保険料控除制度とは
生命保険、介護保険、医療保険および個人年金保険に加入し、保険料を支払っていれば、一定の金額をその年の所得から差し引くことができます。これを『生命保険料控除』といいます。
生命保険料控除は、14種類ある所得控除のひとつで、個人の事情を考慮して税負担を軽減する制度です。
控除の対象となる保険
生命保険料控除の対象となる保険について、確認していきましょう。
一般生命保険
主に死亡保険や収入保障保険、養老保険や学資保険などで、保険期間満了まで生存、または保険期間中に死亡して保険金が支払われる契約をいいます。また農業協同組合の生命共済なども該当します。
個人年金保険
年金を給付する定めのある保険契約で、下記の条件を満たす税制適格特約を付帯した個人年金保険が対象です。
・年金受取人が契約者またはその配偶者のいずれかであること。
・年金受取人は被保険者と同一人であること。
・保険料払込期間が10年以上であること(一時払は対象外)。
・年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、かつ年金受取期間が10年以上であること
介護医療保険
主に医療保険、がん保険、介護保険で、入院や通院などの医療費に対して保険金が支払われる契約 をいいます。国外で加入した傷害保険などは該当しません。
控除の対象者とは誰か
控除できる生命保険契約であれば、実際に保険料を支払っている人が控除対象者となります。例えば、妻の保険契約であっても、夫が保険料を払っていれば、夫が対象者となります。
各種適用限度額とは
平成22年度の税制改正により、平成23年12月31日以前の契約は、旧制度として引き継がれますが、平成24年1月1日以降は、新制度に該当するようになります。
また、両制度では控除上限額が異なるので、以下の表で確認していきましょう。
旧制度の場合
一般生命保険料 | 個人年金保険料 | |
所得税 | 5万円 | 5万円 |
住民税 | 3万5,000円 | 3万5,000円 |
生命保険料控除制度について 適用限度額と計算方法|オリックス生命保険株式会社
平成23年12月31日以前の契約でも、更新や特約の中途付帯などにより、新制度に該当する契約もあるので注意してください。
新制度の場合
一般生命保険料 | 介護医療保険料 | 個人年金保険料 | |
所得税 | 4万円 | 4万円 | 4万円 |
住民税 | 2万8,000円 | 2万8,000円 | 2万8,000円 |
生命保険料控除制度について 適用限度額と計算方法|オリックス生命保険株式会社
新制度には、新たに介護医療保険控除が設けられました。これにより、平成24年1月1日以降の医療保険やがん保険などは、こちらに分類されます。
新旧の両方が適用となる場合
一般生命保険料控除、個人年金保険料控除において、両制度に該当する契約に入っている人もいるのではないでしょうか。
この場合、次の3つから適用方法を選択できるので、最も控除額の大きい方法を選ぶことをおすすめします。
- 旧制度の生命保険料控除のみ
- 新制度の生命保険料控除のみ
- 新旧両制度の合算
新旧合算する場合の上限額は所得税で12万円、住民税で7万円です。
出典:Q.新しい生命保険料控除制度とは?|公益財団法人 生命保険文化センター
保険料控除の計算方法
保険料控除の計算は、所得税と住民税でそれぞれ異なります。所得税は、年末調整や確定申告のときに計算する必要がありますが、住民税においては、市区町村が年末調整・確定申告のデータをもとに算出してくれます。
また、払い込んだ保険料に応じて控除額が変わります。以下の表を用いて、計算してみましょう。
所得税の保険料控除額
新制度 | 旧制度 | ||
年間支払保険料等 | 控除金額 | 年間支払保険料等 | 控除金額 |
2万円以下 | 支払保険料の全額 | 2万5,000円以下 | 支払保険料の全額 |
2万円超 4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 | 2万5,000円超 5万円以下 | 支払保険料×1/2+1万2,500円 |
