マネープランとは
就職や結婚、出産、老後の生活など、この先の人生で実現したいライフイベントがある場合は、それに対するマネープランを立てることが重要です。マネープランとは何なのか、まずは概要を理解しておきましょう。
資産形成や運用の計画
マネープランとは、資産形成や資産運用の計画のことです。就職や結婚、出産、住宅購入や老後の生活など、人生ではさまざまなライフイベントが起こりますが、これらのライフイベントの多くは、多額の資金を必要とします。
例えば、就職や結婚を機に引っ越した場合、引っ越し費用や新生活に必要なものの購入費などがかかるでしょう。出産には出産費用がかかるほか、子どもが大きくなると教育費もかかるようになります。
住宅の購入や老後の生活には、とくに多額の資金が必要です。これらのライフイベントが起こってから資金について考え始めても間に合いません。
そのため、前もっていつどんなライフイベントが起こるのか、資金がいくら必要かといった、具体的な計画を立てる必要があるのです。
住宅や保険など将来を明確にイメージ
マネープランを立てるときには、将来のライフイベントを明確にイメージすることが大切です。例えば、住宅購入を目標にしている場合、いつどこに建てるのか、どんな家にするのかといったことが明確になっていないと、必要な資金額がわからないからです。
これから先、いつ何を実現したいのか、ライフプランを立ててみましょう。大まかなライフプランができると、各ライフイベントの詳細を決めやすくなります。ライフイベントの詳細が決まれば、それに必要な資金額も見えてくるでしょう。
マネープランニングの流れ
マネープランを立てる作業のことを『マネープランニング』といいます。ここでは、マネープランニングの具体的な流れを解説します。
目標やイベントを挙げる
まずは、この先の目標やライフイベントをすべて挙げていきます。以下のように、家族全体と個人別にライフイベントの記入欄を設け、収支が発生するライフイベントであれば、小さなものでもできるだけ書き出します。
項目 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
家族全体 | 旅行 | 住宅購入 | |||
夫 | 資格試験 | ||||
妻 | 仕事復帰 | ||||
子ども | 小学校入学 |
収入や支出をシミュレーション
目標やライフイベントを書き出したら、次にそのライフイベントによって発生する収入や支出、貯蓄額などをシミュレーションしましょう。
項目 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
家族全体 | 旅行 | 住宅購入 | |||
夫 | 資格試験 | ||||
妻 | 仕事復帰 | ||||
子ども | 小学校入学 | ||||
収入 | ・夫給与〇万円 | ・夫給与〇万円 ・妻給与〇万円 |
・夫給与〇万円 ・妻給与〇万円 |
・夫給与〇万円 ・妻給与〇万円 |
・夫給与〇万円 ・妻給与〇万円 |
支出 | ・住居費〇万円 ・食費〇万円 ・旅行〇万円 ・資格試験〇万円 |
・住居費〇万円 ・食費〇万円 ・入学資金〇万円 |
・住居費〇万円 ・食費〇万円 |
・住居費〇万円 ・食費〇万円 |
・食費〇万円 ・頭金〇万円 |
貯蓄 | ・〇万円 | ・〇万円 | ・〇万円 | ・〇万円 | ・〇万円 |
プランの見直し
目標やライフイベント、収支などがシミュレーションできたら、ライフプラン・マネープランを見直します。赤字になる年はないか、大きなライフイベントが発生するまでに必要資金を貯められるかなど、収支をしっかりチェックしましょう。
赤字になったり、ライフイベントの発生までに目標額が貯まらなかったりといった問題がある場合は、プランを練り直さなくてはなりません。無理のない現実的なプランができるまで、何度もやり直すことが大切です。
簡単にシミュレーションしてみよう
もっと手軽にライフプランやマネープランをシミュレーションしたいという人は、金融庁や全国銀行協会などが無料で公開しているシミュレーターを利用するのがおすすめです。
金融庁
金融庁が公開している『ライフプランシミュレーション』では、年齢や年収などの簡単な質問に答えていくだけで、将来の収支と貯蓄額が手軽にシミュレーションできます。
1年ごとの収支のバランスと貯蓄額がグラフで表示されるので、支出が大きくなる年や赤字を貯蓄で補てんできそうかなど、この先の家計状況をイメージしやすい点がメリットです。
資産運用に関するアドバイスやおすすめの金融商品も表示されるので、NISA(ニーサ※1)やiDeCo(イデコ※2)などを検討している人は、参考にするとよいでしょう。
