保険の請求には時効がある
保険法第95条によると、保険金の請求は3年以内に行わなければならないと定められています。請求を行わずに3年を超過した場合には、時効により権利が消滅します。この場合の『3年』とは、支払い事由が生じた日の翌日から起算します。
生命保険の場合
生命保険の請求期限について、いくつかの保険会社をみてみましょう。
保険会社 | 時効年数 | 特記事項 |
三井住友海上あいおい生命保険 | 3年 | |
アフラック | 3年 | 証明書などの必要書類をすべて揃えられるときは、3年経過後も請求できる |
かんぽ生命 | 5年 | 未払いであることが確認できれば、5年経過後も、保険金の請求できる |
多くの保険会社では、保険の請求期限を3年としていますが、詳細は各保険会社により異なります。
死亡保険金や入院給付金はいつまでに請求すればよいですか? | ご契約者さま向け よくあるご質問 | ご契約者さま | 三井住友海上あいおい生命保険
交通事故などの損害保険の場合
交通事故などの損害保険の時効は、3年としている保険会社がほとんどです。ただし損害保険の場合、補償の内容などにより時効の起算方法が変わります。
未請求の保険があったときには、一度保険会社に相談してみるとよいでしょう。
自賠責保険についてのご案内 | 自動車の保険 | 東京海上日動火災保険
生命保険を時効にしないために
生命保険は、被保険者(保険の対象となる人)に万が一のことがあったときに、家族にまとまったお金を遺すことを目的としています。
そのため、もし何らかの理由で保険金が請求されないと、せっかく契約していた保険が意味のないものとなってしまいます。
時効を中断する方法
生命保険金請求の時効は3年ですが、『請求』や『催告』の手続きをとれば、時効の中断が可能です。請求や催告には、以下のようなものがあります。
- 裁判上の請求
- 支払い命令
- 催告(ただし、6カ月以内に裁判上の請求、もしくは支払い命令の申立を行わなければ、時効中断の効力は消滅する)
生命保険の加入内容を家族に伝える
遺された家族が、生命保険の存在を知らなかったために時効を迎えてしまい、保険金の請求ができなくなるケースもあります。保険を無駄にしないためにも、次のような対策をしておきましょう。
- 保険の契約内容(本数や金額、保険金受取人など)について、家族間で共有する
- 保険証券をまとめて整理し、保管場所を家族で共有する
- エンディングノート(※)を作成し、加入している保険について記載する
(※エンディングノートとは万が一に備えて自分の希望(病気治療や葬儀の方針など)や、重要な事項(財産に関することなど)を記しておくものです。法的効力はありませんが、死後の手続きにかかる家族の負担を軽減することができます)
時効が過ぎていてもあきらめずに請求を
保険金請求の時効が過ぎた保険が見つかった場合は、諦めずに保険会社に相談してみましょう。保険会社によっては、保険の請求に応じてくれることもあります。
請求に必要な書類を揃えることが可能なときには、その旨も忘れずに保険会社に伝えましょう。
交通事故で保険の請求できるもの
交通事故に関係する補償は、『自賠責保険』『任意保険』『政府保障事業』の3つです。
自賠責保険
自賠責保険とは、基本的な対人賠償を確保することで、交通事故による被害者を救済することを目的とした強制保険です。自賠責保険は、すべての自動車に加入が義務付けられており、バイクや原動機付自転車(原付)も加入しなければなりません。
自賠責保険は自動車購入時に販売店で加入することが一般的ですが、自動車に乗る人自身が損害保険会社に加入手続きを行うケースもあります。
自賠責保険では、被害者が直接損害保険会社に保険金の請求をすることが可能です。補償額は被害者1名ごとに設定され、治療費などですぐにお金が必要なときには、仮渡金を受取ることもできます。
なお、被害者に重大な過失があったときには、減額されることもあります。
任意保険
任意保険は、自賠責保険では足りない補償を補うために加入する保険です。テレビコマーシャルなどで見かける一般的な『自動車保険』は、任意保険にあたります。
任意保険では、主に自分や同乗者、事故の相手方のケガ、および他人の物の破壊を補償してくれます。商品によっては、車両保障や示談交渉サービスなどを付加することも可能です。
強制保険(自賠責保険)と任意保険の違い|自動車保険はソニー損保
政府保障事業
政府保障事業は、自賠責保険の対象とならない事故(ひき逃げや無保険事故など)にあった被害者を、救済することを目的とした制度です。自賠責保険対象外の交通事故において生じた損害を、法定限度額の範囲内で政府(国土交通省)がてん補します。
政府保障事業は、被害者のみしか請求できません。政府保障事業のほかに、社会保険(健康保険や労災保険)の給付を受ける場合には、その金額が差し引かれてん補されます。被害者にてん補された金額は、政府から加害者に求償を行います。
交通事故の損害賠償請求権
交通事故における損害賠償請求権には時効があるため、請求は速やかに行わなければなりません。
民法第724条によると、被害者が損害、および加害者を知ったときから3年が経過すると、損害賠償請求権は時効により消滅すると定められています。
また、被害者が損害、および加害者を知らなかったとしても、不法行為から20年が経過したときには、同じく時効により損害賠償請求権は消滅します。
時効のカウントはいつのタイミングからか
損害賠償請求権の時効は3年ですが、事故の状況により時効の起算方法が変わります。
物損事故の場合
相手方にケガがなく、損害が物の破損のみであった場合、時効が開始するのは交通事故発生日です。時効となるのは交通事故発生日から3年です。
人身事故の場合
交通事故により相手方に後遺障害のないケガをさせてしまった場合、交通事故の発生日が時効のスタートとなります。
後遺障害が残る場合
交通事故によるケガで、相手方に後遺障害が残ってしまった場合、症状が固定した日から時効がスタートします。具体的には、医師による後遺障害診断書が作成された日が時効の開始日です。
死亡の場合
交通事故により被害者が死亡してしまった場合、死亡した日が時効の開始日となります。
時効が中断されるとき
時効は一定の事由が発生すると、中断することがあります。民法第147条によると、請求や承認、差し押さえや仮処分などが中断事由です。
時効が中断される具体例は、以下のようなものがあります。
- 訴訟を起こしたとき
- 加害者、または保険会社に債務を承認させ、示談金や仮渡金の支払いを受けたとき
まとめ
保険金の受け取りには時効があります。時効を過ぎてしまうと保険金の請求ができないこともあるため、支払い事由に該当するときには、速やかに請求をしましょう。何らかの事情で請求ができない場合は、時効中断の手続きを取ることもできます。
保険金を請求する機会は、頻繁にあるものではありません。万が一のときにきちんと保険金を受け取るためには、保険金の請求方法を日ごろから確認しておくことが肝心です。