終身保険の仕組み
終身保険は読んで字のごとく、加入時の保障が一生涯続くタイプの生命保険です。いつ万が一のことがあっても保障されるため、その意味では支払った保険料が一切無駄にならない保険ということもできます。
また、終身保険には貯蓄性があります。預貯金のような短期的な貯蓄性ではなく、10年単位の長期的な貯蓄性に優れています。
満期がない
よく貯蓄性があるというと、満期になるとお金がもらえる養老保険と勘違いする方がいたりもしますが、終身保険には満期はなく満期保険金(注1)もありません。
終身保険でお金を手にできるのは、以下の場合に限られます。
- 死亡した場合
- 途中で解約した場合
- 契約者貸付(注2)を受けた場合
(注1)満期保険金とは、養老保険や学資保険のように満期時に支払われる保険金をいいます。
(注2)契約者貸付とは、保険契約者が加入している保険の解約返戻金の一定割合まで、貸付を受けられる制度です。
払込期間は選べる
払込期間も勘違いしている方が多いのですが、終身保険の保険期間は終身でも、保険料の払込期間も終身とは限りません。
短期払いと呼ばれる10年払済、55歳払済、60歳払済、65歳払済、70歳払済といった払込の期間があらかじめ決まっている保険料の払い方も選べます。
また一般的に、払込期間が短ければ短いほど、解約返戻金(※後述します)が貯まるスピードは速くなり、支払った保険料に対して戻ってくるお金の割合(解約返戻率といいます)も高くなる傾向にあります。
貯蓄性がある
終身保険は掛け捨てではありません。加入後15年、20年と経過すれば、支払った保険料以上にお金が貯まっているケースもあります。
この貯蓄性を活かして老後を迎えたときに解約したり、年金方式で受け取ったりすることにより、老後の生活資金に充てることもできます。
終身保険の解約金
終身保険は貯蓄性があるため、契約途中で解約するとお金が戻ってきます。
解約金は解約返戻金と呼ぶ
解約をして戻ってくるお金のことを、解約返戻金(または解約払戻金)といいます。解約返戻金の金額は、実は終身保険の加入時に決まっています。
その理由は、保険会社が保険契約者から預かった保険料を運用する利率が、契約時にすでに決まっているからです。
そのため、終身保険の契約期間中に市場の金利が上がっても下がっても、解約返戻金の金額には全く影響しません。
解約返戻金の金額は、保険証券や保険設計書に記載がありますが、保険会社に確認すれば電話でも教えてくれます。
解約返戻金は払込期間に比例
終身保険の解約返戻金の金額は、加入時から直線的に増えていくわけではありません。
最初はあまり増えませんが、払込期間満了に近づくにつれて増え方が大きくなり、払込期間を過ぎると、保険料の支払いは終わっているのにもかかわらず、さらに増えていきます。
解約時の注意点
終身保険の解約を検討する場合、解約のタイミングが非常に重要です。タイミングが悪い場合は損をする可能性もあります。
払込期間終了前の解約は損失あり
前述のとおり、終身保険に加入後払込期間終了までは、支払った保険料総額のほうが解約返戻金を上回るため損をします。
税金がかかる場合もある
払込期間終了後に解約をすれば、ほとんどのケースで保険料総額よりも解約返戻金が多くなるため利益が出ます。その利益は一時所得とみなされ税金がかかります。
例えば、解約返戻金が400万円、支払った保険料総額が300万円の場合、利益は100万円(400万円-300万円)です。その100万円から特別控除額である50万円を差し引いた50万円が、一時所得の金額となります。
税金は一時所得の1/2(このケースでは50万円×1/2=25万円)をほかの所得と合算して計算します。税率は他の所得の金額によります。
給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合|所得税|国税庁
贈与税の対象となることもある
保険契約者(保険料を支払う人)と受取人(解約返戻金を受け取る人)が異なる場合は、解約返戻金が贈与税の対象となることもあります。よくあるケースは、親が契約者で受取人が子供、祖父母が契約者で受取人が孫の場合です。
見直しが可能か相談する
保険料の支払いが難しくなった場合の選択肢は、解約だけではありません。ある程度解約返戻金がある場合は、以下の制度を利用すれば契約を継続することも可能です。
- 保障額は下がるものの、終身保障を維持できる『払い済み保険』を利用する(注1)
- 金利はかかるものの、お金を引き出して当座の保険料支払いに充てることもできる『契約者貸付』を利用する
(注1)払い済み保険とは、保険期間の途中で保険料の支払いを中止し、その時点でその保険に貯まっている責任準備金を原資にして、保障を継続させる制度です。
まとめ
現在保険料を支払っている場合、終身保険を解約すると損になる可能性が高いです。まずは、解約返戻金が払込保険料総額を超えるまで、保険料を払い続けることができないかどうかよく検討しましょう。
解約返戻金がある程度貯まっている場合は、払い済み保険への移行や契約者貸付の利用がおすすめです。
それらの利用ができない場合は解約もやむを得ません。その場合は保障がなくなってしまうので、可能であれば安い保険料で大きな保障に入れる定期保険への加入も検討しましょう。