がん保険の種類を比較する
まずは、がん保険の種類について解説します。
定期型と終身型
がん保険は、保障期間によって『定期型』と『終身型』に分かれます。
定期型 | 終身型 |
・保障期間が年齢や年数で制限される ・掛け捨て型で保険料が安いものが多い ・商品数が豊富 |
・一生涯にわたり保障 ・解約返戻金など、お金が戻るものが多い ・定期型に比べて保険料が高い |
がん定期のシミュレーション | アクサダイレクト生命保険
がん終身保険のシミュレーション | アクサダイレクト生命保険
掛け捨て型と貯蓄型
がん保険には、『掛け捨て型』と『貯蓄型』という違いもあります。
掛け捨て型 | 貯蓄型 |
・解約したり、満了を迎えたりしてもお金が戻らない ・保険料が安い場合が多い |
・解約時には解約返戻金、満期時には満期金などが支払われる ・貯蓄分が上乗せされるため、保険料が高い傾向にある |
がん保険の加入、または見直しをする場合は、このような種類ごとの特徴を把握して選ぶことが大切です。
解約返戻金について知ろう
ここでは、解約返戻金について解説します。
解約返戻金の特徴
解約返戻金とは、保険を解約した場合に支払われるお金のことです。どの保険でも支払われるわけではなく、終身保険や学資保険などの貯蓄性がある保険に限定されます。
また、払込保険料全額が解約返戻金になるわけではなく、貯蓄分として上乗せされた保険料から、手数料などを差し引いた金額が支払われるのが原則です。
解約返戻金には3つのタイプがある
解約返戻金は、3つのタイプに分かれます。
タイプ | 詳細 |
従来型 | 払込保険料に対し、いくら解約返戻金が戻るのかを表す『返戻率』によって、解約返戻金額が決まるタイプ |
低解約払戻金型 | 従来型の70%程度の解約返戻金が戻るタイプ。保険料の払込期間中は返戻率が低く、払込完了後に返戻率が上がる商品もある |
無解約払戻金型 | 解約返戻金をなくし、その分保険料を安く抑えたタイプ |
無解約払戻金型の終身保険などもあるので、がん保険を選ぶときには、どのタイプに当てはまるのかをしっかり確認しておきましょう。
解約返戻金には税金がかかることもある
解約返戻金には、税金がかかることがあります。
課税されるかどうかの判断基準
解約返戻金の課税の有無と課税される税金の種類は、利益の有無や、誰が保険料の支払い者や解約返戻金の受取人になっているのかで決まります。
利益が出れば所得税がかかる
保険料支払い者と解約返戻金の受取人が同一で、解約返戻金を受け取ったことによって利益が出た場合は、『所得税』が課せられます。
所得税とは、1年間で得た所得に対して課される税金です。所得額(※1)から各所得控除(※2)を差し引き、課税対象となる課税所得額に、課税所得額に応じた所得税率を掛け、控除額を差し引いて算出します。
- 所得税額=課税所得額×所得税率−控除額
なお、2037年までは、所得税に『復興特別所得税』が上乗せされます。復興特別所得税額の求め方は、以下の通りです。
- 復興特別所得税額=所得税額×復興特別所得税率2.1%
(※1.所得額とは、総収入額から経費(給与所得者の場合は給与所得控除)を差し引いた金額のことです)
(※2.所得控除とは、所定の金額を所得額から差し引き、税負担を軽くするための制度のことです)
所得税のしくみ|国税庁
個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁
贈与税がかかるケースもある
保険料支払い者と受取人が異なる場合は、『贈与税』が課税されることがあります。贈与税とは、個人から財産をもらったときに課される税金です。贈与税額を求めるには、まず課税対象額を計算します。
- 課税対象額=贈与財産合計額−基礎控除110万円
そして、課税対象額に応じた贈与税率を掛け、控除額を差し引きます。
- 贈与税額=課税対象額×贈与税率−控除額
贈与税率は、『一般贈与財産』と『特例贈与財産』のどちらになるのかで異なります。
- 一般贈与財産:夫婦間・親と未成年の子ども間などでの贈与
- 特例贈与財産:祖父母などから20歳以上の子どもや孫への贈与
一時金として受け取る場合の所得税
解約返戻金を一時金として、一括で受け取る場合の所得税の計算方法について解説します。
扱いは一時所得になる
解約返戻金を一時金として受け取った場合は、『一時所得』として扱われます。
一時所得とは、給与などの継続的に得る所得以外の所得を指し、労務や役務、資産の譲渡などの対価としての性質を持たない所得のことです。
一時所得が50万円を超えると課税される
解約返戻金による一時所得額は、以下の式で算出します。
- 一時所得額=解約返戻金額−払込保険料総額−特別控除額50万円
つまり、受け取った解約返戻金額が50万円を超えると、利益を得たとみなされて課税されるということです。
課税対象は利益分の半額
