住宅ローン完済のコツは繰上げ返済
住宅ローンの返済は長い期間にわたり、大きな金額を毎月支払わなければならないものです。さらに、返済期間が長いということは、その額に含まれる金利分も決して無視できないものになります。
そういった負担の数々をできるだけ軽減するためには、ローンを契約した期間より早めに繰り上げて返済することも効果的です。
生活費を節約する
住宅ローンの繰上げ返済を実現するためには、まず、その資金を捻出する必要があります。それには、生活費を上手く節約して余剰金を作り出す、といった方法が考えられます
節約といっても難しいものではなく、空調の温度設定など、普段から簡単にできることがたくさんあります。
『経済産業省 資源エネルギー庁』が公表しているデータによると、エアコンを冷房に使う場合の設定温度を28℃にすると、年間では670円の節約(電気消費量では30.24kWhの省エネ)になるとされています。
また、暖房の場合は、20℃に設定することで年間1,170円(同53.08kWh)も節約できます。
さらに、部屋のドアは開閉を少なくすることや、夏場はレースのカーテンやすだれなどで日差しをカット、冬場は厚手のカーテンで保温するなどの工夫も効果的です。
空調の温度設定や工夫は、エネルギー消費と支出に関係し数字で結果が出るものなので、節約の対象にしやすい項目のひとつです。
エアコン | 上手な省エネの方法 | 一般向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト
節約した分は繰り上げ返済
努力して節約することで毎月捻出される金額は、住宅ローンの繰り上げ返済の目的だけに使うことにします。この金額は、せっかく残したお金を浪費してしまわないように、区別して貯めておくとよいでしょう。
そのためには、繰り上げ返済資金専用の銀行口座を作っておくことも有用です。銀行によっては、目的別に複数の口座を持てるようになっているところもあるので、活用するのもひとつの手です。
住宅ローンを返済しながら貯金する方法
家を持つことの意義は大きいですが、そのためのローンで毎月の家計がぎりぎりになってしまうと、生活に支障をきたしてしまいます。
また、自分や子供の将来や想定外の出費の可能性なども考慮すると、ある程度の貯金を残しておく必要もあります。住宅ローンを返済しながら同時に貯金を残すには、どのようにすればよいのでしょうか。
貯金と返済どちらを優先する?
住宅ローンには借入元本(住宅の購入代金)の他に、金利分が上乗せされており、この負担分も金額的に大きなものになります。
たとえば、借入元本が3,000万円ある状態であれば、年率換算0.8%の金利であれば24万円にもなります。
しかし、この金利分は、返済期間を短くすることで確実に減額できます。つまり、自分の努力でローンの負担を軽くすることが可能なわけです。そして、この負担が軽くなれば、貯金などに回せる現金が増えることにつながります。
住宅ローンは当初の計画どおりに返済しつつ貯金も同時に行うか、あるいは、早い段階でローンの借入元本を繰り上げ返済し、金利負担を軽くしてから貯金に取り組むようにするか、生活スタイルに合わせて定期的に検討しなおす余地があるでしょう。
副業で収入を増やす
家計の収支をバランスよくさせるためには、上手く節約するというのもひとつの手です。しかし、収入そのものが増えれば、家計が楽になることも確実です。
たとえば会社員であれば、本業以外に収入が得られるものがないか考えてみるのもよいでしょう。最近ではインターネットを通じて仕事を受けられる『クラウドソーシング』というものも普及しているので、利用するのもひとつの手です。
給与以外の収入は、年間で20万円以下なら課税されないという制度もあります。その額を超える副収入があった年は、確定申告をする義務が生じます。
注意点としては、本業の勤務先が就業規定で副業を禁止している場合です。無断で副業をすると最悪解雇ということもあり得るので、事前に十分な確認が必要です。
専業主婦の場合はパートで働く
もうひとつ、家計の収入を増やす確実な方法は、妻がパートで働くということです。
この場合、妻も給与から収入を得ていることになり、『基礎控除(38万円)』および『給与所得控除(65万円)』が適用され、合計で103万円までは所得税がかかりません。
ただし、妻のパート給与額と夫の給与収入額に応じて『配偶者控除』、もしくは『配偶者特別控除』の金額が変わってくるので注意が必要です。
配偶者控除は、以下の表のようにパート収入が年間103万円以下のとき、夫の合計所得金額から控除されます。
夫の合計所得 | 配偶者控除額 |
