保険の分類について知ろう
民間保険には、生命保険や医療保険、損害保険などいろいろな商品があります。これらの保険は、保障対象によって『第1分野』『第2分野』『第3分野』の3種類に分類されています。各分野の特徴と該当の保険について見てきましょう。
第1分野
第1分野に分類されるのは『人の生死に対して保険金が支払われる保険』です。以下のような保険が第1分野に該当します。
種類 | 概要 |
生命保険 | 被保険者(※)の死亡時に、遺族に死亡保険金が支払われる保険 |
個人年金保険 | 保険料を積み立てておくと、所定の年齢から年金が受け取れる保険 |
養老保険 | 保険期間が満了したときに被保険者が生存していると、満期保険金が支払われる保険 |
(※被保険者とは、保険の保障対象者のことを指します)
第2分野
第2分野に分類されるのは、『偶然の事故による損害に対して保険金が支払われる保険』です。以下のような保険が第2分野に該当します。
種類 | 概要 |
自動車保険 | 自動車事故による損害に対して保険金が支払われる保険 |
火災保険 | 火災による損害に対して保険金が支払われる保険 |
旅行傷害保険 | 国内・海外旅行中の損害に対して保険金が支払われる保険 |
つまり、損害保険は第2分野に該当する保険ということです。
第3分野
第3分野とは、『第1分野と第3分野のどちらにも分類できない保険』です。以下のような保険が第3分野に該当します。
種類 | 概要 |
医療保険 | 入院費や手術費などに対して給付金が支払われる保険 |
傷害保険 | 急激・偶然・外来の事故によって入院、または死亡した場合に保険金が支払われる保険 |
がん保険 | がんの治療費に対して給付金が支払われる保険 |
上記のような保険は、第1分野と第2分野のどちらの特徴も兼ね備えており、明確な分類ができないことから、第3分野に振り分けられています。
損害保険とは
民間保険の第2分野に分類される損害保険ですが、『損害保険』という商品が存在するわけではありません。
自動車保険や火災保険、旅行傷害保険など、さまざまな保険を総称して損害保険と呼びます。ここでは、損害保険に分類される保険が持つ特徴について解説します。
リスク対処としての役割
損害保険に分類される保険は『偶然の事故によって発生した損害を補償する』という特徴を持っています。
例えば、自動車保険は自動車事故によって発生した損害を、火災保険は火災事故によって発生した損害を補償するものです。
このような事故による損害額は、数百万、数千万と、個人では対処できないほど高額になるリスクがあります。そのようなリスクに対処する役割を持つ保険が損害保険に該当します。
実損払い方式が中心
もうひとつ損害保険の特徴として挙げられるのは、『実損払い方式』が中心ということです。実損払い方式とは、発生した損害相当額の保険金が支払われることをいいます。
ただし、いくらでも補償されるわけではありません。保険によって補償限度額が定められており、その限度額の範囲内での補償となります。
個人向け損害保険の種類一覧
損害保険には、個人向けの商品と法人向けの商品があります。まずは、個人向け損害保険の中で代表的なものを紹介します。
自動車の保険
個人向け損害保険で多くの人が加入しているのは、自動車保険です。自動車事故による、自分や第三者のケガ、死亡、対物事故など、自動車事故におけるさまざまな損害が補償されます。
自動車を運転する人は、必ず『自賠責保険』に加入しなくてはなりません。にもかかわらず、自動車保険が必要な理由は、自賠責保険は『第三者に対する対人事故』のみが対象で、自分のケガや対物事故は補償されないからです。
また、自賠責保険は、相手が死亡した場合でも最高3000万円など補償限度額が低く、補償が不足する可能性があります。そのため、別途自動車保険にも加入し、高額な賠償に備える必要があるのです。
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自賠責保険(共済)の加入方法
住まいの保険
マイホームを建てた人、購入した人などが加入するのが、火災保険や地震保険などの住まいの保険です。火災や水害、落雷や盗難などによって住宅に損害を受けると、修理や立て直しが必要になり、多額の費用がかかります。
火災保険に加入しておけば、このような損害によってかかった費用の補償が受けられます。ただし、火災保険は地震や噴火、およびそれを要因とした津波による損害は保障対象外です。
そのため、このような損害に備えたい場合は、別途地震保険に加入する必要があります。地震保険は、火災保険とセットで加入するもので、単独では加入できないのが一般的です。
からだの保険
個人向け損害保険には、傷害保険というからだの保険もあります。傷害保険とは、日常生活での事故や交通事故などでケガなどをした場合、または第三者にケガや損害を負わせて賠償責任が発生した場合などに、保険金が支払われる保険です。