4万円超 8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 | 5万円超 10万円以下 | 支払保険料×1/4+2万5,000円 |
8万円超 | 一律4万円 | 10円超 | 一律5万円 |
以下の年間支払保険料を条件として、上記の計算式に当てはめて控除額を算出してみます。
- 一般生命保険料:(新)5万円(旧)8万円
- 介護医療保険料:(新)6万円
- 個人年金保険料:(新)12万円(旧)4万円
- 一般生命保険料
(新)5万円×1/4+2万円=3万2,500円(旧)8万円×1/4+2万5,000円=4万5,000円
新制度と旧制度の控除額合計は、3万2,500円+4万5,000円=7万7,500円ですが、上限に達するので4万円 になります。このとき、旧制度の控除額が4万より多いので、4万5,000円を採用します。
- 介護医療保険料
6万円×1/4+2万円=3万5,000円
- 個人年金保険料
(新)12万円は一律4万円(旧)4万円×1/2+1万2,500円=3万2,500円
新制度と旧制度の控除額合計は、4万円+3万2,500円=7万2,500円ですが、上限に達するので4万円になります。
したがって、全体の控除額は、4万5,000円+3万5,000円+4万円=12万円になります。
住民税の保険料控除額
新制度 | 旧制度 | ||
年間支払保険料等 | 控除金額 | 年間支払保険料等 | 控除金額 |
1万2,000円以下 | 支払保険料の全額 | 1万5,000円以下 | 支払保険料の全額 |
1万2,000円超 3万2,000円以下 | 支払保険料×1/2+6,000円 | 1万5,000円超 4万円以下 | 支払保険料×1/2+7,500円 |
3万2,000円超 5万6,000円以下 | 支払保険料×1/4+1万4,000円 | 4万円超 7万円以下 | 支払保険料×1/4+1万7,500円 |
5万6,000円超 | 一律2万8,000円 | 7万円超 | 一律3万5,000円 |
こちらも、先ほどの年間支払保険料の条件で、上記の計算式に当てはめて、計算してみます。
- 一般生命保険料
(新)5万円×1/4+1万4,000円=2万6,500万円(旧)8万円は一律3万5,000円
新制度と旧制度の控除額合計は、2万6,500円+3万5,000円=6万1,500円ですが、上限に達するので2万8,000円 になります。
- 介護医療保険料
6万円は一律2万8,000円
- 個人年金保険料
(新)12万円は一律2万8,000円(旧)4万円×1/2+7,500円=2万7,500円
新制度と旧制度の控除額合計は、2万8,000円+2万7,500円=5万5,500円ですが、上限に達するので2万8,000円 になります。
したがって、全体の控除額は、2万8,000円+2万8,000円+2万8,000円=8万4,000円になりますが、7万円が上限なので7万円になります。
保険料控除を受ける為の手続き
会社員や公務員は、勤務先の年末調整で手続きをしてもらえますが、自営業者は確定申告のときに一緒に申請する必要があります。
必要な書類とは
以下の必要書類2点をそろえましょう。
- 生命保険料控除証明書
- 給与所得者の保険料控除申告書
10下旬から11月上旬にかけて、給与所得者の保険料控除申告書が会社で配られます。同時期に、加入中の生命保険会社から控除証明書が送られてくるので、年末調整で手続きできる人は、必要事項を記入して提出しましょう。
確定申告する場合は、翌年2月16日から3月15日までの間に、確定申告書を提出します。このとき控除証明書を添付して税務署に提出ください。
[手続名]給与所得者の保険料控除の申告|源泉所得税関係|国税庁
まとめ
今回ご紹介した計算方法で、どのくらい控除できるか目安はできたでしょうか。複雑で面倒だという方は、保険会社の提供するサービスで、シミュレーションをすることもできます。具体的な金額を把握することで、上手く節税に繋げていきましょう。
また、自分の保険契約がどの対象になるかは、『生命保険料控除証明書』に記載されているので、一度確認してみてください。
保険料控除はどう受ける?控除の内容や方法を理解して申告しよう