生命保険料控除で節税
がん保険の保険料は、『生命保険料控除』という所得控除(※1)の対象になっているため、節税に役立ちます。
生命保険料控除とは、民間保険に加入している場合に、所定の金額を所得から控除することで税金の負担を軽減する制度で、以下の3種類に分かれます。
種類 | 詳細 |
一般生命保険料控除 | 被保険者(保険の対象者)の生存・死亡時に保険金が支払われる保険への保険料が対象 |
介護医療保険料控除 | 入院・通院などの費用に対して給付金が支払われる保険への保険料が対象 |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険料税制適格特約(※2)を付けた個人年金保険への保険料が対象 |
(※1.所得控除とは、所得額から所定の金額を差し引き、税金の負担を軽くする制度のことです。なお、所得額は、収入額から給与所得者は給与所得控除を、個人事業主は必要経費を差し引いた金額です)
(※2.個人年金保険料税制適格特約とは、個人年金保険料控除を受けるために付ける特約のことです)
控除を受けるための申告方法
控除を受けるには、年末調整や確定申告の際に控除額を申告する必要があります。
会社員
会社員などの給与所得者は、年末調整で控除額を申告します。勤務先で『給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書』をもらいましょう。
出典:税理士がやさしく解説 平成29年分保険料控除申告書の書き方
『介護医療保険料』欄に、契約情報や控除額などを記入します。
出典:税理士がやさしく解説 平成29年分保険料控除申告書の書き方
申告書が完成したら、『生命保険料控除証明書』を添付して、勤務先に提出すれば手続き完了です。
生命保険料控除証明書とは、年間の払込保険料額が記載された書類です。保険料の申告の際に提出しなければならないため、失くさないように注意しましょう。
個人事業主
個人事業主は、確定申告で控除額を申告します。確定申告書第一表では、『所得から差引かれる金額』の項目にある『生命保険料控除』欄に控除額を記入しましょう。
出典:所得税及び復興特別所得税の申告に使用する申告書第一表様式の解説 平成29年分 松本寿一税理士事務所
確定申告書第二表では、『生命保険料控除』の項目にある『介護医療保険料の計』欄に控除額を記入します。
出典:平成29年分 所得税の申告書B第二表(所得税の申告書様式) 大阪府高槻市の松本寿一税理士事務所
確定申告書が完成したら、生命保険料控除証明書を添付して、税務署に提出すれば手続き完了です。
2010年の税制改正のポイント
生命保険料控除は、2010年の税制改正により、大きく内容が変更されています。
がん保険も対象の介護保険料控除の新設
生命保険料控除は、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2種類でした。しかし、10年の税制改正時に、がん保険も対象となる介護医療保険料控除が新設され、『新制度』と『旧制度』に分かれています。
- 新制度:12年1月1日以降に締結した保険契約分が対象
- 旧制度:11年12月31日以前に締結した保険契約分が対象
介護医療保険料控除は、新制度のみの控除であるため、旧制度の対象の保険契約には適用されません。
ただし、12年1月1日以降に契約更新や特約の付加をしている場合は、新制度の対象となります。
控除額の適用限度額の変更
控除には、『適用限度額(控除の上限額)』が設けられていますが、適用限度額も税制改正時に変更されているので確認しておきましょう。
新制度は、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類、旧制度は、介護医療保険料控除を除く2種類のうち、何種類適用されるかで適用限度額が変わります。
新制度の適用限度額
種類 | 1種類適用 | 2種類適用 | 3種類適用 |
所得税 | 4万円 | 8万円 | 12万円 |
住民税 | 2万8000円 | 5万6000円 | 7万円 |
旧制度の適用限度額
種類 | 1種類適用 | 2種類適用 |
所得税 | 5万円 | 10万円 |
住民税 | 3万5000円 | 7万円 |
税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|公益財団法人 生命保険文化センター
がん保険の保険料控除を詳しく知る
がん保険の控除額の計算方法を知っておきましょう。
介護医療保険控除の控除額
控除額の計算方法は、所得税と住民税によって異なります。以下は新制度における控除額の計算方法です。
所得税の控除額
年間払込保険料 | 控除額 |
2万円以下 | 払込保険料全額 |
2万円超 4万円以下 | 払込保険料÷2+1万円 |
4万円超 8万円以下 | 払込保険料÷4+2万円 |
8万円超 | 4万円 |
住民税の控除額
年間払込保険料 | 控除額 |
1万2000円以下 | 払込保険料全額 |
1万2000円超 3万2000円以下 | 払込保険料÷2+6000円 |
3万2000円超 5万6000円以下 | 払込保険料÷4+1万4000円 |
5万6000円超 | 2万8000円 |
旧制度の控除額
旧制度における控除額の計算方法は、以下の通りです。
所得税の控除額
年間払込保険料 | 控除額 |
2万5000円以下 | 払込保険料全額 |
2万5000円超 5万円以下 | 払込保険料÷2+1万2500円 |
5万円超 10万円以下 | 払込保険料÷4+2万5000円 |
10万円超 | 5万円 |
住民税の控除額
年間払込保険料 | 控除額 |
1万5000円以下 | 払込保険料全額 |
1万5000円超 4万円以下 | 払込保険料÷2+7500円 |
4万円超 7万円以下 | 払込保険料÷4+1万7500円 |
7万円超 | 3万5000円 |
税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|公益財団法人 生命保険文化センター
まとめ
がん保険への払込保険料は、所得控除の対象になっています。新制度と旧制度で適用限度額や控除額の計算方法が異なるので、確認しておきましょう。
がん保険の保険料控除とは?申告書の書き方もやさしく解説します