がんの実態を知ろう
まずは、がんの実態について知っておきましょう。
2人に1人はがんになる
国立がん研究センターの『最新がん統計』によると、生涯でがんに罹患(りかん:病気にかかること)する確率は、男性62%・女性47%で、2人に1人はがんになるという結果が出ています。
さらに、厚生労働省発表の『2017年・人口動態調査』では、日本人の死因第1位はがんになっており、それだけかかる確率が高く、死亡リスクの高い病気であることがわかります。
最新がん統計:[国立がん研究センター がん登録・統計]
平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省
治療費は高額になることも
がんは、罹患すると死亡リスクが高いだけでなく、治療費が高額になる傾向があるのが特徴です。
以下は、全日本病院協会『医療の質の評価・公表等推進事業』をもとにした、がんの種類別の平均医療費(2017年度10~12月、1入院あたり)です。
種類 | 平均医療費(1入院あたり) | 公的医療保険適用後の概算(自己負担3割の場合) |
胃がん | 99万9342円 | 29万9802円 |
結腸がん | 85万3652円 | 25万6095円 |
直腸がん | 93万5574円 | 28万0672円 |
気管支・肺がん | 77万6424円 | 23万2927円 |
公的医療保険を利用しても、数十万円の費用がかかることがわかります。重症化したり、再発したりすればこれ以上の費用がかかるほか、入院中の食事代や交通費なども別途発生します。
医療費:医療の質の評価・公表等推進事業:病院運営支援事業 – 全日本病院協会
新しい技術である先進医療
『先進医療』とは、どのような治療法なのでしょうか。
先進医療とは
先進医療とは、特定の大学病院などで研究・開発されている最新技術のうち、厚生労働大臣によって先進医療と認められた治療法のことです。
先進医療は公的医療保険の対象外なので、先進医療を受けて発生した費用は、全額自己負担しなくてはなりません。
そのため、医療機関側は患者に治療内容や必要な費用について事前に説明し、患者側が納得して同意書に署名した場合のみ先進医療を行うことができます。
がんの治療に用いられる代表的な先進医療としては、『重粒子線治療』と『陽子線治療』があります。
重粒子線治療の概要とかかる費用
重粒子線治療とは、重粒子線(主に炭素イオンが用いられる)を利用した放射線治療の一種です。
重粒子線を光の70%の速度まで加速させ、がん細胞に照射することによってがん細胞を死滅させます。
従来のX線を利用した放射線治療よりも深い位置まで届き、がん病巣に届いた段階で放射線によるダメージを与える力がピークになる特性から、正常な細胞への影響が少なく済むなどのメリットがあります。
重粒子線治療を受けた場合の平均費用は、『309万3057円』です。(中央社会保険医療協議会『16年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について』より)
重粒子線治療とは | 重粒子線治療ガイド
中央社会保険医療協議会『2016年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について』
陽子線治療の概要とかかる費用
陽子線治療とは、最も軽い元素である水素の原子核を加速させた陽子線を利用した放射線治療の一種です。
陽子線は一定の深さで止まるという特性を持っており、止まったところで放射線による影響力が最大になります。
そのため、陽子線の止まる深さをコントロールして、その他の組織へのダメージを抑えつつ、がん病巣に集中して放射線を当てることが可能です。
陽子線治療を受けた場合の平均費用は、『276万22円』です。(中央社会保険医療協議会『16年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について』より)
陽子線治療について | 国立がん研究センター 東病院
中央社会保険医療協議会『2016年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について』
がん保険の必要性
ここでは、がん保険の必要性について解説します。
保障が充実している
がん保険はがん以外の病気の保障は受けられませんが、その分がん治療に対する保障が充実しているのが特徴です。
商品によって異なりますが、手術給付金・入院給付金以外にも、抗がん剤や放射線治療給付金、診断給付金、通院給付金など、手厚い保障が受けられます。
通常の医療保険は、様々な病気に対する保障が受けられる代わりに、がん治療に対する保障が入院・手術をした場合に限られることも多く、保障が不足する可能性があります。
がんは罹患する確率やかかったときの死亡リスクが高く、医療費が高額になる傾向があることも踏まえると、がん保険の必要性は高いといえるでしょう。
診断給付金
がん保険の中には、『診断給付金』が受け取れる商品があります。診断給付金とは、がんと診断された場合に支給される給付金のことです。
