差額ベッド代とは
差額ベッド代とは、患者の希望により特別な設備や環境の整った部屋に入院する際にかかる費用です。正式には『特別療養環境室料』といい、差額ベッドが発生する病室を『特別療養環境室』といいます。
基準があり部屋によって異なる
特別療養環境室には、面積や設備環境などの基準が設けられており、厚生労働省の通知により、以下のとおり示されています。
- 特別の療養環境に係る一病室の病床数は4床以下であること
- 病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上であること
- 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えていること
- 少なくとも『個人用の私物の収納設備 ・個人用の照明・小机等及び椅子』の設備を有すること
「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定め る掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医 薬品等」の実施上の留意事項について」
医療保険で差額ベッド代は出る?
病院には個室、2~3人部屋、4人部屋、大部屋(6人部屋)などさまざまな病室があります。大部屋は、公的医療保険が使えるので自己負担はありません。
しかし、大部屋以外で上記基準にあてはまると、全額自己負担になります。そのため、差額ベッド代の支払いが必要になる場合を考え、入院時の医療費に備えておく必要があります。
公的医療保険は使えない
差額ベッド代は、『選定療養』の中の『特別の療養環境の提供』に該当します。選定療養とは、厚生労働大臣が定める患者の快適性・利便性に係わる療養や、医療機関・医療行為などの選択に係わる療養をいい、2018年2月現在は10項目あります。
この選定療養は、患者本人が希望して受ける医療サービスのため、『保険導入を前提としないもの』と位置付けられています。
民間医療保険の入院日額設定はプロに相談
一般的な治療費は公的医療制度の対象となり、高額療養費制度を利用できますが、差額ベッド代は全額自己負担になります。もし心配な場合は、入院日数に応じて給付金が出るタイプの保険もあるので、プロに相談して決めるのもよいでしょう。
差額ベッド代はいくらかかるもの?
では実際、差額ベッド代がいくらかかるのか、個室から4人部屋まで詳しくみていきましょう。
病院によって金額は違う
差額ベッド代はいくらにするかという基準がなく、病院が自由に設定できるため、病院によって金額が異なります。平成28年7月1日の調査結果では、最低が1日あたり50円、最高が1日あたり37万8,000円とかなり大きな差があります。
厚生労働省調べによる差額ベッド代の平均
厚生労働省の『主な選定療養に係る報告状況』によると、差額ベッド代の平均額は、1日あたり6,144円となっています。また、全国の特別療養環境室は約27万床あり、これは全ベッド数の20.6%にあたります。(平成28年7月1日現在)
個室はやはり高額になる
特別療養環境室の中では、個室が1番多く18万2,149床で、約67%を占めています。個室を利用した際の平均額は、1日あたり7,797円となっています。
同じ個室でも、差額ベッド代が1,080円以下の病室もあれば、10万8,000円以上の病室もあり、広さや設備環境によって違うことが伺えます。
2~3人部屋は1日約3,000円
2人部屋を利用した際は1日あたり平均3,087円、3人部屋なら2, 800円になります。『特別の療養環境の提供に係る病床数の推移』をみると、2~3人部屋は年々減少しています。
4人部屋なのに差額ベッド代がかかる?
4人部屋でも前述した基準を満たしていれば、差額ベッド代は請求されます。4人部屋を利用すると、1日あたり平均2,407円です。ただし、2,160円以下の病室で約62%占めています。
入院前に知っておきたいこと
突然入院が決まると焦ってしまい、書類の中に差額ベッドに関する同意書があることに気づかずサインをしてしまう恐れがあります。わからない点については、担当者に確認しながら書類を記載するようにしましょう。
個室でも差額ベッド代がかからないケース
病院側は、入室前に設備や料金などについて丁寧に説明を行ったうえで、同意書にサインを取り付けなければなりません。同意書にサインがなければ、差額ベッド代を請求できません。
また、病院の都合で個室しか空きがない場合や、医師の判断のもと個室に入った場合なども、差額ベッド代は請求できません。
入院日数の平均
生命文化センターの平成28年度『生活保障に関する調査』によると、入院経験者の入院日数は、平均で19.1日となっています。しかし、入院日数の分布をみると、約68%の人が14日以内に退院しています。
まとめ
最新のデータ(平成28年7月1日現在)をもとに調べた結果、差額ベッド代の平均額は、1日あたり6,144円ということがわかりました。よって、この額を目安に、医療保険のプランを立ててみるのもよいでしょう。
また、差額ベッド代については、医療機関内の見やすい場所に掲示してありますが、不明点があれば問い合わせて確認するようにしましょう。トラブルを避けるためにも、正しい知識を持つことは大切です。