70代のがんの実態
まず、70代のがんの実態について知っておきましょう。
高齢者ほどがんになる可能性は高くなる
がんは、日本人の死因において第1位の病気で、高齢になるほどがんの罹患率(りかんりつ:病気にかかる割合)や死亡者数が増加します。
以下は、国立がん研究センターの『最新がん統計』のデータです。がんの罹患率は、50代ごろから大幅に上昇し、その後は年齢に比例して上がり続けていることが分かります。
出典:最新がん統計:[国立がん研究センター がん登録・統計]
また、以下は年齢別のがんの死亡者数のデータです。(厚生労働省の『2017年・人口動態調査(第7表)』より)
年齢(歳) | がんによる死亡者数(人) |
50~54 | 7262 |
55~59 | 1万2205 |
60~64 | 2万1233 |
65~69 | 4万4415 |
70~74 | 4万9324 |
75~79 | 5万8993 |
がんによる死亡者数も年齢とともに増加しており、70代はほかの年齢と比べて、死亡者数が多い結果となっています。
平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省
がんになったときの費用
がんにかかったときの医療費は、高額になることも少なくありません。全日本病院協会の『医療の質の評価・公表等推進事業』の医療費データによると、70代におけるがんの種類別平均医療費(1入院あたり)は、以下のようになっています。
がんの種類 | 平均医療費(円) |
胃がん | 98万9475 |
結腸がん | 83万5416 |
直腸がん | 97万8409 |
肺および気管支のがん | 73万9789 |
上記は公的医療保険適用前の金額ですが、公的医療保険の適用されたとしても、かなりの医療費がかかることが分かります。
医療費:医療の質の評価・公表等推進事業:病院運営支援事業 – 全日本病院協会
70代の医療費は低く抑えられている
70代からは、公的制度によって医療費の自己負担額が低く抑えられます。
公的医療保険の自己負担額は低い
6~69歳の公的医療保険適用後の医療費の自己負担額は、総医療費の3割です。しかし、70歳からは所得額などの条件に応じて、自己負担額が軽減されます。
70~74歳までの自己負担額
所得区分 | 自己負担額 |
一般・低所得者 | 2割 |
現役並み所得者 | 3割 |
一般・低所得者か現役並み所得者かの判定は、以下のように行われます。
出典:現役並み所得者に係る判定基準について | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
75歳からの自己負担額
所得区分 | 自己負担額 |
一般・低所得者 | 1割 |
現役並み所得者 | 3割 |
後期高齢者医療制度(75歳からの医療保険制度)|健保の取り組み・お知らせ・お願いなど|もっと知りたい『健康保険』のこと|パナソニック健康保険組合
高額療養費制度により自己負担額の上限がある
70代になると、高額療養費制度の自己負担限度額(自己負担の上限額)も、所得額に応じて軽減されます。
高額療養費制度とは、1カ月の医療費の自己負担額が、所定の自己負担限度額を超えた際に、支払った医療費の一部が払い戻される制度のことです。
出典:高額な医療費を支払ったとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
70歳以降で所得区分が一般、または低所得者の場合は、69歳までよりも自己負担限度額が低く設定されるため、医療費の自己負担額が減り、家計への負担が軽くなります。
70代でがん保険の加入の必要性を考える
70代でがん保険に加入する必要はあるのでしょうか。
保険料が高い
高齢になるほど、がんの罹患および死亡リスクが上がるため、がん保険の保険料は高くなります。
70代のがん保険の保険料を確認する
70代におけるがん保険の保険料を確認してみましょう。例えば、ライフネット生命のがん保険『ダブルエール』の場合、70歳男性の保険料は『月額9994円』です。
同条件での50歳男性の保険料は『月額5006円』なので、約2倍も保険料が高くなります。
保険商品や保障内容、特約の有無などによって、保険会社ごとに多少保険料は異なりますが、一般的に70代で加入すると、保険料は割高になる傾向にあります。
かんたん保険料シミュレーション | 生命保険・医療保険のライフネット生命
保障を受けられないことが多い
70代では、保障を受けられないことも多くなります。がん保険は、健康状態に問題がある人は加入不可となる商品が多いためです。
また、『加入は69歳まで』などと、年齢制限が設けられているがん保険もあり、そもそも申込ができない場合もあります。
保険より貯蓄に回するのも賢明な方法
70代はがんの罹患率が高まるものの、公的制度によって医療費が軽減されるため、現役世帯と比べてがん治療による家計への負担が少なくなります。
70代のがん保険の保険料が高額になることも踏まえると、無理にがん保険に加入するよりも、その分を貯蓄に回すのも賢明といえるでしょう。
ただし、現役並み所得者と判定され、医療費の負担が現役世代と変わらない場合は、がん保険に加入して、万が一に備えたほうがよい場合もあります。
加入の判断が難しい場合は、保険の相談窓口で専門家の意見を聞くなどして、慎重に検討しましょう。
まとめ
70代は公的制度などによって医療費が軽減されるため、がん治療による家計への負担は、現役世代よりも抑えられます。
そのため、無理にがん保険に加入するよりも、保険料分を貯蓄に回すのもよいでしょう。
もし、がん保険に加入する場合は、各保険会社の商品を比較し、保障内容や保険料をしっかり確認しましょう。