保険の種類
日本には、公的・民間ともに数多くの保険が存在します。まずは、どのような保険があるのか、公的・民間それぞれの主な保険の種類を知っておきましょう。
社会保険
日本には、疾病や高齢化のリスクに備えるための『社会保険制度』という公的制度があります。『公的医療保険』『公的年金保険』『労働保険』の3種類の保険があり、それぞれ保障内容や対象者が異なります。
種類 | 保障内容 | 保険の種類 |
公的医療保険 | 医療費を保障する | ・健康保険:会社員を対象とする ・国民健康保険:自営業者などを対象とする ・共済組合:公務員を対象とする |
公的年金保険 | 老後の生活を保障する | ・国民年金:20~60歳未満の国民を対象とする ・厚生年金:会社員や公務員を対象とする |
労働保険 | 労働災害・失業などを保障する | ・雇用保険:雇用保険適用事業者に雇用される労働者を対象とする ・労災保険:労災保険適用事業者に雇用される労働者を対象とする |
民間の保険
保険会社など民間企業が提供する民間保険にもさまざまな種類があります。民間保険は、保障内容によって大きく『第1分野』『第2分野』『第3分野』に分けられています。
区分 | 保障内容 | 保険の種類 |
第1分野 | 人の生死に対して保険金が支給される保険 | ・生命保険 ・養老保険 ・個人年金保険 など |
第2分野 | 偶然の事故によって発生した損害に対して保険金が支給される保険 | ・自動車保険 ・火災保険 ・地震保険 など |
第3分野 | 第1分野と第3分野の特徴を兼ね備えた保険 | ・民間医療保険 ・がん保険 など |
社会保険料は高い?
社会保険制度には複数の公的保険がありますが、これらの保険の保険料を合計すると、およそ年収の15%程度になります。
仮に、年収が300万円だった場合、約45万円が社会保険料として差し引かれるということです。そこからさらに所得税や住民税などが引かれると、手取り年収は240万円程度になります。そう考えると、年収の15%は高いと感じる人も多いでしょう。
国民健康保険は、健康保険や共済組合よりも保険料が高いため、自営業者などはさらに負担が増加します。
国民健康保険の計算方法
国民健康保険の保険料は、『医療分』『後期高齢者支援金分』『介護保険分』の3種類の合計額で成り立っています。
- 医療分:医療給付に充てられる部分
- 後期高齢者支援金分:後期高齢者の支援金に充てられる部分
- 介護保険分:介護保険(※1)の給付に充てられる部分
3種類それぞれの金額は、『所得割』『均等割』『平等割』『資産割』の4種類を合計して算出されます。
- 所得割:前年の収入によって金額が決定する
- 均等割:1世帯のうち、国民健康保険の加入者数によって金額が決定する
- 平等割:1世帯あたり一律の金額が課せられる
- 資産割:固定資産税によって金額が決定する
(※1.介護保険とは、介護費用軽減ために設立された保険制度のことです。40~65歳未満の公的医療保険の被保険者全員に加入義務が課せられています)
国保が高くなる理由
国民健康保険の保険料がその他の公的医療保険より高い理由は、『全額自己負担』であるためです。
健康保険や共済組合などは、勤務先と従業員で保険料を折半します。仮に、1カ月あたりの健康保険料が3万円だった場合、会社員は1万5000円の負担で済みますが、自営業者は全額自分で負担しなくてはならないのです。
また、国民健康保険は加入者の平均所得が低いことも、保険料が高い理由です。国民健康保険には、自営業者だけでなく、退職者や無職者、年金所得者なども多く加入しています。
このような低所得者層の保険料をまかなうために、収入がある人の保険料の負担が大きくなっているのです。
安く抑えるには
国民健康保険の保険料も収入によって決まるので、保険料を安くするのはむずかしいものです。しかし、何とかして保険料を抑えたいのであれば、いくつか方法はあります。
- 建設業など特定の業種の場合は国民健康保険組合に加入する
- 2世帯住宅などで世帯を分けている場合は、世帯合併する
自営業者で業績が上がり、国民健康保険の保険料が高額になっている場合は、法人化して社会保険に切り替えるという方法もあります。しかし、法人税など、別の支出額が増える可能性があるので、事前にシミュレーションしておきましょう。
また、退職者など、収入の減少によって保険料が負担になっている場合は、役所に相談すると減免措置が受けられる可能性があります。
退職後は任意継続と国保のどちらがよい?
