生命保険を分かりやすく解説
まずは、生命保険の概要を分かりやすく解説します。
生命保険とは
生命保険とは、被保険者(保険の対象となる人)が死亡したときに、一時金や保険金が支払われる民間の保険のことです。
加入する目的
生命保険には、以下のような目的で加入します。
- 世帯主が死亡した場合に、遺された家族の生活資金を確保する
- 大きなケガや病気によって発生する高額な医療費に備える
- 老後の資金や子どもの教育資金を確保する
日本における生命保険の加入率
生命保険文化センターの『2016年度・生活保障に関する調査』によると、日本における生命保険の加入率は、『男性80.6%、女性81.3%』となっています。
以下は、年代別における生命保険の加入率です。
年代 | 男性(%) | 女性(%) |
20代 | 58.2 | 53.2 |
30代 | 84.1 | 81.3 |
40代 | 88.1 | 87.1 |
50代 | 87.8 | 88.1 |
60代 | 81.6 | 83.5 |
20代の加入率は、ほかの年代と比べると低いですが、それでも5割程度の人が生命保険に加入しています。
30代以降は、全ての年齢で加入率が8割を超えており、多くの人が生命保険により将来に備えていることが分かります。
生命保険に加入している人はどれくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター
生命保険の種類は3種類
生命保険の種類は、主に3つに分かれます。
- 定期保険
- 終身保険
- 養老保険
それぞれどのような特徴があるのか見ていきましょう。
定期保険の特徴
定期保険とは、保障を受けられる期間が限定されている保険のことです。
基本は掛け捨ての保険
定期保険では、『年満了(ねんまんりょう)』もしくは『歳満了(さいまんりょう)』のいずれかで保障期間が設定されます。
- 年満了:10年・20年など年数で保障期間が設定される
- 歳満了:60歳・70歳までなど、年齢で保障期間が設定される
また、満期時や解約時などに満期金や解約返戻金(かいやくへんれいきん)が支払われない、『掛け捨て型』の商品が一般的です。
掛け捨て型は、お金が戻らない代わりに保険料が安く、商品の種類が多いという特徴があります。
なお、定期保険が向いているのは、以下のような人です。
- 安い保険料で保障を充実させたい
- 十分な貯蓄ができるまでの間、一時的に生命保険に加入したい
- ライフスタイルの変化に応じて、保障内容を見直したい
死亡保険(定期保険)FineSave[ファインセーブ]|オリックス生命保険株式会社
終身保険の特徴
終身保険とは、保障期間が限定されていない保険のことです。
一生涯にわたり保障が続く
終身保険は、一生涯にわたり保障が続きます。保険の解約時にお金が戻るものが多く、その分定期保険よりも保険料が割高であることが一般的です。
しかし、保険料が安い代わりに、解約時にお金が戻らない『無解約返戻金型終身保険』なども増えているため、契約前に保障内容をよく確認しましょう。
終身型保険は、以下のような人に向いています。
- 確実に保障を備えたい人
- できるだけ保険料を無駄にしたくない人
養老保険の特徴
養老保険は、保障と貯蓄の2つの目的を兼ね備えた保険です。
貯蓄性のある保険
養老保険は、万が一に備えつつ老後の資金を準備できる、貯蓄性のある保険です。
定期保険と同じように保障期間が限定されており、被保険者の死亡時には死亡保険金、満期時には死亡保険金と同額の満期金が支払われます。
また、解約返戻金も支払われるため、満期前にまとまった資金が必要になったときには、保険を解約することで資金の捻出が可能です。
被保険者の死亡に備えつつ、さまざまな用途に使える資金が準備できるメリットがありますが、貯蓄分の金額が加算されるので保険料は割高になります。
なお、養老保険に向いているのは、以下のような人です。
- 万が一のときの備えをしつつ、老後の資金を貯めたい人
- できるだけ保険料を無駄にしたくない人
定期保険の主な種類
生命保険は、定期保険・終身保険・養老保険の3種類に分かれますが、そこからさらに細かく種類が分類されます。まずは、定期保険の主な種類から見ていきましょう。
長期定期保険
長期定期保険とは、95歳満了や100歳満了など、長い保障期間が設定される定期保険のことです。
中小企業の経営者向けであることが多く、経営者の死亡時に支払われる死亡保険金は、事業資金や死亡退職慰労金、弔慰金(ちょういきん)などに充てることができます。
また、通常の定期保険には解約返戻金がありませんが、長期定期保険では、解約時に解約返戻金が支払われるのが一般的です。
出典:長期定期保険 『サクセス』|経営者保険|第一生命保険株式会社
長期定期保険は、保険契約時から少しずつ解約返戻金の返戻率が上昇し、一定期間返戻率が高い状態が継続します。
