生命保険の見直し方のポイント
生命保険は、加入したときのまま放置するのではなく、その時々の状況に合わせて見直すことが重要です。まずは、生命保険の何を見直せばよいのかを知っておきましょう。
保障内容
生命保険を見直すときには、まず今加入している生命保険の保障内容が現状に合っているかをチェックしましょう。
例えば、結婚してすぐに生命保険に加入したとします。この場合、配偶者に葬儀代やある程度の生活費が残せれば十分です。しかし、子どもが生まれたら、子どもの教育資金や生活費についても考える必要があります。
すると、一般的な生命保険だけでなく、学資保険(※1)や収入保障保険(※2)なども選択肢に入ってくるでしょう。このように、そのときの状況に応じて必要な保障が変わるため、今の保障内容を見直す必要があるのです。
(※1.学資保険とは、満期保険金を子どもの教育資金に充てることを目的とした保険です。一定期間が経過すると満期保険金が支払われますが、それまで被保険者が死亡した場合には、死亡保険金が支払われる商品もあります)
(※2.収入保障保険とは、被保険者が死亡した場合に、死亡保険金が一定期間分割(年金)で支払われる保険です)
保障額
保障額の見直しも重要です。前述のケースを例に考えてみましょう。結婚してすぐは、葬儀代とは別に1年分の生活費を確保しても、400万円程度の死亡保険金があれば足ります。
- 葬儀代の平均:195万7000円
- 単身世帯の生活費の平均:月額17万8801円
しかし、子どもが生まれた後は、葬儀代、1年分の生活費、教育資金だけでも1000万円以上必要です。
- 葬儀代の平均:195万7000円
- 子どもの教育資金の平均(幼稚園から大学まで公立に通った場合):782万7000円
- 2人以上の世帯における生活費の平均:月額28万7315円
もしものときにどれくらいの資金が必要か、貯蓄でどこまでまかなえるかをシミュレーションして、それに応じた保障額に見直しましょう。
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払込額や期間
毎月の保険料の払込額や保険期間も見直しておきましょう。例えば、定期保険に加入している人が、高齢になって別の生命保険に掛け替えを希望したとします。
しかし、生命保険は基本的に健康状態に問題があると加入できません。そのため、高齢になってからでは掛け替えできない可能性があります。
また、定期保険は保険料が安いのが特徴です。しかし、契約満了時に更新すると、そのときの年齢に応じて保険料が上がります。保険料が上がったのに掛け替えられないとなると、老後の家計への負担が増大します。
そのため、早めに終身保険に切り替えるなど、数年後、数十年後の状況を見据えた保険料や保険期間を考えることが重要です。
生命保険の見直し時期とは
生命保険の見直しはいつでもできますが、とくに見直しした方がよい時期があります。
結婚や出産
結婚や出産は、生命保険を見直す重要なタイミングです。世帯主が亡くなると、遺された家族に大きな負担がかかります。とくに、子どもが小さい世帯や配偶者が専業主婦・主夫の世帯では、収入の要である世帯主が亡くなると、生活が立ち行かなくなるかもしれません。
そのため、結婚や出産で家族が増えたときには、今まで通りの保障のままで不足がないかを見直す必要があります。
仕事関係の転機
転職や起業など、仕事関係の転機が訪れたときも生命保険の見直しのタイミングです。仮に、会社員からフリーランスになったり、起業したりしたとしましょう。そうすると、会社員時代に得られていた、傷病手当や健康保険の扶養、有給休暇といった多くの保障がなくなります。
退職金制度がある会社では、社員が亡くなった場合にその退職金が死亡退職金として遺族に支払われることがありますが、それもなくなります。そのため、それまでよりも死亡保障額を上げたり、医療保障を充実させたりといった対策が必要です。
子どもの独立や退職
生命保険の見直しのタイミングは、子どもが独立したり、定年退職したりしたときにもやってきます。子育て中で死亡保障額を高く設定している世帯では、その分、生命保険に高い保険料を支払っているでしょう。
しかし、子どもが独立した後は、高額な死亡保障は必要なくなります。また、定年退職後は、多くの世帯がそれまでよりも収入が減少するため、死亡保障額を見直して保険料を下げ、自分の老後を意識した保障に切り替えていく必要があります。
生命保険見直しの注意点
定期的な生命保険の見直しは大切ですが、見直しの際に注意したいことがあります。
生命保険で必要な保障や特約か
生命保険を見直すときには、その保障や特約(※1)が生命保険でないと確保できないものなのか、本当に必要なものなのかを考えましょう。
例えば、収入保障保険という生命保険がありますが、この生命保険は遺族年金(※2)の支給要件を満たしている人にとっては、それほど必要性が高いものではありません。
また、生命保険によっては『介護特約(※3)』がありますが、特約を付加すると保険料が上がるうえに、条件が厳しく、給付金が受け取れないケースもあります。さらに、公的介護保険の保障があるので、それほど必要性も高くありません。
このように、他の制度で対応できたり、必要性があまり高くなかったりする場合があるので、事前によく検討することが大切です。