通常、保険の保障対象となるのは被保険者のみですが、傷害保険では、配偶者や子どもなども補償対象できる場合があります。
また、傷害保険の中には、自転車事故による自分のケガや、第三者への賠償責任が生じた場合に補償が受けられる商品もあります。
自転車事故によって数千万円の損害賠償が課せられたケースもあるので、自分や家族が自転車に乗る人は加入を検討しましょう。
旅行やレジャーの保険
国内・海外旅行保険やレジャー保険など、旅行やレジャーの際に発生した損害を補償する保険も存在します。
例えば、国内・海外旅行保険に加入しておくと、旅行中に発生した医療費や盗難被害などによる損害の補償が受けられます。
レジャー保険はゴルフやスキーなどのレジャー中にケガをしたり、第三者にケガを負わせて賠償責任が発生したりした場合に補償が受けられる保険です。レジャーに行く1日だけ加入できる商品もあり、気軽に加入できるのが特徴です。
法人向け損害保険の種類一覧
法人向け損害保険の中で、代表的な種類も見ていきましょう。
企業財産の保険
法人向け損害保険で代表的なのは、法人の財産を守るための、法人向け火災保険です。火災や水害、盗難などによる損害の補償が受けられる点では、個人向けの火災保険と同じです。
ただし、法人の財産は自社ビルや店舗、業務用の機械類など、個人の財産よりも高額なものが多いことから、保険料・補償額ともに個人向けの火災保険より高額になります。
また、空調やエレベーターの故障、労働争議による損害など、個人向けの火災保険にはない補償が受けられる商品もあるのが特徴です。さらに、賠償責任保険や休業補償がセットになっている商品も存在します。
賠償責任の保険
事業を遂行する上で、顧客や取引先などに対して賠償責任が生じることもあるでしょう。このようなときのために、賠償責任保険という法人向け損害保険も存在します。
賠償責任保険に加入しておくと、営業車が事故を起こした、食中毒が発生した、個人情報が漏えいしたなど、さまざまな事故による損害賠償金の補償が受けられます。
訴訟や示談交渉対応サービスが付いている賠償責任保険もあるため、個人店などでも加入しておくと安心です。
貨物や運送の保険
貨物の運送中に事故に遭ったとき、荷物の紛失や破損が起きたときなどに補償が受けられる保険もあります。
陸・海・空や国内・海外など、輸送方法などに応じて保険が分かれているのが基本なので、自社の業務に合った保険に加入しなければなりません。
貨物・運送の保険 | 船舶・貨物・運送の保険 | 東京海上日動火災保険
その他の保険
法人向け損害保険には、イベントが中止になった場合の損害を補償する興行中止保険など、上記以外の保険も存在します。
法人向け損害保険は、さまざまな事業に対応した商品が数多くあるので、事業内容に合う保険を選ぶことが重要です。
生命保険との違い
民間保険の中で代表的な生命保険は、損害保険と何が違うのでしょうか。二つの保険を比較してみましょう。
調査結果一覧-1(Excelファイル)平成27年度「生命保険に関する全国実態調査」(平成27年12月発行)|公益財団法人 生命保険文化センター
対象や支払い方式
生命保険と損害保険で大きく異なる点は、生命保険は『人』、損害保険は『物』を主な対象としていることです。
また、保険金の支払い方式も異なります。損害保険は損害額相当を保障する実損払い方式が基本です。しかし、生命保険は契約時に定めた金額の保険金が支払われる、定額払いが一般的です。
販売形態
生命保険と損害保険では、販売形態も異なります。生命保険は自社で窓口やホームページ、保険代理店への委託など、販売形態が多彩です。対して、損害保険は保険代理店を介して契約するのが一般的です。
募集人や代理店とは
損害保険を販売できるのは、損害保険募集人や代理店の登録をしている人に限られます。
- 損害保険募集人:損害保険の販売や顧客のサポート、契約手続きなどをする資格を持った人
- 代理店:損害保険会社と委託契約を締結し、損害保険の販売や顧客のサポート、契約手続き、保険料の集金などの業務をする人
試験を受けて募集人資格を得る必要がある
損害保険募集人になるには、『損保一般試験』に合格して損害保険募集人の資格を取得し、損害保険募集人届出をしなくてはなりません。
損保一般試験とは、損害保険の契約における重要事項などを説明する知識があるかどうかを問う試験のことです。
『基礎単位』と『商品単位(自動車保険単位・火災保険単位・傷害疾病保険単位)』があり、基礎単位に合格した人だけが、損害保険募集人届出を行えます。
ただし、自動車保険・火災保険・傷害疾病保険は、該当の商品単位を取得した人しか販売できません。
保険会社と消費者をつなぐ代理店
損害保険会社と消費者をつなぐ代理店になるには、以下の流れで契約や登録手続きなどをする必要があります。
- 商品を販売したい損害保険会社を選ぶ
- 損害保険会社が実施する『代理店研修』を受講する