健康保険に加入していた会社員が退職した場合、健康保険の加入資格がなくなるため、通常は国民健康保険に切り替えなくてはなりません。
しかし、所定の条件を満たしている人は、健康保険を任意継続することが可能です。国民健康保険への切り替えと任意継続のどちらを選んだ方がよいのでしょうか。
任意継続とは
健康保険の任意継続とは、退職などによって健康保険の加入資格がなくなった人が、資格喪失後も引き続き健康保険に加入できる制度のことです。ただし、誰でも希望すれば任意継続できるわけではなく、以下の条件に該当する人に限られます。
- 資格喪失日の前日までに、2カ月以上継続して健康保険に加入していること
- 資格喪失日から20日以内に任意継続の申請をしていること
資格喪失日から20日を過ぎると任意継続を受け付けてもらえなくなるので、速やかに手続きすることが重要です。
1.任意継続被保険者となるための要件 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
保険料滞納に注意
任意継続できる期間は、任意継続の手続きをしてから2年間です。ただし、その間に保険料を滞納した場合は、納付期限の翌日に任意継続が取り消されます。
任意継続中の保険料は、当然それまでのように給与天引きされることはなく、自分で納付書をコンビニなどに持参して納付しなくてはなりません。うっかり忘れることがないよう注意しましょう。
また、任意継続中は、それまで勤務先と折半していた保険料が全額自己負担になります。それまでの保険料が1カ月1万円だったとしたら、任意継続中は1カ月2万円程度の保険料を納めなくてはなりません。
ただし、任意継続中の保険料には上限が設定されており、上限額以上の金額を請求されることはありません。
被保険者の資格 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
保険料について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
国保と任意継続の比較
国民健康保険への切り替えと、任意継続の特徴を比較してみましょう。
区分 | メリット | デメリット |
国民健康保険 | ・保険料の減免措置が受けられる可能性がある | ・家族を扶養に入れられない ・健康保険よりも保険給付の種類が少ない ・保険料の上限がなく、前年の収入に応じて保険料が決定される |
任意継続 | ・保険料に上限がある ・家族の扶養も継続できる ・これまでと同じ保険給付を受けられる |
・いったん任意継続を選択すると、2年間は変更できない ・保険料の減免措置が受けられない |
基本的に、扶養家族がいる場合は任意継続を選んだ方が、保険料の負担を抑えられます。それ以外のケースでは、それぞれの保険料と保険給付の内容などを比較して決定しましょう。
民間保険の保険料は平均いくらぐらい?