900万円以下 | 38万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 |
950万円超 1,000万円以下 | 13万円 |
また、配偶者特別控除は、パート収入と夫の給与収入の関係で、以下の表のように控除されます。
妻のパート収入 | 夫の給与収入 | ||
1,120万円以下 | 1,120万円超1,170万円以下 | 1,170万円超1,220万円以下 | |
103万円超 150万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
150万円超 155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
155万円超 160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
160万円超 167万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
167万円超 175万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
175万円超 183万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
183万円超 190万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
190万円超 197万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
197万円超 201万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
妻がパート収入を得れば家計に対する収入は確実に増えますが、夫の所得にかかる控除が減額することもあるので、それらのバランスを見極めて仕事を決定するとよいでしょう。
個人所得課税・資産課税---平成29年度税制改正 : 財務省
給与天引きなどで先取り貯金する
とにかく、毎月の貯金は確実にしたいと考えた場合、貯金にまわすお金は最初からないものと考える、という方法も効果的です。
たとえば、勤務先に『財形貯蓄』の制度がある場合は、それを積極的に活用しましょう。この制度を利用すると、毎月の給与から決まった額が自動的に天引・貯蓄されます。
財形貯蓄には特に貯蓄金の目的を制限せず、子供の教育費などに自由に充てることができる『一般財形貯蓄』や、年金を目的にした『財形年金貯蓄』などがあります(他に、住宅購入のための財形住宅貯蓄もあります)。
目的に合った貯蓄を選んで利用するようにしましょう。
返済額と家計のバランス
住宅ローンは返済期間が長いので、ローンを組む段階での見積もりが、のちの家計にとても大きな影響を及ぼします。
返済額は手取り収入の2割まで
銀行は住宅ローンを組むときに、借り手の年収に対し返済額の占める割合、『返済負担率』を提示してきます。
しかし一般に、手取り給与は年収より少なくなるので、実際の家計にローンがどう影響するかを、契約締結前にしっかり確認しておく必要があります。
たとえば、給料と返済額の関係をわかりやすくするため、年の給与収入が500万円で手取り給料(1年分)が400万円として計算してみます。
ボーナスは4カ月分受け取ると想定すると、年間では12 +4 =16カ月の給与があることと同等になり、仮に年の手取り給与を16カ月で均等割りすると、毎月手取りは以下のように計算できます。
- 400万円(1年分の手取り給与)÷ (12 + 4カ月) =25万円
1年の返済総額は、年収の500万円に返済負担率をかけた金額です。その額を、月給と年2度のボーナス(計16カ月分)に均等割し支払うと仮定すると、毎月のローン支出は以下の表のようになります。
返済負担率 | 1年の返済総額(500万円×返済負担率) | 毎月の返済額 | 1回のボーナス時増額分(2カ月分) |
20% | 100万円 | 62、500円 | 12万5,000円 |
25% | 125万円 | 78、125円 | 15万6、250円 |
30% | 150万円 | 93,750円 | 18万7、500円 |
もちろん、ボーナス時に増額するなど複数のケースが考えられますが、返済負担率が25%を超えてくると、毎月の家計はかなり厳しいという印象になることが分かります。
このように、住宅ローンを組むときは、自分の年収にかかる返済負担率と実際に毎月返済する金額をしっかり把握し、できれば手取り給料の2割以内の金額に設定するほうが無理なく返済できるといえます。