よって、そのタイミングで保険を解約すれば、解約返戻金を事業資金などに充てることも可能です。
逓減定期保険
逓減(ていげん)定期保険とは、契約時をピークとして、期間が経過するごとに保険金額が減少していく保険のことです。徐々に保険金額が下がっていくことから、保険料も安くなっていきます。
出典:特徴としくみ | &LIFE逓減定期保険 | 保険をお考えのお客様 | 三井住友海上あいおい生命保険
逓減保険は、小さい子どもがいる家庭などに向いています。なぜなら、子どもが小さいうちは、教育費などで多額の資金が必要になりますが、子どもが独立すると教育費の支払いがなくなるからです。
よって、小さい子どもがいる家庭にとって、都合のよい保険といえるでしょう。
収入保障保険
収入保障保険は、被保険者が死亡した場合に、遺された家族に死亡保険金が分割で支払われる保険です。
毎月10万円や20万円など、契約時に設定した金額が、満期を迎えるまで毎月1回支払われます。
毎月の保険金額は、どの時期に被保険者が死亡したとしても、契約時に設定した金額から変更されることはありません。そのため、死亡した時期が遅いほど保険金の受取総額が少なくなります。
出典:&LIFE 新総合収入保障・新収入保障の特徴としくみ | 三井住友海上あいおい生命保険
なお、収入保障保険の保険金の支払いは分割が基本ですが、保険会社によっては、まとまった資金が必要になった場合には、一括払いに対応してくれることもあります。
終身保険の主な種類
次に、終身保険の主な種類について解説します。
低解約返戻金型終身保険
低解約返戻金型終身保険は、解約返戻金を少なくすることで、保険料を安く抑えた終身保険です。
ただし、一時払いや短期払いで保険料の払込を完了させると、その後は返戻率が上がる商品もあります。
- 一時払い:保険料を全額一括で払い込む方法
- 短期払い:年齢や年数で保険料の払込期間を設定し、一定期間内に払込を完了させる方法
出典:&LIFE 終身保険(低解約返戻金型)の特徴としくみ | 三井住友海上あいおい生命保険
支払いが生涯続く終身払いの場合は、月々の保険料は安く抑えられますが、返戻率が低いままになる場合が多くなっています。
積立利率変動型終身保険
積立利率変動型終身保険は、市場の金利に応じて解約金の返戻率が変動する終身保険です。
保険会社が保険料の一部を運用し、その運用成績が保険会社が定める利率を超えた場合に、返戻率が上昇します。
運用成績によっては、解約返戻金が少なくなるリスクもありますが、利率の最低保証が設定されているため、大幅に損をすることはありません。
万が一に備えつつ、資産運用をしたい人に向いているタイプの終身保険です。ただし、積立利率変動型終身保険は商品数が少ないため、選択肢は狭まります。
プレミアプレゼント 積立利率変動型終身保険(17)(通貨指定型) | 商品一覧 | 第一フロンティア生命
変額保険
変額保険は、保険会社が株式や債券などの投資商品を運用し、運用成績によって保険金額や解約返戻金の返戻率が変動する保険です。
運用成績がよい場合は、保険金や解約返戻金に変動保険金が上乗せされ、受取金額が増えます。
ただし、運用成績がよくない場合は、死亡保険金は最低保障額となり、最低保障がない解約返戻金においては、マイナスになる可能性があるので注意が必要です。
養老保険の主な種類
養老保険の主な種類についても知っておきましょう。
積立タイプと一括払いタイプがある
養老保険には、『積立タイプ』と『一括払いタイプ』があります。
- 積立タイプ:保険料を月払いや半年払い、年払いなど分割して支払うタイプ
- 一括払いタイプ:契約時に保険料を一括で支払うタイプ。保険料総額は積立タイプよりも割安になる
一括払いは、保険会社に『お金を預ける』形になり、保険を解約した場合は、残りの保険料は返還されます。
大金を準備する必要のない積立タイプのほうが、金銭的な負担は少ないといえますが、一括払いのほうが利回りがよいので、メリット・デメリットを比較して決めることが大切です。
養老保険と同じ仕組みの学資保険
子どもの教育資金を準備するための『学資保険』は、養老保険と同じ仕組みの保険です。世帯主が死亡したときの保障と、教育資金のための貯蓄という目的を兼ね備えています。
商品によっては、契約から一定期間が経つと『祝い金』が支払われる場合があります。ただし、祝い金は、満期金の一部を前払いするものであるため、満期金が祝い金分減ることを覚えておきましょう。
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生命保険は年末調整で控除を受けられる
生命保険の保険料を年末調整時に申告すると、所得控除が受けられます。所得控除とは、所得額から所定の金額を差し引くことで、所得税などの負担を軽減する制度のことです。