民間保険は公的保険とは異なり、収入額で保険料が決定されることはありません。保険会社が定める、『純保険料』と『付加保険料』の合計額で成り立っています。
- 純保険料:保険金や給付金の支払いに充てられる部分
- 付加保険料:保険会社の経費に充てられる部分
このうち、純保険料は『予定死亡率』『予定利率』、付加保険料は『予定事業費率』によって金額が決定されます。
- 予定死亡率:性別・年齢別に死亡率を予測したもの
- 予定利率:保険料の運用益を予測したもの
- 予定事業費率:保険会社の経費を予測したもの
年齢が上がるほど病気や死亡のリスクが高まるため、年齢が高いほど保険料が高くなります。また、生命保険などは自分で保険金額を設定しますが、金額を高くするほど保険料も上がります。
年齢別の保険支払額
民間保険にどれくらいの保険料を支払っているのか、生命保険文化センターの『18年度・生命保険に関する全国実態調査』から、年齢別の平均保険料を見てみましょう。
年齢 | 年間払込保険料の平均 |
29歳以下 | 23万3200円 |
30~34歳 | 29万7500円 |
35~39歳 | 37万9900円 |
40~44歳 | 34万4500円 |
45~49歳 | 42万6800円 |
50~54歳 | 48万2600円 |
55~59歳 | 45万3300円 |
60~64歳 | 43万8900円 |
65~69歳 | 33万8500円 |
70~74歳 | 29万8800円 |
75~79歳 | 35万2500円 |
80~84歳 | 29万4800円 |
85~89歳 | 36万4900円 |
90歳以上 | 22万4600円 |
調査結果一覧-1(Excelファイル)平成27年度「生命保険に関する全国実態調査」(平成27年12月発行)|公益財団法人 生命保険文化センター
年収別の保険支払額
同じく、『18年度・生命保険に関する全国実態調査』から、世帯年収別の平均保険料も紹介します。
世帯年収 | 年間払込保険料の平均 |
200万円未満 | 21万円 |
200~300万円未満 | 30万円 |
300~400万円未満 | 27万9000円 |
400~500万円未満 | 36万9000円 |
500~600万円未満 | 32万6000円 |
600~700万円未満 | 38万円 |
700~1000万円未満 | 42万9000円 |
1000万円以上 | 61万円 |
生命保険や医療保険の見直しをしてみよう
生命保険や医療保険といった民間保険は、一度加入したら放置するのではなく、定期的に見直すことが重要です。ここでは、民間保険の見直しについて解説します。
状況によって必要な保障は違う
日本は公的保険が充実しており、病気や高齢化、失業など、さまざまなリスクに対する保障が用意されています。しかし、公的保険は保障範囲が限られており、もしものときに公的保険だけでは保障が不足することがあります。
そのようなときのサポートのために加入するのが民間保険です。民間保険のサポートがどれくらい必要なのかは、状況によって異なります。例えば、独身であれば大きな死亡保障は必要ありません。
しかし、小さな子どもがいる家庭では、配偶者や子どもの生活費、教育費なども考慮した、高額な死亡保障が必要になるでしょう。そして、状況が変化すれば、それに合わせて保障内容を変える必要があります。
見直しの時期とは
民間保険を見直すとよいのは、以下のような時期です。
- 結婚したとき
- 子どもが生まれたとき
- マイホームを購入したとき
- 子どもが独立したとき
また、古い保険に加入したままだと、保障内容が現在の傾向にあっていないことがあります。例えば、昔のがん治療は長期入院・手術が主流でしたが、今は短期、日帰り入院や通院治療が増えています。
しかし、古いがん保険では長期入院・手術しか保障内容に含まれておらず、短期入院や通院治療の保障が受けられないことがあるのです。
今までと同じような保障内容で、今までより保険料が安い保険が発売されていることもあるので、時々新商品をチェックしてみることも大切です。
保障などの内容の見直し
民間保険の見直しには、『保障内容の見直し』と『保険会社の見直し』があります。保障内容の見直しとは、保険会社は変更せず、保険金額や給付金額を変更したり、余分な特約(※)を解約したりすることです。
例えば、子どもが独立すると、子どもの教育資金などのために用意していた高額な死亡保障が必要なくなります。
そこで、配偶者の生活が守れる程度に死亡保障額を下げれば、その分保険料も上がるため、家計に余裕が生まれます。
(※特約とは、その保険の主契約にオプションで付ける保障のことです)
保険会社の見直し
保険会社の見直しとは、今加入している保険を解約し、別の保険会社の保険に加入しなおすことです。
