保険点数は1点につき10円
医療機関で診察や検査を受け、調剤薬局で薬をもらう際に、治療費や薬代の内容が記載された領収書と明細書をもらいます。これは、国が交付することを義務づけています。
その領収書や明細書は、項目ごとに金額ではなく点数が表記されています。まずは、保険点数の概要についてみていきましょう。
保険点数とは診療報酬点数のこと
診療報酬は、健康保険などを使って診察を受けた場合に、医療行為に対して計算される報酬のことで、簡単にいうと医療費です。この医療行為に対する費用は保険点数、または診療報酬点数と呼ばれる点数で表されています。
この診療報酬点数は、厚生労働省が定めた診療報酬点数表によって、全国一律に決まっており、医療行為ごとにそれぞれの項目に応じた点数が加えられます。
この点数は1点=10円と定められており、医療機関はこの決められた点数に従って医療費を計算します。医療費の一部(年齢により1~3割)は、窓口で支払い(自己負担)、残りは公的医療保険から支払われます。
薬剤料は金額を調剤報酬点数に換算
調剤薬局で支払う薬代の明細書には、調剤報酬の内訳が記されています。この調剤報酬は、主に4つの項目からなっています。各項目には点数が表記されており、これを調剤報酬点数といいます。
調剤報酬点数
- 調剤技術料:処方せん沿って薬剤師が調剤を行うことに対する技術料
- 薬学管理料:患者に薬を安全に使用してもらうための指導料
- 薬剤料:薬の価格
- 特定保険医療材料料:薬以外の医療材料費
処方せんによって出される薬の価格は国で定められており、『薬価』といいます。薬価は基本的には、2年に1度見直し変更されます。
保険点数が加算される条件
診療報酬は、基本診療料・特掲診療料・加算料の合計で求められます。
- 基本診療料:初診・再診・入院時の基本的な診療行為
- 特掲診療料:手術・注射・投薬などの特定の診療行為
- 加算料:外来管理加算・時間外加算・特別管理加算など
初診の場合
初診料は基本診療料に含まれるもので、病気やケガで初めて診察を受けた際にかかる料金です。どこの医療機関でも、一律288点と定められています。2019年10月の改定により、点数が変更されているので注意しましょう。
ただし、同時に2つの病気を同じ医療機関の別の診療科で初めて受診した場合、一方の初診料は144点と算定されます。
また、治療が数週間や数か月に渡る場合は、初回に初診料が発生、次回以降は再診料が発生します。再診料は一律73点と定められています。
出典:2019年消費税増税に伴う10月からの診療報酬改定について
時間外に診療を受けた場合
診療報酬には加算料という項目があります。たとえば、急な病気などで時間外に診療を受けた場合、初診料、または再診料に時間外加算が追加されます。
時間外加算には時間外加算と深夜加算、休日加算があります。
- 時間外加算:平日午前8時前と午後6時以降、土曜日8時前と正午以降
- 深夜加算:午後10時から翌朝6時まで
- 休日加算:日曜日・祝日・12月29日~1月3日
6歳未満の乳幼児が診療を受けた場合
乳幼児が医療機関にかかったとき、医療費の自己負担額の一部、または全額を補助する自治体があります。しかし、実際負担する乳幼児の医療費は、大人よりも高額になる場合があります。
基本的に、大人と子供の初診料・再診料は同額ですが、6歳未満の乳幼児の場合は加算がつくものがあります。これを乳幼児加算といいます。
6歳未満の場合、初診料や再診料には一定の乳幼児加算が算定されます。ただし、心電図検査や超音波検査などの生体検査の場合は、新生児80%・乳幼児(3歳未満)50%・幼児(3歳以上6歳未満)と、年齢によって加算される割合が異なります。
また、時間外加算についても、6歳未満の乳幼児は、さらに加算が大きくなります。
医療費の自己負担額について
日本は公的医療保険制度が充実しており、病気やケガで医療機関にかかったとき、健康保険証を提示すれば、全額負担しなくても診察・処置・投薬などの治療を受けることができます。