(※1.特約とは、保険の主契約にオプションで付ける保障のことです。特約の付加は基本的に有料なので、特約を付けると保険料が上がります)
(※2.遺族年金とは、公的年金の加入者が亡くなった場合に、所定の要件を満たす親族に支払われる年金のことです)
(※3.介護特約とは、所定の介護状態になったときに、給付金や一時金が支払われるという特約です)
保障が重なっていないか
他の民間保険などと保障が重ならないよう注意する必要もあります。例えば、生命保険の中には、特約で医療保障を付けられる商品がありますが、すでに民間医療保険に加入している場合は、保障内容が重なってしまいます。
公的医療保険の保障もあることを考えると、わざわざ追加の保険料を支払って、生命保険の医療保障を付ける必要はあまりありません。
生命保険の見直しの際には、他の民間保険や公的制度の保障内容も調べておき、それぞれの不足部分を補える形にするとよいでしょう。
ブログなどの体験談も参考にしよう
自分と同じような境遇にある人のブログや体験談を参考にするのもおすすめです。具体的な見直し内容や、その結果いくらくらい保険料が下がったのかなど、生命保険の見直しの流れやメリットがわかるでしょう。また、自分では思いつかなかった方法が見つかることもあります。
ファイナンシャルプランナー(※)などの専門家のブログであれば、よりよい生命保険の見直し方や生命保険の活用方法がわかることもあるので、一度目を通してみるとよいでしょう。
(※ファイナンシャルプランナーとは、家計管理や保険、資産運用など、お金に関わる専門知識を持ち、さまざまなアドバイスをする専門家のことです)
40代の保険の見直し方
ここからは、年代別に生命保険を見直すときのポイントを紹介します。まずは、40代の生命保険の見直し方です。
更新が最適かどうか
40代で定期保険に加入している人は、次回の契約満了時に更新するのが最適かどうかを考えてみましょう。生命保険は年齢が上がるほど保険料も上がります。年齢が高いと、病気や死亡のリスクが上がるためです。
仮に50歳で更新したとして、その次の更新が70歳、80歳と高齢になると、保険料が1万円以上と非常に高額になったり、更新自体ができなかったりします。しかし、その時点で別の生命保険に切り替えようとしても、加入審査に通らない可能性が高いでしょう。
しっかり貯蓄が確保できていて、将来的に生命保険が必要なくなる場合は、定期保険のままでもかまいません。しかし、今後も生命保険が必要なのであれば、終身保険に切り替えるなど対応を考えましょう。
がん保険も考えるべき
40代からは、がん保険への加入も検討しましょう。40代は、がんの罹患率(りかんりつ※)が上がるためです。
出典:最新がん統計:[国立がん研究センター がん登録・統計]
また、がんによる死亡者数も増加します。(厚生労働省『17年・人口動態調査(第7表)』より)
年齢(歳) | がんの死亡者数(人) |
30~34 | 616 |
35~39 | 1145 |
40~44 | 2649 |
45~49 | 4765 |
40代は子どもの大学進学や結婚、親の介護など、多額の資金を必要とする出来事が起こりやすいうえに、自分の老後についても考えなくてはならない年代です。
このようなときにがんの治療に高額な費用がかかったり、収入が減少したりすると、非常に負担が重くなります。そのため、がんにかかった場合に備えておく必要があるのです。
(※罹患率とは、ある病気かかる割合を示す数値です)
平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省
老後のことも見据えていこう
40代になったら、老後のことを見据えた生命保険に切り替えていきましょう。前述のとおり、40代になると、がんだけでなく他の病気の罹患率も上がります。
仮に、今定期保険に加入しているとして、その間に病気にかかってしまうと、生命保険の掛け替えが非常にむずかしくなります。次回の更新で保険料が高額になりそうなので掛け替えたいと思っていても、病気になってからでは遅いのです。
よって、健康状態に問題がないうちに終身保険に切り替えて、一生涯保障を確保するなど、早めに対策する必要があります。年金額が少ない人は、個人年金保険(※)など、老後の資金づくりに役立つ保険への加入も検討しましょう。
(※個人年金保険とは、一定期間保険料を納めると、契約時に定めた年齢から年金が支払われる民間保険のことです)
50代の保険の見直し方
50代で生命保険を見直すときには、何を重視するとよいのでしょうか。
子どもの自立は見直し時期
50代では、子どもが独立したという人も多いでしょう。子どもが独立したら、子どものための保障は必要なくなります。一方、自分の老後資金を準備したり、病気に備えたりする重要性が上がります。
よって、子どものための保障を減らし、保険料が下がって余裕が出た分で医療保障を充実させたり、貯蓄を増やしたりするのがおすすめです。
ただし、50代は年金の受給開始までに、まだまだ時間がかかります。とくに配偶者が専業主婦・主夫の場合は、配偶者が年金受給開始年齢になるまでの生活費を確保できる程度の保障は確保しておきましょう。
更新を続けることは避けたい
50代以降に生命保険を更新すると、保険料が高額になるケースが多いものです。老後の家計への負担を考えると、定期保険を更新し続けることは避けた方がよいでしょう。