同じような保障内容でも、保険会社によって保険料が異なります。より保険料が安い保険会社に乗り換えることで、無駄な保険料を削減できます。
ただし、別の保険会社の保険に変更する際には、その保険会社の審査を受けなくてはなりません。健康状態に問題が出ていたり、危険性の高い仕事に就いていたりすると、審査に落ちる可能性があります。
新たな保険の審査に通過する前にそれまでの保険を解約してしまうと、新たな保険の審査に落ちた場合に無保険になってしまうので注意しましょう。
自動車保険の見直しも一緒に
自動車保険に加入している人は、他の保険を見直す際に自動車保険の見直しもしてみましょう。
車の維持費
自動車を購入すると、自動車の購入費以外に以下のような維持費がかかります。
- 自賠責保険料
- 自動車保険料(任意保険)
- 自動車ローンの利息
- 自動車税
- 車検代
- ガソリン代
- 駐車場代
- その他メンテナンス費用
金額は人によって異なりますが、年間数十万円単位の維持費がかかることが多いでしょう。そのため、自動車を手放せば、かなり家計に余裕が生まれます。
とはいえ、仕事や生活で自動車が必須の人は、自動車を手放すわけにはいきません。それでも維持費を節約したいという場合は、自動車保険料を安くすることを考えてみましょう。
任意保険を安く抑えるには
自動車保険料を安く抑えたいときには、以下のような点を見直してみましょう。
- 余分な特約が付いていないか
- 運転者限定なしになっていないか
- 車両保険は必要か
民間保険の特約は基本的に有料なので、特約が多いほど保険料が上がります。また、自動車保険は保障対象者を運転者のみに限定するかしないかを選ぶことが可能です。
このとき、運転者限定なしにすると、保障対象者が増えるため、その分保険料が高くなります。
そして、車両保険に加入していると、自損事故などによって自動車の修理代が発生した場合に補償が受けられます。
しかし、近々自動車を買い替えることを検討している人などには必要ないでしょう。これらの無駄をなくすことで、自動保険料を抑えられます。
自動車保険の保険料は車種選びで決まる
自動車保険の保険料は、自動車の車種に大きく左右されます。自動車の維持費を安く抑えたいのであれば、保険料が安い車種を選ぶのもひとつの方法です。ここでは、自動車保険の保険料が高くなりやすい車種、安い車種について解説します。
自動車保険料の料率クラスとは
自動車保険の保険料を決める要件はいろいろありますが、中でも『型式別料率クラス』が大きな影響をおよぼします。型式別料率クラスとは、自動車の型式ごとの事故リスクを区分したものです。
『対人賠償』『対物賠償』『傷害(人身傷害・搭乗者傷害)』『車両保険』の4項目があり、それぞれ1~9段階に分類されます。そして、各項目の数字が大きくなるほどリスクが高いとして、自動車保険の保険料が高くなります。
損害保険料率算出機構の型式別料率クラス検索などをりようすると、各自動車の型式別料率クラスがチェックできるので、購入前に希望の車種を検索してみるとよいでしょう。
型式別料率クラスとは|自動車保険はソニー損保
型式別料率クラス検索|損害保険料率算出機構
保険料が高くなりやすい車種は何?
高級車やスポーツカーなどは、損傷したときの修理代が高いこと、盗難のリスクが高いことなどから、型式別料率クラスが高く設定されています。そのため、自動車保険の保険料も、その他の車種より高くなる傾向になります。
保険料が安い車ランキング
自動車保険の保険料が安い自動車も見てみましょう。
- 1位:軽自動車
- 2位:ミニバン
- 3位:コンパクトカー
軽自動車は、修理代や盗難率などが他の自動車に比べて低いため、自動車保険の保険料も安い傾向にあります。
また、ミニバンやコンパクトカーも、比較的保険料が安いでしょう。ただし、上記に当てはまる自動車でも、盗難率が高いなどで特定の車種のみ保険料が高いことがあります。
また、型式別料率クラスは毎年更新されるので、購入前に型式別料率クラスを確認することが重要です。
事故率の高い車種はある?
自動車事故はさまざまな要因によって起こるため、一概に「この車種は事故が起こりやすい」と断定できません。
しかし、2013年にアメリカで発表された調査結果によると、車体が黒の自動車は、アスファルトや夜間の暗闇に紛れやすく、事故に巻き込まれやすいとされています。
また、スポーツカーなどスピードが出やすい自動車は、事故の頻度が高いとして、型式別料率クラスも高く設定されています。
まとめ
加入している保険の保険料が高い理由は、高収入であったり、余分な特約であったりとさまざまです。保険料を安く抑えたいのであれば、保険料が高くなっている原因を探り、保険の見直しをしてみましょう。