満期時に受け取る保険の税金の種類
加入中の保険が満期を迎えたときには、『満期保険金』が支払われることがあります。満期保険金には、どのような税金が課せられるのでしょうか。
満期保険金のある保険
満期保険金とは、加入中の保険が満期を迎えた(保障期間が終了した)ときに、保険会社から支払われるお金のことです。
ただし、どのような保険でも満期保険金が支払われるわけではありません。満期保険金がある保険は、養老保険や学資保険などの貯蓄性がある保険のみです。
受取人によって変わる税金の種類に注意
満期保険金に課せられる税金の種類は、満期保険金の受取人によって異なります。
- 保険加入者と受取人が同じ場合:所得税
- 保険加入者と受取人が異なる場合:贈与税
保険加入者と受取人が同じで、満期保険金を一時金として受け取った場合は『一時所得』、年金として受け取った場合は『雑所得』として扱われます。
しかし、どちらの場合でも、所得税の課税対象となることには変わりありません。
源泉分離課税になるケースもあるため注意
保障期間が5年以内となる一時養老保険など、『金融類似商品』に該当する保険商品の満期保険金を受け取った場合は、『源泉分離課税制度』の対象になるケースがあります。
源泉分離課税制度とは、他の所得と分離して、所得の支払いの際に20.315%の税率で所得税を源泉徴収することで、所得税の納税が完結する制度です。
支払い時に納税が完了しているため、確定申告をして所得税の還付を受けることはできません。
源泉分離課税制度|所得税|国税庁
満期保険金などが源泉分離課税になる場合は?|公益財団法人 生命保険文化センター
満期保険金について税金の計算方法
満期保険金に課される税金の計算方法は、税金の種類によって異なります。
一時所得の場合
満期保険金を一時所得として受け取った場合は、まず受け取った満期保険金の総額から、払い込んだ保険料の金額と一時所得の特別控除額50万円を差し引いて、『一時所得額』を算出します。
- 一時所得額=満期保険金額−払込保険料総額−50万円
次に、一時所得額に1/2を掛け、課税対象となる金額を算出しましょう。
- 課税対象となる金額=一時所得額×1/2
そして、その他の所得と一時所得の課税対象となる金額を合計した金額(課税所得額)に、所定の所得税率を掛けて控除額を差し引き、所得税額を計算します。
- 所得税額=課税所得額×所得税率−控除額
なお、2037年までは『復興特別所得税』を上乗せして納めなければなりません。
- 復興特別所得税額=所得税額×2.1%
給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合|国税庁
所得税のしくみ|国税庁
贈与税の場合
満期保険金に贈与税が課せられる場合は、まず1月1日~12月31日までの1年間で贈与された財産額を合計し、基礎控除110万円を差し引いて、課税対象となる金額を算出しましょう。
- 課税対象となる金額=贈与された財産合計額−110万円
次に、課税対象となる金額に、所定の贈与税率を掛けて控除額を差し引き、贈与税額を算出します。
- 贈与税額=課税対象となる金額×贈与税率−控除額
贈与税率は、夫婦間・親子間(子どもが未成年者の場合)などでの贈与である『一般贈与財産』と、祖父母などから20歳以上の子どもや孫に贈与される『特例贈与財産』で異なるので注意しましょう。
保険金を受け取った際に確定申告は必要か
満期保険金を受け取ったときには、確定申告が必要になることがあります。
確定申告が必要なケースとは
以下のようなケースに該当する場合は、確定申告が必要です。
- 給与所得者で、満期保険金による一時所得額が20万円を超えた場合
- 満期保険金に贈与税がかかる場合
- 自営業者など、もともと確定申告をしなければならない場合
なお、給与所得者で、満期保険金による一時所得額が20万円を超えない場合でも、その他の一時所得と合算した結果20万円を超えた場合は、確定申告が必要です。
給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合|国税庁
確定申告の方法
満期保険金の受取により確定申告が必要になった場合は、確定申告書に必要事項を記入して、税務署に提出しなければなりません。
出典:所得税及び復興特別所得税の申告に使用する申告書第一表様式の解説 平成29年分 松本寿一税理士事務所
まず、確定申告書第一表『収入金額等』の項目にある『一時』の欄に、一時所得額を記入します。
次に、『所得金額』の項目にある『総合譲渡・一時』の欄に、一時所得額に1/2を掛けた、課税対象となる金額を記入しましょう。
出典:所得税及び復興特別所得税の申告に使用する申告書第二表様式の解説 平成29年分 松本寿一税理士事務所
確定申告書第二表では、『雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項』の項目への記入が必要です。
- 所得の種類:『一時』と記入
- 種目・所得の生ずる場所:保険会社の名称を記入
- 収入金額:一時所得額を記入
- 必要経費等:一時所得額×1/2の金額を記入
- 差引金額:収入金額−必要経費等の金額を記入
確定申告をしなかった場合のリスクと対策
確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日です。この期間内に確定申告をしなかった場合、無申告加算税が課されます。
無申告加算税額は、原則として納付税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分には20%を掛けた金額です。
また、確定申告をせずに放置した場合は、懲役や罰金などの刑事罰を課せられる可能性もあります。
無申告加算税や刑事罰を避けるためにも、確定申告は期間内に済ませ、もし期間を過ぎてしまった場合は、速やかに『期限後申告』をすることが大切です。
平成29年分の確定申告~申告・納税は期限内に~ | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
確定申告を忘れたとき|国税庁
満期保険金を受け取った場合の扶養への影響は
被扶養者が満期保険金を受け取った場合、扶養への影響はあるのでしょうか。
社会保険への影響
満期保険金が贈与税の課税対象となる場合は、そもそも所得として扱われないため、社会保険の扶養から外れるなどの影響が出ることはありません。
所得税に対する影響
満期保険金を贈与という形で受け取った場合は、所得とみなされないため所得税が課税されることはなく、配偶者控除などにも影響ありません。
しかし、一時金として受け取った場合は所得扱いとなるため、所得税が課税されるほか、年間合計所得金額が38万円を超えると、配偶者控除も受けられなくなります。
配偶者控除|国税庁
専業主婦が満期保険金や年金を受け取ると、夫の配偶者控除はどうなるの?|公益財団法人 生命保険文化センター
まとめ
加入中の保険が満期を迎え、満期保険金を受け取った場合は、所得税や贈与税が課されます。
給与所得者が20万円超の満期保険金を受け取った場合や、贈与税が課税された場合は、確定申告が必要になるので、忘れずに手続きをしましょう。
生命保険満期時の手続きは4ステップ。税金や確定申告はどうなる?