生命保険に加入している場合は、1年間で払い込んだ保険料に応じた一定の金額を、所得から差し引けるようになっています。
一般生命保険料控除
一般生命保険料控除とは、被保険者の生存・死亡によって一定の保険金が支払われる、一般的な生命保険に払い込んだ保険料が対象となる控除です。
ただし、保険期間が5年未満の貯蓄保険や団体信用生命保険(※1)は対象外となります。
また、一般的な生命保険であっても、保険金の受取人が保険契約者か配偶者、6親等以内の血族と3親等以内の姻族でなければ控除は受けられません。
『血族』とは、自分と血の繋がりがある親族、『姻族』とは、配偶者と血の繋がりがある親族のことです。親等は以下の表を参考にしましょう。
親等 | 該当者 |
1 | 父母・子ども |
2 | 祖父母・兄弟姉妹 |
3 | 曾祖父母(そうそふぼ※2)・叔父母・甥姪 |
4 | 高祖父母(※3)・いとこ・祖父母の兄弟姉妹 |
5 | 曾祖父母の兄弟姉妹 |
6 | またいとこ |
(※1.団体信用生命保険とは、住宅ローンを借り入れた人が病気になったり、死亡したりした場合に、保険金によって住宅ローンが完済できる、住宅ローン専用の保険のことです)
(※2曾祖父母とは、ひいおじいちゃん・おばあちゃんのことです)
(※3.高祖父母とは、ひいひいおじいちゃん・おばあちゃんのことです)
税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|公益財団法人 生命保険文化センター
介護医療保険料控除
介護医療保険料控除は、入院や通院にかかる費用に対して保険金が支払われる介護保険や医療保険、がん保険などに払い込んだ保険料が対象となる控除です。
また、一般生命保険料控除と同じく、保険金の受取人が保険契約者か配偶者、6親等以内の血族と3親等以内の姻族でなければ控除は受けられません。
個人年金保険料控除
個人年金保険料控除は、個人年金保険(※1)が対象となる控除です。個人年金保険料控除を受けるには、以下の条件を満たし、個人年金保険料税制適格特約(※2)を付けている必要があります。
- 年金受取人が保険契約者か、その配偶者であること
- 年金受取人は被保険者と同一人であること
- 保険料払込期間が10年以上であること(一時払いは対象外)
- 年金の種類が確定年金・有期年金の場合は、年金の受給開始が60歳以降で、年金受取期間が10年以上であること
なお、個人年金保険料税制適格特約を付けていない場合や、変額個人年金保険は控除の対象外となるので注意が必要です。
(※1.個人年金保険とは、契約時に設定した年齢から、保険金が年金として一定期間支払われる保険のことです)
(※2.個人年金保険料税制適格特約とは、個人年金保険料控除を受けるために付加する特約のことです)
生命保険料控除の新制度と旧制度
生命保険料控除には、新制度と旧制度があります。
2012年契約分から新制度が適用
10年の税制改正により、12年1月1日以後に締結した保険契約分から、生命保険料控除の新制度が適用されることになりました。
介護医療保険料控除は、この税制改正によって新設されたものです。11年12月31日までに締結した保険契約には旧制度が適用されるため、介護医療保険料控除の対象外となります。
ただし、11年12月31日までに締結した保険契約であっても、12年1月1日以後に契約更新や特約の付加を行った場合は、その時点から新制度が適用されます。
所得税の生命保険料控除
所得税の生命保険料控除額は、年間の払込保険料の金額によって、以下のように定められています。
年間払込保険料 | 控除額 |
2万円以下 | 払込保険料全額 |
2万円超 4万円以下 | 払込保険料÷2+1万円 |
4万円超 8万円以下 | 払込保険料÷4+2万円 |
8万円超 | 4万円 |
控除限度額は、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除とも、それぞれ4万円です。
住民税の生命保険料控除
住民税の生命保険料控除額は以下の通りです。
年間払込保険料 | 控除額 |
1万2000円以下 | 払込保険料全額 |
1万2000円超 3万2000円以下 | 払込保険料÷2+6000円 |
3万2000円超 5万6000円以下 | 払込保険料÷4+1万4000円 |
5万6000円超 | 2万8000円 |
控除限度額は、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除とも、それぞれ2万8000円となります。
まとめ
生命保険には、定期保険・終身保険・養老保険などがあり、そこからさらに細かく種類が分かれます。
種類によって保険料の支払い方法や、解約返戻金・満期金の有無など、特徴が大きく異なります。生命保険に加入する目的を明確にし、自分に合った保険を選びましょう。