家計が苦しい人は金融機関に相談
仮に住宅ローンの返済で家計が苦しく耐えられない場合でも、ただ返済を滞納するのではなく、金融機関へ相談に出向くようにしたほうが得策です。間違っても、ローン返済のためにカードローンを借りるようなことはおすすめできません。
金融庁の調べでも、各金融機関は住宅ローン債務者からの貸付条件の変更(リスケジュール)に対して、8割以上という高い確率で応じ実行しています。
また、実行数の推移も年度の経過に対して安定しており、今後も同様にリスケジュールが行われることが見込めます。
黙って滞納だけをしてしまうと、金融機関との関係がより悪化してしまい、最悪の場合は持家が差し押さえられ、競売にかけられるという事態にもなり得ます。行き詰まったときは、とにかく金融機関に相談しましょう。
貯蓄ができる資金計画を
一般論的にいっても、実際に返済を始めた後になって想定以上に負担を感じるのがローンというものです。
毎月の給与からは、その返済分や生活費だけでなく、娯楽や服飾の費用や医療費の負担、さらには自分と子供の将来のための貯蓄なども支出しなければなりません。
住宅ローンを組むときには、想定できる支出のすべてを可能な限り考慮して、返済を始めた後も現金の貯蓄が可能なような計画を作ることが大切です。
ブログから学ぶ返済のコツ
多くのブロガーが住宅ローン返済のためのノウハウや実体験を書いているので、返済の仕方に悩んだときは、それらを参考にしてみるのもひとつの手です。
返済に役立つおすすめブログ
ブログ『非常識なお金の法則』は、住宅ローンをはじめ保険などお金に関係する考え方などを書いているサイトです。
たとえば、住宅ローンの返済がキツいと感じたときにできる3つのこと、というページには、実際の読者からの悩みに答える形でアイディアが提示されています。
他にも、借入額と金利の返し方について試算を含めながら詳しく書いているページもあるので、住宅ローンを計画中の人にもおすすめです。
住宅ローン返済がキツいと感じたときにできる3つのこと
元利?元金?住宅ローン2つの返済方法、どちらを選ぶべきか?
実体験を見て学べるおすすめブログ
『Mieのお金』は、実際に住宅ローンとして1,100万円の借入をし、3人家族の家計をきりもりしながら早期返済のための節約術などを公開している、専業主婦のブログです。
実際に住宅をローンで購入する際にかかった金額などを、かなり詳細に公開しているので、現在ローンを検討中という人にも参考になるブログです。
年収400万世帯が住宅ローンを組む、借入額はいくら?頭金や内金、諸経費について
住宅ローン借り換えにかかる諸費用
住宅ローンの返済額が少なくなれば、貯蓄などに回せるお金が増えることはいうまでもありません。そのためには、住宅ローンの借り換えで返済額を減らすという手段も考えられます。
借り換えは節約になる?
住宅ローンを借り換えるメリットは、金利分の減額です。住宅ローンは返済期間が長いため、返済中には世の中の金利が大きく変わります。
したがって、仮に固定金利でローンを組んでいる場合は、一般の金利が低くなったときは、ローン借り換えを検討するメリットが大きくなります。
借り換えにおける手数料と税金
場合によっては、毎月の返済額を減らすことも可能な住宅ローンの借り換えですが、借り換えの際には、一定の手数料と税金がかかることも考慮する必要があります。
借り換えの諸費用の総額
住宅ローン借り換え時にかかる税金関係としては、自宅を担保とするための『抵当権設定登記の登録免許税』0.4%と、契約書に添付する『収入印紙税』があります。
手数料関係としては、保証料および保証会社の手数料、新たに融資を受けるための手数料などがかかりますが、金融機関により差があります。
例として、みずほ銀行の『住宅ローン借り換えシミュレーション』を使い、2,000万円ローンを月々8万円、ボーナス時25万円払いの30年返済(変動金利)で試算してみると、諸費用は572,670円となります。
このケースでは、上記の税金に加えて、保証会社事務手数料、保証会社保証料といった費用が計上されています。
まとめ
住宅ローンを返済中であっても、ある程度の現金は貯蓄として残しておきたいものです。そのためには、家計における余計な支出を抑え、しっかりと節約することから始めましょう。
収入を増すためには、インターネットを通じて小さな仕事を受けるという手段もあります。また、専業主婦はパートで働くという方法も考えられます。
住宅ローンを固定金利で借りている場合は、世の中の金利動向を確かめたうえ、返済額が減るようであれば借り換えも検討してみるとよいでしょう。