40代での見直しと同じく、終身保険への切り替えや、50代からさらに罹患率が上がる3大疾病(※)への備えを充実させるのがおすすめです。
(※3大疾病とは、日本人の死因上位を占める、がん・心疾患・脳卒中のことを指します)
早く払い終えることも考慮
老後の家計のことを考えるのであれば、保険料を早く払い終えることも検討してみましょう。多くの終身保険は、保険料の支払い方法を以下の3種類から選択できます。
- 一時払い:保険料全額を一括払いする方法
- 短期払い:『〇歳まで』など期限を設け、期限までに保険料全額を払い終える方法
- 終身払い:保険に加入している限り、一生涯保険料を払い続ける方法
一時払いや短期払いで60歳の定年までに保険料を払い終えれば、以降は保険料を支払うことなく保障が受けられるので、家計への負担を軽減できます。また、一時払いや短期払いを選ぶと保険料が割り引かれることもあり、総支払額を抑えられる可能性があります。
60歳以降の保険の見直し方
60歳以降で生命保険を見直すことはできるのでしょうか。
生命保険の見直し内容
生命保険の見直しは、何歳であっても可能です。ただし、健康状態に問題があると、新たな生命保険への加入はむずかしくなるので、できるだけ早めに見直した方がよいでしょう。
60代で生命保険を見直すときのポイントは、死亡保障額です。60代になると、老齢年金が受給できるようになります。満額支給されるのは65歳以降ですが、どうしても必要であれば60歳から繰り上げ受給することも可能です。
そのため、配偶者が専業主婦・主夫であっても、それほど高額な死亡保障は必要ありません。葬儀代などの費用を確保できる程度に減額し、保険料を抑えるとよいでしょう。
終身保険に加入している人で、退職金などによって資金に余裕がある場合は、残りの保険料を一括で支払ってしまうことも考えてみましょう。
掛け捨てがお得?
60代で新たに生命保険に加入するのであれば、掛け捨ての定期保険で必要な期間だけ保障を受けた方がお得です。
終身保険は、保険料の総額を加入月数で割った金額が1カ月あたりの保険料になります。60代で加入するとなると、加入月数が少ないので1カ月あたりの保険料が非常に高額になるでしょう。
しかしその分、死亡保障額が上がるわけではないので、結果的に支払った保険料が死亡保険金よりも少なくなる可能性があります。
一方、定期保険でも保険料が高いことには変わりありませんが、終身保険よりは安く済む可能性が高く、支払った保険料よりも多い死亡保険金を受け取れる可能性も高くなります。
転換はよく考えよう
生命保険には、既存加入の生命保険の解約返戻金(かいやくへんれいきん※)などの一部を、新契約の保険料の支払いに充てる『転換』という制度があります。
60歳以降は保険料が高額になるので、転換の際に解約返戻金などから差し引かれる金額が大きく、その割には今までとそこまで保険料が変わらないという可能性があります。
また、終身契約だった保険が定期契約に変わっているなど、トラブルになることもあるでしょう。もし、窓口の担当者に転換を進められた場合は、言われたまま契約を変更するのではなく、内容をよく確認することが重要です。
(※解約返戻金とは、保険を解約したときに、それまでの加入状況に応じて契約者に払い戻されるお金のことです)
保険解約の前に
生命保険を解約するときに、前もって確認しておくべきポイントがあります。このポイントをしっかり押さえておかないと、万が一のときに保障が受けられない可能性もあるので注意が必要です。
解約返戻金の確認
生命保険には、解約時にそれまでの加入状況に応じて解約返戻金が支払われる商品があります。生命保険を解約するときには、この解約返戻金の有無と金額を確認しておきましょう。
解約返戻金は税法上、一時所得とみなされ、所得税がかかるからです。保険料を支払っていた人と解約返戻金の受取人が異なる場合は、贈与税が課せられます。
そのため、解約返戻金を受け取った年の税金が上がります。また、確定申告が必要になる場合があるので、前もってどれくらいの税金がかかるのか、確定申告は必要なのかを調べておきましょう。
No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき|国税庁
空白期間の確認
生命保険を解約するときには、空白期間についても確認しておきましょう。空白期間とは、生命保険を解約し、次の生命保険の保障が始まるまでの、保障が受けられない期間のことです。
生命保険の掛け替えをするときに、この空白期間ができてしまうと、その間に被保険者に万が一のことがあった場合に保険金が受け取れません。1~2カ月ほど二つの生命保険の保険料を支払うことになったとしても、空白期間をつくらないようにしましょう。
次の保険の成約を確認
生命保険を解約する前に、次の生命保険の成約を確認することも重要です。もし、成約前に今までの生命保険を解約していしまい、次の生命保険の審査に落ちると保障がなくなってしまいます。確実に次の保障が確保できてから解約するようにしましょう。
まとめ
自分や家族の状況が大きく変わる出来事が起きたときは、生命保険の見直しのタイミングです。年齢ごとの見直しポイントを押さえて、よりよい保障を確保できるようになりましょう。