(※1.NISAとは、少額投資を対象とした、税制優遇制度のことです。専用口座内で買い付けた金融商品から得た利益が非課税になります)
(※2.iDeCoとは、専用口座に積み立てた掛け金で金融商品を買付・運用し、老後資金の形成を図る、私的年金制度のことです)
日本FP協会
日本FP協会のホームページでも、ライフプランのシミュレーターが公開されています。日本FP協会とは、ファイナンシャルプランナーというお金の専門家の育成や普及を図るNPO法人のことです。
九つの質問に答えるだけで、1万ケース以上のライフスタイルをもとにした診断結果を確認できます。どの年齢のときに出費が膨らむか、今の貯蓄で不足はないかといった細かいアドバイスも表示されるので、無理のないプランになるまで繰り返しシミュレーションしてみましょう。
全国銀行協会
全国銀行協会が公開しているライフプランシミュレーションでは、簡易シミュレーションと詳細シミュレーションの2種類が用意されています。
詳細シミュレーションでは、住宅購入予定や老後の収入額などを入力する必要があり、簡易シミュレーションより手間がかかります。しかし、より正確な結果を確認できるので、時間があるときに試してみるとよいでしょう。
エクセルでもシミュレーション可能
エクセルを利用すると、自分でマネープランのシミュレーションシートが作成できます。自分なりにシートを作成してもよいですが、無料で公開されているシートを利用すると手軽にシートが作成できます。
家族や収入を入力
自分でシートを作成する場合は、家族の年表を作るイメージで進めると、スムーズに作成できるでしょう。まずは、横軸に現時点から子どもが独立するまで、定年するまでなど期間を決めて、年度を入力します。
出典:ライフプラン | 福井県鯖江市の「アイアイ家計相談ねっと」
そして、縦軸に以下の入力欄を作成します。
- 家族全体のライフイベントの入力欄
- 個別のライフイベントの入力欄
- 収入の入力欄(夫婦それぞれに収入がある場合は個別に作成)
- 支出の入力欄(住居費や食費など項目別に作成)
- 貯蓄の入力欄
- 収支の合計欄
イベントを入力
枠組みができたら、ライフイベントを入力していきましょう。まずは、子どもの進学時期や住宅購入など、大きなライフイベントを入力します。
次に、旅行や車検など、細かいライフイベントを入力しましょう。子どもの進学に合わせて再就職する予定がある場合は、それも入力しておきます。できる限り細かいものまで入力すると、より正確にシミュレーションすることが可能です。
もし、今後家族が増える予定がある場合は、予備入力欄を設けておき、予測でよいので予定を入力しておきましょう。
支出を入力してプランを見直す
ライフイベントを入力し終えたら、夫婦それぞれの収入と生活費やライフイベントにかかる支出を入力していきます。今のペースで貯蓄を続けた場合の貯蓄額も入力しておきましょう。
そして、収支の合計を算出し、合計額の入力欄に入力していきます。すべての入力が完了したら、プランを見直してみましょう。
- 赤字になる年はないか
- 赤字が出ても貯蓄で補てんできるか
- 各ライフイベントの発生までに資金は確保できそうか
上記のような項目をチェックして、無理のないプランになっているかを確認します。大きな赤字が出るなど、何らかの問題がある場合は見直しが必要です。生活費の節約やライフイベントの実行日の変更などの対策を考えて、問題がなくなるまでプランを練り直しましょう。
マネープランナーとは
自分でマネープランを立てるのがむずかしい場合は、『マネープランナー』に相談することも検討しましょう。マネープランナーとは、ライフプランやマネープランの専門家のことです。
FPが一般的
マネープランナーは、ファイナンシャルプランナー(FP)を指すのが一般的です。ファイナンシャルプランナーとは、家計や住宅ローン、保険、税制、投資など、お金に関するさまざまな専門知識を持っている、マネープランの専門家のことをいいます。
ファイナンシャルプランナーに相談すれば、将来の目標と収支や資産、負債、保障などのデータから、最適なマネープランを立ててもらえます。また、現在の家計の問題点や改善策といったアドバイスももらえるでしょう。
活躍の幅が広い人生設計サポートの専門家
ファイナンシャルプランナーは、活躍の幅が広い人生設計サポートの専門家です。さまざまな企業がファイナンシャルプランナーの持つ知識を必要としているため、ファイナンシャルプランナーの資格があると、就職や昇進の際に有利になる場合もあります。
とくに、さまざまなローンや保険商品を扱う金融機関、保険会社、不動産会社などでは、ファイナンシャルプランナー資格の取得を昇進、昇給の条件としていることもあるのです。