一時所得は、全額課税対象となるわけではなく、以下の式で算出した金額が課税対象となります。
- 課税対象額=一時所得額×1/2
例えば、解約返戻金が200万円、払込保険料が50万円だとすると、課税対象額は50万円です。
- 一時所得額:200万円−50万円−50万円=100万円
- 課税対象額:100万円×1/2=50万円
一時所得以外に所得がないとして、所得税額と復興特別所得税額を計算してみましょう。課税所得が195万円以下なので、所得税率は5%、控除額は0円となります。
- 所得税額:50万円×5%=2万5000円
- 復興特別所得税額:2万5000円×2.1%=525円
所得税額+復興特別所得税額で、『2万5520円』が税金として差し引かれる計算になります。
20万円を超える一時所得は確定申告が必要
一時所得額が20万円を超えた場合には、確定申告が必要になります。確定申告とは、1月1日~12月31日までの所得額や所得税額などを申告し、納めた税金の過不足を精算するための手続きのことです。
確定申告をしなければならない人の条件として、『1カ所から源泉徴収対象となる給与を受け取っており、給与所得や退職金を除く所得額が20万円を超えている場合』と定められています。
つまり、給与所得者でも一時所得額が20万円を超えている場合は、確定申告が必要です。
確定申告をしなかった場合は、延滞税などが課されることがあるため、忘れないようにしましょう。
初めて確定申告される方:平成29年分 確定申告特集
平成29年分の確定申告~申告・納税は期限内に~ | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
確定申告書の書き方
解約返戻金を一時金として受け取った場合の、確定申告書の書き方を解説します。
出典:申告書の記載例(1)(収入が公的年金のみの場合)|国税庁
まず、確定申告書第一表の『収入金額等』の項目、『一時』の欄に一時所得額を記入します。次に、『所得金額』の項目、『一時』の欄に課税対象額を記入しましょう。
出典:申告書の記載例(1)(収入が公的年金のみの場合)|国税庁
そして、確定申告書第二表の『雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項』の欄に、以下の内容を記載しましょう。
- 所得の種類:『一時』と記入
- 種目・所得の生ずる場所:保険会社名を記入
- 収入金額:一時所得額を記入
- 必要経費等:課税対象額を記入
- 差引金額:一時所得額−課税対象額で算出した金額を記入
雑所得となる場合の所得税
解約返戻金を受け取った場合に、『雑所得』とみなされるケースもあります。
年金で受け取ると雑所得
解約返戻金を『年金』として受け取った場合は、雑所得として扱われます。雑所得とは、以下の所得のいずれにも該当しない、公的年金や講演料などの所得のことです。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
保険料支払い者と解約返戻金の受取人が同一の場合は所得税、保険料支払い者と解約返戻金の受取人が異なる場合は、初年度に贈与税、2年目以降は所得税が課せられます。(※)
(※初年度に贈与税が課せられた場合は、その年の年金受取時の所得税は非課税となるため、2重課税になることはありません)
雑所得|国税庁
保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金|国税庁
雑所得の計算方法
雑所得額の求め方は、以下の通りです。
- 雑所得額=1年間の受取総額−必要経費(受取総額に応じた払込保険料額)
雑所得は、雑所得額がそのまま課税対象額となります。
徴収方法は源泉徴収が原則
雑所得における税金は、保険会社により源泉徴収されるのが原則です。源泉徴収とは、給与・利子・配当・報酬などの支払い者が、支払い金にかかる所得税額を計算し、支払い金から税金を差し引いて納税することをいいます。
ただし、雑所得額が25万円未満の場合は、源泉徴収されません。源泉徴収額は、以下の式で算出しましょう。
- 源泉徴収額=雑所得額×源泉徴収税額10.21%
仮に、雑所得額が50万円だった場合、『50万円×10.21%=5万1050円』を差し引いた金額が支払われます。
保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金|国税庁
まとめ
がん保険を解約して解約返戻金を受け取ると、所得税や贈与税がかかることがあります。課税の有無や課税される税金の種類などは、解約返戻金額や受取人によって異なるので、事前に調べておきましょう。
また、解約返戻金額によっては、確定申告が必要となる場合もあります。確定申告をしなかった場合は、延滞税などが課されることがあるので注意が必要です。
がん保険に税金はかかるか。税金対策も含めてやさしく解説します