公的医療保険には会社員が加入する健康保険や、自営業者などが加入する国民健康保険などがあります。どちらの健康保険でも、医療機関の窓口で負担する割合は同じです。では、どのような場合に負担額が違うのかみてみましょう。
年齢によって割合が変わる
健康保険を使って治療する場合、本人・家族、入院・外来にかかわらず、受診する人の年齢によって負担割合が変わります。
一部負担の割合
年齢 | 負担割合 |
小学校入学する年の3月31日まで | 2割 |
小学校入学する年の4月以降70歳になる前日まで | 3割 |
70歳以上 | 2割(現役並み所得者は3割) |
子供や高齢者は、年齢のほかに所得によっても3割になることもあります。
※平成26年3月31日以前に70歳になった被保険者等は、一部負担金等の割合は1割のままです。
保険証を提示して治療を受けるとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
自己負担額の計算方法
たとえば、会社員(3割負担)の方が風邪で内科を受診し、尿検査と薬を処方された場合の自己負担額をみてみましょう。
自己負担額は、『診療報酬点数×10×負担割合(10円未満は四捨五入)』で求められます。
初診料288点・尿検査26点・投薬68点の場合、合計382点になります。これを上の式にあてはめると、
382点×10×0.3≒1,146円
よって、自己負担額は、1,146円になります。
治療費以外の諸費用は自己負担
外来で診察を受ける場合と違い、入院時は治療費以外にも様々な費用がかかります。その場合、主に以下のものは自己負担になります。
- 差額ベッド代(個室などに入院した費用)
- 食事代(1食360円、1日1,080円が自己負担)※2018年4月からは1食460円
- 消耗品(パジャマ・下着・洗面用具など)
保険外診療は全額自己負担
健康保険で認められていない治療を受けた際は、すべてが保険適用外として扱われ、全額自己負担となります。たとえば、美容整形・歯列矯正など審美的な目的で行う医療や、人間ドック・健康診断などは基本的に保険適用外です。
保険の点数は給付金に影響する?
近年、医療技術の進歩により、平均入院日数は短くなっている一方、1日あたりの入院にかかる費用は高額化しています。そこで、民間の医療保険では、診療報酬点数に連動して給付金が受け取れる保険が出てきました。
このような保険を『実費保障(補償)型』の保険といいます。
一般的には入院日額や手術給付金に応じた金額
一般的な医療保険は、入院日額〇〇円、手術は日額の〇〇倍という保障内容です。この場合、契約時に決めた入院保険金と手術保険金の合計額が支払われるので、実際の医療費に比べて多いこともあれば少ないこともあります。
保険点数と連動する保険もある
一方、実費保障(補償)型の保険では、入院や手術の給付金額の設定を『診療報酬点数×○円』とします。
たとえば、年齢が50歳で、年収約370~770万円の会社員が、診療報酬点数28,383点の診療を受けた場合をみてみましょう。
- 保険適用となる医療費:28,383点×10円=283,830円
- 医療機関での自己負担額:283,830円×0.3円≒85,150円
- 高額療養費を適用:80,100円+(283,830円-267,000円)×1%≒80,268円
- 受け取れる給付金(診療報酬点数×3円型に加入):28,383点×3円≒85,150円
実際の負担額は、高額療養費を適用したため、80,268円でした。実費保障型の保険から受け取れる給付金は、85,150円です。定額保障型の保険に比べて、実際の自己負担に近い保険金を受け取りやすいことがわかります。
高額な医療費を支払ったとき(高額療養費) | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
まとめ
医療機関にかかったとき、一度診療領収書や明細書をみてみましょう。どの治療にいくらかかっているかが確認できます。また、保険が適用されるといっても、医療費はそれなりにかかります。
入院日数に関係なく治療費・差額ベッド代・食事代・先進医療の技術料など、実際支払った費用を保障する保険も出てきています。今後の参考にしてみてください。