分配金が非課税になります。
NISAは、年間の非課税投資額枠が毎年設定され、運用対象商品に関してはその枠内の投資であれば分配金や配当金、売却益などが非課税になる制度です。ただし、NISA口座は、1人1口座までの開設となります。
NISAには、一般NISAとつみたてNISAがあります。
一般NISA | つみたてNISA | |
対象者 | 日本に居住する20歳以上の人 | |
非課税対象 | 投資信託・株式などへの投資から得た分配金・譲渡益など | |
非課税投資枠 | 120万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年間 | 20年間 |
投資可能期間 | 2023年まで | 2037年まで |
分配金の確定申告
ここでは、分配金の確定申告について解説します。
基本は申告不要
投資信託の普通分配金は、金融機関により源泉徴収された金額が投資家へ支払われます。よって、基本的には確定申告の必要はありません。
ただし、確定申告をした方が有利なケースもあります。運用による損失や複数の運用口座がある場合などは、以下の特例が適用となる場合があるからです。
特例 | 内容 |
損益通算 | 株や投資信託など、対象となる金融商品への投資により発生した利益と損失が相殺できる制度 |
繰越控除 | ・損益通算をしても損失がある場合に翌年以降3年間、控除を繰り越せる制度 ・繰越期間中は毎年、確定申告が必要 |
申告が必要となるパターン
分配金の課税方法として申告分離課税(※1)を選択し確定申告を行うと、損益通算・繰越控除の適用が可能となります。
投資信託では、運用口座として『特定口座(※2源泉徴収あり・源泉徴収なし)』と『一般口座』のどちらかを選択できます。
各口座における分配金の確定申告は通常は不要ですが、損益通算・繰越控除を希望する場合は、以下のように定められています。
口座 | 分配金の確定申告 |
特定口座 (源泉徴収あり) |
・特定口座内の損益通算は、金融機関が行うため不要 ・損失の繰越控除や、他口座との損益通算を希望する場合は必要 |
特定口座(源泉徴収なし)/ 一般口座 | 損益通算・繰越控除をする場合は必要 |
なお、特定口座を選択すると、金融機関が作成・発送する『年間取引報告書』で損益などの確認ができ、確定申告を簡単に行えます。
(※1:申告分離課税とは、他の所得とは合計せず分離して税額を計算し、確定申告により納税する制度です)
(※2:特定口座は、個人投資家の納税手続き簡素化のために導入された制度です。1つの証券会社などにつき1口座の開設が可能です)
損益通算で税金が還付されることも
損益通算すると、税金が還付されることがあります。1例として、年間の損益が以下の場合について説明します。
A投資信託:普通分配金30万円、B社株式:売却による損失50万円
C投資信託:売却による損失20万円
上記を損益通算すると以下の結果となります。
30万円−50万円−20万円=−40万円
損益通算の結果が0円以下であれば、税金はかかりません。よって、源泉徴収済みである分配金30万円に対する税金、30万円×20.315%=6万945円が還付されます。
また、相殺できない40万円の損失は翌年以降3年間は、株式や投資信託などの利益と相殺できます。
株式の配当金・投信の分配金の税金について教えてください。| よくあるご質問 | GMOクリック証券 - 業界最安値水準の手数料体系!GMOクリック証券ではじめる株取引
まとめ
投資信託の分配金は、基本的に確定申告の必要はありません。しかし、損失が発生した年や複数の運用口座がある場合は、確定申告をすることで税金の控除や還付が受けられるケースがあります。
年間の損益をしっかり把握し、有利となる場合は確定申告をしましょう。