入院したり、手術を受けたりしていなくても支給されるのが一般的で、医療費だけでなく、通院のための交通費や治療中の生活費に充当することもできます。
がんの診断を受けた時点で資金が確保できることは、これからかかる医療費や収入減に対する不安や交通費などの金銭的な負担を軽減するのに役立つでしょう。
最近のがん保険では、診断給付金が主契約(※1)に含まれていることが多いですが、特約(※2)として付加する商品もあるので、保障内容をよく確認することが重要です。
(※1.主契約とは、その保険のメインとなる保障のことで、その保障のみで契約が成立する保障です)
(※2.特約とは、主契約にオプションで付ける保障のことです。特約のみの契約はできません)
手術給付金や入院給付金
がん保険の手術給付金や入院給付金は、医療保険のそれと大きく異なる点があります。
医療保険の手術給付金や入院給付金には、『支払限度日数』や『通算支払限度日数』などの制限が設けられているのが一般的です。
- 支払限度日数:1入院あたりの給付金の支給対象となる日数の上限
- 通算支払限度日数:その保険で給付金が支給される日数の上限
例えば、1入院あたりの給付金の支払限度日数60日の医療保険の場合、最初に入院してから60日目までは給付金が支給されますが、61日目からは支給されなくなります。
一方、がん保険は無期限で給付金を受け取れる商品が多いため、長期入院になった場合でも安心して治療に専念できます。
通院給付金
多くのがん保険には、通院給付金があることもメリットです。通院給付金とは、通院で抗がん剤治療や放射線治療を受けた場合に支給される給付金のことです。
近年のがん治療は、医療の発達などによって通院治療で済むケースが増えています。また、手術後に再発防止を目的とした抗がん剤治療を受けるために通院しなければならないこともあります。
このとき、通院給付金が受け取れるがん保険に加入していれば、さらに医療費の負担を軽減することが可能です。
通院給付金も、主契約に含まれる場合と特約になる場合があるので、契約前に確認しておきましょう。
がん保険の主な特約
がん保険は、手術給付金や入院給付金、診断給付金などを主契約としており、その他の保障は特約として付加する形になるのが一般的です。ここでは、がん保険の主な特約について見ていきましょう。
先進医療特約
先進医療特約とは、がんの治療のために先進医療を受けた場合に、かかった費用の保障が受けられる特約です。
一律の金額が支給されるのではなく、先進医療にかかった費用のうち、自己負担した金額が支給されるパターンが多いでしょう。
また、商品によっては、保険会社から医療機関に直接先進医療費を支払ってもらうことが可能で、高額な先進医療費を立て替える必要がなくなります。
退院給付金
退院給付金とは、在宅療養給付金とも呼ばれる給付金で、退院後に在宅療養する場合に支給される給付金のことです。
20日以上の長期入院であったこと、退院後に在宅療養が必要であると医師から診断されていることなどが支給条件になるのが一般的です。
最近は、がん治療のための入院も短期化しており、通院のみで済む場合も多いため、退院給付金の支給条件を満たすことがむずかしくなっています。
念のため長期入院後の在宅療養に備えたい場合は特約を付加するのもよいですが、給付金の支給条件と必要性をよく検討しましょう。
化学療法・放射線治療特約
化学療法・放射線治療特約とは、公的医療保険の対象となる抗がん剤治療、あるいは放射線治療を受けた場合に、給付金が支給される特約のことです。
通院保障があれば、通院によって抗がん剤治療や放射線治療を受けた場合に、通院給付金を受け取ることが可能です。
しかし、通院給付金は日額5000~1万円程度の金額になることが多く、抗がん剤の中には1回数万~数十万円かかるものがあるため、通院給付金だけでは足りない可能性があります。
化学療法・放射線治療特約は、1回あたり5~10万円程度の給付金が受け取れることが多いため、高額な費用がかかったときの負担を軽減できるでしょう。
自由診療も保障
がん保険によっては、自由診療にかかった費用が保障されることもあります。自由診療とは、公的医療保険が適用されない治療法のことです。
例えば、海外で承認されていて日本国内では未承認の薬物を用いた治療法などが自由診療に当たります。
自由診療も選択肢に含めることで治療の幅が広がりますが、公的医療保険が適用されないため、かかった費用が全額自己負担になります。
自由診療が保障されるがん保険に加入していれば、費用の負担を心配せずに、最適な治療法を選べるようになるでしょう。
先進医療特約は必要か
では、先進医療特約は必要なのでしょうか。
費用は全額自己負担で高額
前述のとおり、先進医療を受けると数百万円単位の高額な費用がかかる可能性があります。さらに、かかった費用は全額自己負担しなければなりません。
もしも、先進医療が自分の症状に最も有効な治療法だったとしても、費用が捻出できなければ先進医療を選択することはできないでしょう。
しかし、先進医療特約があれば費用面の心配がなくなるので、先進医療を選択しやすくなります。
