セーフティ共済とは
セーフティ共済とは、どのような制度なのか見ていきましょう。
中小企業や個人事業主の備え
セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、取引先企業の倒産により、連鎖倒産や経営難から企業を守るための制度です。
大企業と比べて中小企業や個人事業主は、取引先企業数が限定されます。また、取引先企業の財務状況などの情報が入手しづらいため、取引先企業の倒産により大きな損害を受けることも少なくありません。
そのため、中小企業や個人事業主が、取引先企業の倒産に備えられるようこの制度が設けられています。
掛金と借入額
セーフティ共済に加入した場合、毎月掛金を積み立てることになります。掛金額は5000~20万円の範囲で5000円単位で自由に設定でき、800万円に達するまで積立可能です。
取引先企業が倒産して売掛金などの回収ができなくなった場合には、『共済金』という形で融資が受けられます。
借入可能額は、それまで積み立てた掛金の10倍相当額か被害額(※)の、いずれか少ない金額(上限額8000万円)で、50万円~借入可能額の範囲内で5万円単位で借入可能です。
(※被害額とは、取引先企業が倒産したことにより回収が困難になった売掛金債権と前渡金返還請求権のことです。貸付金や不動産賃貸料などは対象外となります)
共済金について|経営セーフティ共済(中小機構)
掛金について|経営セーフティ共済(中小機構)
セーフティ共済のポイント
セーフティ共済のお得なポイントについて解説します。
無担保で借りられる
共済金は、無担保・無保証人で借入可能です。そのため、担保や保証人を立てるのが難しい個人事業主でも利用しやすくなっています。
なお、返済額と返済期間は借入額によって、以下のように決められています。
借入額 | 返済期間 | 返済額 |
5000万円未満 | 5年 | 借入額を54カ月で均等分割した金額 |
5000万円以上 6500万円未満 | 6年 | 借入額を66カ月で均等分割した金額 |
6500万円以上 8000万円以下 | 7年 | 借入額を78カ月で均等分割した金額 |
返済は月1回で、返済期日までに返済しなかった場合は、年14.6%の違約金が課せられます。
すぐに借入ができる
共済金は取引先企業の倒産後、その企業と取引があったことが確認でき次第、すぐに借入ができます。ただし、共済金の借入には、以下のようなさまざまな書類の提出が必要です。
- 共済金貸付請求書
- 償還金預金口座振替払に関する申出書
- 共済契約締結証書
- 掛金納付額証明願
- 売掛金元帳の写し
- 倒産した企業との取引関係が確認できる帳票類の写し
- 被害額に含まれる未決済手形、小切手の原本
- 取引先企業の法的倒産の事実が確認できる書類の写し(倒産手続きが法的整理の場合)
- 弁護士などからの支払停止通知の写し(倒産手続きが私的整理の場合)
- 住民票(発行後3カ月以内の原本)
状況によっては、上記以外の書類が必要になる場合があります。また、審査に2週間程度かかるため、早めに準備しておきましょう。
掛金の変更や解約が可能
セーフティ共済は、掛金額の変更や解約が可能です。掛金額の変更を希望する月の5日までに中小機構に書類が受理されれば、その月から掛金額が変更されます。
書類の受理が6日以降になった場合は、いったんそれまで通りの掛金額が引き落とされ、減額の場合は翌々月以降の掛金に差額を充当、増額の場合は翌月分の掛金に差額が加算されて引き落とされます。
また、解約手続きはどのタイミングでも可能です。ただし、掛金の納付月数によって解約手当金額が変わるため注意しましょう。
- 納付月数12カ月未満:解約手当金なし(掛け捨て)
- 納付月数40カ月未満:積み立てた掛金の8割程度
- 納付月数40カ月以上:積み立てた掛金全額
掛金の増額/減額|経営セーフティ共済(中小機構)
解約手当金の受け取り|経営セーフティ共済(中小機構)
節税にもなる
セーフティ共済への加入は、節税にも役立ちます。
掛金は経費になる
毎月セーフティ共済に積み立てる掛金は、個人事業主の場合は『必要経費』、法人の場合は『損金』として計上可能です。
これにより、課税所得額(※)が下がるため、所得税や住民税、法人税の負担軽減につながります。
積立金を損金や必要経費として計上するには、『中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書』に必要事項を記入して、確定申告書に添付しなければなりません。
(※課税所得とは、収入額から必要経費を差し引いた合計所得額から、所得控除を差し引いて算出した、課税対象となる金額のことです)
解約金は収入になるため注意
セーフティ共済を解約したときに支払われる解約手当金は税法上、個人事業主の場合は『収入』、法人の場合は『益金』として扱われます。
よって、黒字のときに解約してしまうと、税金が高くなることがあるので注意が必要です。
まとめ
セーフティ共済に加入していると、取引先企業が倒産し、連鎖倒産や資金難に陥る可能性があるときに、無担保・無保証人で融資が受けられます。
個人事業主は、取引先企業数が限定されており、取引先企業の倒産による被害が大きくなりやすいため、万が一に備えてセーフティ共済に加入しておくと安心でしょう。