- 損害保険会社が定める『代理店試験』を受け、合格する
- 損害保険会社と代理店委託契約を締結する
- 代理店の所在地を管轄する財務局で代理店登録の申請をする
- 財務局の審査に通過すると、代理店として登録される
上記の流れを経て、ようやく代理店として損害保険を販売できるようになります。
メガ損保でシェアは占有されている
日本の損害保険業界の市場規模は9兆円を超えていますが、そのうち9割はメガ損保に占有されています。
メガ損保とは、損害保険業界で圧倒的なシェア率、収益、資産規模などを獲得している、三つの大手損害保険グループのことです。
グループ名 | 損害保険会社名 | シェア(%) |
東京海上ホールディングス | ・東京海上日動火災保険 | 34.5 |
損保ジャパン日本興亜ホールディングス | ・損害保険ジャパン日本興亜 | 32.6 |
MS&ADインシュアランスホールディングス | ・三井住友海上火災保険 ・あいおいニッセイ同和損害保険 |
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それぞれどのような特徴があるのか、損害保険会社別に紹介します。
東京海上日動火災保険
まずは、シェア率1位の東京海上日動火災保険について見てみましょう。
項目 | 詳細 |
創業 | 1879年 |
資本金 | 1019億円 |
純資産 | 9兆6698億円 |
正味収入保険料(※) | 2兆1447円 |
従業員数 | 1万7483人 |
代理店数 | 5万616店 |
東京海上日動火災保険は、1879年創業と長い歴史がある、業界最大手の損害保険会社です。他社が参入していないアフリカ市場にも参入するなど、積極的に海外進出を進めています。
全体的に保険料が高めではあるものの、その分補償内容やサポートが手厚く、事故発生時の対応が早いのが特徴です。
(※正味収入保険料とは、契約者が損害保険会社に支払う保険料のうち、その損害保険会社の業績や売上規模を表す金額のことです)
損害保険ジャパン日本興亜
続いて、業界第2位の損害保険ジャパン日本興亜株式会社の特徴を紹介します。
項目 | 詳細 |
創業 | 1888年 |
資本金 | 700億円 |
純資産 | 7兆6881億円 |
正味収入保険料 | 2兆1680円 |
従業員数 | 2万6189人 |
代理店数 | 5万6340店 |
損害保険ジャパン日本興亜株式会社も、100年以上の歴史を持つ損害保険会社です。もともとは、損保ジャパンと日本興亜という別々の損害保険会社でしたが、14年9月1日の合併によってシェア率を大きく伸ばしました。
介護・ヘルスケア事業に参入するなど、損害保険以外の分野にも事業を拡大しています。顧客にとってわかりやすく、自由度が高い保険を提供しているのが特徴です。
三井住友海上火災保険
ここでは、三井住友海上火災保険の特徴を解説します。
項目 | 詳細 |
創業 | 1918年 |
資本金 | 1395億9552万円 |
純資産 | 7兆982億円 |
正味収入保険料 | 1兆5003円 |
従業員数 | 1万4572人 |
代理店数 | 4万267店 |
三井住友海上火災保険は、三井海上火災保険と住友海上火災保険の二つが合併して創設された損害保険会社です。MS&ADインシュアランスホールディングスの完全子会社であり、業界第3位のシェア率を獲得しています。
マレーシアやインドネシア、タイといった東南アジア諸国での事業拡大を進めており、慈善事業なども積極的に行っています。
保険料と補償内容のバランスがよく、さまざまな損害保険を三井住友海上火災保険の商品でまとめている人も多いのが特徴です。
あいおいニッセイ同和損害保険
項目 | 詳細 |
創業 | 1918年 |
資本金 | 1000億円 |
純資産 | 3兆4866億円 |
正味収入保険料 | 1兆2220円 |
従業員数 | 1万3287人 |
代理店数 | 8万8532店 |
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、三井住友海上火災保険と同じくMS&ADインシュアランスホールディングスの完全子会社です。
あいおい損害保険とニッセイ同和損害保険の合併によって創設された損害保険会社で、商品の補償内容は三井住友海上火災保険と似ています。
KDDIと提携してau損保を発売するなど、新たな顧客開拓や利便性の向上などを進めているのが特徴です。
まとめ
交通事故や火災などが起こると、個人では対処できないほどの損害や賠償責任が生じる可能性があります。そのような事態が起きたときの補償のために加入するのが損害保険です。
損害保険には個人向け商品と法人向け商品があり、それぞれに火災保険や賠償責任保険など、数多くの商品があります。
商品によって補償対象が違うので、自分に必要な補償を考えて加入するべき保険を決めましょう。