また、資格取得後に自分で独立して事務所を開設する人も多く、自分の働き方を自分で選択できるという強みもあります。
マネープランの相談方法
マネープランについてファイナンシャルプランナーに相談したくても、どうやってファイナンシャルプランナーを探せばよいのかわらかないという人もいるでしょう。ここでは、ファイナンシャルプランナーを探す方法と、相談するときの注意点について紹介します。
FP協会で探す
日本FP協会のホームページでは、『CFP認定者』を検索できます。CFP認定者とは、ファイナンシャルプランナーの民間資格のうち、上級資格であるCFP資格を取得した人のことです。
ファイナンシャルプランナーの資格には、国家資格であるFP技能士(1~3級)と民間資格であるCFP・AFP資格があります。
民間資格といっても、CFP資格はFP技能士1級レベルの知識と実務経験を持っており、ファイナンシャルプランナーとしてのレベルが高い人でないと取得できません。
ファイナンシャルプランナーへのマネープランの相談は基本的に有料です。お金を払うのであれば、よりレベルの高いCFP認定者に相談するのがおすすめです。
マネープランクリニックを使う
ある程度マネープランはできているものの、赤字が解消できないなど悩みがある人は、『マネープランクリニック』の利用を検討してみましょう。
マネープランクリニックとは、『生活総合情報AllAboutサイト(オールアバウト)』のファイナンシャルプランナー無料相談サービスです。
通常、ファイナンシャルプランナーにマネープランを相談すると、1時間あたり5000~2万円程度の相談料が発生します。しかし、マネープランクリニックであれば、無料で有料相談並みの詳細なアドバイスを受けることが可能です。
ただし、相談内容が記事になる可能性があるので、相談内容を公開されたくないという人は、有料相談を利用した方がよいでしょう。
ファイナンシャル・プランナーがあなたのお金の悩みにお答えします
相談料の目安(有料相談) | 日本FP協会
無料相談に行く
あまり相談料にお金をかけられない人や、とりあえずファイナンシャルプランナーへの相談を体験してみたいという人は、無料相談がおすすめです。
日本FP協会では、全国8カ所で無料相談会を実施しているほか、無料相談の会場が遠い人のために、無料の電話相談も受け付けています。無料相談で詳細なマネープランを立てることはできませんが、問題解決のアドバイスをもらえるでしょう。
また、ファイナンシャルプランナー事務所でも、初回の無料相談を受け付けていることがあります。お金というプライベートなことを相談するので、ファイナンシャルプランナーとの相性は重要です。まずは無料相談で相性を確認して、有料相談を決定するのもよいでしょう。
FP無料体験相談(対面相談) | 日本FP協会
FP無料体験相談(電話相談) | 日本FP協会
FPバンク |
相談するときの注意点
ファイナンシャルプランナーに相談するときには、ある程度家計や保険などの予備知識をつけておいた方がよいでしょう。
ファイナンシャルプランナーの相談は、30分や1時間など、時間が限られているためです。まったく知識がなくてもしっかり解説してもらえますが、とくに有料相談の場合は、解説に貴重な時間を取られてはもったいないでしょう。
また、ファイナンシャルプランナーは、相談者の提供した情報をもとにさまざまなことを判断し、マネープランを考えます。そのため、借入金などのマイナス点についても包み隠さずに話すことが大切です。
家計簿や源泉徴収票、借入金の返済額・利率などがわかる書類など、家計状況が把握できる書類を持参すると、スムーズに話が進みます。
マネープランに関するおすすめの本
マネープランを考えるときに知っておきたい知識が身につく本を紹介します。
お金2.0 新しい経済のルールと生き方
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マンガでわかる!税金のすべて
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マネープランを考えるうえで、切っても切れない税金ですが、内容が複雑で理解できないという人も多いでしょう。『マンガでわかる!税金のすべて』であれば、むずかしい税金の話がマンガになっているので取り組みやすく、税金について学ぶ第一歩におすすめです。
まとめ
マネープランとは、将来のライフイベントとそれに関わる収支についての、具体的な計画のことです。自分でエクセルなどで作成することもできますが、本格的なマネープランを作成したいのであれば、専門家に相談するのもよいでしょう。
ライフイベントが発生してから資金の確保に悩んでも間に合いません。早めにマネープランを作成し、将来に備えておきましょう。