保険料が安い
先進医療特約の保険料は数十~数百円程度と、特約の中でも比較的安い保険料となっています。
数十~数百円程度の上乗せで、先進医療に対する保障を確保できるのであれば、付けておいても損はないでしょう。
先進医療特約のデメリット
先進医療特約にデメリットはあるのでしょうか。
利用する可能性は低い
先進医療特約のデメリットとしては、保障を利用する可能性が低いことが挙げられます。中央社会保険医療協議会『16年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について』のデータを見てみましょう。
重粒子線治療を実施している医療機関は5カ所、陽子線治療を実施している医療機関は13カ所と、非常に数が少ないことがわかります。
出典:先進医療を知る-先進医療の現状 | 先進医療情報ステーション | 第一生命保険株式会社
該当の医療機関が遠方だと、医療機関までの交通費だけでも高額になるほか、家族が入院をサポートすることもむずかしくなるため、先進医療を選択しづらくなるでしょう。
このような事情が、がん保険の先進医療特約を利用する機会が少ないことにつながっています。
限られた治療法での対応
先進医療と認められている治療法の数は、それほど多くはありません。現在先進医療と認められている治療法の数は、17年12月1日時点で101種類です。
そのうちがん治療に用いられる先進医療に絞るとさらに数が少なくなるため、がん保険の先進医療特約の対象となる治療法は限られます。
先進医療とは? どれくらい費用がかかる?|公益財団法人 生命保険文化センター
先進医療特約でがん保険を比較
最後に、先進医療特約でがん保険を比較してみましょう。
先進医療のみの保険
生命保険や医療保険に加入しており、先進医療保障のみ手厚くしたい人は、先進医療保障に特化した保険を選ぶとよいでしょう。
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の保険
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の『Linkx coins(リンククロス コインズ)』は、病気やケガの治療のために先進医療を受けたときに給付金が支給される保険です。
先進医療にかかった費用相当額が保障されるほか、がん治療のために先進医療を受けた場合は10万円、それ以外の病気の場合は5万円の一時金も支給されます。保険料は月々500円と安価なので、既存加入の保険とも併用しやすいでしょう。
先進医療保険 Linkx coins(リンククロス コインズ) - 保障内容 | 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
充実の先進医療特約
がんにかかる要因のひとつに、『遺伝』があります。遺伝子の変異が親から子に遺伝することで、がんにかかりやすい体質になるのです。
- 家系内に若年性がんにかかった人がいる
- 家系内に特定の種類のがんにかかった人が多い
上記のようなケースに該当する場合は、がんにかかりやすい体質、いわゆる『がん家系』の可能性があります。
このような人は、先進医療特約やその他の保障内容が充実しているがん保険に加入し、しっかりとした備えを確保しておくとよいでしょう。
アフラックいきるためのがん保険Days1
アフラックの『いきるためのがん保険Days1』は、先進医療にかかった自己負担額と同額が保障されるほか、年1回を限度として15万円の先進医療一時金が受け取れます。
そのため、先進医療を受けるために遠方の病院に入院し、交通費などがかさんだ場合などでも、金銭的な負担を軽減できます。
また、先進医療特約以外の保障も充実している点も特徴です。主契約に、診断給付金・入院給付金・通院給付金が含まれており、どんな治療法になっても対応しやすいというメリットがあります。
特約の種類も豊富なので、どの保障が必要かをよく考えて、自分に合ったプランを選択しましょう。
先進医療を回数無制限で保障
給付金の支払回数を気にすることなく保障を受けたい人は、給付金の支払回数無制限のがん保険を探しましょう。
SBI損保のがん保険自由診療タイプ
SBI損保の『がん保険自由診療タイプ』は、先進医療や自由診療にかかった費用の実額が補償されるがん保険です。
保険会社から直接医療機関に給付金を支払ってもらうこともできるため、窓口での負担が軽減できます。
また、通院補償もあり、通院によって抗がん剤治療を受けた場合や、退院後の補助療法まで実額で支給されます。
まとめ
先進医療特約とは、先進医療にかかった費用の保障を受けるための特約です。がんの先進医療には数百万円もの費用がかかることがあり、公的医療保険の対象外であるため、全額自己負担しなければなりません。
先進医療特約があれば、自己負担した費用が保障されるため、先進医療を選択しやすくなります。
先進医療を実施している医療機関の数が少ないなどの理由から、先進医療特約を利用する機会は少ないと考えられるものの、先進医療特約の保険料は安いので、付けておいて損はないと言えるでしょう。